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「伝えるだけでは伝わらない」人を動かす伝え方の工夫とは
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「ちゃんと伝えたはずなのに、伝わっていなかった…」

そんな経験は、誰しも一度や二度はあるのではないでしょうか。

 

ビジネスでは、上司、部下、同僚、取引先などとやり取りをして、相手に動いてもらわなければならない場面が出てきます。

しかし、思った通りに動いてもらえず、何度言えばわかってもらえるのかと頭を抱える人も少なくありません。

 

相手を動かすために必要な要素とは、どのようなものなのでしょうか?

 

1.こちらが思ったとおりに伝わらない理由とは

 

何が、伝えることの障害となっているのでしょうか?

 

平成の時代に大ヒットした『バカの壁』という本があります。

 

その中で著者の養老孟司氏が言われているのが、「脳の中に係数」があるということです。

つまり、こちらが伝えたいことがそのまま伝わるのではなく、相手の脳の中で処理される際に、脳の中の係数によって情報に重みづけがされるのです。*1

 

その結果、相手が重要だと感じた情報は処理されやすくなり、逆に重要でないと判断された情報はノイズとして除去されやすくなります。

 

それでは、私たちの脳では、具体的にどのような情報処理が行われているのでしょうか?

 

それを明らかにしたのが、行動経済学と呼ばれるものです。

 

行動経済学においては、人は無意識的に考えることを節約してしまうことが知られています。

 

脳にかかる負荷が小さい簡便な方法で判断を下すことは「ヒューリスティック」と呼ばれます。

人を外見で判断したり、過去の傾向から将来を推測したりすることなどがこれに当たります。

 

またこの他にも、バイアス(偏見、偏向)というものも知られています。

その一例が、変わるという決断が合理的であっても、変化を嫌って決断を先送りしてしまう心理で、現状維持バイアスと呼ばれています。*2

 

このように、伝えたいことが正確に伝わるというのは難しく、相手が思った通りに動いてくれるというものではありません。

 

相手に的確に動いてもらおうと思うのであれば、ヒューリスティックやバイアスといったものに注意する必要があります。

 

2.相手から注目されるために必要な要素

 

話す内容が同じであっても、誰が言うのかによって相手に与える影響は、かなり違ってくることがあります。

 

どんなに良い企画案でも、それをプレゼンする人が自信が無さそうに見えてしまうと、それが相手の判断にマイナスの影響を及ぼしてしまいます。

 

先ほどもご紹介した通り、人の判断にはヒューリスティックやバイアスというものが絡んできます。

 

人は見た目で判断されてしまうことが多いものです。

とりわけ、服装、姿勢、立ち振る舞い、声の大きさやトーンというものが重要になってきます。

 

大きくゆったりした無駄のない動作は、自信があるような印象を相手に与え、逆に小さくてせわしない動作は、自信がないかのような印象を与えてしまいます。

 

また、声に関しても、低くてゆっくりしたペースの声は相手に安心感を与え、早口や小さな声は、焦っていたり自信が無いかのように見えてしまいます。

 

いわゆる非言語コミュニケーションと呼ばれるものに気を配ることで、相手への伝わりやすさを上げることができます。

 

この他にも、説得力を上げる要素として「エトス、パトス、ロゴス」が知られています。

その具体的な内容が、以下に示す一覧です。

「ツカむ!話術」パトリック・ハーラン著 P42,43,47,66,81,93の内容をもとに筆者が作表

「ツカむ!話術」パトリック・ハーラン著 P42,43,47,66,81,93の内容をもとに筆者が作表

 

これらの3つの要素の強さは、どれも全く同じというわけではなく、エトス>パトス>ロゴスの順で強くなるとされています。

 

いくら理屈の通った正しいことを言っても、肩書や実績がないと信じてもらいにくいというのも、エトス>ロゴスであることからもご理解いただけるのではないでしょうか。

 

ただ、エトスと言われても、たいした肩書や実績がない場合には、どうすればいいのかと感じるかもしれません。

 

エトスを高めるためには、立ち振る舞いが大事になってきます。

肩書や実績がなかったとしても、相手から見て「この人は、信頼できる」と思われることが重要です。

 

同じ言葉であれば、誰がどう伝えても同じように伝わるのかというと、そうではありません。

相手にちゃんと伝わるようにするためには、言葉以外の要素が非常に重要なのです。

 

3.相手の疑問や不安を取り除けば動いてもらえる

 

無理やり他人を動かそうとしても、多くの人は抵抗するものです。

 

相手が何か疑問を感じているにも関わらず押し通してしまうと、後でクレームになりかねません。

相手に動いてもらうためには、まず問題点を明らかにしたうえで、その問題点を取り除く必要があります。

 

そのためには、相手から言われたことをポジティブに解釈し、問題点を解決できることを示すことが必要です。

 

