キャリア形成 働くコラム

情報は集めるだけじゃダメ!これからのビジネスに必要な課題発見力を身につけよう

情報は集めるだけじゃダメ!これからのビジネスに必要な課題発見力を身につけよう

「ビッグデータ」というキーワードが登場してから、データをいかにうまく活用してビジネスに繋げるのか、という考え方を取り入れる企業が増えてきました。

 

これからの時代には、膨大なデータの中から課題を見つけ出す能力がビジネスで重要なスキルとなることに疑いの余地はありません。しかし、課題を見つけるといっても、単にデータを集めるだけでは課題は浮かんできません。

 

うまく課題を見つけ出すには、どうすればいいのでしょうか。

 

1.なぜ今「課題発見力」なのか

 

人工知能の時代を迎え、自分で課題を見つけ出す能力の重要性が高まっています。

 

経済産業省が2006年に提唱した社会人基礎力の中には、これからの時代を生きていく上で必要な力として、

「前に踏み出す力」

「考え抜く力」

「チームで働く力」

の3つの能力が示されています。

 

その中でも、考え抜く力の中の一つとして「課題発見力」が挙げられています。

課題発見力とは、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義されています。*1

 

学校の勉強では、先生から課題が与えられ、それをどうやって解くのかということが中心でした。

 

しかし、仕事ともなると、何が解決すべき課題なのかを自分で見つけ出さないといけないというケースが多く出てきます。

「指示待ち人間ではダメだ」という言葉を耳にされた方も多いのではないでしょうか。

 

人間が課題を見つけ、人工知能が解決策を提示するというようになってくれば、ますます課題発見力が重要になってきます。

 

課題発見力と似たものに、問題解決力があります。

「問題解決力」は、起こった問題の解決に焦点を当てているのに対し、「課題発見力」は、問題がはっきり表れる前に見つけ出すということに焦点を当てています。

 

問題が起こってから対処していたのでは、コストや手間がかかってしまうということもあります。

また、変化の激しい時代にあっては、急激に問題が大きくなってしまい、対処しきれなくなってしまうことも考えられます。

 

対応が後手に回ってしまうことなく、常に先手で動いていくためにも、課題発見力は重要です。

 

ただ、課題発見力といっても、どうやって課題を見つければいいのか、何を課題として認識すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

考え方の手順さえわかれば、課題発見力を身につけることができますので、まずはそこから考えていきましょう。

 

 

2.何が課題なのかを浮かび上がらせるには

 

課題をはっきりさせるためには、まず言葉で整理するというのが重要です。

自分が感じていること、思っていることを言語化するということは、コーチングやカウンセリングでもよく行われます。

 

言葉にして書き出してみることで、書き出したことに対して客観的に考えることができるようになります。

 

また、人間が同時に頭の中で考えられる物事の数にも限界がありますが、書き出すことによって、そのような限界を気にせずに済みます。

 

具体的な方法としては、以下の3つをご紹介します。

 

①親和図法

親和図法とは、部分的、断片的な言語データを相互の親和性に基づいてまとめていき、体系的、総合的に問題の全体像と構造を認識する手法です。*2

 

状況が曖昧で漠然としており、何が問題なのかすらよく分からないというときによく使われます。

付箋紙などに感じていることや起こっていることを書き出していき、似たもの同士をグループ化していきます。

例えば、どうすれば顧客満足度を高められるのかというテーマで親和図を作るとします。

 

付箋紙などに「的確なニーズの把握」や「笑顔の接客」など思いつくことを可能な限り書き出してみます。

 

次に、似た項目を集めてグループ化し、「接客力の向上」などというようにグループの内容を一言でまとめます。

実際に図にしてみたものが、以下に示すものです。

顧客満足度の高め方

一例として筆者が作図

 

 

このようにしてまとめると、いくつかのグループに分かれているというのが分かり、問題の全体像が分かるようになります。

 

そうすると、どのようなことに取り組めばいいのかというのが一目で分かります。

 

 

②連関図法

連関図法とは、問題として取り上げたことに対して、複数の原因がどのように絡んでいるのかを図解する方法です。*2

 

図のように問題に対して原因を深く掘り下げて、矢印でつなぎながら整理していくことで、問題解決の手がかりをつかむことができます。

 

連関図法

一例として筆者が作図

 

問題を発生させる原因は一つとは限らず、いくつもの原因が複雑に絡み合っていることがあります。

 

