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塾講師の正社員になるには?仕事はきつい?年収や仕事内容を会社別に紹介

塾講師の正社員になるには?仕事はきつい?年収や仕事内容を会社別に紹介

 

子どもたちの夢や目標に寄り添い、一緒に成長の喜びを分かち合える教育業は、やりがいのある素晴らしい職業です。

 

学習塾や予備校では、学力アップや志望校への合格など明確な目標を掲げ、その達成に向けて学習面・精神面から彼らをサポートします。

勉強が得意、子どもが好き、人に教える仕事がしたいという方にとって、塾や予備校はとても魅力的な就職先といえるでしょう。

 

この記事では、学習塾や予備校で働きたい方に向けて、平均年収や仕事内容、求められる人材像等のくわしい情報をご紹介します。

 

 

 

 

1.学習塾・予備校の年収はどのくらい?

 

 

教育業は、「生徒たちの夢や目標を叶えてあげたい」という使命感から、ときに奉仕のような心境で仕事に向き合う人も少なくありません。

とはいえ、仕事は自分の生活を支える基盤ですから、収入面は重要なチェックポイントです。まずは、学習塾・予備校の年収からみていきましょう。

 

 

①平均年収は564万円

 

四季報の情報によると、国内上場企業を対象にした調査で、教育・学習塾の40歳平均年収は564万円となっています。*1

 

企業 平均年収 平均年齢 大卒の初任給
(株)ナガセ 755万円 37歳 24万3,400円
(株)ステップ 583万円 37歳 24万5,000円(教師職)
(株)栄光 513万円 39歳 22万5,500円
(株)東京個別指導学院 502万円 36歳 22万6,300円
(株)秀英予備校 443万円 35歳 22万9,100円

参考)書籍「就職四季報 総合版 2022年版」P704~707

 

 

平均年齢は30代後半という企業が多く、平均年収は400~700万円台、大卒の初任給は22~24万円台です。

その中で、「四谷大塚」「東進ハイスクール」「早稲田塾」などを展開する「ナガセ」は、平均年収755万円、大卒初任給24万3,400円と、業界内でも頭一つ抜けています。

 

神奈川県で高校受験に強い集団指導塾の「ステップ」も、平均年収583万円、大卒初任給24万5,000円と、比較的高水準の収入となっています。

 

 

 

 

2.学習塾・予備校の仕事内容は?

 

 

学習塾や予備校は大学生のアルバイト先としても人気ですが、その場合は講師としての採用がメインです。正社員として就職した場合、どのような仕事を行うことになるのでしょうか。

 

 

①講師

 

講師には学生アルバイトを多く起用するところもありますが、たとえば「ステップ」のように、講師の96%が正社員で、残りの4%も主に正社員講師出身の専任講師という、講師の質に重きを置いている企業もあります。*2

このような企業に就職すると、講師として働くことになる可能性は高いかもしれません。

 

講師になると、配属された教室で実際に授業を受け持つほか、個別の進路指導や保護者面談、生徒からの質問や悩み相談などの対応も行います。

 

 

②広報・マーケティング

 

学習塾や予備校でも、一般企業のように広報やマーケティングの仕事があります。

新規生徒の募集、イベントやセミナーの運営、塾や予備校が発行する情報誌の企画制作などを行います。

多くの人に企業を知ってもらい、顧客獲得に貢献します。

 

 

③一般事務

 

事務職は、経理などのデスクワークのほか、各教室での受付事務も行います。

事務作業のみならず、電話対応、来客対応、業者対応なども行うため、生徒や保護者と接する機会も少なくありません。

また、配布物の準備や、生徒の名簿管理、教室内の掲示物の張り替え、チョークやマーカー等の備品管理といったこまごまとした仕事も多く、機転や手際の良さが求められます。

 

このほか、通信教育の添削、教材制作、出版など、塾や予備校での仕事内容は多岐に渡ります。

 

 

 

 

3.今後どうなる?教育業界のニーズと将来性

 

 

世間では、少子化の影響により今後の教育業界の動向を不安視する声もあります。

ここからは、教育業界の現状と将来性について考えてみたいと思います。

 

 

①子ども一人あたりの教育費はアップ

 

確かに、少子化の影響を大きく受ける教育業界は、今後競争が激化していくことが予想されます。

しかし、子どもの数が少ないことで、子ども1人当たりにかける教育費はむしろ増加傾向にあります。

 

下記のグラフは、三井住友銀行が2019年11月に公開した資料です。

これによると、家計支出総額に占める子ども1人当たりの教育費は、ここ数年大きく増加しています。

 

 

家計支出の推移_2人以上の世帯の年間支出

引用)株式会社 三井住友銀行「学習塾業界を取り巻く事業環境と今後の方向性」P3(https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport089.pdf)

 

 

 

この動きは少子化だけでなく、2013年4月に始まった「教育資金一括贈与の非課税制度」も影響していると思われます。

これは、30歳未満の人が親や祖父母から教育資金の援助を受ける場合、一括で受け取る、上限1500万円まで、という条件を満たせば贈与税が非課税になる制度です。*3

 

こうした波もあり、子どもに対して

「志望校のランクを上げたい」

「より充実した教育を受けさせたい」

と思う親が増えたことで、教育費の比重が増したと考えられるでしょう。

 

教育費の増加にともない、学習塾・予備校の市場規模にもゆるやかな伸びが見られます。

 

 

学習塾・予備校の市場規模推移

引用)株式会社 三井住友銀行「学習塾業界を取り巻く事業環境と今後の方向性」P3(https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport089.pdf)

