未経験から介護職を目指す方にとって、どの職種を選ぶかは悩みどころではないでしょうか。
介護職には、「施設介護」「訪問介護」「デイサービス」「訪問入浴介護」など、さまざまな職種・働き方があります。
介護の仕事がはじめての方には、どういう基準で職種を決めればいいのか判断がつきにくいかもしれません。
この記事では、これから介護職に就こうとしている方に向けて、介護の職種別の特徴や選び方のポイントをお伝えします。
1.介護職は今後も安定の求人
「介護業界は人手不足」というのは、多くの人に共通したイメージかと思います。
実際のところ、介護関連の職種の「有効求人倍率」は全職業の平均に比べて2倍以上の高い水準が続いており、その差は近年さらに開いています。

引用)厚生労働省社会・援護局福祉基盤課 福祉人材確保対策室「福祉・介護人材確保対策等について」P568(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000605568.pdf)
令和元年12月の有効求人倍率においては、全職種の平均が1.53倍なのに対し、介護関連の平均は4.73倍で、とくに、東京都(7.90倍)、岐阜県(6.96倍)、愛知県(6.93倍)、大阪府(6.00倍)、埼玉県(5.85倍)などで高い数値を示しています。

引用)厚生労働省社会・援護局福祉基盤課 福祉人材確保対策室「福祉・介護人材確保対策等について」P569(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000605568.pdf)
また最近では、介護人材の確保育成として、若者やシニア層へ向けた介護の「入門的研修」や、「業務負担の軽減」「職場環境の改善」といったさまざまな取り組みも進められています。*1
こうした背景もあり、これから介護職を目指す方にとっては就職活動のハードルも比較的低く、よりよい条件で働けるチャンスだといえるでしょう。
2.みんなはどうしている?介護の職種の選び方
ここからは、介護従事者を対象に行った「就業意識調査」のデータをもとに、どういった点を重視して就職先を決めればよいのか考えてみたいと思います。
①介護の仕事を選んだ理由は?
調査では、介護職を選んだ理由として、半数以上の人が「働きがいのある仕事だと思ったから」と答えています。
確かにデスクワークなどに比べると、介護は直接的に人の役に立てる仕事であり、喜びや充実感を得やすい職業だといえるでしょう。
仕事を通して相手から「ありがとう」とお礼を言われる機会も多く、日々やりがいを感じながら仕事に励んでいる人も多いと思います。
次に、「資格・技能が活かせるから」、「今後もニーズが高まる仕事だから」と、自らのキャリアや今後の社会情勢を見越して介護職を選ぶ人も少なくないです。

引用)厚生労働省宮城労働局「介護従事者の働き方の現状(3)介護従事者の就業意識」P48(https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7598/kaigo33.pdf)
②就職する会社の選び方は?
次に、今の会社を選んだ理由をみていきましょう。
この点については、以下の4つの回答がほぼ横並びでした。
1位……資格・技能が活かせるから(38.0%)
1位……通勤が便利だから(38.0%)
3位……やりたい職種・仕事内容だから(36.9%)
4位……働きがいのある仕事だと思ったから(36.5%)

引用)厚生労働省宮城労働局「介護従事者の働き方の現状(3)介護従事者の就業意識」P53(https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7598/kaigo33.pdf)
就職先を選ぶ際は、やはり資格や技能を活かせることを重視する人が多いです。
また、介護を志した理由と同じく、「働きがい」を求めている人が4割近くおり、仕事を収入を得る手段としてだけではなく、気持ちの面で充足感をもって働きたいと思っている人が多いことがわかります。
注目したいのが、「通勤が便利だから」とアクセス面を優先する人の多さです。
通勤は毎日のことなので、勤め先へのアクセスの良さは重要なポイントといえます。
とくに、育児・介護と仕事の両立を考えている人、家で過ごす時間を大切にしたい人は、無理なく通える範囲で就職先を探すのが賢明でしょう。
③希望の介護職種は?
どんな職種に就きたいかを訊ねたアンケートでは、「今の仕事を続けたい」と答えた人が53.7%、「今の仕事以外」と答えた人のうち、介護職員・訪問介護員・サービス提供適任者・生活相談員などの特定の職を目指したいという人は22.5%いました。*2
半数以上の人がこのまま今の仕事を続けたいと思っている一方で、意欲をもって別の職種を目指したいと考えている人も一定数いることがわかります。
下記のグラフは、その22.5%の内訳を示したものです。

