キャリア形成 働くコラム

介護職で働く人の転職の考え方 キャリアアップのために考えるべきポイントとは

介護職で働く人の転職の考え方 キャリアアップのために考えるべきポイントとは

「もっとスキルアップしたい」

「給料アップを目指したい」

 

仕事をしている人であれば、多かれ少なかれ、このような思いをもっているのではないでしょうか。

特に仕事に慣れてくると、このような気持ちになることが多いと思います。

 

介護の資格は、働きながら取得できるものも多く、自分の頑張り次第でキャリアアップできます。

しかし、職場の環境によって大きく左右される仕事でもあり、転職を考える人は少なくありません。

 

そこで今回は、キャリアアップによる具体的なメリットやキャリアアップフローをまとめました。

さらに、転職をするうえで考えたいポイントと転職先の選び方も解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

1.介護職員は上昇志向の強い人が多い!

 

まず、介護で働く人たちが仕事に対してどのような思いをもっているのか、見ていきましょう。

介護労働安定センターの調査によると、今後仕事上の能力・スキルを今以上に高めていきたいかという質問に対して、「はい」が72.8%、「いいえ」が4.9%、「分からない」が20.7%でした。*1

介護職員が、スキルアップに対して意欲的だということが分かります。

 

公益財団法人 介護労働安定センター 「令和元年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」

引用)公益財団法人 介護労働安定センター 「令和元年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_chousa_roudousha_chousahyou.pdf 47P)

 

次に、前職を辞めた理由です。

なおこの場合の前職には、介護以外の仕事も含まれます。

 

最も多いのが「結婚・妊娠・出産・育児のため」で26%。

次いで「職場の人間関係に問題があったため」が16.3%。

「自分の将来の見込みが立たなかったため」が15.6%でした。*2

 

性別ごとに結果を見てみると、男性は「自分の将来の見込みが立たなかったため」が29.1%。

女性は「結婚・妊娠・出産・育児のため」が32.1%と最も多いことが分かりました。*2

 

キャリアへの悩みや不安は退職理由の上位であり、特に男性にその傾向が見られます。

最初に取り上げたデータも踏まえると、意欲的な人が多い介護業界において、キャリアアップは仕事を続けるうえでの重要なポイントになると考えられます。

 

2.介護職員がキャリアアップするメリット

 

介護職員にとって、キャリアアップがもたらすメリットはさまざまです。

以下、具体的に見ていきましょう。

 

①給与が上がる

各種資格を取得することで、給与がアップします。

厚生労働省によると、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)※を取得(届出)している事業所における介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額は、資格を保有している人の方が高いというデータがあります。*3

※介護職員処遇改善加算:介護職員の賃金を改善するための制度。(Ⅰ)~(Ⅴ)の区分があり、それぞれ要件を満たすと国から加算が支払われる。

 

さらに、上位資格になるほど給与は高くなります。

介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士の順番で上位資格になりますが、以下の表の通り上位資格になるほど給与は上がっています。*3

 

介護職員の平均給与額の状況

平成30年9月 平成29年9月
全体 300,970円 290,120円
保有資格あり 303,460円 292,820円
 介護福祉士 313,920円 304,630円
 実務者研修 288,060円 280,400円
 介護職員初任者研修 285,610円 273,920円
保有資格なし 261,600円 252,490円

参考)厚生労働省 「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/dl/30gaiyou.pdf 15Pを参考に筆者作成

 

②スキルと経験値が上がる

資格取得によって、対応できる業務の幅が広がります。

例えば、訪問介護は介護職員初任者研修以上の資格が必要です。

このように、資格がない人より資格を持っている人の方が、さまざまな経験ができます。

 

③信頼感が増す

キャリアアップすることで、専門性が高まり信頼感が増します。

例えば、ネット上で医療に関する情報を見つけたとしましょう。

この情報を発信している人が、一般の人なのか医師なのかによって、情報の信頼度は全く違うものになるのは、ご理解いただけるのではないでしょうか。

このように、資格やキャリアは周囲からの信頼に大きく関係します。

なかでも、介護福祉士は国家資格なので、利用者や家族からの信頼感が増すでしょう。

職場内でもリーダーとしての役割を任されたり、他職種との連携でも活躍できます。

 

3.介護職員のキャリアアップフロー

 

これまでは、介護職員が上位資格を取得する方法は複数あり、必ずしもわかりやすいものではありませんでした。

そのため、介護で働く人材の確保や質の向上などを目的に、キャリアパスが新設され、運用が始まっています。

キャリアパスとは、役職に就くまでの順序や道筋のことです。

 

以下の図の通り、現在では介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士、認定介護福祉士の順番にキャリアアップしていきます。

※介護福祉士を取得する方法には、大学や専門学校などで学び国家試験合格を目指す「養成施設ルート」もあります。

 

厚生労働省 「今後の介護人材養成の在り方について(概要)」

引用)厚生労働省 「今後の介護人材養成の在り方について(概要)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000011uv3-att/2r98520000011uwt.pdf 3P)

