グローバル社会と言われてすでに久しく、日本国内でも企業内で英語を公用化するケースも見られるようになってきました。海外企業とのやり取りとなると、たとえ英語圏の企業ではなくても英語が使われることが当たり前。
転職や海外駐在等のキャリアアップを目指す際にも見られることが多い、ビジネスにおける英語力のポイントを押さえましょう。
1.単なる語学力じゃない!ビジネス英語とは
学生時代に英語がある程度できても、仕事で英語を使うとなると、苦手意識を持つ人も多いのではないでしょうか。正直、筆者もその一人です。
学生時代に英語圏への留学経験があり、難しい論文を読んだり書いたり、現地の人たちと日々、英語でコミュニケーションを図っていたにも関わらず、いざ職場で英語が必要となると壁にぶつかりました。
ビジネス英語と分類される英語は、通常の英語と何が異なるのでしょうか。
日本語でもビジネスシーンでは、難しい専門用語、取引先や目上の方に対する敬語等、日常会話とは全く違う言葉を使うことがありますが、実はそれだけに限らないのです。
欧米と日本では、ビジネスマナー及び文化の違いが根底にあります。例えば、JETRO(日本貿易振興機構)が以前、提供していた研修講座の例からポイントを抜粋して見てみましょう。
グローバル社会に対応するために欠かせない英語でのビジネスマナーを、挨拶や自己紹介、スモールトークなどの実践を取り入れて身につけるセミナー。海外では通用しない日本のマナーや、タブーな話題などについても学ぶ。
ビジネス英語プレゼンテーション
プレゼンテーション発表をする際に効果的な表現と、質疑応答に備えるための方法
・聴衆の分析/目的を達成する(聴衆に理解される、受け入れられる)ための着眼点の確認
・発表原稿のアウトライン作成、イントロダクション、つかみのテクニック
・各パートで使える表現、論理展開表現・発音練習
引用)JETRO「国際ビジネスマッチング ビジネス英語研修(プレゼン、ビジネスマナー、電話/メール他)」より一部抜粋し順番等変更(https://www.jetro.go.jp/ttppoas/anken/0001124000/1124503_j.html)
これらは講座内容の一部にすぎませんが、
「海外では通用しない日本のマナーやタブーな話題」
「受け入れられるための着眼点」
「つかみのテクニック」
「論理展開表現」
というキーワードが浮かび上がってきます。
英語が得意な人が正しく読み書きでき、不自由なく会話が可能だからと言って必ずしも簡単に達成しているものではありません。
ある大学のビジネス英語に関する研究論文では
「本質的に必要なのは、ランダムに与えられた状況を把握・分析して、適切に英語で反応することを練習すること*1」
との考察から、英語の基礎力の他に 思考力、状況判断能力、そして自己発信能力を鍛える必要性が指摘されています。
キャリアアップのための英語勉強に焦点を当てる人は、言語能力だけでなく文化的背景を知り、正しい状況判断、論理的な内容構成、それをアウトプットするテクニックを習得する必要があると言えるでしょう。
2.自己紹介やEメールは要点を押さえて端的に
社交辞令やお世辞、謙遜といった日本独特の、本音をあまり表に出さない配慮は、海外では失敗のもととなりかねません。
遠まわしな言葉で間接的にほのめかすような表現は、結局何を言いたいのか曖昧になる恐れがあり、避けるべきです。
単なる自己紹介をとっても、少々強気に自己PRすることが大切。
謙遜して控えめにするとそのまま受け止められて損します。
また、欧米流では経歴を書く際には、現在と近いほうから遡っていくのが主流であり、日本のように「卒業→新卒入社→転職」と学歴から職歴へ時系列には並べません。
英語で登壇をする場合に、司会者に紹介されてマイクを渡された瞬間、
「ご紹介に預かりました〇〇と申します」
と言うのもNG。
すでに伝えられた内容を繰り返すのは丁寧とは捉われず、要点を端的に述べることが好まれます。
これは近年、多用されるEメールも同じです。
メールを送る目的を簡潔に書くことが重要。日本語でもある程度決まった言い回しがあるように、英語でのメールも基礎的な表現を押さえて、応用するのが効率的です。
特に慣れないうちは1つのメールにつき一用件に押さえ、シンプルを心がけることで余計な間違いも防ぎやすくなります。
問い合わせ対応やスケジュール調整、感謝、謝罪など、必要なパターンを学ぶことから始めるのがおすすめです。
メールの書き方に関する書籍も多く出版されているので、自分の業務内容や目指す職種に近いもの、さらに使い回し可能な例文が多く載っているものを選んでみてください。
さらに英語が得意な同僚に確認をしてもらったり、受け取ったメールに良い表現があれば次回以降に自分でも使ってみたり、表現集としてストックしていくと、幅も広がります。
