女性の就業数は以前と比較すると、かなり拡大してきているとはいえますが、
「女性管理職の割合が低い」
「正規雇用より非正規雇用が多い」
など、様々な課題を抱えています。
今回は、女性社員の比率が高い企業について、新卒3年後の離職率や平均年収などについて詳しく解説をしていきます。
女性社員比率が高い業種についてもご紹介していきますので、これから就活や転職を考えている女性の方は、ぜひ、参考にしてください。
1.女性社員の比率が高い企業ランキング【TOP20社】
女性社員の比率が高い企業ランキングのTOP20社は、以下の通りです。(図1)
【女性社員の比率が高い企業ランキング TOP20社】
順位 | 社名 | 業種 | 女性比率 |
1位 | ハニーズ | 小売業 | 98.1% |
2位 | ヴァンドームヤマダ | 小売業 | 94.9% |
3位 | レリアン | 小売業 | 94.7% |
4位 | クレディセゾン | 信販・カード・リース | 73.6% |
5位 | 日本調剤 | 家電量販・薬局・HC | 70.2% |
6位 | ファーストリテイリング | 小売業 | 69.7% |
7位 | 日本マスタートラスト信託銀行 | 銀行 | 69.6% |
8位 | 日本生命保険 | 生保 | 69.3% |
9位 | ポーラ | 化粧品・トイレタリー | 69.0% |
10位 | ファンケル | 化粧品・トイレタリー | 68.6% |
11位 | JPホールディングスグループ | その他サービス | 68.4% |
12位 | 三越伊勢丹 | デパート | 67.6% |
13位 | ワタベウェディング | サービス | 65.8% |
14位 | 損害保険ジャパン | 損保 | 65.7% |
15位 | エイチ・アイ・エス | レジャー | 64.9% |
16位 | ノバレーゼ | サービス | 64.8% |
17位 | 全日本空輸 | 海運・空運 | 64.2% |
18位 | ジェイアール東海ツアーズ | レジャー | 63.5% |
19位 | 第一生命保険 | 生保 | 63.0% |
20位 | 昭和大学 | 人材・教育 | 62.0% |
図1 参考)就職四季報女子版2022年「女性社員比率ベスト100」P34を参考に筆者作成
①女性社員比率NO.1企業は福島発レディースカジュアルの「ハニーズ」
女性社員比率NO.1企業は、福島発レディースカジュアルの「ハニーズ」で、98.1%という結果になりました。
現在、多店舗展開を続けていますが、EC事業も成長事業として力を入れています。
第2位は、婦人アクセサリー大手「ヴァンドームヤマダ」の94.9%です。
こちらもEC事業に注力していますが、百貨店を中心に直営で約130店舗を全国展開しています。
第3位には、婦人既製服の販売大手「レリアン」が94.7%でランクインし、同社は伊藤忠商事の傘下にあり、経済産業省が選出する「健康経営優良法人2020」に認定されました。
第4位は、クレジットカード大手の「クレディセゾン」が73.6%、第5位には調剤薬局大手の「日本調剤」が70.2%でランクインしています。
②業種は「小売業」が多い
図1を参照しますと、上位にランキングされた企業の業種で一番多いのは「小売業」です。
20社中4社がランクインしており、2位は生保2社と損保1社を合わせた3社の「保険」、「サービス」が3社となっています。
4位以下には「化粧品・トイレタリー」「レジャー」等が続き、女性ならではの柔らかさを活かせる接客業が多いです。
また、就職四季報女子版2022年「女性社員比率ベスト100」の調査で、ベスト100にランクインした業種の一覧表は下記のようになりますので、ぜひ、参考にしてください。
なお、女性社員の比率が高い業種のNO.1は「生保」で、100社中13社がランクインしています。
【女性社員比率が高い業種ベスト5】
順位 | 業種 | 会社数(100社のうち) |
1位 | 生保 | 13 |
2位 | 銀行 | 11 |
3位 | 信販・カード・リース | 10 |
4位 | デパート | 8 |
5位 | 小売業 | 7 |
図2 参考)就職四季報女子版2022年「女性社員比率ベスト100」P34-35を参考に筆者作成
2.女性既婚率が高い企業トップ10社の概要
女性既婚率が高い企業トップ10社の概要をまとめたものは、下図2の通りです。
【女性既婚率が高い企業トップ10社の概要】
順位 | 企業名 | 新人女性の入社3年後の離職 | 女性の平均勤続年数 | 平均年収 | 有給取得日数(年) |
1位 | ハニーズ *1 | NA | 6.6年 | 331万円(31歳) | 6.9日 |
2位 | ヴァンドームヤマダ*2 | 38.2% | 10.6年 | NA(33歳) | 12.0日 |
3位 | レリアン *3 | 50.0% | 12.6年 | 480万円(45歳) | 9.3日 |
4位 | クレディセゾン *4 | 18.6% | 11.6年 | 713万円(40歳) | 15.0日 |
5位 | 日本調剤 *5 | 21.1% | 6.0年 | 540万円(35歳) | 8.0日 |
6位 | ファーストリテイリング *6 | NA | NA | 900万円(36歳) | 12.8日 |
7位 | 日本マスタートラスト信託銀行 *7 | NA | NA | NA | NA |
8位 | 日本生命保険 *8 | NA | 13.9年 | NA(41歳) | 14.0日 |
9位 | ポーラ *9 | NA | 14.3年 | 709万円(41歳) | 11.5日 |
10位 | ファンケル *10 | NA | 12.1年 | 588万円(40歳) | 15.0日 |
図3 *2~*11「就職四季報 女子版2022年」を参考に執筆者作成
①年収トップはファーストリテイリングの900万円
年収トップは「ファーストリテイリング」の900万円(平均年齢36歳)です。
アパレル製造小売業で国内では圧倒的なトップで、世界でも3位であり、大企業ならではの強みを見せています。
2位は「クレディセゾン」の713万円(平均年齢40歳)。
流通系クレジットカードでは首位の座にあり、近年では大和証券グループと資本業務提携をするなど、多角的な経営を推進しています。
3位は「ポーラ」の709万円(平均年齢41歳)が入っており、従来は訪問販売を主軸としていましたが、近年ではエステサロン併設店の「ポーラ ザ ビューティー」を拡大しているところです。
②新人女性入社3年後の離職率は低いとはいえない
図3の「女性既婚率が高い企業トップ10社の概要」を参照しますと、残念ながら、新人女性入社3年後の離職率は、決して低いとはいえません。
回答を非公開とする企業も多く見られ、情報公開している企業も、多いところではレリアンの50%など、高めの離職率の企業も存在しています。
また、平均勤続年数や平均年収、有給取得日数なども、企業によりばらつきがあり、働いている会社によって、待遇面や労務環境にはかなり違いがあります。
3.女性は男性より平均年収が低く、管理職の割合も少ないのが現状
男女雇用機会均等法が施行されたとはいえ、現実には、男性と女性が全く同等の立場で働くことは、まだまだ難しいと考えるべきです。
ここでは、女性が置かれている労務環境について、問題別に解説をしていきます。
①女性の平均賃金は全年齢層で男性より低い
政府としては、男女共同参画社会の理念を掲げ、
「男女が社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会を確保する」
ということを推奨しています。
しかし、実際のところ、女性の賃金は、全年齢層で男性より低いというデータになっており(図4)全年齢層の平均では、男性が33万8,000円なのに対し、女性は25万1,000円と、実に8万7千円もの差があるのです。
29歳までは、男女の差はさほど大きくありませんでしたが、30歳を超えたあたりから、みるみる男女間の開きが拡大していきます。
ピークは55~59歳層で、その差は14万9,800円です。
平均勤続年数は、女性の方が男性より4年少なく、平均年数も2歳少ないのですが、賃金面で大きな格差があるといえるでしょう。

