大手企業の中途採用において契約社員採用が多く見受けられます。
人材は固定費となりますので、企業の利益を考えると安易に採用はできません。
そういった背景の中、基本給が安く業績給(ボーナス/賞与)で年収を補填する給与形態が多い日本企業にとって賞与/ボーナスが必要ない契約社員は、人件費を抑えられる都合のいい雇用と言えます。
しかし、この契約社員には労働契約期間に制限があり、最長5年までしか働けません。
そのため、契約社員で雇用された方には、今後のキャリアについて悩んでいる人も多いと思います。
ここでは、正社員と契約社員の違いを踏まえ、無期転換というルールを使うべきかどうかについて考えていきます。
1.無期転換とは
(1)無期転換とは
平成25年4月1日に、無期転換というルールが施行されました(労働契約法18条)。
無期転換ルールとは、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのことです。
この無期転換ルールの制度は、有期労働契約で働く者の雇用の安定等を趣旨として定められました。
無期転換の申込権の発生は、たとえば下の図のように考えられます。
契約期間が1年の場合
契約期間が3年の場合
(2)無期転換の対象者
無期転換ルールの対象者は、原則として、契約期間に定めがある「有期労働契約」が同一の会社で通算5年を超える全ての労働者です。
すなわち、契約社員という名称の労働者に限定されず、パートタイマー、アルバイト、派遣社員等も無期転換の対象者に含まれます。
(3)通算5年の計算方法
無期転換ルールが適用されるには、同一の会社で通算5年を超えて労働している必要があります。
たとえば、5年の間に部署や職務内容が変わったり、勤務場所がA支店からB支店に変更になったりした場合であっても、同一の会社で通算5年を超えて労働しているのであれば、無期転換ルールの対象となります。
(4)一度退職している場合
同一の使用者との間で労働契約を締結していない期間、例えば退職して労働契約が存在していない期間がある場合、退職前の契約期間は、5年の通算からは除外されることがあります。
無契約期間の前の通算契約期間が1年以上の場合、無契約期間が6ヶ月以上になっていると、その期間より前の労働契約は、通算契約期間に含まれません。
無契約期間が6ヶ月未満の時は、その期間より前の有期労働契約も、通算契約期間にカウントされます。
無契約期間の前の通算契約期間が1年未満の場合は、以下のように、通算契約期間へのカウント方法が決まっています。
無契約期間より前の有期労働契約が通算契約期間に含まれない場合、無契約期間の次の有期労働契約から、通算契約期間がカウントされます。
(5)対象起算点
無期転換ルールの施行は、平成25年4月1日です。
そのため、平成25年4月1日以降に開始される有期労働契約が対象となります。
平成25年3月31日以前に開始される有期労働契約は対象となりません。
起算点はこのように定められていますので、有期労働契約者は、最短で、平成30年4月1日に無期転換申込権が発生することになります。
無期転換ルールとは?
有期労働契約が更新された通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。通算5年のカウントは、平成25年(2013年)4月1日以降に開始した有期労働契約が対象となります。

引用)厚生労働省リーフレット(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000177137.pdf)
(6)無期転換の申込方法
無期転換の申込は、法律上、口頭で行っても有効です。
しかしながら、無期転換の申込は、その後の雇用の安定を左右する重要な事項です。
また、場合によっては、無期転換の申込を行ったかどうかで、後になってから、企業と労働者で争いになる可能性もあります。
したがって、無期転換の申込は、できる限り書面で行うことをおすすめします。
無期転換の申込書類の書式は決まっていませんが、たとえば、このような書式で申込をすることを参考にしてみてください。

引用)厚生労働省リーフレット(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000177137.pdf)
(7)無期転換後の労働条件
無期転換ルールが適用されると、有期労働契約者の労働契約は、有期から無期に変更されます。
しかしながら、期間の定めは変更されても、その他の雇用条件は、就業規則等の定めがある場合を除き、有期のときの条件から変更がないことが多いです。
すなわち、無期転換ルールが適用されて、無期の労働契約となったとしても、給与が上がったり福利厚生の範囲が自動的に拡大するというようなことはありません。
無期転換の申込をする際は、無期転換後に労働条件がどのように変更されるかについても、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
2.契約社員の働き方の選択肢
無期転換ルールの制度はできましたが、このルールは、有期労働契約が強制的に無期労働契約になるものではありません。
あくまで、選択肢は労働者に与えられています。
したがって、無期転換ルールの申込を行うかどうかは、今後どのような働き方をしたいかによって変わってきます。
(1)無期を望む場合
労働契約を有期から無期にすることを望む場合は、無期転換の申込を行いましょう。
無期転換の申込をする場合でも、無期転換後の労働条件がどのようになるかについては、必ず事前に確認してください。
会社の就業規則によっては、無期労働契約となったら、業務内容が変更になったり、労働条件に転勤が加わったりするなどの変更が加えられている可能性があります。
労働契約の期間以外の労働条件を加味すると、無期労働契約ではなく有期労働契約のままの方が、自分のライフスタイルに合っている場合もあります。
自分の今後のライフスタイルと合わせて、無期転換の申込をするかどうかを考えましょう。
(2)有期のままでいたい場合
有期労働契約のままでいることを望む場合は、そのまま有期でい続けることもできます。
契約期間の定めの有無以外にも、働きやすさや勤務条件等を加味して、有期労働契約を維持する人もいますので、ご自身のライフスタイルに合わせて考えましょう。
無期転換のルールは、労働者からの無期転換の申込みがなければ、労働契約が有期から無期に変わることはありません。
(3)注意点
無期転換により「正社員」になるわけではない点には注意しましょう。
期間の定めはなくなりますが、無期転換されたからといって、労働条件や待遇が正社員と同等になるわけではありません。
(4)正社員を目指すべき?
無期転換されても、賃金や待遇は、有期労働契約のときと変わらないこともあります。
そのため、収入アップなどを考えるのであれば、正社員を目指すのも一つの選択肢です。
3.まとめ
以上のように、現在は、有期労働契約の方に向けて、無期転換ルールというものが定められています。
確かに、無期転換ルールが適用されれば、労働契約は期間の定めのないものになり、雇用は安定します。
しかしながら、最終的に大事になってくるのは、ご自身が目指すライフスタイルと、それにあわせてどんな働き方をしていきたいかです。
この点については、正解というものはありません。
無期転換の申込をして、雇用の安定を望む人もいれば、勤務場所に縛られることなく有期労働契約のままでいることを望む人もいます。
無期転換ルールの内容や、無期転換後の労働条件等を確認した上で、自分が望む働き方を考えてみてくださいね。