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知っておきたいテレワークの基本ルール、労働法上のポイントを現役弁護士が解説

新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が急ピッチでテレワーク(リモートワーク)のシステムを導入しました。

しかし、見切り発車のような形で始まったこともあり、一部の企業ではテレワーク導入に関する労働法上のルールが守られていない例も見受けられます。

 

企業がテレワークを導入する際には、就業規則などでテレワークに関するルールを定めることが必要です。

きちんとしたルールが定められていない状態でテレワークがスタートしてしまうと、従業員が不利益を被ってしまう場合もあります。

そのため、自分の働いている会社がテレワークを導入した場合、きちんと労働法上のルールが守られているかどうかを確認しておくことが重要になります。

 

この記事では、テレワークに関する労働法上の基本的なルールなどについて解説します。

 

1.コロナ以前のテレワークの導入率は低かった

 

下記の折れ線グラフは、総務省が発表している情報通信白書に基づく、企業のテレワーク導入率の推移です。

コロナ後の期間に関するデータは現状未だ存在せず、2018年までのデータが示されています。

グラフを見ると、テレワーク導入率は年々徐々に上がってきてはいるものの、2018年の時点でも企業全体の2割以下にとどまっています。

 

この割合には、テレワークを原則的な勤務形態とする企業だけではなく、

「原則としてオフィス勤務だが、補助的にテレワークも可能」

という企業も含まれています。

 

この点も考慮すると、コロナ以前の企業におけるテレワーク導入率は決して高くなかったことが窺われます。

総務省「情報通信白書令和元年版」1

出典:総務省「情報通信白書令和元年版」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd124210.html)

 

なお、下記の棒グラフは、2018年時点における企業の規模別テレワーク導入率を示しています。

このグラフを見ると、設備投資余力のある大企業が高い割合でテレワークを導入している一方、規模の小さい企業ではあまり導入が進んでいなかったことがわかります。

 

総務省「情報通信白書令和元年版」2

出典:総務省「情報通信白書令和元年版」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd124210.html)

 

コロナ以前のこうした状況から、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、急ピッチでテレワークを導入する企業が増えました。

上記のデータからすると、特に中小企業においてその傾向が顕著であることが推測されます。

しかし、中小企業は法令遵守のチェック機能が必ずしも十分でない場合も多いため、テレワークに関して労働法が遵守されているかどうかは注意深く確認する必要があります。

 

2.テレワークに関する労働法上のチェックポイント

 

テレワークを導入するにあたって、注意しなければならない労働法上のポイントを解説します。

 

労働者の方は、就業規則の内容に照らして自分が不当な扱いを受けていないかを確認しましょう。

また、使用者側の方は、自社の就業規則が労働法に沿った形になっているかを確認し、必要に応じて就業規則の見直しを行いましょう。

 

就業場所の明示が必要

 

まず、使用者は労働者に対して、就業場所を明示する義務を負っています(労働基準法151項、同施行規則511号の3)。

 

テレワークを行う場合であっても、たとえば「就業場所:従業員の自宅」などとして、就業場所を明示する必要があります。

 

なお、就業場所の明示は原則として書面で行う必要がありますが、労働者が希望する場合にはファクシミリや電子メールなどによる方法も認められます(同施行規則54項)。

 

労働時間・残業代のルールは通常どおり適用

 

テレワークを行う場合にも、労働基準法上の労働時間に関する規制は通常どおり適用されます。

そのため、時間外労働や深夜労働、休日労働に対しては法定の金額以上の割増賃金(残業代)を支払う必要があります。

 

また、時間外労働の上限時間は、労使間で締結している「三六協定」において定められています。

テレワークの場合でも、この上限時間を超えて時間外労働を行うことは認められません。

 

テレワークは集中がしにくい、いつでも仕事ができてしまうなどの理由から、労働時間が長くなってしまいがちです。

労働時間・残業代に関する労働基準法上のルールを遵守するためには、きちんと従業員の労働時間を管理することが重要です。

たとえば、PCのログイン履歴などで勤務の時間帯を把握したり、深夜・休日のシステムへのアクセスを原則禁止したりする方法が考えられます。

 

なお、テレワークはその性質上、勤怠管理を緩めたほうが労働者の生産性アップに繋がるという場合もあります。

その場合、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制を就業規則に定めておくことも考えられます。

フレックスタイム制とは?
従業員が始業時間と終業時間を自由に決めることができる制度です。
必ず勤務しなければならないコアタイムを定めるのが一般的ですが、コアタイムを定めず、労働時間帯を従業員に完全に任せる方式も認められます。
事業場外みなし労働時間制とは?
労働基準法38条の2第1項に基づき、オフィス外で勤務していて労働時間の算定が難しい労働者について、所定労働時間分の労働を行ったものとみなす制度です。
テレワークをする労働者について事業場外みなし労働時間制を適用するには、以下の3要件を満たすことが必要とされています。

①テレワークが起居寝食などの私生活を営む自宅で行われること

②使用するパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態になっていないこと

③テレワークが、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

 

通信費や水道光熱費などを従業員に負担させる場合は就業規則に明示

 

在宅勤務の場合、自宅でパソコンを使用するため、回線契約上の通信費や電気代などの費用がかかってしまいます。

 

また、たとえば在宅勤務用にモニターを新規で購入したり、有料のソフトウェアをダウンロードする必要があったりする場合にも、やはり費用が発生します。

 

仕事をする上で発生するこれらの費用を労働者の負担とする場合には、就業規則にその旨を明示することが必要です(労働基準法895項)。

この明示がない場合には、費用は会社負担となりますので注意しましょう。

 

オフィス勤務の従業員と異なる取扱いをする場合は就業規則に規定

 

テレワークを行う従業員について、オフィス勤務の従業員と異なる取り扱いをする場合には、就業規則にその旨を定めておかなければならない事項がいくつかあります。

 

たとえば、以下のような点についてテレワークとオフィス勤務で差をつける場合は、就業規則に規定することが必要です。

・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
・賃金の計算方法
・昇給について
・業績評価や人事管理
・職業訓練の内容

 

3.まとめ

 

テレワークは、多くの企業にとっては新しい働き方なので、使用者・労働者ともに戸惑いながらのスタートになってしまうことは仕方のないところです。

 

しかし、新型コロナウイルスの流行を機に、今後テレワークは一般的な働き方という位置づけになっていくものと考えられます。

そのため、使用者・労働者のそれぞれがテレワークの基本的なルールを理解し、協力しながら快適な労働環境を作っていくことが期待されます。

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