「会社を辞めて独立したい」という希望はあっても、新しいビジネスプランを考えるのは難しいのではないでしょうか。
未経験で独立を目指すなら、フランチャイズを利用する方法もあります。
フランチャイズはコンビニをはじめ、外食店やハウスクリーニング、学習塾などさまざまな業種があるので、自分に合ったビジネスが見つかるかもしれません。
ただし、フランチャイズにはデメリットもあるので、契約する前に特徴を理解しておくことが大切です。
今回は、フランチャイズの現状やメリット・デメリットについて解説します。
1.フランチャイズとは
フランチャイズ(FC)とは、フランチャイズに加盟する個人・法人(加盟店)が本部から店名や看板、商品などを使用する権利を与えられ、その対価として加盟金とロイヤリティを払う仕組みです。
フランチャイズ本部のことを「フランチャイザー」、加盟店のことを「フランチャイジー」といいます。
フランチャイズはビジネスモデルがすでに確立されており、加盟すると商号や商品(サービス)が利用できるうえに、継続的に本部から経営指導・サポートを受けられるのが特徴です。
フランチャイズは自分で新たなビジネスモデルを考える必要がないので、未経験でも独立開業を目指せます。
たとえば、コンビニは同じ看板で営業している店舗がたくさんありますが、直営店とFC店の2種類があります。
直営店は本部が派遣した社員が運営していますが、FC店はフランチャイズに加盟したオーナーが経営者で、本部のサポートを受けながら運営しています。
2.フランチャイズの現状
日本フランチャイズチェーン協会の統計調査によると、2018年度(2018年4月~2019年3月)の日本国内のフランチャイズチェーン数は1,328チェーン(前年比▲0.8%)、店舗数は26万4,556店(前年比+0.4%)、売上高は26兆2,118億円(前年比+2.6%)です。
店舗数は10年連続、売上高は9年連続で増加しており、フランチャイズ全体の市場規模は拡大を続けています。
チェーン数 | 店舗数 | 売上高(百万円) | |
総計 |
1,328 (▲0.8%) |
264,556 (+0.4%) |
26,211,796 (+2.6%) |
小売業 |
331 (▲2.4%) |
110,245 (+0.5%) |
18,582,597 (+2.2%) |
(内コンビニ) |
18 (▲18.2%) |
58,340 (+0.7%) |
11,263,479 (+2.2%) |
外食業 |
568 (▲1.4%) |
57,743 (▲1.4%) |
4,268,819 (+1.8%) |
サービス業 |
429 (+1.2%) |
96,568 (+1.4%) |
3,360,380 (+5.7%) |
参考)日本フランチャイズチェーン協会「フランチャイズチェーン統計調査(2018年度)」を参考に筆者作成(※カッコ内の数字は前年比)(https://www.jfa-fc.or.jp/particle/29.html)
業種別では、売上高が最も大きいのは小売業で、その約6割をコンビニ(CVS)が占めています。
サービス業は売上高の割合は小さいものの、前年比+5.7%と大きく伸びています。
このように、フランチャイズビジネスは順調に成長を続けてきましたが、最近では新型コロナウイルス感染拡大が企業経営に大きな影響を及ぼしています。
今後も成長が続くかは不透明な部分もあるため、加盟を検討している業界の動向を注視しておきましょう。
3.フランチャイズで独立するメリット
フランチャイズで独立するメリットは以下の通りです。
①未経験でも独立可能
フランチャイズは、開業前はもちろん、開業後も継続して本部からサポートを受けられます。
開業前に研修を受けることができ、業務内容はマニュアル化されているため、未経験からでも独立開業に挑戦しやすいでしょう。
市場調査や集客活動、開業時のフォローなど、本部からさまざまなサポートを受けられるのは、フランチャイズならではのメリットです。
トラブルが発生しても、本部に相談して対処できるので安心です。
②経営ノウハウを提供してもらえる
個人で独立開業すると、さまざまな試行錯誤を繰り返しながらノウハウを蓄積していく必要があります。
そのため、最初から順調に売上を確保できる可能性は低いでしょう。
一方、フランチャイズ本部には、これまでの経験・実績に基づいた経営ノウハウが蓄積されています。
フランチャイズに加盟すれば、本部から経営ノウハウを提供してもらえるので、最初から効率的な運営ができます。
本部の許可があれば、オーナー同士で情報交換をすることも可能です。
③ブランド力を活かせる
フランチャイズは、ブランド力を活かせるのもメリットのひとつです。
個人で独立開業すると認知度が低いため、集客に苦労するかもしれません。
集客がうまくいかないと売上を確保できず、特に借金をして開業した場合は事業を継続できなくなる恐れがあります。
それに対して、フランチャイズはすでに多くの人に認知されており、ブランド力を活用できるので、開業当初から集客が見込めます。
本部がブランド力を維持するために、テレビCMなどの宣伝活動をしてくれる場合もあります。
④資金調達しやすい
会社を辞めて未経験で独立する場合、知名度や実績がないので、金融機関から融資を受けるのは難しいのが現状です。
一方、フランチャイズは他の加盟店の実績や本部の知名度があるため、個人で開業するよりも金融機関の信用を得やすいメリットがあります。
資金調達して独立する場合は、フランチャイズを検討するといいでしょう。
4.フランチャイズのデメリット
フランチャイズは先程紹介したメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
①加盟金とロイヤリティが発生する
フランチャイズで独立する場合、本部に加盟金とロイヤリティを払わなくてはなりません。
加盟金とは、フランチャイズ契約を締結するときに払う費用で、業種によっては数百万円程度のまとまったお金がかかります。
ロイヤリティとは、本部の商品やノウハウを利用する対価として払う費用です。
ロイヤリティの料金体系は「売上の~%」「売上に関わらず毎月定額」など、加盟するフランチャイズ本部によって異なります。
加盟金やロイヤリティが、経営を圧迫する要因になることもあるので注意が必要です。
②自由に運営できない
フランチャイズは本部が決めた運営方法を守る必要があり、一定の制限のもとで運営することになります。
たとえば、自分で考えたオリジナルの商品・サービスを提供したいと思っても、本部の許可が出ないと実行するのは難しいでしょう。
また、契約期間が定められており、契約期間中に店舗運営をやめると違約金が発生することもあります。
自由に運営したいなら、フランチャイズはやめたほうがいいかもしれません。
中には加盟店に幅広い裁量を与えているフランチャイズ本部もありますが、その場合はサポート体制が充実しておらず、必要な支援を受けられない可能性があります。
③ブランドイメージが低下すると経営に影響が出る
フランチャイズはブランド力が強みですが、特定の店舗で問題が発生してブランドイメージが低下すると、全店舗の経営に影響が及びます。
たとえば、アルバイト店員の不適切なSNS投稿により多数のクレームが発生し、フランチャイズ運営会社が謝罪に追い込まれるようなケースです。
たとえ健全な運営を行っていても、ブランドイメージの低下で経営がうまくいかなくなるリスクがあります。
5.独立を目指すならフランチャイズは選択肢のひとつになる
フランチャイズはブランド力があり、研修や経営指導といったサポートも充実しています。
加盟金やロイヤリティを払う必要があり、自由に運営できないデメリットもありますが、フランチャイズなら未経験でも独立開業に挑戦しやすいでしょう。
この記事で紹介したメリット・デメリットを比較したうえで、フランチャイズで独立することを検討してみてください。

プロフィール:金融ライター(AFP、2級FP技能士)
フリーランスの金融ライター。会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。