キャリア形成 働くコラム

アラフォー世代の資格取得、学び直しからのリカレント教育を実現しよう

アラフォー世代の資格取得、学び直しからのリカレント教育を実現しよう

 

 

30代後半以降になると、ふと「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」と思われる方が大勢いらっしゃいます。

終身雇用の終わりが近づいている日本において、個としての経験・スキルを得るために昨今では経営大学院へ行かれる方も増えており、昔と違って「社会人も学ぶ」という事が当たり前かしてきています。

 

まさに1億総生涯学習時代です。

 

みなさんはいかがでしょうか?

今回は、アラフォー世代を中心として、これからの資格取得やリカレント教育(学業卒業後の教育)について紹介したいと思います。

 

1.リカレント教育とは?

 

社会人になってから、改めて学校に通った経験のある人は、どのくらいいるでしょうか。通学はしないまでも、「学び直したい」と思ったことは、多くの人にあるのではないでしょうか。

 

1は、「直近に申し込んだ学び事を、学んだ目的はなんですか?」の質問に対する回答です。最も多い「趣味目的(58%)」は、「教養・知識を深めるため」、「特技を作るため」、「ストレス発散・気分転換のため」などを指しており、次いで「複合(28%)」は、「仕事目的・趣味目的の両方」、そして「仕事目的(13%)」は、「現在の仕事のため」、「転職、起業のため」といった内容です。「複合」と回答した人たちは、「仕事と趣味」を同時に学びの目的としており、学ぶこと自体が楽しみとなる傾向にあります*1

 

図1:文部科学省/中央教育審議会 生涯学習分科会企画部会第二回配布資料

図1:文部科学省/中央教育審議会 生涯学習分科会企画部会第二回配布資料(社会人の〈学び〉について~学び直しの実施状況と現場から見た課題~)p16
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/011/siryou/__icsFiles/afieldfile/2016/07/28/1374769_2.pdf)

 

 

人生100年時代を見据え、長期的なスパンで学び直しを実践する活動が始動しています。そのコアとなる部分、「人生の再設計が可能となる社会」を実現するため、文部科学省を中心に「リカレント教育」の拡充が進められています。

 

リカレントは「循環、回帰」を意味します。「リカレント教育」は、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱した、「義務教育(基礎教育)を終えて社会人になってからも、時期や年齢に関係なく、就労に活かすための教育を受けることができ、生涯にわたって就労と教育を繰り返すことを目的とした教育の概念」です。

 

日本では、慣行的な長期雇用制度の影響もあり、ある程度長期間、就労を中止し学習に専念するといった方法は稀です。そのため、本来のリカレント教育をより幅広くとらえ、働きながら学ぶ場合やリフレッシュ教育なども、リカレント教育に含まれています。

 

2.学び直しの現状

 

近年、SNSの発達や技術革新の進展、社会のニーズに迅速に対応すべく、社内研修の一環で、「学び直し」の機会が増えています。労働者としては、自身の能力開発や、個々の専門知識を深めることでキャリアアップにつながります。企業としては、人材育成・キャリアパスの観点から、また、新規事業分野の開拓に寄与してもらうなど、個人の知識や能力が上がることによる企業への貢献に期待ができます。

 

実際にどのくらいの労働者が、どのような方法で学び直しを行ったのかを調査した結果が図2です。平成28年度能力開発基本調査の結果で、45.8%の労働者が学び直しを行ったと回答しています。

 

図2:文部科学省/中央教育審議会 人生100年時代構想会議

図2:文部科学省/中央教育審議会 人生100年時代構想会議(リカレント教育参考資料p8)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2018/03/30/1403109_10.pdf)

 

学び直しの実施方法としては、「ラジオ、テレビ、専門書、インターネット等による自学、自習(49.4%)」が最も多く、次いで「社内の自主的な勉強会、研究会への参加(29.1%)」となっており、入学(入試や入学費用の必然性、定期的な通学など)というハードルの高い学習方法ではなく、就労しながらの学び直しであることが分かります。

 

3.資格取得とキャリアプラン

 

少し見方を変え、学びの延長にある「資格取得」に着目してみましょう。社内でのキャリアアップにおいて、また、職務遂行上必要なため、資格を取得する場合があります。その結果、働き方や処遇について、どのような変化があったのかを示すグラフが図3です。興味深いことに、「特に変化はない」と回答した人が57.9%と、圧倒的に多くなっています。

 

図3:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査

図3:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/129.html)

 

同じく、資格取得による収入面での変化を示すグラフが図4です。こちらも「特に変化はない」という回答が70.5%という、意外な結果となりました。

 

図4:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査

図4:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/129.html)

 

前出の調査結果からすると、資格取得をすることにより、処遇や収入に与える影響はそこまで大きくないと言えますが、「キャリアプランと資格取得の関係」についてはどうでしょう。

 

「職業生活設計の見直し希望と実現状況」の調査で、資格取得により「中長期的なキャリアプランの見直しを希望したかどうか」という質問に対し、「特に見直したいと思ったことはない」という回答が63.4%と高い割合を占め、ここからも、資格取得とキャリアプランを直接的に関連付けている人は、必ずしも多くないことが分かります(図5