引用)厚生労働省宮城労働局「介護従事者の働き方の現状(3)介護従事者の就業意識」P50(https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7598/kaigo33.pdf)
「訪問介護員」を希望している人が42.1%ともっとも多く、介護支援専門員(ケアマネジャー)が18.1%、介護職員が11.4%、サービス提供責任者が8.1%という結果でした。
訪問介護員、介護支援専門員(ケアマネジャー)、サービス提供責任者として働くには、資格が必要になります。
これから先、介護職としてステップアップしていきたい方は、ぜひこれらの資格取得を目指して経験と知識を積んでいきましょう。
3.職種別のメリット・デメリット
自分に合った仕事を選ぶには、まずそれぞれの職種の特徴や仕事内容を把握しなければなりません。
ここでは、代表的な介護の職種、「介護施設・訪問介護・デイサービス」の仕事について解説していきます。
①介護施設の場合
特養や有料老人ホーム、グループホームなどの施設勤めは、一般的にシフト制で働きます。
夜勤があるため敬遠する人もいますが、そのぶん給与水準が高くなるメリットもあります。
【メリット】
・職場に複数の職員がいるため、困ったときに助け合える
・夜勤があるぶん給与が高くなる傾向にある
【デメリット】
・シフト制で働くため生活リズムが狂いやすい
・多くの職員がいるため人間関係で悩む人が多い
②訪問介護の場合
訪問介護のいちばんの特徴は、一人一人の利用者に対してじっくり丁寧なケアができることです。
どんな仕事も自分一人でこなすため、施設に比べると責任は重くなりますが、そのぶんやりがいを感じられたり自信が付いたりと良い面もたくさんあります。
【メリット】
・高いスキルが身につく
・基本的に単独行動なので人間関係で悩むことが少ない
【デメリット】
・悪天候の日は移動が大変
・理不尽な要求、予定外の用事を頼まれる等、対応に苦労する時がある
③デイサービスの場合
デイサービスでは、食事・入浴・レクリエーション・機能訓練などのサービスを提供します。
限られた時間内に多くのタスクをこなさなければならないため、職員同士の密なコミュニケーションが欠かせません。
仲間と協力し合って仕事をするのが好きな人、レクリエーションなどで場を盛り上げるのが得意な人には、非常におすすめの職場です。
【メリット】
・日中のみのサービスのため夜勤がなく残業も少ない
・利用者の要介護度が比較的低いため、経験の浅い人でも働きやすい
【デメリット】
・実践的な介護技術が身につきにくい
・レクの司会進行など、人前に出るのが苦手な人はストレスを感じやすい
4.介護初心者はどの職種を選ぶべき?
介護の仕事が初めての人には、一体どの職種が向いているのでしょうか。
選び方のポイントをお伝えします。
①事業所の選び方のポイント
介護従事者に対し、仕事の悩みや不満について聞いたアンケートによると、「人手が足りない(53.2%)」「賃金が低い(41.5%)」「有給休暇が取りにくい(34.9%)」という回答が上位でした。*3
とくに人手が足りない職場では、一人の職員にのし掛かる負担が増すためミスも多くなりがちです。
職員が少なければ当然シフトがきつくなり休みも取りづらく、職員のストレスは膨らむ一方です。
よい職場環境で長く働くには、このような問題点がないか、事前にしっかりリサーチすることが肝心です。
給与の額や有給休暇の日数だけでなく、離職率や有給消化率もできるだけ詳しくチェックしましょう。
②職場の年齢層も視野に入れよう
職員の年齢層は、仕事のしやすさや居心地の良さにも少なからず影響します。
介護の現場は職種によって年齢層が異なるため、この点も職種選びの参考にするとよいかもしれません。
たとえば、厚生労働省の資料に、介護職員の年齢構成のデータがあります。
これによると、施設等の介護職員は30代から40代が多く、逆に訪問介護員は50代から60代が多いことがわかります。
とくに、60歳以上の訪問介護員は38.5%と非常に高い割合を示しており、訪問介護は思いのほか高齢のヘルパーが働きやすい環境であることがうかがえます。
③初心者向きの職場はどこ?
結局のところ、介護初心者にはどの職種がおすすめなのでしょうか。
訪問介護は資格がないと仕事ができないため、無資格の場合は有料老人ホームや特養などの介護施設や、デイサービスを選ぶ人が多いかと思います。
介護施設もデイサービスも、基本的に初心者には一から丁寧に仕事を指導してくれます。
また、日ごろから熱心に研修を行っている事業所も少なくないので、未経験の人でも無理なく着実に仕事を覚えていくことができるでしょう。
子育て中の人や、事情があって夜に働けない人は、夜勤のないデイサービスがおすすめです。
上でも述べたように、デイサービスは要介護度の低い利用者が多く、高度な介護技術がなくてもできる仕事もあり、初心者が働きやすいというメリットがあります。
ただ、デイサービスはレクリエーションやイベントの企画・準備などに割く時間もわりと多いので、自分の介護技術を磨くことにもっと専念したい人は介護施設のほうが向いているかもしれません。
施設は夜勤手当がつくので、給与アップにもつながります。
職種ごとの特徴をよく比較し、自分の性格やライフスタイルと照らし合わせて、より働きやすい仕事を選ぶようにしましょう。
5.まとめ
介護業界は、未経験・無資格の人でも働ける職場がたくさんあります。
どの仕事をするか悩む方は多いと思いますが、職種にかかわらず仕事で身につけた知識や技術はどの介護現場でも通用します。
介護職としてのキャリアの一歩を踏み出したら、次は介護初心者向けの「介護職員初任者研修」などの資格取得も視野に入れ、さらなるステップアップを目指していきましょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000605568.pdf
*2 参考)厚生労働省宮城労働局「介護従事者の働き方の現状(3)介護従事者の就業意識」P50
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7598/kaigo33.pdf
*3 厚生労働省宮城労働局「介護従事者の働き方の現状(3)介護従事者の就業意識」P52
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7598/kaigo33.pdf

プロフィール:マネー・介護・福祉が専門のフリーライター。
独身時代は、都市銀行にて支店勤務ののち秘書室で役員秘書として従事。結婚退職後、介護福祉士の資格を取得し、福祉施設や訪問介護での勤務を経て、2016年よりライター活動を始める。Webメディアを中心に読者の方の役に立つ記事を多数執筆中。