1926年にレーヨン製造会社として創業した東レは、化学繊維の国内最大手、炭素繊維では世界の首位を走る企業です。
衣料品やフィルムだけでなく、炭素繊維では市場開拓者として航空機にも使用される先端技術を持ち、就職先としての人気も高くなっています。
素材産業のリーディング・カンパニーである東レの採用情報、就活にあたっての対策などをみていきましょう。
1.東レの募集職種と倍率、初任給など
東レの募集職種は大きく分けて2つです。
技術系:研究開発、技術開発・商品開発、生産技術、エンジニアリング、分析評価、臨床開発、薬事、安全性情報、医薬品・医療材学術企画、情報システム
(分析評価は東レリサーチセンターへの出向)
事務系:営業、管理部門(総務、法務、人事・勤労、経理・財務、企画管理、購買・物流など)
国内外に多くの拠点を持っていますので、各地に赴任・転勤できることが条件です。
東レは非常に人気の高い企業です。倍率は以下のようになっています。
- 事務系:ES通過率 約38% (約4,800→約1,800)
- 技術系:ES通過率 約48% (約2,100→約1,000)
- 内定の倍率(応募/内定):事務系約126倍、技術系 約22倍
<引用「就職四季報総合版 2021年版」東洋経済 p464>
特に事務系を志望する人には狭き門になっています。
初任給は、
学部卒:232,600円
修士了:260,220円
博士了:285,980円
となっています*1。
なお、選考フローは、
会社説明会・社員懇談会(必須ではない) → ES提出 → テストセンター・適性検査 →面接 → 内々定
の順です。
2.東レの幅広い事業展開
東レといえば、ユニクロと共同で開発した「ヒートテック」「エアリズム」に代表されるように衣料品用繊維のイメージが強いかもしれません。
しかし樹脂やフィルムといった素材、水処理などのろ過膜、製剤、炭素繊維といった幅広い分野も手掛けています。
最終製品は実に多岐に渡ります。
東レの主な事業は以下のようなもので、商品として多くのブランドを抱えています。
①繊維事業
ナイロン、ポリエステル、アクリルなど衣料品だけでなく、エアバッグやシートベルト、火力発電用のフィルターの素材も製造しています。
②機能化製品事業
樹脂、フィルム、ケミカル製品、電子情報材料の4事業分野があります。ポリエステルフィルムや特殊有機溶剤の世界ナンバーワンメーカーでもあるほか、化石由来でない樹脂や次世代電池の部材製造といった環境分野も手掛けています。
③炭素繊維複合材
世界首位を独走する分野です。航空機、自動車の構造材料や部品、建築補強など幅広く使用されています。
炭素繊維複合材は軽量で頑丈という性質があるため、ボーイング社の旅客機「B-787」では主翼から動体、尾翼など機体構造重量の50%に炭素繊維が使用されたほか*2、開発中の777Xにおいても主翼への採用が決定しているなど大飛躍しています。
④環境・エンジニアリング
家庭用浄水器に始まり、海水を淡水化する水処理膜などの技術で世界の水不足解消に向けた事業も展開しています。
⑤ライフサイエンス
医薬、人工腎臓、コンタクトレンズ、DNAチップなど医療分野の事業です。
いずれの分野でも最先端を行く企業として、魅力は大きいことでしょう。
3.東レが求める人物像
東レの人材育成方針はこのようなものです。
- 公平さと高い倫理観と責任感を持って行動できる社会人
- 高度な専門知識・技術・独創性を持って課題を解決できるプロ人材
先見性・リーダーシップ・バランス感覚を備えたリーダー
「人材育成について」東レ
入社後の研修も充実しています。
事務系新入社員は配属決定後、その部署に関係する工場に7か月配属され、ものづくりの知識を得ることができます。
また、MBA取得を目指す海外一般留学、海外若手研修、海外特命留学といった制度もあり、最先端の技術の習得や海外の機関との共同研究にも力を入れています。
その他若手層の研修として、
・英語力強化のフォローも含むグローバル研修
・IT、異業種交流など一般研修
・自己啓発支援としての通信講座(全253コース)
などが準備されています*3。
なお、倍率の高い企業です。会社説明会やイベントに参加した際は、ひとつのチャンスと捉えて積極性を見せ、アピールしておきましょう。
もちろん説明会やインターンシップが直接の採用に繋がるわけではありませんが、熱意は少なからず印象に残るものです。
世界で非常に大規模なビジネスを展開しています。東レの技術を使ってどんなことをしてみたいのか、どんな社会問題を解決したいのか、といったことを考えておくと良いでしょう。
「素材には、社会を変える力がある。」がキャッチフレーズです。
また、「素材」という分野にフォーカスしてみると、普段の生活の中で多くの東レ製品に囲まれていることがよくわかりますので、身近なところからも東レの事業を探ってみるのが良いでしょう。
4.参考にしたい書籍やサイトとまとめ
まず、東レを身近に感じるために、日常のどのような場面に東レ製品があるかを知ることができるサイトがあります。
東レの主な技術開発についてはこちらにまとめられています。
「研究・技術開発」
また、事業や研究開発の全体が見える「R&Dパンフレット」「統合報告書」「会社案内」は、わかりやすく資料ダウンロードページにまとめられていますので、ひととおり目を通す必要があります。
「資料ダウンロード」
書籍としては、社員のインタビューや歴史、イノベーションについてまとめられている「東レ」(出版文化新書 リーディング・カンパニーシリーズ)があります。
発行は2008年ですが、東レのものづくりの理念や社風、未来像を知ることのできる一冊です。
また素材産業への理解を深める一冊として「素材は国家なり-円高でも日本経済の圧倒的優位は揺るがない」(東洋経済新報)がありますので、興味のある人は一読をおすすめします。
素材を扱っている企業となると、文系の学生には印象が薄いかもしれませんが、素材は何にでも化けることのできる存在で、事業の可能性は無限大ともいえます。モノが進化するためには、素材が進化しなければならない、という自負を持ち、堅実に研究開発を進める企業です。
まずは事業展開に対する理解、東レが「何を目指しているのか」を理解するところから始めてみましょう。