 

図5:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査

図5:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(第4章職業に関する資格所持の有効性の検討p30)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/documents/0129_02.pdf)

 

4.転職や起業をめざす場合の資格取得

 

社内でのキャリアパスや登用のためでなく、転職や起業を検討する上での資格取得が、どのような影響を及ぼすかを見てみましょう。図6は「退職して、あるいは求職中に資格取得した人の状況」を示す表です。

 

図6:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査

図6:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(第4章 職業に関する資格所持の有効性の検討p33)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/documents/0129_02.pdf)

 

「退職をして学習に専念し資格取得」、「求職活動中に資格取得」両者とも、40代の比率が最も高く、アラフォー世代の転職や起業を見据えた資格取得の背景が窺えます。また、「退職をして学習に専念し資格取得」の女性の割合が、男性を超えていることも特徴的と言えます。

 

次に、資格取得をした分野を見ると、退職をして学習に専念し資格取得をした人は「医療」および「経理・財務・法務・労務」の分野での比率が高く、求職活動中に資格取得をした人は「介護・福祉」および「製造・安全衛生・車両」の分野で多いことが分かります(図7)。

 

図7:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査

図7:独立行政法人労働政策研究・研修機構/職業資格の取得とキャリア形成に関する調査(第4章職業に関する資格所持の有効性の検討p34)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/documents/0129_02.pdf)

 

ここから読み取れるのは、仕事を辞めて資格取得をする場合、転職または起業の際に「その資格が必要」となる場合がほとんどのため、学習に専念する必要があったと推測できます。一方、求職活動中に資格取得した場合は、主に「求職活動に役立てるため」と考えられるので、資格取得の容易さや学習期間の短さなども考慮した、分野選択の傾向にあるということです。

 

5.学び方と働き方の新時代「リカレント教育」

 

前半でも述べましたが、人生100年時代を見据え、文部科学省を中心に「リカレント教育」拡充に向けた取り組みが推進されています。

 

改正教育基本法第3条においては、生涯学習の理念として、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。*2」と規定しています。

 

このように、国を上げて生涯学習に注力する理由は、以下の3つです。

 

一、社会・経済の変化に対応するため、絶えず新しい知識や技術の習得をすることで、個々の技術・経歴の向上が期待され、社会・経済の発展に通じる。

 

二、心の豊かさや生きがいのための学習基盤を整備することで、地域社会の活性化、高齢者の社会参加・青少年の健全育成など社会全体に有意義に働く。

 

三、学歴だけでなく様々な「学習の成果」が適切に評価される社会を築くことで、学歴社会の弊害の是正につながる。*3

 

これらが実現することで、キャリアの選択肢が増え、年齢によるリタイアも減少するでしょう。また、「学ぶことの面白さ、大切さを通じて社会や経済の発展に貢献すること」が期待されているため、単に学校教育だけを指すのではなく、スポーツや文化、ボランティア活動といった地域発展に貢献する活動も含めての「生涯学習」であるとされています。

 

生涯学習と広義的に同一視されるリカレント教育ですが、どちらかというと、「スキルアップやキャリアアップのための学習」という側面が強いといえます。欧米でのリカレント教育は、比較的長期間にわたってフルタイムの就学(大学や専門学校)をし、個々のスキルや知識の向上を図ります。その後、フルタイムの就労(企業等に就職)をし、この流れを交互に繰り返すことを指します。

 

日本の雇用環境は「長期雇用」が慣行的なため、欧米のような長期間のスパンでの学習と就労の繰り返しは、現実的には難しいでしょう。また、日本におけるリカレント教育のハードルとして、「時間の確保」と「費用の負担」が挙げられます。家族や就労先の理解と協力が必要なため、自分ひとりでの意思決定はできまん。しかし働きながらの学び直しや、多様なキャリア形成の実現は、今後の日本にとって重要な取り組みです。国が費用の一部を負担する、教育訓練給付制度*4を有効に活用すると良いでしょう。

 

学び直しにタイムリミットはありません。転職・起業世代のアラフォーの皆さん、各種支援制度等を有効活用し、キャリアアップ、スキルアップに必要な資格の取得、さらなる自己研鑽、そして人生100年時代を乗り切るための新たなキャリア開拓を目指してみませんか。

 

 

参照データ
*1参考:文部科学省/中央教育審議会 生涯学習分科会企画部会第二回配布資料(社会人の〈学び〉について~学び直しの実施状況と現場から見た課題~)p16
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/011/siryou/__icsFiles/afieldfile/2016/07/28/1374769_2.pdf
*2引用:文部科学省/平成30年度文部科学白書(生涯学習社会の実現 総論)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201901/detail/1421865.htm
*3参考:文部科学省/平成18年版文部科学白書(生涯学習の意義)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200601/002/001/003.htm
*4参考:厚生労働省/教育訓練給付制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
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執筆者 浦辺

早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。

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