キャリア形成 働くコラム

転職・就職を考える時はスペシャリストを目指そう 世界でも二極化する人材の強みと活かし方とは

かつての日本企業では、将来の幹部育成のためにオールマイティーに仕事ができる「ゼネラリスト」が主流とされてきました。

しかし近年では、一つの分野で専門的な深い知識を有する「スペシャリスト」を必要とする企業が増えています。

 

今回はそのような「スペシャリスト」としての働き方について詳しく解説をしていきます。

 

1.日本社会におけるスペシャリストとは

 

①スペシャリストとは特定分野の専門家

スペシャリストとは、特定分野を専門にする人や特殊な技能を持つ人を指しており、一言で言うと「専門家」のことです。

 

特定の分野は業種や技術、資格に関するものなど多岐にわたり、限られた範囲の中で仕事を限定します。

そして専門性の高い知識や技術を向上させていくような人材を、「スペシャリスト」と位置づけています。

 

②スペシャリストの具体的な職業

スペシャリストには、資格を必要としないもの、知識と資格の両方が必要なものが2種類あります。

 

資格を必要としない職業 資格が必要な職業
・研究者
・システムエンジニア
・WEBデザイナー
・経営コンサルタント
など
・弁護士
・公認会計士
・税理士
・医師
・看護師
・管理栄養士
など

 

特に資格を必要としない領域では、特定の分野を研究している研究者や、新技術の開発に取り組んでいるエンジニアなど、専門的な深い知識がないと従事できない職業が該当します。

 

また、特殊なセンスが必要なデザイナーや、経済や金融についての専門的な知識が求められるコンサルタントも当てはまる職業です。

 

資格がないと従事できない職業では、弁護士や医師が代表的なものでしょう。

その他にも管理栄養士や会計士など、特定の分野について深く掘り下げた知識がないと務まらない職業が当てはまります。

 

③ゼネラリストとの違い

ゼネラリストとは、幅広い分野の仕事に従事する人を指しています。

 

大企業などでよく見られる職種で、将来の幹部候補が、総務、営業、技術などと様々な部署に配属されます。

ゆくゆくは会社を運営するために必要な経験を積み重ねていくのが特徴です。

 

スペシャリストが専門的な「深く狭い」知識を有するのと対照的に、ゼネラリストは「浅く広い」知識を身に付けていくという違いがあります。

 

企業においては総合職を指す場合が多いでしょう。

 

2.最近の若い世代はスペシャリスト志向が増えている

 

総務省統計局が実施した、2007年と2017年における若者の主な職業別における割合の調査結果は下図の通りです。(図2)

 

若者の就業状況-4月の就職時期にちなんで-平成29年就業構造基本調査の結果から

図2 引用)総務省統計局「若者の就業状況-4月の就職時期にちなんで-平成29年就業構造基本調査の結果から」図5「 若者の主な職業別の割合-2007、2017年」(https://www.stat.go.jp/data/shugyou/topics/topi1160.html)

 

①男女ともにスペシャリストが増えている

図2を参照しますと、2007年と2017年を比較した結果、男女ともに「専門的・技術的要素従事者が増えていることが分かりました。

 

男性では2007年は14.5%だったものが18.9%になり4.4%上昇。女性も22.1%から26.1%と4.0%高くなっています。

 

2017年の若者の有業者の主な職業の割合は、男性が「生産工程従事者」(21.8%)、女性は「事務従事者」(28.2%)で最も高くなっています。

 

また、男性の「事務従事者」は2007年には10.9%であったのが2017年には13.9%と3%上昇し、従来では女性が多い分野でしたが、男性も着実に増加傾向にあります。

 

 

②男性は生産工程従事者が減少気味

 

男性は「生産工程従事者」が2017年でも21.8%と最も多い割合ですが、10年前の2007年と比較すると2.7%低下しています。

 

他に減少した業種は「販売従事者」が14.6%から12.5%と2.1%の低下、サービス関連従事者も9.3%から8.2%と1.1%低下している状況です。

 

また、「建設・採掘従事者」も、8.1%から6.8%へと1.3%減少しており、建設業界では人手不足が問題となっています。

 

③女性は事務従事者が減少気味

女性の数字では、女性の職業として一般的であった事務従事者が30.1%から28.2%と1.9%の減少です。

 

また、販売従事者も15.8%から14.2%と1.6%少なくなっています。

 

他に目立った傾向と言えば、今までは男性の従事者が多かった「運搬・清掃・包装等従事者」が2.4%から3.0%と0.6%上昇しており、女性の進出が広がっていく兆候です。

 

 

3.若者の主な職業別の有業者数と割合

 

総務省統計局が平成29年に調査した「若者の主な職業(中分類)別有業者数及び割合-2007、2017年」をまとめた表が下図3の通りです。

 

