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AIに代替されにくい仕事は?読解力を磨きどこでも通用するビジネススキルを身に着けよう

AIに代替されにくい仕事は?読解力を磨きどこでも通用するビジネススキルを身に着けよう

 

AIによって多くの人の仕事が奪われるのではないかと危惧される一方で、「読解力」に注目が集まっています。

 

しかし、AIと文章を読む能力がどう関係しているのかと疑問に感じる人も多いかもしれません。

 

読解力と言っても、これからの時代に必要とされるものは、今までのように文章を読んで内容を理解するだけのものとは大きく異なります。

 

どうしてAI時代に文章を読むことの必要性が高まるのでしょうか。

 

 

1.ビジネスで読めないと困る書類

 

「仕事でそんなに文章を読む必要があるのか?」

 

それほど文章を読まなくても、それなりにやってこれたという人にとっては、疑問に感じるかもしれません。

しかし、最初にちょっと説明を受けるだけで誰でも簡単にこなせてしまうような仕事というのは、これからの時代には、どんどんAIに置き換えられていってしまいます。

仕事を奪われないようにしようと思えば、AIには簡単にできない判断を要求されることをしなければならず、そうなってくると様々な文章を読む必要が出てきます。

 

電話やチャットで手軽にやり取りできるとはいえ、ビジネスにおいては、読めなければ仕事に支障をきたしてしまう文章というものあります。

例えば、商品や製品についての取引先との取り決めである「仕様書」であったり、従業員への指示を徹底させるための「指示書」といったものは重要です。

やり取りの中でも分量が多く、口頭で伝えるのが難しい細かく複雑なものは、文章という形でやり取りされることが多くあります。

 

ここで大事になってくるのが、単に文書を読めるというだけでなく、その意図も含めてちゃんと理解することです。

意図をくみ取ったうえで柔軟に対処できるというのが、人間の持つ強みです。

 

また最近では、コンプライアンスの重要性も繰り返し話題になります。

ただ、ルールを守るといっても、条文や規約の文章というのは読みづらいものです。

そうかといって、読まないわけにもいきません。

 

新規事業をする場合などにおいては、法令に違反していないかを条文などを読んでチェックするというのは、特に重要になってきます。

単調で機械的な仕事はAIがやるようになるからこそ、人間の方は、状況判断や柔軟性が必要になってくるような仕事ができるようになる必要があります。

 

そうなってくると、いかに多くの情報の中から必要なものを選び出して分析し、判断を下せるようになれるのかが大事になってきます。

書籍やネット上の記事、仕事でやり取りする書類や資料といったものから情報を集めて分析できるようになるためには、読解力が必要です。

 

AI時代に読解力が必要だと言われる背景には、そのような理由があるわけです。

 

 

2.読解力の現状とは

 

SNSの普及で長い文章を読む機会が少なくなり、読解力が低下してきていると言われています。

実際にどれくらい低下してきているものなのでしょうか。

 

それを知る手がかりになるのが、OECD加盟国の生徒の学習到達度調査(PISA)です。

 

PISAでは、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3つの分野について、世界の15歳児、約60万人の学力を調査しています。

2018年の調査では、読解力が重点的に調べられました。*1

 

以下に示すのが、PISAの第1回目の調査から直近の2018年までの読解力における日本の順位です。

 

 

PISAでの日本の読解力における順位

参考)国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査国際結果の要約~」P26をもとに筆者が作成(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf)

 

 

この結果を見ると、2012年をピークに下降傾向で、2018年には大きく順位を落としてしまっています。

ただ、注意しないといけないのが、2018年にはコンピュータ使用型問題の導入があり、問題の解答の仕方が大きく変わった点です。

順位が大きく下がったからといって、能力が衰えたからだとは断定できません。

 

「読書への関わり」に関する質問において、日本は「読書は、大好きな趣味の一つだ」及び「本の内容について人と話すのが好きだ」について「まったくそうだと思う」「そうだと思う」と回答した割合が OECD 平均よりも多いという結果が出ています。*1

 

このことから考えると、長い文章を読むのを面倒くさがるようになった結果、読解力が下がってしまったというわけではなさそうです。

それでは、読解力低下の一番の要因は何だと考えられるのでしょうか。

 

PISA の調査問題における難しさの認識」に関する 3 項目について、日本は

 

「(1)分からない言葉が多かった」

「(2)自分には難しすぎる文章が多かった」

「(3)複数ページを読んでいるうちに、どこを読んでいるのかわからなくなった」

 

の全てで「まったくその通りだ」「その通りだ」と回答した割合が OECD 平均よりも多くなっています。*1

 

