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手荒れが感染症のリスクになることも 消毒や手洗いで肌荒れを防ぐコツを薬剤師が解説します!

手荒れが感染症のリスクになることも 消毒や手洗いで肌荒れを防ぐコツを薬剤師が解説します!

 

手洗いや手指の消毒は、感染症の拡大防止に役立つ手段の一つです。

だれでも簡単に実践できる方法であるため、新型コロナウイルス感染症の流行にともない、意識的に手洗いをする人も増えています*1

 

手洗い回数の変化(2020年3月現在)

手洗い回数の変化(2020年3月現在)

引用)ライオン株式会社「手洗いの回数が増えた人必見!「ハンドケア」と「手荒れを防ぐ手の洗い方」」*1(https://lidea.today/articles/002587)

 

 

 

その一方で、頻繁な手洗いや消毒で手荒れが進み、悩む人も急増しています。

 

手荒れがひどくなると、痛みやかゆみで十分な手洗い・消毒ができなくなるケースもあります。

また、傷口からウイルスが侵入する可能性も否定できません。

 

そこで今回は、手洗いや手指の消毒とセットで覚えておきたい手荒れ対策を紹介します。ハンドクリームの塗り方や適量のほか、薬剤師が実践している手荒れ対策にもふれますので、有効な手荒れ対策をさがしている方はぜひ参考にしてください。

 

 

 

 

 

1.石鹸やアルコールで手が荒れる理由

 

 

石鹸による手洗いやアルコールなどによる消毒は、汚れや雑菌だけではなく、肌のバリア機能まで損なってしまうことがあります。

バリア機能とは、肌のうるおいを保ったり、異物の侵入を防いだりする肌本来が持つ機能のことです。

 

肌が健康であれば、手洗いやアルコール消毒をしてもバリア機能はすぐに回復します。

しかし、手洗いや消毒の頻度が高くなると回復が間に合わず、肌の乾燥が進んでしまいます。

 

乾燥がひどくなると、かさつきやざらつきだけではなく、ヒビやあかぎれが生じるようになります。

適切なケアを行わないと症状がさらに進行して、かゆみや水疱などをともなう手湿疹になることもあります。

 

左:正常な皮膚 右:バリア機能が損なわれた皮膚

石鹸やアルコールで手が荒れる理由

 

 

 

バリア機能を低下させる要因としては、

  • 洗い流しが不十分で石鹸成分が残っている。
  • 手洗い時の水温が高すぎる。
  • 手洗い後、水分をしっかりふき取っていない。
  • 水分をふき取る際に、強くこすり過ぎている。

などがあります。

 

気温が低く湿度が下がる秋から冬にかけては、特に肌が乾燥しやすく、バリア機能が損なわれやすいので要注意です。

 

 

 

 

2.消毒・洗浄は保湿ケアとセットで

 

 

手洗いをした後やアルコール消毒をした後に、ハンドクリームなどでしっかり保湿ケアをすれば手荒れをある程度おさえられます。

ただし、感染症の拡大を防ぐために、ハンドクリームは個々で用意するのがベストです。

やむを得ず共有する場合は、チューブタイプやジャータイプを避けて、ポンプタイプを用意することをおすすめします。

 

ハンドクリームを上手に使うポイントは、惜しみなくたっぷり塗ることです。

大雑把な目安ですが、チューブタイプのクリームを大人の人差し指の先から第一関節までのせた場合、両手のひら2枚分を塗るのに適した量(約0.5g)になります。

ローションタイプであれば、1円玉と同じくらいの大きさで両手のひら2枚分の量になります。手の甲にも塗る場合は、この量の2倍が必要です。

 

 

 

皮膚用薬(塗り薬)ってどのくらいの量を塗るのがいいの?

