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就職・転職するなら「インテグリティ」を重視する会社を!代表的な企業10社を選抜して解説

就職・転職するなら「インテグリティ」を重視する会社を!代表的な企業10社を選抜して解説

インテグリティを重視することは、欧米の企業では既に浸透が深まっているビジネスの考え方ですが、近年では日本においても、この考え方を重視する大企業が増え始めています。

 

理由としては、インテグリティを実践している企業は社会的な評価が高く、信頼度の高い企業としてみなされるからです。

 

今回はインテグリティの定義や、インテグリティを会社の重要方針として定めている社会的貢献度の高い優良企業について、解説をしていきましょう。

 

1.インテグリティとは

 

最初に、インテグリティが持つ意味合いと混同されがちなコンプライアンスとの違いについて、簡単に解説をしていきます。

 

①インテグリティとは誠実、真摯、高潔などの概念

ビジネスにおけるインテグリティ(integrity)とは、誠実、真摯、高潔などの概念を意味するもので、組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観とも言われています。

 

世界的に有名な経営学者であるピーター・ドラッカーも、著書「現代の経営」で、

「経営管理者が学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない資質がある。(中略)それは、才能ではなく真摯さである」

と定義しています。

そして、

「真摯さに欠けるものは、いかに知識や才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる」

と語っています。

 

つまり、どんなに経営手腕に優れていても、信頼に値しない人間が行うビジネスは、いずれ会社そのものの価値を著しく損なってしまう可能性が高いという事なのです。

 

 

②コンプライアンスとの違い

コンプライアンスとは、一般的に「法令遵守」という意味で用いられることが多いビジネスワードです。

 

コンプライアンスは、組織や社会が求める他律的な姿勢で「悪いことはしない」というものであり、インテグリティは自らが打ち出す自律的な姿勢として「良いことをしていく」というもの。

 

インテグリティの方が、積極的に良い方向を目指そうとする意思があります。

 

従来まで「法令遵守」は言葉の通り、「法令を守ればよい」と捉えられていました。

しかし近年におけるコンプライアンスは、単に「法律を破らない」ということだけではなく、社会のルールに従って企業活動を行っていくという意味合いが強くなっています。

 

2.インテグリティの実践に積極的に取り組んでいる企業

 

日経BPは2020年10月8日に「第1回ESGブランド調査」の結果を発表しました。

 

この調査は、日経ESG経営フォーラムが2000年から毎年、継続してきた「環境ブランド調査」をリニューアルしたものです。

調査対象範囲を「環境(E)」だけでなく、「社会(S)」「ガバナンス(G)」に広げ、さらに良い会社のイメージとして「インテグリティ(誠実さ)」の項目を追加しました。

 

インテグリティ部門でランキングトップ10に輝いた企業についてまとめた表が下図1の表になります。

 

【インテグリティ部門】

順位 ブランド名 インテグリティへの取り組み内容
1位 トヨタ自動車 ・基本理念に「 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす」と策定
・国内外・国際的な法令並びにそれらの精神を遵守し、誠意を尽くし、奢らず謙虚に行動する*1
2位 サントリー ・サステナビリティで「いまよりももっと誠実で、信頼される企業。そんなGoodな企業に向かって成長し続けること」と宣言。
・「人と自然と響きあう」社会を目指す*2
3位 Apple ・最高水準の社会的責任と環境に対する責任を果たし、倫理規定を遵守する活動に積極的に取り組む
・労働および人権、健康と安全、環境保護、倫理、管理の実践*3
4位 オリエンタルランド ・健全な事業活動とマネジメント、社会と地域の共生をし、開かれたコミュニケーションを目指す
・企業として誠実であり続けることで、社会からの信頼を築いていく*4
5位 Google(グーグル) ・電源を再生可能エネルギー100%、ゼロエミッションを目標に取り入れている。*5
6位 キリン ・日経「SDGs経営」調査2019における「SDGs経営」総合ランキングにおいて、最高位である「★★★★★」(偏差値70以上)にランクイン
・「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」という社会課題に取り組んでいる*6
7位 花王 ・世界中の生活者の誰もがこころ豊かで持続可能な生活(Kirei Lifestyle)を実現できる社会をめざして、社会貢献活動を行う
・一人ひとりの社員が良き市民として、社会的活動に参加できるような風土をつくる*7
8位 パナソニック ・事業活動を通じて、世界中の人々のくらしの向上と、社会の発展に貢献する」という経営理念に基づき、事業活動を実施
・会社情報を適切に開示し企業経営の透明性を確保*8
9位 スターバックス コーヒー ジャパン ・パートナー(従業員)の自主的な地域社会活動を支援
・東日本大震災では「ハミングバード プログラム」を2012年から毎年実施しており、これまでに総額1億4千万円余りを寄付*9
10位 ソニー ・持続可能な社会を実現するために、自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して、環境負荷をゼロにすることを目指す
・社会課題解決に向けた技術の応用*10

図1 参考)日経BP「第1回ESGブランド調査【インテグリティ】」を参考に筆者作成(https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20201008/)

 

いずれの企業も、自社の利益が向上することだけを目的にはしていません。

 

必ず、環境や社会へ貢献することも重要な目標としており、企業として誠実・高潔であり続けることで社会からの信頼を得ながら、更なる発展を目指しているのが特徴です。

 

下図2はオリエンタルランドのCSR(企業の社会的責任)方針ですが、インテグリティを重要視している企業はこのように、社会から信頼されることや地球環境への配慮をし、事業を通じて社会貢献していくことを非常に大切にしています。

