平均年収2000万円越え、年収ランキングでは上位ランクイン常連企業の「キーエンス(Keyence)」。
業績・株価ともに、ここ10年間は右肩上りで、今最も勢いのある高年収企業と言っても過言ではありません。
ですがメディアでの露出が少ないため、
「どんなことしている企業なのかよく分からない」
「就活対策の方法が分からない」
そう思っている方も少なくないかと思います。
キーエンスという”謎の超高年収企業”。その年収の高さの理由、求められる人材像とは一体どういったものなのでしょうか。
経営理念や社風から、キーエンスについて読み解いていきましょう。
本稿では面接の傾向も紹介していきますので、キーエンスに入社志望の方は、ぜひ参考にしてください。
1.キーエンスの事業内容・平均年収が高い理由
キーエンスは1974年に創立、ファクトリー・オートメーション用センサーや、測定器、画像処理機などを対企業向けに製造・販売している会社です。
製造企業は、「モノ」が製造される工場において、できる限り効率的に安定した商品を製造したいと考えているところがほとんどです。
分かりやすく言うと、キーエンスはそのような製造企業に対し、工場での「モノづくり」の効率化・安定化を計るためのセンサーや測定器などを自社で開発し、販売を行っているのです。
取引先企業は25万社以上。
自動車や半導体、通信、科学、食品、電子など分野を問わず、グローバルに活躍している企業です。*1
2019年度の営業利益率は約55%という、圧倒的な数値を叩き出しています。*2
営業利益(図1)は、会社が本業でどれだけ儲けているのかという指標で、営業利益率とは売上高に対して営業利益の占める割合です。
日本の巨大企業であるソフトバンクグループの2019年度の営業利益率は約34%、トヨタ自動車が約8.6%、東日本旅客鉄道が約16.3%ということを考えると、いかにキーエンスの55%という数値が驚異的なものかが窺えます。(図2)
キーエンスはなぜ、これほどまでに利益を出すことができるのか。
それは徹底的な他社との差別化と業務の効率化に理由があると言えるでしょう。
キーエンスの企業理念に「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。」というものがあります。
キーエンスは対企業向けの会社であるため、CMや広告等をほとんど行っておりません。
無駄な人件費を抑えるために人材は最小限、営業方法はマニュアル化されており、社員の労働時間も徹底的に管理をされています。
無駄と思われる部分は全てそぎ落とし「スリム化」することで、経費を最小限にしているのです。*3
付加価値という点においては、全ての取引先企業に担当者がついており、販売代理店を介さずに自社社員が全て担当をしているという点があげられます。(図3)
販売店を介さないため、コスト削減というメリットがあることは論を待ちません。
その上で、直に顧客の意見を聞き、悩みや不便さを解消したり、意見を直ぐに商品開発に活かしたりと、それぞれの顧客に合った「付加価値」を提供できるという強みがあるのです。*4
この「最小の資本」と「最大の付加価値」がキーエンスの経営力の基盤となっており、それに伴い2000万円という高年収が実現されていると言えるでしょう。
2.キーエンスの職種
職種は「ビジネス職」「エンジニア職」「S職」の3つがあります。*5
①キーエンスの「ビジネス職」
いわゆる営業職が、このビジネス職にあたります。
キーエンスでは、入社半年後には自分の担当を持つことになり、マーケティングの戦略立案からお客様へのコンサルティングなど、一通りの流れを任されます。
キーエンスのビジネス職は単なる商品を売る営業だけでなく、顧客企業の潜在的な課題を見つけ出し、それを解決するまでが担当者の責任です。
顧客の意見を直接商品開発に活かせるよう、企画開発部門までフィードバックを行う業務も行います。
②キーエンスの「エンジニア職」
キーエンスのエンジニア職は、主に「商品開発」「生産技術」「コンサルティングエンジニア」の3つの役割担っています。
国内外の顧客に直接ヒアリングを行い、そこで得た情報などを自社の新たな商品作りに反映します。
また商品の量産化のために工場やメーカーと関わりながらライン開発を行ったりなど、任される業務はただ「モノ」を作ることだけではありません。
そのためキーエンスのエンジニア職は、技術力はもちろんのこと、コミュニケーション能力も同時に求められる職種と言えるでしょう。
③キーエンスの「S職」
いわゆる事務職がこの「S職」にあたります。
販売促進や営業事務、人事、総務、経理など幅広い役割を行う職種です。
S職のみの平均年収は公式に公開されておりませんが、キーエンスは「社員全体の平均年収が2000万円以上」ということを加味すると、他企業の事務職よりも年収が高いと思われます。
