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できるビジネスパーソンはここが違う!人間関係を円滑にする「傾聴」のスキルを学ぼう

人の話に耳を傾けるというのは、相手との信頼関係を築くうえで大事なことです。

 

そして今、ビジネスの世界では、話を聴くスキルである「傾聴」に注目が集まっています。

 

本来、傾聴するというのは、主に心理カウンセリングで重んじられるスキルです。

それがどうしてビジネスの世界で注目を集めているのでしょうか。

 

1.傾聴スキルが求められるようになった背景

 

2020年6月より、パワハラ防止法が施行されました。

パワハラは被害にあった本人だけでなく、それを目撃した他の人にまで悪影響を及ぼし、職場の雰囲気を悪化させることで生産性を低下させます。

 

以下に示すのは、厚生労働省が示した6種類のパワハラの分類を筆者が独自に整理したものです。

2020年6月より、パワハラ防止法が施行されました。 パワハラは被害にあった本人だけでなく、それを目撃した他の人にまで悪影響を及ぼし、職場の雰囲気を悪化させることで生産性を低下させます。  以下に示すのは、厚生労働省が示した6種類のパワハラの分類を筆者が独自に整理したものです。

厚生労働省「あかるい職場応援団」に掲載されている内容をもとに筆者が作成(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/)

 

このように整理すると、攻撃、仕事量、人間関係という3つのグループに分類でき、さらに別の見方をすれば、積極的関与によるものと消極的関与によるものに分けることもできます。

 

パワハラの問題を難しくしてしまう要因が「線引き」です。

 

どこまでが指導で、どこからが暴力になってしまうのかや、何が過大で、何が過小なのかは、人によって異なります。

単純に基準に当てはめて判断するというのも、場合によっては合わないケースも考えられます。

 

そのため、パワハラとならないように、相手の話をじっくり聴き、適切に対処することが求められます。

 

また最近では、パワハラだけでなく、うつ病による損失も深刻です。

 

厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によると、過労などが原因で精神疾患にかかり労災申請した件数は、2018年度には1,820件となり近年増加傾向にあります。*1

 

日本全体で見た場合、2009年を例にとると、自殺やうつ病が無くなった場合、経済的便益(自殺・うつによる社会的損失)の推計額は、約2兆7千億円にものぼります。

労災補償給付や医療費の給付によって、これだけの負担が生じています。*2

 

職場においても、メンタル的に不調に陥ってしまう人を出してしまうことの損失は計り知れません。

 

ただ、うつ病になりやすい人というのは、真面目で一人で抱え込んでしまいやすい性格のため、なかなか上司のところに相談に来にくいものです。

上司に頼ろうにも、甘えだと思われたくない、あるいは、相談しても分かってもらえないのではないかという心理が働いてしまうと、上司に相談するのもハードルが高くなります。

 

一方的に上司としての考え方を押しつけるだけでは、やがてついてこられない部下が出てしまいます。

部下の悩みを受け止め、職場でメンタルヘルス不調者を出さないためにも、上司の「聴く力」が大事になってきます。

 

2.「聴く」ということに慣れていない人が多い理由

 

今や誰でもSNSで気軽に情報を発信することが可能です。

その結果、ネット上には情報があふれてしまい、自分の存在を見つけてもらうというのは、なかなか難しい一面があります。

 

多くの人は、自分が興味のある情報にしか関心がありません。

興味のわかないものを、わざわざ時間を取って見るという人も少ないでしょう。

そのため、ほとんどの情報は受け流されてしまいます。

 

誰からも注目してもらえずに疲弊してSNSから離れていったり、注目を集めようと過激な発言や動画の投稿をする人も出てきます。

一時期には、アルバイトによる不適切な動画の投稿が問題となり、「バイトテロ」と呼ばれました。

 

「愛の反対は、憎悪ではなく、無関心である」とも言われますが、誰からも相手にしてもらえないことには、かなりの精神的苦痛があります。

 

そうはいっても、自分が興味のあるものにしか関心を示さなかったという人は、ちゃんと人の話を聴くということに慣れていません。

SNS上においても、自分に合わない相手だと感じたら、フォローを外したり、ブロックしたりして距離を取るでしょう。

自分と異なる考えを理解し受け入れるというのは、「聴く」ことに関して大事な姿勢です。

 

しかし、自分と意見の合う相手としかつき合わないということをしていると、だんだんと他者に対する理解力が低下してきます。

SNS上では気の合う相手とだけつき合えても、ビジネスではそうはいきません。

 

近年では、ダイバーシティ経営と呼ばれる多様性を尊重した経営にも注目が集まっています。*3

自分と異なる考えの相手にどう対応していくのかが重要なのに、SNS上で行われているのは、むしろ逆の行いです。

異なる考えの相手の言うことを、じっくり耳を傾けて聴くという機会もあまり多くはないため、多くの人は聴くことに慣れていないのです。

 

3.どうすれば「聞く」から「聴く」にすることができるのか

 

他人の話を聞くくらいだったら、誰にでもできるだろうと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

「聴く」と「聞く」の違いは何かというと、相手の気持ちに寄り添えるかどうかなのです。

 

「聞く」というのは、相手の話を音声による情報として耳から拾うことですが、「聴く」は相手の気持ちまでしっかりくみ取ることをいいます。

 