引用)第一三共ヘルスケア株式会社 ひふ研「皮膚用薬(塗り薬)ってどのくらいの量を塗るのがいいの?」*3(https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/qa/quantity/)

 

 

 

 

ハンドクリームの塗り方にも、コツがあります。

いきなり手の甲や指先に擦り込むのではなく、手のひらで軽く温めてから使うと伸びが良くなります。

また、しわの方向に平行に塗り広げると、浸透しやすくなります。指先や指の間も忘れずに、やさしく塗りましょう。

 

 

 

感染対策のススメ手荒れの原因とその対策

引用)サラヤ株式会社「手荒れの原因とその対策」*4(https://med.saraya.com/kansen/handh/taisaku/)

 

 

 

なお、ハンドクリームなどを選ぶ際は、塗り心地や香りだけではなく、成分にも着目しましょう。

症状 おすすめの成分
指先の冷えやしもやけなどがある場合 血行を促進する成分:ヘパリン類似物質、ビタミンEなど
赤みやはれ、痛み、かゆみなどがある場合 炎症をおさえる成分:グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、dl-カンフルなど
肌のかさつきやざらつきが気になる場合 保湿効果が期待できる成分:セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンなど

 

 

市販薬は、複数の成分が配合されているものが多いので、症状に応じた使いやすいものを選んでください。

 

 

 

 

3.保湿ケアが難しい場合の対応

 

 

ハンドクリームなどでケアをすれば手荒れの症状をおさえられることがわかっていても、職場によっては保湿ケアが難しい場合もあります。

 

そこでここからは、手指洗浄やアルコール消毒の機会が多く、仕事中の保湿ケアが難しい薬剤師が実践している手荒れ対策をご紹介します。

 

 

①石鹸は用途により使い分け

 

仕事中や帰宅時は、殺菌成分配合のハンドソープを使用しています。それ以外では、市販の普通のハンドソープを使用しています。泡タイプのものを選ぶことで、泡立てる手間を減らし、肌への負担もおさえています。

 

 

②アルコールは肌に合うものを利用

 

消毒用アルコールは、保湿成分が配合されているものがほとんどです。

有効成分が同じでも商品によって使用感(肌荒れのしやすさ)が異なるため、肌に合うものを選ぶようにしています。

 

 

③手洗いは水あるいは微温湯

 

手洗い時の水の温度が高いと、手の皮脂が洗い流されてしまいます。

そのため、手洗いはできるだけ水を使うようにしています。

外気温が低く、水温が低すぎて痛みを感じるような場合は、体温と同じかそれより少し低い温度の水で手洗いをします。

 

 

④水分はやさしく、かつ完璧にふき取る

 

水分をふき取る際は、ペーパータオルでやさしく手や指を包み、一滴残らず水分を取り除くように心がけています。

ゴシゴシこすると肌が傷つき、手荒れしやすくなります。

また、水分が残っていると、水分が蒸発する際に肌のうるおいも奪われてしまうため、指の間や爪のまわりまでしっかり水分を取り除くようにしています。

水分を残さないようにするだけで、手荒れはかなり予防できます。

 

手荒れを防ぐことは、感染拡大防止の観点からも非常に重要なことです。

手荒れがひどく、手洗いや消毒がツラい場合は、症状に応じて医療機関で治療を受けるようにしましょう。

 

今現在、手荒れが気にならない場合でもハンドクリームなどによるケアは必要です。

適切なケアを実践して、withコロナの時代を乗り切りましょう。

 

 

参考資料/参考サイト
*1参考)ライオン株式会社「Lidea>健康・美容>手洗い・うがい・除菌等>手洗いの回数が増えた人必見!「ハンドケア」と「手荒れを防ぐ手の洗い方」」
https://lidea.today/articles/002587
*2引用)
看護roo!「看護師イラスト集>症状>皮膚・感覚器関連>正常な皮膚とドライスキンのイラスト」
https://www.kango-roo.com/
https://www.kango-roo.com/ki/image_1091/
*3引用)第一三共ヘルスケア株式会社 ひふ研「皮膚Q&A一覧>皮膚用薬(塗り薬)ってどのくらいの量を塗るのがいいの?」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/qa/quantity/
*4引用)サラヤ株式会社「製品情報>医療用製品情報>Medical SARAYA>感染対策のススメ>手荒れの原因とその対策」
https://med.saraya.com/kansen/handh/taisaku/
執筆者
名前:中西 真理
プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。
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