 

 

 

②売上や従業員数も増加傾向に

 

経済産業省の「特定サービス産業動態統計」によると、学習塾は近年、売上高・従業員数ともに増え続けていることがわかります。

 

 

学習塾の売上高と従業員数の推移

参考)経済産業省「特定サービス産業動態統計月報 2020年10月分」P45より筆者作成(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/result/pdf/hv202010kj.pdf)

 

 

 

 

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2月以降に売上高が著しく低下したものの、10月になって8か月ぶりに前年同月比プラス2.2%となりました。*4

 

 

学習塾の売上高と前年同月比の推移

引用)経済産業省「学習塾の動向」(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/sanko/pdf/hv59_02j.pdf)

 

 

 

しかし、コロナショックから回復しつつあるとはいえ、今後の感染状況によっては再び売上が下降する可能性も否定できません。

ただ、長期的に見ればこれは一過性の現象であり、社会の動きが元に戻れば再び塾業界にも活気が戻ってくることが予想されます。

 

大学受験においては、共通テストの導入、「記述式問題」や「英語民間試験の活用」などの選抜方法に関する二転三転、さらにコロナウイルスの影響による受験の日程変更や入試方式の変更などもあり、受験生たちは現在非常に不安定な状況に置かれています。

生徒やその親にとっては、例年以上に学習塾や予備校のフォローアップが必要な時期だといえるでしょう。

それらの対応をいかに充実させ顧客満足度を上げていくかが、今後の業績アップにつながる一つのカギといえそうです。

 

 

③学習塾・予備校の今後の動向

 

学習塾の動向としては、徐々に「集団指導」から「個別指導」への動きがみられます。

 

 

集団指導方式、個別指導方式の市場シェア推移_売上高

引用)株式会社 三井住友銀行「学習塾業界を取り巻く事業環境と今後の方向性」P5(https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport089.pdf)

 

 

一方通行にもなりがちな集団指導よりも、1人1人にマッチしたきめ細やかな指導や、生徒が自分のペースで学べる学習環境が、より重視されるようになってきたといえるでしょう。

また、コロナショックによりニーズの伸びているオンライン授業や映像授業、AIの学力分析などの分野に対して、どれだけ質の高いサービスを提供できるか、という点にも注目です。

 

2020年4~5月の緊急事態宣言の際には、これまで対面授業メインだった学習塾がオンライン授業を急遽取り入れた例もありました。

しかし、環境が十分に整っていない状況でスタートしたことから、通信トラブルがたびたび起こって授業が中断したり、講師、生徒ともに不慣れな環境で満足な授業ができなかったりと、問題も少なくありませんでした。

今後、本格的にオンライン授業を取り入れる塾では、設備面での充実をはかるとともに、それに向けた人材育成も不可欠となっていくでしょう。

 

 

 

4.教育業界で求められる人材とは?

 

 

学習塾や予備校では、採用に際してどのような人材を求めているのでしょうか。

参考までに、各企業の「求める人材像」をチェックしてみましょう。

 

(株)ナガセ 自ら求め、自ら考え、高い志を持ち、新たな価値の創造に挑戦する人
(株)ステップ 生徒にとって魅力的なキャラクター チャレンジ精神旺盛で夢中になれる人
(株)栄光 自律的学習者であること 他者の喜びを直接的に自らの喜びにできること
(株)東京個別指導学院 目の前の人のために、見返りを求めず一生懸命になれる人
(株)秀英予備校 教育に興味のある人、教えることにこだわりと情熱を感じられる人

参考)書籍「就職四季報 総合版 2022年版」P704~707

 

 

求める人材像には、企業それぞれのカラーはあるものの、教育にたずさわる者として「自ら高みを目指し努力できる人」。

そして「生徒に対し惜しみない情熱を注げる人」という点はどこも共通しているのではないでしょうか。

 

冒頭でも述べたように、学習塾や予備校では、生徒の「学力向上」や「志望校合格」という達成すべき明確な目標があります。

とくに受験のために塾に通っている生徒にとっては、まさに人生をかけた挑戦に他なりません。

そこに学力のサポートのみならず精神的にも寄り添い、本気で生徒たちの目標達成のために力を尽くせる人が、企業にとっても魅力的な人材といえるでしょう。

 

 

 

5.まとめ

 

 

学習塾・予備校への就職を志望しているのは、もともと教育に興味がある方が多いかと思います。

ただ、塾や予備校といっても仕事の内容はさまざまなので、まずは教育業界でどのような仕事をしたいのかを考えましょう。

 

そして、年収や安定性なども大事なポイントですが、会社の社風、教育制度、評価制度などもしっかりチェックし、「この会社で切磋琢磨して成長していきたい」と思えるような企業を選んで下さい。

 

 

執筆者
名前:渡辺有美
プロフィール:マネー・介護・福祉が専門のフリーライター。
独身時代は、都市銀行にて支店勤務ののち秘書室で役員秘書として従事。結婚退職後、介護福祉士の資格を取得し、福祉施設や訪問介護での勤務を経て、2016年よりライター活動を始める。Webメディアを中心に読者の方の役に立つ記事を多数執筆中。

 

参考資料/参考サイト
*1書籍「会社四季報 業界地図 2021年版」P12
*2参考)STEP「ステップってどんなところ?」
https://www.stepnet.co.jp/beginner/index.html
*3参考)文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/20201105-mxt_kouhou02-1332772_01.pdf
*4参考)経済産業省「学習塾の動向」
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/sanko/pdf/hv59_02j.pdf
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