3.キーエンスの社風~求められる人材を理解する~
キーエンスには全ての社員が共有している「考え方」(いわゆる経営理念のようなもの)があります。
その中にも「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。」という「考え方」があるように、キーエンスは無駄を嫌い、効率を重視する社風があります。
そのため、人材は本当に必要な人数しか採用せずに少人数精鋭の体制を取っています。*6
営業方法も効率化のためにマニュアル化されており、社員はどこで何をしていたのかその日の行動が外報に記録されます。
売上なども数値化されるので「いかに効率的・論理的・合理的に仕事をこなせるか」がとても重要。*3
「無駄を徹底的に省き、自身のパフォーマンスを最大限に発揮できる人材」
が求められる人材像のうちの1つと言えます。
他にも「目的意識を持って主体的に行動する。」という「考え方」もあります。*6
キーエンスで仕事を行うときは、なぜその仕事をしているのか、結果としてその仕事はどんな価値を生み出すのかを、常に考えながら成果を最大化しなければなりません。
入社から半年で自分の担当企業を持つということからも、
「人から言われたことだけをするのではなく、自ら考え、良い成果を出せる人」
が求められる傾向にあることが分かります。
4.キーエンスの就活対策
毎年キーエンスでは、独特な面接方法が実施されるため、あらかじめどのような面接が行われるかを知っておき、対策する必要があります。
①20秒PR
キーエンスでは企業説明会時に20秒間の自己PR時間が与えられます。*3
これは単なる自己紹介という目的ではありません。
20秒PRで応募学生の印象などをチェックしています。
キーエンスの企業説明会に参加する際には、20秒間で言い切れる自己PRを準備して参加しましょう。
②説得面接
次に行われる面接は「説得面接」と言われるもの。*3
「〇〇が嫌いな人に、〇〇を勧めてください。」「〇〇を持っていない人に〇〇を勧めてください」というような、説得のシュミレーションを求められます。
例えば、「ガラケー派の人に、スマホを勧める」や、「運動が嫌いな人に、運動をしてもらえるように説得する」といった内容です。
説得をする際に相手の状況を鑑みた内容で説得できているか、分かりやすくストーリー立てをしながら説得ができているのかを見られています。
日頃から「〇〇な人に、〇〇を勧める」とお題を作り、上手く説得できるようトレーニングをしておくと良いでしょう。
他にも論理的な説明ができるかどうか「〇〇の条件を3つ挙げよ」というお題が出されたり、ストレス耐性を測るために面接の様子をカメラ撮影されたりなど、キーエンス独特の面接が行われます。
面接の内容からも、キーエンスは志望度の高さよりも、学生の「ポテンシャル」を非常に重視している企業ということが窺えます。
面接において「論理的思考力」「説得力」「時間管理能力」が発揮できるかがポイントです。
https://www.keyence.co.jp/company/business/
*2 キーエンス「業績ハイライト」
https://www.keyence.co.jp/company/outline/finance-highlight.jsp
*3 東洋経済「キーエンス2000万円営業マンを育てる極意」
https://toyokeizai.net/articles/-/309419?page=2
*4 キーエンス「付加価値を生み出すビジネスモデル」
https://www.keyence.co.jp/company/sustainability/business-model.jsp
*5 キーエンス 採用トップページ「募集職種」
https://www.keyence-jobs.jp/
*6 キーエンス「キーエンスが大切にしている考え方について」
https://www.keyence-jobs.jp/philosophy/
【その他参考サイト】
講談社:平均年収2000万円以上!「キーエンス」が高い給料を払えるヒミツ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66079
キーエンス(公式YouTube):企業紹介動画
https://youtu.be/abdlLvouiBg
東洋経済:年収2100万円!「キーエンス社員は激務なのか」現役社員やOBが明かした「働き方の実態」
https://toyokeizai.net/articles/-/289594

プロフィール:大学卒業後、日系大手航空会社にて客室乗務員として勤務。学生時代の就職活動にて楽天・ソフトバンク・みずほ銀行等の大手企業から内定をいただく。その経験を活かし、現在は就活塾にて特別面接対策講師や、就活関連記事のライター業を行っている。