 

では、それぞれどのような資格なのか解説します。

 

・介護職員初任者研修

以前のホームヘルパー2級に相当します。

介護の基本となる資格で、介護業界で働くために必要な基礎を学びます。

取得するためには、130時間の講習と試験に合格する必要があります。

 

・実務者研修

さまざまな状態にある利用者に対して、基本的な介護を提供するためのスキルを習得します。

実務者研修は、介護福祉士養成施設(2年以上の養成課程)と同等レベルにあたります。

また、一定の研修を修了すると、痰の吸引や経管栄養(胃ろうや経鼻経管栄養など)を実施できます。

 

・介護福祉士

介護系の資格の中で、唯一の国家資格です。

専門的な知識とスキルを持ち、利用者の介護を行うだけでなく、家族に対して適切な介護方法を指導できます。

資格取得には、実務経験3年以上と実務者研修を修了後、介護福祉士国家試験を受験します。

 

・認定介護福祉士

2015年に始まった、介護系の最上位資格です。

これまでは介護福祉士が最上位資格でしたが、高齢者の増加や多様化によってさらなる専門性が求められ、創設されました。

高い専門性で介護を行うほか、介護職のチームリーダーとして教育や指導、他職種との連携を行います。

介護福祉士の実務経験が5年以上あり、研修の受講とレポート提出(もしくは試験)で取得できます。

 

これまで紹介したのは、介護の現場で活躍するための資格です。

他にも、相談援助業務や職場環境を調整するマネジメント職があります。

マネジメント職は、現場よりも事務作業が多くなるので、年齢を重ねても続けやすいというメリットがあります。

 

・施設長や管理者

入所者や家族との面談、労働環境の整備など、施設の運営に携わります。

現場から離れた視点で、よりよい介護を提供するために尽力できます。

 

・ケアマネジャー(介護支援専門員)

介護保険のプロとして、利用者がよりよい生活を送れるようケアマネジメントを行います。

主な仕事は、ケアプランの作成や介護サービス事業者との調整です。

ケアマネジャーになるためには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、研修を受けます。

国家資格ではなく、都道府県によって管理される公的資格です。

 

・サービス提供責任者

訪問介護事業所の責任者です。

他職種との連絡調整、事業所で働くヘルパーの業務管理などを行います。

マネジメント業務だけでなく、現場に入ることもあります。

 

・生活相談員

介護施設やデイサービスなどで、利用者や家族に対する相談援助業務を行います。

さらに、他職種との連携や入退去に関する手続きなど、利用者がよりよい生活を送れるようサポートします。

 

4.キャリアアップで考えたいポイントと転職先の選び方

 

これまでご紹介したように、キャリアアップの選択肢はいくつかあります。

そのうえで、考えたいポイントと転職先の選び方を、それぞれまとめました。

 

〇キャリアアップを目指すうえで考えたいポイント

 

①どのようにキャリアアップしたいのか

介護職のキャリアアップには、大きく分けると2つありました。

・現場で活躍するためのキャリアアップ

・マネジメント職を目指す

すでに保有している資格と経験を見つめ直し、今後どのようにキャリアアップしていきたいのか現段階での考えをまとめましょう。

 

②転職するタイミング

介護の資格は、働きながら取得できる資格も多くあります。

しかし、現在の職場環境では難しい場合もあると思います。

自分自身の状況を踏まえて、資格取得前に転職するのか、後に転職するのか、どちらの方がスムーズか考えみてください。

 

〇転職先の選び方

 

①複数の事業を展開する法人

転職先におすすめなのが、複数の事業を展開する法人です。

さまざまな業務を経験できるため、キャリアアップの選択肢が広がります。

 

②資格取得を応援する制度がある職場

職員の資格取得を応援している職場を選ぶと、キャリアアップしやすくなります。

忙しい業務と並行して、キャリアアップの勉強をするのは大変です。

そのため、シフトの調整や費用負担などの制度があると、負担が軽くなります。

 

③キャリアパスが機能している職場

職場内でキャリアパスが機能しているかもチェックしましょう。

キャリアパスで経験年数に応じた目標が明確になっている職場は、職員の育成に積極的です。

このような職場で働ければ、モチベーションを維持しながらキャリアアップできます。

 

5.まとめ

 

介護職の資格はさまざまあり、キャリアアップの方向性も自分自身で選べます。

まずは、自分がどのように働きたいのか明確にしてみてください。

転職に関しては、いつどのような職場に転職するのかがポイントです。

キャリアアップを応援する制度が整っている職場を選び、自分の理想に一歩ずつ近づいていきましょう。

 

執筆者
名前:浅野すずか
プロフィール:フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

 

参照データ
*1参考)公益財団法人 介護労働安定センター 「令和元年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_chousa_roudousha_chousahyou.pdf 47P
*2参考)公益財団法人 介護労働安定センター 「令和元年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_chousa_roudousha_chousahyou.pdf 82P
*3参考)厚生労働省 「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/dl/30gaiyou.pdf 15P
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