働くコラム

50代からの独立・起業にはどのような課題があるか

50代からの独立起業にはどのような課題があるか

 

2019年春頃より表沙汰になっている話題の“黒字リストラ”

2020年からは、新型コロナの影響で早期退職・リストラはさらに進むことになります。

企業が人員整理で真っ先に着手するのが生産力の低い50代の人員です。特に年功序列型で上がってしまった管理職、具体的には組織を牽引していない、部下のいない管理職から整理するのが通例です。

 

この環境下では、やりたい仕事ができていない、現在の勤め先のままでは収入に不安がある、などの理由で、起業/独立を考える人増えます。しかし50代となると、ビジネスシーンでも多くの経験を積んできた年齢です。しかし当然、それだけで起業が成功するわけではありません。

今回は、起業/独立にスポットをあて、起業の現状と、起業にあたって知っておきたいことを紹介します。

1.起業をする人の年齢と動機を紹介

 

 

まず、実際に起業する人の年齢や動機について見ていきましょう。

 

下は、起業家の年齢構成です(図1)。

起業家の年齢構成

図1 起業家の年齢構成(出典:「2019年版中小企業白書」中小企業庁)

やはり若い人の起業が増加傾向にありますが、50代での起業者も一定の割合で存在し続けています。

 

そして、なぜ起業しようと思ったのか、起業に関心を持ったきっかけを、年齢・性別ごとに見たのが以下のようなものです(図2)。

起業家が起業に関心を持ったきっかけ

図2 起業家が起業に関心を持ったきっかけ(出典:「2017年版中小企業白書 概要」中小企業庁)

 

 

女性の場合は、結婚や出産といった環境の変化がきっかけになることが多いです。実際、妊娠、出産、育児を経験する中で、このようなものがあれば良かったのに、という体験やアイデアから新しい事業を生み出すケースは、よく聞かれるところです。

 

また、男性の場合は、日頃ビジネスマンとして過ごす中で、勤務先の将来への不安、あるいはやりたい仕事を求めて起業する傾向にあります。そこに、周囲の起業家や経営者から受ける影響が加わって、起業に乗り出すという形です。

 

50代男性が他の世代と違うのは、「先行きの不安感」の強さです。

会社員生活の終わりが具体的にイメージできるようになるため、若い世代よりも切迫した問題に感じることでしょう。

2.起業後の実態を知りましょう

 

 

そして、実際に起業してからその後どうなるか、については、いくつかの傾向があります。

 

起業、というと、動機、その人の前職、年齢、など様々な要素が絡んできます。その要素ごとに、起こした事業がどうなっているかの傾向を、中小企業庁が分析しています。

 

まず、当然ながら全ての新事業が同じように成長していく訳ではありません。中小企業庁は、起業した会社の成長パターンをこのように分類しています(図3)。

創業後5年、10年先にどのようになっているかのパターンです。

 

起業後の成長タイプのイメージ

図3 起業後の成長タイプのイメージ(出典:「平成29年版中小企業白書」中小企業庁)

 

 

図3から見て取れるのは、このような傾向でしょう。

「高成長型」とされているレベルの伸びを示す企業は、比較的早い時期にその結果が見られるということです。

 

続く「安定成長」「維持成長」と見ても、起業後の伸び率は、割と早い段階にその事業の成長速度が見えてきます。

 

そして、起業年齢と成長性の関係を示したのが下です(図4)。

 

起業家年齢と起業後の成長タイプ

図4 起業家年齢と起業後の成長タイプ(出典:「平成29年版中小企業白書」中小企業庁)

 

 

起業家年齢が低いほど、起こした事業の成長度合いが高いというものです。

 

ビジネスに対する考え方や、現在あるニーズ、その先を捉える力は、若いほど時代に即しているとも考えられるでしょう。柔軟性の高さもあるでしょう。

 

また、「起業」に対する意識の違いも、少なからず影響していそうです。

 

若い世代の場合、「今の社会の枠組みにとらわれたくない」というチャレンジ精神や、中にはそこから「一攫千金」を狙う人もいるでしょう。また、「ブラック企業」「ブラックバイト」という言葉に非常に敏感でもありますから、「雇われる」ことに対する価値観が多様であると考えられます。

 

また、40代くらいであると、「雇われる」ことにある程度慣れた上で、ビジネスの慣行や、ビジネスマンだからこそ感じられる肌感覚での社会のニーズ、景況感、といったものがあり、そこに、自分のスキルを加味するというバランスを考えて起業した場合には、高成長を遂げるということです。

 

それ以上の世代になってくると、どちらかというと「老後も働き続けるための布石」という色も出てくることでしょう。

 