若者の主な職業(中分類)別有業者数及び割合-2007、2017年

図3 引用)総務省統計局「若者の就業状況-4月の就職時期にちなんで-平成29年就業構造基本調査の結果から」表5-2 「若者の主な職業(中分類)別有業者数及び割合-2007、2017年」(https://www.stat.go.jp/data/shugyou/topics/topi1160.html)

 

①女性の方がスペシャリストとして働く人が多い

図3を参照すると、2017年度においては、男性は生産工程従事者で働く人が976,600人で割合では21.8%と一番多く、女性は「専門的・技術的職業従事者」として働く人が1,073,300人で26.1%の割合です。

 

男性で「専門的・技術的職業従事者」として働く人は848,600人で18.9%の割合となっていますので、女性の方が224,700人多く、割合では7.2%上回っています。

 

したがって、女性の方が男性よりスペシャリストとして働く人が多いと言えるでしょう。

 

②生産工程従事者は男性が圧倒的に多い

2007年からは減少したとはいえ、2017年においても、男性は「生産工程従事者」として働く人の割合が976,600人(割合21.8%)で、もっとも多いことが読み取れます。

 

それに対して、女性で「生産工程従事者」として働いている人の実数は、2017年においては311,000人(割合7.6%)で、男性より665,600人(割合ではマイナス14.2%)少ない状況です。

 

したがって、生産工程従事者は男性が圧倒的に多いということが分かります。

 

4.時代はスペシャリスト志向へと向かっている

 

経済産業省が平成30年2月に実施した「新・社会人基礎力(仮称)アンケート」のキャリアパスに対する考えについての調査結果を表したデータが下図4の通りです。

 

当てはまる 当てはまらない
スペシャリスト志向 67.2% 32.8%
異なる職場経験志向 47.6% 52.4%
独立志向 25.8% 74.2%
グローバル志向 30.7% 69.3%
仕事重視志向 22.9% 77.1%

※経済産業省「新・社会人基礎力(仮称)アンケート調査結果平成30年2月産業人材政策室」P3を元に筆者作成(https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/jinzairyoku/jinzaizou_wg/pdf/007_04_00.pdf)

 

①30代~50代の現役世代にスペシャリスト志向が増えている

図4のアンケート調査結果は、経済産業省が調査対象を「転職に関心があるが未経験の

30代~50代」に絞って行ったものです。

 

キャリアパスに対する考えを調査したものですが、スペシャリスト志向である人が全体の67.2%を占めており、過半数を超えています。

 

2位は異なる職場経験志向(ゼネラリスト)を持つ人が47.6%となっており、スペシャリスト志向の次に多くなっています。

 

この調査からも、近年のビジネスパーソンは、ゼネラリストよりスペシャリストとしてキャリアを積んでいきたいということが見えてくるでしょう。

 

②先進国でも中スキル業務の割合が低下している

下図5は先進国における「スキル別 就業者割合の変化(1995年→2015年)」をまとめた表です。

 

スキル別就業割合

図5 引用)内閣府「日本経済2017-2018 成長力強化に向けた課題と展望平成30年1月
内閣府政策統括官(経済財政分析担当)第2章 多様化する職業キャリアの現状と課題」P79(https://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/0118nk/pdf/n17_2_1.pdf)

 

各国とも1995年から20年後の2015年では、中スキル業務の割合が低下していることが読み取れます。

 

この表で表されている高スキルとは、医師や弁護士、企業経営者などの管理的職業を含んでおり、高度な専門性や技術が求められる業務です。

中スキルは、事務、職人的製造、大型機械等の運転、建設機械操縦や部品組立作業等を含み、知識や経験が求められる業務。

低スキルは、物品販売業務、営業など定型業務や個人サービス業務を含んでいます。

 

特に顕著なのがフランスで、20年前と比較するとマイナス12%となっており、次いでイギリス、イタリア、ドイツ、米国、カナダの順になっています。

日本は先進国の中では緩やかな低下となっている状況です。

 

5.まとめ

 

今回は、若い世代を中心にスペシャリスト志向が高まっていることについて詳しく解説をしていきました。

 

先進諸国でも見られるように、時代は浅く広い知識でひと通りのことがこなせるゼネラリストよりも、深く狭い専門的な知識でグレードの高い仕事ができるスペシャリストを求める傾向が高まっています。

 

最近の技術進歩のスピードは加速度を増していき、就業期間が長期化していくことを考えても、年齢に関係なくスキルアップしていく必要性がますます顕著に表れていくでしょう。

 

これからは、何となく与えられた仕事をこなしていくだけではなく、専門性やスキルを磨いていき、社会に必要とされる人材に自分を成長させてみてはいかがでしょうか。

 

執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。
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