問題発生の大本の原因をつかむことで、対応すべき課題が見えてきます。

 

 

③特性要因図

特性要因図とは、仕事の結果に対して影響していると考えられる原因を分類して矢印で因果関係を関連づけ、魚の骨のような図にしたものです。*2

 

原因を分類して整理することで、原因が結果にどのように影響しているのかが一目で分かります。

以下に示す図は、不良発生という特性に対して、どのような要因が考えられるのかを書きだしたものです。

特性要因図

一例として筆者が作図

 

 

このように考えられる要因を整理していけば、優先的に対処すべき課題が見えてきます。

ご紹介した3つの方法のように感じたことを言語化して整理していけば、頭の中も整理されていき、何が課題なのかを把握しやすくなるでしょう。

 

3.課題について検証するには

 

お客様からのアンケートやクレームといった言語データを整理していけば、どんな課題があるのかというのが見えてきます。

ただ、ビジネスで大事になってくるのが、数字による裏付けです。

個人の感覚で考えていたのでは、認知による歪みが出てしまうことがあります。

 

例えば・・・

・にわか雨が降っているときに外出先で傘を買うと、たいていその直後に晴れる。

・たまたま遅刻しそうなときに限って、いつも電車が遅れる。

 

こういった出来事について、よくあるなと感じる方は多いかもしれません。

しかし実際に統計データを取ってみると、認知の歪みによる思い込みであることに気がつきます。*3

 

人間は、想起しやすい出来事の発生確率を高く見積もってしまうということが分かっており、利用可能性ヒューリスティックと呼ばれています。*4

 

認知の歪みによって判断を間違ってしまわないためにも、統計データによる裏付けは大事です。

それでは、どのようにデータを集めればいいのでしょうか。

 

データ分析においては、以下に示すPPDACサイクルに従って分析することが大事だとされています。*5

①P:Ploblem(課題の設定)

②P:Plan(計画)

③D:Data(データ収集)

④A:Analysis(分析)

⑤C:Conclusion(とりあえずの結論)

 

初めから時間をかけて大規模なデータを分析する必要はなく、①~⑤までのPPDACサイクルを何度も回しながらブラッシュアップしていくというのがポイントです。

 

いくらデータが大事とはいっても、最初からやみくもにデータを集めてしまうと時間と労力がかかってしまいます。

スピードが要求される今の時代に対応できるようにするためにも、まずは何を調べればいいのかを明確にする必要があります。

 

まずは言語データを整理して、どのへんに課題がありそうなのかを割り出し、次に統計データを集めて検証するという流れが効率的と言えるでしょう。

 

4.判断を間違わないためには、「問い」の立て方が大事

 

どうすればいいのかわからずにモヤモヤしてしまうというのは、つらいものです。

何をすべきなのかさえはっきりすれば、具体的な行動に移ることができます。

自分で課題を見つけ出す能力は、モチベーションを高めるためにも重要だと言えるでしょう。

 

ここで一つ大事になってくるのが、目的を達成するために、いかに正しい課題を見つけるかです。

 

課題自体の設定を誤ってしまうと、課題をクリアして得られるものまで間違ったものになってしまいます。

人工知能も、人間の側が間違った問いを出すと、それに合わせて間違った答えを出してしまうので、気をつけたいものです。

 

いかに結果に結びつく正しい問いを立てることができるのかというのが、重要になってきます。

 

正しい問いを立てる上で大事なのが、目的をはっきりさせることです。

 

どのようになりたいのかという理想の状態と、そうなっていない現実の状態との差が、解決すべき課題と捉えることができます。まずは自分でどうなりたいのかを決める、あるいは、言語データを整理して、どうなるべきなのかをはっきりさせましょう。目的もはっきりしないまま情報ばかり集めてしまうと、大量の情報に振り回されてしまうことになりかねません。

 

人間の脳は、同時にたくさんのことを考えるのには限界がある上に、認知の歪みが生じることがあります。

 

ですので、言葉によって書き出して整理する、数字による裏付けを取るということが必要になってきます。

不確実な時代に自ら進むべき方向を決められるようになるためにも、参考にされてみてはいかがでしょうか。

 

参照データ
*1 参考)経済産業省「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」P26
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_1.pdf
*2 参考)「現場長のQC必携」朝香鐵一監修 P135~136,223~225,229~231
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Editor12

コミュニケーションマインド代表、心理カウンセラー(NLPマスタープラクティショナー) 職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決を脳科学と心理学を用いてサポートしています。

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