例えば、営業をする場面において、相手から「予算がない」と言われたとしましょう。

その場合は、以下に示すように、ポジティブに解釈したうえで、対応例のように受け答えします。*3

 

例:「予算がない」
【解釈】
本当は買いたいけれども、予算が足りない。
将来的にコストダウンが得られる、あるいは利益が上がることを証明できれば買ってもらえる。

【対応例】
「ありがとうございます。商品の良さはご理解いただけたようで大変うれしく思います。
経費の点さえクリアできればご購入いただけるということでしょうか。
では、仮に、この商品を導入していただくことで、将来的にコストダウンが得られる、あるいは利益が上がることにより、貴社にメリットがあることを証明すれば、ご購入いただけるということでよろしいでしょうか」

 

コストが問題であるなら、その問題を解決できることを示せば、商談が成立する見込みは高くなります。

 

また、「必要性がない」などの他の一言を言われた場合の対応も同様です。

以下に示すような流れで、いったんポジティブに解釈したうえで、解決策を示すようにします。

「いい質問」が人を動かす」谷原誠著 P126~132の内容をもとに筆者が作図

「いい質問」が人を動かす」谷原誠著 P126~132の内容をもとに筆者が作図

 

「必要性がない」というのは、商品やサービスのメリットを十分感じていないということですので、必要性が理解できれば契約してもらえると解釈できます。

 

また、「他を見てまわりたい」や「もう少し考えたい」というのも、他社に比べてどれくらい得なのか分からない、今すぐに決断する必要性が理解できないということです。

 

そうなると、他社よりも優れた商品、サービスであることや、今すぐ決断することの重要性を示すといったことができれば、相手は決断してくれるものと解釈できます。

 

ここで大事なことは、一方的に押し付けてしまうのではなく、相手の疑問点や不安に寄り添えるようにすることです。

 

4.相手目線に立った言葉を使うことの大切さ

 

相手に商品やサービスを売ろうとしたり、指示やお願いをしようとした時に、自分が思ったことをそのまま言うという方は、多いのではないでしょうか。

 

実は、そのまま伝えるだけでは、自分の考えを押し付けるだけの状態になりがちで、相手は思うように動いてくれません。

 

相手に動いてもらうためには、相手目線に立った言葉に言い換える必要があります。

まずは相手の頭の中を想像したうえで、どんなニーズを持っていそうなのかをつかみましょう。

 

そのうえで、相手のニーズに合った言葉で働きかければ、相手は動いてくれやすくなります。

 

相手から「イエス」を引き出すためのポイントとしては、以下の7つがあります。*4

 

 

①相手の好きなこと

例:ファーストフード店で、待たされるのが嫌なお客様に対して、「できたてをご用意いたします。4分ほどお待ちいただけますか?」

 

「できたて」という相手の喜ぶものを強調することで、相手から同意が得やすくなります。

 

②嫌いなこと回避

例:「芝生に入ると、農薬の臭いがつきます」

 

「立ち入り禁止」と表示するよりも、どういうトラブルがあるのかを示すことで、相手は立ち入らないことが自分にとってのメリットだと気づきやすくなります。

 

③選択の自由

例:「A案とB案がありますが、どちらがよろしいですか?」

 

決断するのは心理的な負荷が大きいものですが、比較という形にすることで決めやすくなります。

 

④認められたい欲

例:「きみの企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」

 

相手の承認欲求に働きかけることで、OKをもらいやすくなります。

 

⑤あなた限定

例:「あなただけ、特別です」

 

特別扱いしてもらえると喜ぶ相手であれば、その人限定という形にすることで、Yesを引き出しやすくなります。

 

⑥チームワーク化

例:「いっしょに勉強しよう」

 

一人でやるのを面倒くさがる相手であれば、自分もいっしょに動くようにすることで、相手も動くようになります。

 

⑦感謝

例:「トイレを綺麗につかっていただき、ありがとうございます」

 

感謝が入ると、人はお願いごとを拒否しにくくなるとされています。

 

 

どれが一番有効なのかは、状況や相手にもよります。

コミュニケーションでは、相手をよく見るというのが大事になってきます。

 

思うように動いてくれない相手にイライラしてしまうということは、よくあることかもしれません。

しかし、相手を変えるというのは難しいものです。

 

相手に応じた伝え方というのができれば、相手も動いてくれるようになります。

まずは自分の伝え方というのを見直されてみてはいかがでしょうか。

 

参照データ
*1 参考)「バカの壁」養老孟司著 P30~32
*2 参考)「知識ゼロからの行動経済学」川西諭著 P28,56~57
*3 参考)「「いい質問」が人を動かす」谷原誠著 P126~132
*4 参考)「伝え方が9割」佐々木圭一著 P64~87
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