残業が減った、在宅の仕事が増えた、などの理由で副業に興味を持つ人が増えていますが、せっかく副業をするなら今後も役立つスキルを身につけるというのもひとつの考え方です。
そこで今回は、英語の学び直しや英語を使った副業について紹介したいと思います。
1.「学び直し」に「英語」を選ぶ人は多い
マイナビが全国の20~59歳の会社員を対象に調査によると、自分の時間を使って「学び直し」をしている(していた)人が選んだジャンルは下のようなものです(図1)。

図1 勉強したジャンル(出所「学び直しの「理想」と「現実」に大きなギャップ? 学び直しでキャリアアップに成功した人は少数」マイナビ転職)(https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/03#section06)
パソコン、医療・福祉と並んで語学(英語)が挙げられています。
英語というと、多くの人が「できたほうが良さそう」という印象を持ちながらも、できなくても現状はなんとかなっている、あるいはすぐに活かす機会がなさそう、などの理由で先送りしてしまいがちです。
しかし、ダイバーシティの時代、いつ必要とされるかわかりません。
そこで、副業で英語を使ってみるという方法もひとつの考え方です。
2.英語を使った在宅ワーク
在宅でできる英語を使った仕事には多くの種類があります。
・各種マニュアルや取扱説明書の翻訳(英語→日本語、日本語→英語)
・YouTube動画の英訳
・既存ホームページの英訳
・外資系企業の見積書などの英語→日本語訳
・電話やメールの対応代行
・英語ニュースの翻訳
クラウドソーシングサイトでよく見られるのがこれらの在宅での業務委託です。
中にはTOEICのスコアを指定する求人もありますが、英語をつかった業務経験がそれほどなくても取り組めるものも含まれています。
近年では、特に海外に自社の商品を売りたい企業が、サイトや商品説明などを英語で作りたいと考えてネットに求人を出しているケースがよくあります。
また、その後の電話やメールでの問い合わせへの対応も、専門でこなしてくれる人材を求めています。
もちろん、自信があればオンライン英語講師という仕事もあります。
求人サイトなどでは、TOEIC700点以上あるいはそれ以上が求められます。
なお、筆者の周辺には、副業から英語を勉強し、転職に成功した人たちもいます。
友人の一人は、フィットネスインストラクターをこなしながら知り合いの貿易会社を手伝っており、その空き時間で英語の勉強をしていました。
そしてある時、貿易会社の方で正社員に採用されることになり、現在は海外在住です。
それまでとは全く違う業界での仕事ですが、オープンマインドな彼女には今の仕事のほうが合っていて、やりがいが大きく変わったそうです。
また、ある調理師学校に勤めていた知人は英語を学び、フードコーディネーターとして独立しました。食材の見本市などで人脈を構築していった結果です。
3.英語力と人材競争力
英語力と人材競争力の関係についての興味深いデータもあります。
世界100か国で統一テストが実施英されているEF FPIは英語力の国際的ベンチマークのひとつです。
そして、EF EPIと経済や人材との間には様々な相関関係があります。
まず英語能力の高い国や地域では、労働生産性が高くなる傾向にあるというものです(図2)。

図2 英語力と生産性(出所「EF EPI 英語能力指数」EF)(https://www.efjapan.co.jp/__/~/media/centralefcom/epi/downloads/full-reports/v9/ef-epi-2019-japanese.pdf p17)
もちろん、英語を使えるようになればすぐに仕事が早くなる、ということではありません。
しかし国レベルで見ると相関関係が浮かび上がってくるということです。
また、人的資本の高さにも繋がっています(図3)。

図3 英語力と人的資本力(出所「EF EPI 英語能力指数」EF)(https://www.efjapan.co.jp/__/~/media/centralefcom/epi/downloads/full-reports/v9/ef-epi-2019-japanese.pdf p17)
また、英語力とイノベーションの相関関係も指摘されています(図4)。

図4 英語力と研究開発への取組(出所「EF EPI 英語能力指数」EF)(https://www.efjapan.co.jp/__/~/media/centralefcom/epi/downloads/full-reports/v9/ef-epi-2019-japanese.pdf p12)
英語力が高い人は収入が上がる、という話を聞くこともありますが、ここで重要なのは、英語力が「どのように」収入を上げるのかです。
もちろん、特技の一つとして空き時間に翻訳や講師の仕事をするのも良いでしょう。
ただ、本業の中で収入を上げるには、本業とそれなりに噛み合わせていく必要があるでしょう。
例えばEFは、英語力は多様性へのアクセス方法であり、多くの知見に触れることができるツールである面を強調しています。
確かに、ひとつの物事を取ってみても、国によって考え方が異なるものです。しかし、英語という形でしか共有されないことが多くあります。
それらを吸収し、イノベーションを生み出す有力な道具になるでしょう。
また、英語力の高い人が「社内で唯一の存在」になることもあります。特にこれからの時代には欠かせない人材になる可能性は高いでしょう。
外国人との協業は、これからますます増える可能性が大いにあるからです。
例えば筆者の知るIT企業はインドのエンジニアの採用を決め、2021年の春に入社することが決まっています。
現在研修役として彼らに日本語や仕事を教え、社内でのコミュニケーション役になっているのは、英語のできる中国人社員です。
このような光景が、いつどこで見られるようになってもおかしくありません。
その場合は、ただ「英語が得意」だけでは足りず、英語が得意というだけの人を外から連れてきても即戦力にはなれません。元から社内にいてこその唯一無二の人材です。
4.多様性の時代の戦力として
ここまで見てきたように、英語を身につけることで得られるのは、副収入だけでなく本業の中でも強みになるということです。
収入が上がる、というのはこうした知見の広さや存在の唯一性によるものです。
特に外国人との協業については、先ほど紹介した例とは逆に、外国人を受け入れたいが研修やコミュニケーションをできる人材がいないから受け入れられない、という悩みを抱える企業は少なくありません。
英語を始めてみようかな…と思っても、目の前の目標がなければ長続きしにくいのもまた事実です。
まずは副業でちょっとした収入を得る、という動機があれば、また気分は変わる可能性がありますから、そこから小さな一歩を始めてみてはいかがでしょうか。