 

オリエンタルランド「CSRの方針・推進体制」

図2 引用)オリエンタルランド「CSRの方針・推進体制」(http://www.olc.co.jp/ja/csr/stock.html)

 

 

3.インテグリティを持つ企業が高く評価される

 

ここでは、企業がインテグリティを重要視する理由について紐解いていきましょう。

 

①大企業ほどインテグリティを重視

近年では、一流と呼ばれる大企業ほどインテグリティを重視する傾向が高まっています。

 

理由としては、社会的に貢献するという崇高な目標がもちろんあります。

その上で、企業規模が大きいほど、問題が発生した際に社会に与える影響も甚大なものとなるため、コンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)が重視されるようになったと考えられるでしょう。

 

例を挙げますと、日本を代表する商社である三井物産のグループ行動指針は「With Integrity」です。

 

2019年の三井物産のサステナビリティレポートには、インテグリティとコンプライアンスの考え方として、

「信用こそがビジネスの基本であり、信用を守る必要条件がコンプライアンスである」

という考え方を示しています。

 

このように真に社会から信頼される企業として認められるために、社員一人ひとりにもインテグリティを持って行動することを求めているのです。*11

 

②世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏も推奨

インテグリティは、世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏もその重要性を提唱しています。

 

スティーブ・シーボルト著「一流の人に学ぶ自分の磨き方」によると、

「人を雇うときは三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす」

と述べ、インテグリティに欠けているビジネスの危険性を示唆しているのです。

 

また、

「知性や活力だけでも短期的な利益や利潤を得ることはできるかもしれません。しかし、不誠実さは、いずれ誰かの反感を買い、最悪の結果をもたらしかねません。」

とも発言しています。*12

 

4.インテグリティの参考になる書籍

 

インテグリティについて理解を深めるために、インテグリティについて解説した書籍を読んでみるのもおすすめです。

 

インテグリティについて書かれた書籍は数多く出版されていますが、代表的な本として、下記の2冊をまず手にとってみて下さい。

 

①ピーター・F・ドラッカー「現代の経営」

「現代の経営」は、経済思想家として非常に高名なドラッガーが執筆した書籍で、インテグリティについて触れています。

 

この本では、インテグリティは「真摯さ」であると訳されていますが、なぜ企業経営には真摯さが重要なのか、真摯さが欠けている人の具体的な例などが解説されている本です。

 

インテグリティの定義を学ぶ際の基本書とも言われています。

 

②高 巖(たか いわお)「誠実さ(インテグリティ)を貫く経営」

麗澤大学経済学研究科教授・企業倫理研究センター長である著者が、経営の誠実さ(インテグリティ)について執筆した書籍です。

 

企業不祥事問題に取り組む「行動する学者」として、問題の深層と、企業が取り組むべき真の課題を論じています。

 

5.インテグリティのまとめ

今回は、企業が健全な経営をしていくために不可欠とされている「インテグリティ」について、詳しく解説をしていきました。

 

近年では一流企業になるほど社会的な責任や貢献度が問われるようになり、どの企業も環境・社会・経済の3つの観点から世の中を持続可能にしていくという考え方(サステナビリティ)を重要視しています。

 

それには経営陣だけでなく、従業員一人ひとりが誠実さや真摯さを持続させなければなりません。

 

これからの企業は利益を追求する活動だけでなく、「人、社会、地球が健全である」ことを視野に入れた事業活動が前提となっていくことでしょう。

 

参考文献/参考サイト
*1 参考)トヨタ自動車「トヨタ行動指針」P2~3
https://global.toyota/pages/global_toyota/company/vision-and-philosophy/code_of_conduct_001_jp.pdf
*2 参考)サントリー「2019 サントリーグループ サステナビリティサイト」P4・6
https://www.suntory.co.jp/company/csr/data/report/2019/pdf/suntory_csr_2019_all.pdf
*3 参考)Apple「サプライヤー行動規範」P1
https://www.apple.com/jp/supplier-responsibility/pdf/Apple-Supplier-Code-of-Conduct-January.pdf
*4 参考)オリエンタルランド「CSRの方針・推進体制」
http://www.olc.co.jp/ja/csr/stock.html
*5 参考)未来への変革に向けて「サステナビリティ、イノベーション投資」P2
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0427/shiryo_04-1.pdf
*6 参考)キリン「日経「SDGs経営」調査2019「SDGs経営」総合ランキングにて、最高位である「★★★★★」(偏差値70以上)にランクイン」
https://www.kirinholdings.co.jp/news/2019/1205_04.html#_ga=2.146312439.2109312890.1603084294-695003866.1603084294
*7 参考)花王「花王サステナビリティ データブック 2020 社会貢献活動」P70
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sus-db-2020-12.pdf
*8 参考)パナソニック「コーポレートガバナンス」
https://www.panasonic.com/jp/corporate/management/governance.html
*9 参考)スターバックスコーヒー「コミュニティとのつながり」https://www.starbucks.co.jp/socialimpact/glocallyresponsible/community/
*10 参考)ソニー「サステナビリティレポート2020 サステナビリティの考え方 環境」P9
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/library/reports/SustainabilityReport2020_J.pdf#page=5
*11 参考)三井物産「サステナビリティレポート2019 インテグリティとコンプライアンス」P105
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2019/pdf/ja_sustainability_2019-35.pdf
*12 参考)「データ・インテグリティの重要性とビッグデータ時代のグローバル品質保証の課題」P1~2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pda/19/1/19_1/_pdf/-char/ja

 

執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。
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