なお、興味深いデータもあります(図5)。

起業と前職勤務先との関係

図5 起業と前職勤務先との関係(出典:「平成29年版中小企業白書」中小企業庁)

 

 

現在の会社をやめて起業する、となった場合、在職中に培ってきた人付き合いをなんとか利用できないか、と考えてしまいがちかもしれません。

 

しかし現状を見ると、退職した会社とあまり縁を持たない形での起業の方が高成長型になっている傾向があるのです。

そもそも、「退職した企業とは契約関係を持たない形で起業」というのが大半という統計です。

 

この辺りも、若い人ほど高成長の起業に成功している実態と関係がありそうです。

 

「副業・兼業の形での起業」も比較的高成長になっています。副業や兼業で、実際の勤め先の人を客にすることはあまり考えられませんから、「完全に違う環境で新しい事業を起こす」という考え方が、成長のための大きな要素と見られます。

 

「しがらみ」という言葉はあちこちでよく使われますが、起業に当たってはマイナスの方向に働くのかもしれません。

 

起業までには周囲に意見や助けを求めることがあって当然ですが、そうした人間関係と取引関係は明確に分けた方が良さそうです。

 

 

 

3.起業にあたって避けられない道

 

 

さて、では実際に起業してみよう、具体的に計画してみよう、となった時に知っておきたいのはこのようなことです。

当然ながら、まずは資金が必要になります。そして、人員です。他にもあるでしょう。

 

起業後の新しい会社は、年を追ってこのような課題に直面しています(図6)。

 

 

起業後成長段階ごとの課題

図6 起業後成長段階ごとの課題(出典:「2017年版中小企業白書 概要」中小企業庁)

 

 

成長過程を追うごとに、中心課題が変化していきます。

「初期投資」だけでなく、会社が安定した段階でもう一段の投資が必要とされる、ということを意識しておきましょう。そして、資金に関しては、金額というよりも、企業の成長性は「資金調達方法」と関連があります(図7)。

 

 

担保や補償によらない融資の利用城状況

図7 担保や補償によらない融資の利用城状況(出典:「2017年版中小企業白書 概要」中小企業庁)

 

 

担保や保証によらない融資、というのは、つまり事業の計画性や先々の成長可能性によって融資を受けられた、ということです。

 

一方で担保融資というと、特に創業期には設備もほとんどありませんから、起業者の財産を担保に入れるケースが多いのではないでしょうか。

 

しかし、退職金や不動産といった自分の資産を担保に資金の融通をして開業資金を得るよりも、明確なビジョンを担保に融資を受けられるような起業こそが成長するということです。

 

「退職金で当面しのげるだろう」という考え方は避けた方が良いとも考えられます。万が一のことが起きた時、社員も自分も路頭に迷ってしまうからです。

 

融資は「困った時に受ける」という考え方はしないほうが良いでしょう。

 

 

 

4.まとめ

 

 

ここまで起業家の動機や、その後の経緯について見てきました。

 

いくつかのデータを挙げましたが、ひとつ気をつけておきたいのは、統計のベースとして、会社が現存しているからアンケートに回答できている、というところです。

 

「起業」を意識するきっかけはどんなことでも良いでしょう。ただ、「商品先にありき」の考え方でなければ、資金繰りもそうですし、その会社を魅力的と感じて手伝ってくれる仲間にも限度があるでしょう。

 

経験に裏打ちされた明確なビジョン、これは何歳からの起業でも必須です。なお、起業資金に関しては、現在、日本政策金融公庫が起業支援基金として特別利率で融資する制度を設けています*1。

 

前提条件は、起業者が①女性②35歳未満あるいは55歳以上③事業開始後概ね7年以降、のどれかに該当する場合です。

 

こうした制度についても知っておくと良いでしょう。

また、「週末起業」という形で、まず感覚を掴んでみる、これも有効な手段でしょう。

 

「人生100年時代」と言われる中での50代での起業は、その後まだま会社を成長させなければなりません。

老後の趣味として、退職金で自宅をリフォームして店をやる、というのとは事情が違うことを意識しておく必要があります。

 

 

 

参照データ
*1 女性、若者/シニア起業家支援基金(日本政策金融公庫HPより)
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面接官のホンネ 管理人

アラフォーの管理職。12歳と10歳の娘がいます。 新卒・中途採用に10年以上携わり、安定を手にするために私自身も財閥系企業に転職しました。次世代に知識と経験の継承を目的として「リアルな現場の声」をテーマに、“面接官のホンネ”を立ち上げました。わかりやすく、人事/採用の担当としての本音をお届けします。

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