このことから、読書自体は嫌いではないものの、平易な文章ばかり読んでいて、難しい文章を読む力が低下していると考えられます。

さらに、複数の資料を読み比べて、頭の中で情報を整理するという能力にも問題があります。

 

分かりやすくまとめられた文章に慣れてしまっているため、難しい文章やバラバラな資料を読みこなすのが苦手になっているという現状が読み取れます。

 

 

3.現代人に必要とされる「PISA型読解力」

 

ではAI時代には、どのような読解力が求められるのでしょうか。

それを知るためには、PISAでどのような問題が出題されているのかを見れば分かります。

2018年に行われたPISAでは、大学教授が書いたブログを読みながら、その内容について答えるというものでした。*2

 

文章中から必要な情報を探し出して解答するという問題は、国語の試験問題で経験したことがある人も多いはずです。

一方で、事実と意見を区別させる問題や、複数の資料を読み比べるような問題など、思考力や情報を整理する能力を見るような問題も出題されており、単純な内容理解だけではありません。

PISAでは読解力を、どのように考えているのでしょうか。

 

読解力がどのように定義されているのかを見ると、

「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」

とされています。*1

従来の読解力のイメージからすると、テキストを理解するというところまでは同じでしょう。

 

しかし、これからの時代の読解力は、それだけでなく、利用し、評価し、熟考するということも必要であるとされています。

文章中から必要な情報を抜き取って解答するだけであれば、スピードと正確さにおいて、やげてAIに追い抜かれてしまいます。

AI時代を生き抜くためにも、得た情報をどのように評価し、利用していくのかが重要になってきます。

 

もはや、単純に文章を読んで理解するだけが読解ではありません。

読んだ先のことも見据えた読解というのが、これからの時代に求められるようになってきています。

 

 

4.どうやって読解力を高めればいいのか

 

読解力を上げる方法として多くの人が思いつくのが、「とにかくたくさん本を読む」ということです。

しかし、忙しい中でたくさん本を読むというのは、並大抵のことではありません。

効率よく読解力を伸ばすには、どうすればいいのでしょうか。

 

読解力を上げるうえで重要になってくるのが、次の4つです。*3

 

①読む前に仮説を立てる

②論理を理解し、正確に読み取る

③ボキャブラリーを増やす

④言葉の前提に注意する

 

それでは順を追って解説しましょう。

 

まず「①読む前に仮説を立てる」です。

本を読む際には、いきなり読み始めるのではなく、「どんなことが書かれていそうなのか」と自分なりに仮説を立てみましょう。

 

何も考えないまま、なんとなく文章を目で追うだけでは、どんなことが書かれてあったのかということが頭の中で整理しにくいものです。

 

あらかじめ仮説を立てて、その仮説と本の内容を比較しながら読むことで、頭の中で知識が整理されやすくなります。

もし、自分が立てた仮説と書かれていたことが違っていたという場合にも、「どうして違うのか?」と疑問を持つことで、理解が深まります。

 

次に「②論理を理解し、正確に読み取る」です。

難しい文章を読みこなせるようになるためには、どのような論理によって文がつながっているのかを理解する必要があります。

具体的に必要になってくる論理は、次の3つであるとされています。

 

 

読解力の鍛え方

参考)週刊東洋経済(2019年10月12日号)「AIに負けない読解力を鍛える」P58をもとに筆者が作成

 

 

 

文と文が、どのような論理によってつながっているのかが分かれば、文章の内容を正確に理解できるようになります。

 

最後に、「③ボキャブラリーを増やす」と「④言葉の前提に注意する」です。

文章の意味を正確に理解するためには、知っている単語を増やすことが欠かせません。

知らない単語に出会ったら、面倒くさがらずに辞書を引いて意味を確認することが大事になってきます。

また、同じ言葉であっても違った意味で使われることがあるので、前提に注意することも必要になってきます。

 

同じ「デザイン」という単語でも、見た目をよくするように配置や配色を考えるという意味もあれば、システムのデザインというように、使いやすいように設計するという意味もあります。

どんな意味で使われているのかを取り違えてしまうと誤解のもとになってしまうので、注意が必要です。

 

読解力はすぐに身につくというものではありませんが、AI時代を生き抜くためには必須です。

仕事のスキルを磨いていくうえで、ぜひとも意識してみてはいかがでしょうか。

 

 

参考資料/参考サイト
*1 参考)国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査国際結果の要約~」P5,6,14
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf
*2 参考)国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査問題例~」P1~10
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/04_example.pdf
*3 参考)週刊東洋経済(2019年10月12日号)「AIに負けない読解力を鍛える」P58~67
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コミュニケーションマインド代表、心理カウンセラー(NLPマスタープラクティショナー) 職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決を脳科学と心理学を用いてサポートしています。

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