ビジネス英語コースのある語学学校や通信/オンライン講座を受講するのであれば、添削付きを選んでフィードバックをもらうことで、改善点を把握できて役立つでしょう。
また、民間以外でも、JETRO*2や商工会議所*3等によって講座が開かれている場合もありますので、自分に合う内容の講座を探してみてください。
3.求められるスコアは?テスト勉強も実践を意識して
さて、転職の際や昇格、海外赴任のためのアピールポイントの一つとして英語テストの結果が必要なケースも多いでしょう。
企業独自のテスト等を設けている場合を除き、民間で定期的に行われている英語試験の合否やスコアを提示するのが一般的です。
青年海外協力隊の事業で知られるJICA(国際協力機構)運営のウェブサイトを見ると、それぞれの英語資格と実践力の目安がわかります。
」より他言語及びC以下を割愛して抜粋.png)
引用)PARTNER「専門家語学ガイドライン(2019年3月改訂版)」より他言語及びC以下を割愛して抜粋(https://partner.jica.go.jp/resource/1591344924000/aboutView/about/pdf/guideline.pdf)
中でも最も馴染みがあるのがTOEICではないでしょうか。
たとえば、
「業務上、十分なコミュニケーション能力が求められる案件」
においては、640点以上が理想とされています。
世界共通の英語テスト、TOEICにはいくつかの種類がありますが、上記のTOEICが意味するのはTOEIC Listening & Reading Test (TOEIC L&R)という990点満点のテストのこと。
リスニング(100問)とリーディング(100問)の2つのセクション計200問、制限時間2時間で構成され、日本では年間約250万人が受けています*4。
(年10回の公開テストの他、企業や学校のための団体特別受験制度含む。)
このようなテストの利点としては、自分の英語力を可視化し、同じテストを受け続けることで、勉強の成果が見えやすいことです。
それが英語学習のモチベーションにつながり、さらに自分の英語力として、他者に提示できることも挙げられるでしょう。
実際に大手企業で、昇格要件や海外赴任要件として活用している例も窺えます*5。
なお、TOEIC公式ウェブサイトによると、企業が海外部門に属する社員に期待するスコア平均は、TOEIC L&R:690点、TOEIC S&W(スピーキング&ライティング):各140点です*6。
テストを通して、聞く、読む、話す、書くの4技能のうちの弱点が客観的にわかれば、自身が重点を置くべきポイントも自然と見えてくるのではないでしょうか。
4.まとめ
ビジネス英語を実践ですぐに使いたいのであれば、自分の業務に合わせた内容に特化し、必要な用語を徹底的に覚え、多くの例文に触れて応用しながら慣れていく方法が良いでしょう。
スコア向上を目指してテスト対策を図るにしても、実際の現場を意識した勉強を続け、スコアアップはあくまでその先にある目標の1つと設定することが不可欠です。
独学、通学、オンライン受講、プライベートレッスン、もしくはネイティブの友人を作る等、それぞれの生活スタイルや性格に合った勉強法があり、どの方法がベストとは言い切れません。
しかし、どの手段を選ぶにしても、継続することを大前提の条件とし、決して英文法を完璧にするためではなく、ビジネスシーンの実践に近い勉強を心がけてみてはいかがでしょうか。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2014/24/2014_142/_pdf/-char/ja
*2参考)JETRO「貿易実務オンライン講座」
https://www.jetro.go.jp/elearning/
*3参考)大阪商工会議所「セミナー・イベント 語学習得:はじめてのビジネス英語」
http://www.osaka.cci.or.jp/event/seminar/?search_type=menu&s_sub_category=40
*4参考)国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC® Program DATA & ANALYSIS 2019」P5
https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/pdf/DAA.pdf
*5参考)国際ビジネスコミュニケーション協会「活用事例」
https://www.iibc-global.org/toeic/corpo/case.html
*6参考)国際ビジネスコミュニケーション協会「将来の進路や仕事に役立つTOEIC® Program」
https://www.iibc-global.org/toeic/toeic_program/value.html