図4 引用)厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況」性別にみた賃金(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/dl/02.pdf)
②女性管理職の割合は、いまだに水準が低い
女性管理職の割合も、男性管理職と比較すると水準が低いといえます。
管理職は男性と同じく、女性も右肩上がりの上昇傾向となっていますが、女性管理職の割合は、2018年においても民間企業(従業員100人以上)の部長級で6.6%、課長級でも11.2%と、高い水準とはなっていません。
また、総務省が2018年に実施した「労働力調査(基本集計)」によると、日本の女性管理職割合は14.9%の割合となりました。
欧米諸国では30%以上の割合で、女性管理職がいるのと比較すると、日本の場合は極めて低いと言わざるを得ません。
男女平等で働ける社会を実現するためには、せめて欧米諸国並みに、女性管理職を増やすことも、課題の一つといえるでしょう。

図5 引用)参議院「働く女性の現状と課題 」P26(https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h31pdf/201918102.pdf)
③女性は非正規雇用の割合が多い
日本の女性(15~64歳)の就業率は2018年には69.6%となり、女性労働力率の「M字カーブ」の底は、以前に比べては浅くなっています。(図6)
ただし、図6をよく見てみると、女性は男性と比べて正規雇用より非正規雇用が多く、1988年以降では、男性2,000万人以上に対し、女性は1,000万人程度で、男性の半分程度しか正規雇用者がいないのです。
正規雇用の割合も、男性は正規雇用者が雇用者の大部分を占めていますが、女性では2003年以降になると、雇用者の50%にも至りません。
女性の就業者が急激に拡大した背景には、非正規雇用者が増加したという要因がありますが、女性の正規雇用者も、2013~2018年の期間において、989万人から1,098万人と微増傾向となっています。*11
どのような働き方を選ぶかのかは、個人が決めるものであり自由です。
ただ、女性の働き方としては、非正規雇用などのパートやアルバイトが大部分を占めており、非正規雇用者ばかりが増加していくことは、女性が活躍できる社会という観点から見れば、実現するには難しい状況ともいえるでしょう。

図6 引用)参議院「働く女性の現状と課題 」P28(https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h31pdf/201918102.pdf)
4.まとめ
今回は、「女性社員の比率が高い企業」について詳しく解説をしていきました。
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が謳われ、女性が活躍できる社会を推進していくことは、これから少子高齢化を迎える日本の社会には、必要な取り組みであるといえます。
女性社員がたくさん働いている企業は、女性ならではの良さを活かして、活躍してくれることを重視している企業です。
これからは、企業や自治体、家族のサポート等も含めて女性が働きやすい環境整備をしていく必要があるでしょう。
*3「レリアン」P643 *4「クレディセゾン」P288 *5「日本調剤」P638 *6「ファーストリテイリング」P642 *7「日本マスタートラスト信託銀行」P227
*8「日本生命保険」P219 *9「ポーラ」P462 *10「ファンケル」P463
*11 参考)参議院「働く女性の現状と課題」P27
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h31pdf/201918102.pdf
【参考資料】
就職四季報 女子版2022年「女性社員比率ベスト100」P34-35
就職四季報 女子版2022年「ハニーズ」P643