単に相手の相談に乗ったからといって、相手の気持ちを受け止めたとは言えません。

相談してきた相手が「この人、分かってくれてないな」と感じてしまったら、ちゃんと傾聴できていないということになります。

 

そうはいっても、こちらも相手のことを全て知り尽くしているわけではなく、多少は思い込みをしてしまっている部分というのも出てきます。

とりわけ、相手の価値観を踏みつけてしまうと、相手との関係は一気に崩れてしまう可能性があります。

 

簡単そうに見えて、話を聴くというのは、実はそれなりのテクニックやトレーニングが必要になってくるのです。

それでは具体的に、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

 

主なものについてまとめたのが、以下の表です。

相槌を打つ

相手が話している際に相槌を打つことで、ちゃんと話を聴いているというメッセージが相手に伝わります。

また相槌があると、同意してもらえているという安心感があるため、相手は話しやすくなります。

バックトラッキング

バックトラッキングとは、相手の話した言葉の一部をそのまま言い返すことです。

そうすることで、バックトラッキングも相槌と同じく、話をちゃんと聴いているという印象を相手に与えます。

気持ちを聴く

ビジネスにおいては事実関係ばかりを聞いてしまいがちですが、それだと気持ちに寄り添うというところがなく、冷たい感じを相手に与えます。

傾聴では、相手に気持ちに寄り添うということが大事ですので、どのように感じたのかという気持ちについても聴くということが大事です。

思い込みをしない

傾聴するうえで大事になってくるのが、思い込みによる決めつけをしてはいけないということです。

決めつけをして、それが相手に不快感を与えてしまうと、相手はそれ以上話したいとは思わなくなってしまうので、注意が必要です。

オープンクエスチョン

質問には、Yes,Noなどの選択肢で答えるクローズドクエスチョンと自由に答えられるオープンクエスチョンがあります。

傾聴するのであれば、相手に圧迫感を与えないように、極力オープンクエスチョンを使います。

受容する

相手が安心して話せるようにするためには、ありのままの相手を受け入れる必要があります。

無理に正そうとしたり、考えを押し付けようとしてしまうと相手からブロックされてしまうので、こちらも注意が必要です。

※筆者のカウンセラーとしての経験をもとに作成

 

これを見て分かるとおり、相手にちゃんと話を聴いているというメッセージが伝わるようにするということが大事です。

 

また、相手が話しやすいようにするというのもポイントです。

相手の話を最後まで聴けずに、話の腰を折ってしまうというのもよくありません。

 

さらに、話の途中でアドバイスをしたり、誤りを正そうとしてしまうこともあるかもしれません。

 

ただ、こちらは相手のためを想ってやったことでも、相手にしてみればマウンティングされたと感じてしまうことも出てきます。

こちらの考えや価値観を相手に押し付けるような格好になっては、相手からの反発を買うだけです。

 

ちゃんと話を聴くためには、いったん自分のことは横に置くということを意識する必要があります。

 

4.部下や顧客とのやり取りでも大事になってくる傾聴

 

人の話を聴いてばかりで本当に大丈夫なのかと感じる方も、中にはいらっしゃるかもしれません。

上司は部下に対して的確に指示を与え、動かさなければならないという考えを持つ方も多いでしょう。

 

ただ、そのように一方的に指示を与えてばかりでは、上司が指示をしないと何もできないという状態になってしまいかねません。

また、どれくらいの仕事量が適当であるのかは人により異なるため、一方的になりすぎてしまうと、過大や過小な要求になってしまうこともあり得ます。

 

部下を持つ立場になるのであれば、部下を指導するためのコーチングスキルを持っておくのは重要です。

 

コーチングにおいても、傾聴は重要なスキルの一つとされています。*4

 

傾聴によって部下に気づきを与えることで、部下は自分の頭で考えられるようになり、自発的に動けるようになってきます。

聴く力をつければ、メンタルヘルスの向上だけでなく、部下の成長を促すこともできるのです。

 

また、部下だけでなく、顧客の声を聴けるようになることも重要です。

顧客の声を聴けるようになれば、トラブルを防ぎ、顧客満足度を高めることもできるようになります。

 

例えば、「それで本当に大丈夫でしょうか?」という顧客からの質問は、一見すると質問のように見えて、実は大丈夫ではないんじゃないかという不安の表れです。

 

そのことに気づけずに「大丈夫です。問題ありません」と返答してしまっていては、後々トラブルになりかねません。

 

「どういった点が、ご不安なのでしょうか?」と相手の気持ちに寄り添うことで、相手に安心感や信頼感が生まれます。

 

顧客とのやり取りにおいても、一方的に商品やサービスを売ろうとするのではなく、相手の課題をよく聴いたうえで対応するというのが重要です。

 

このように、傾聴によって部下や顧客とのやり取りがうまくいく効果が期待できます。

 

傾聴は、次世代のビジネススキルといってもいいのではないでしょうか。

 

参照データ
*1 参考)厚生労働省「過労死等の労災補償状況」P15
www.mhlw.go.jp/content/11402000/000521999.pdf
*2 参考)厚生労働省「自殺やうつによる社会的損失」
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000qvsy-att/2r9852000000qvuo.pdf
*3 参考)経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」
www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html
*4 参考)「コーチングの基本」鈴木義幸監修 P140~141

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