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副業・兼業に挑戦してみよう~女性にとって価値あるキャリアの作り方とは~

副業・兼業に挑戦してみよう~女性にとって価値あるキャリアの作り方とは~

 

働き方改革の目玉の一つである「副業・兼業の推進」について、議論が活発になっています。

なかでも

「(複数の就業先で働くので)結果的に長時間労働につながる」

「労災や通勤災害の対応について疑問が残る」

「同業他社でアルバイトなどされたら情報漏洩の危険性がある」

など、リスクテイクばかりが先行しているように感じます。

 

しかし、女性にとっての「副業・兼業」という働き方は、これまでのキャリアをさらに充実させる可能性を秘めています。

既存の仕事を続けたまま始められ、ゼロからのスタートではないためにハードルが低いからです。これまで他の分野への挑戦や、さらなる自己研鑽に躊躇していた場合でも、副業や兼業の形ならばチャレンジしてみようかな、という気持ちになりやすいでしょう。

1.副業・兼業の定義とは?

 

 

ところで、「副業・兼業」とはどういった働き方を指すのでしょうか。

実は、副業・兼業に法律上の定義は存在しません。中小企業庁「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言」によると、「兼業・副業とは、一般的に、収入を得るために携わる本業以外の仕事を指す」*1とされています。

 

また、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである」*2と書かれています。

 

このように、型にはまった就業形態ではなく、ある程度の自由度を持って選択・実行できる要素が、副業・兼業にはあります。

 

このような流れを受けてか、依然少ない数字ではありますが、副業を希望している人が年々増加傾向にあることが分かります(図1)。

 

副業・兼業の促進に関するガイドライン(副業を希望している者の推移)p1

図1:厚生労働省/副業・兼業の促進に関するガイドライン(副業を希望している者の推移)

 

 

一方、この「副業・兼業」の先に見据えるものは「起業」であると、第2回働き方改革実現会議において、安倍総理大臣が言及しています。

 

実は、日本は創業に関して後進国という数字が有るのですが、ご存知でしょうか?

2014年度の起業活動指数(GEM)*33.8%と、OECD諸国の中でも最下位でした。*4

加えて、「創業に全く関心がなく、むしろネガティブに捉える傾向がある」とされる「創業無縁層」の割合が70.9%と、欧米諸国と比較して非常に高いため、社会の創業に対する意識改革、起業環境の見直しが不可欠とされています。

 

このような、創業に対するネガティブな意識・環境の一つの解決の方向性として、「副業・兼業の促進」に期待が寄せられています。創業促進の観点からみると、副業・兼業の促進によって潜在的創業者が増大し、ゆくゆくは文化や意識に根ざし、

「創業を考える人そのものが少ない」

という、日本特有の課題解決に大きく貢献する可能施があると考えられています。*4

 

「起業」も副業・兼業の一つの選択肢ではありますが、まずは本来の目的である「本業以外の仕事」という意味での副業・兼業に、フォーカスしてみましょう。

 

 

 

2.女性のライフイベントから見る「第2のキャリア」

 

 

女性特有のライフイベントの中でも、「出産・育児」というキーワードは、就業を続けることと深いかかわりを持ちます。

昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワーク等のリモートワークに注目が集まっていますが、在宅もしくは遠隔地で仕事ができる職種ならば、出産・育児が離職の原因となる率はかなり低くなるでしょう。また、国の政策や働き方の多様性から、これまで「M字カーブ」で表されていた女性の年齢階級別労働力率が、近年ではM字カーブの底上げにより、台形に近い形状を示すようになりました(図2)。

もちろん、政策や働き方だけでなく、出生率の低下も要因の一つではありますが、一方で、女性が育児と仕事の両立を図れる職場環境が整備されてきた証とも言えるでしょう。

 

平成30年版働く女性の実情-働く女性の状況p4(女性の年齢階級別労働力率)

図2:厚生労働省/平成30年版働く女性の実情-働く女性の状況p4(女性の年齢階級別労働力率)

 

 

しかし、リモートワークで対応できない業種、職種にとって、出産・育児は「完全な離職」を意味するキーワードになり兼ねないのも現状です。出産や育児を機に、ここまで構築してきたキャリアを手放したくない、そう考える女性は少なくないはずです。

そんな時、「第2のキャリア」の準備があると、離職を恐れることなく、自身のキャリアを積むことが可能です。

そして、第2のキャリアを持つことで、本業の企業への依存から離れ、新たな視点でキャリア形成を見直す機会になるかもしれません。

 

 

 

3.パラレルキャリアの考え方

 

 

出産・育児による就業維持の問題とは別に、多様な働き方の観点から、純粋に収入を増やすために複数の仕事がしたい、また、自己実現の場の拡大として複数の職場で働いてみたい、という意見があります。

実際に、本業での職種と異なる職種に興味があったとしても、配置転換が困難な場合や、そもそもその職種が存在しない場合は無駄な願望で終わります。そんな時、「副業や兼業」がそれらの両立を可能にしてくれます。

 

自分の特技(資格や専門的なスキル)を生かして副業をすること、また、過去の夢だった職業を副業として選ぶこと、このような「複業」での働き方を「パラレルキャリア」と呼ぶことができます。パラレルキャリアとは、オーストリアの経営学者ピーター・ドラッガーが1999年に提唱した説で、「本業を持ちながら第2のキャリアとしてスキルアップや人脈作り、自己発見、自己実現を行うことで、相乗効果を生み、より充実した社会生活が送れる」というものです。

 

前述した出産・育児による完全な離職を防ぐための「第2のキャリア」も同じですが、パラレルキャリアの考え方は、単に収入増加だけが目的ではありません。社会貢献(ボランティア)活動の一種「プロボノ」や朝活といった、自身の専門スキルや知識、経験を活かして行う活動なども、パラレルキャリアの一つです。

パラレルキャリアを選択する人々の動機はさまざまですが、現在では報酬よりも自己実現などの理由でキャリアを複線化するケースも増えています(図3)。

 

雇用類似の働き方に関する検討会第2回(資料2-2:プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018 p8)

図3:厚生労働省/雇用類似の働き方に関する検討会第2回(資料2-2:プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018 p8)

 

 

 

4.女性が目指すべきキャリアのつくり方

 

 

現代の社会において「絶対につぶれない会社」など存在しません。本業一筋で仕事を続けてきたケースより、複数のキャリアを持っているケースの方が、企業(組織)への依存度も低く、自立した社会活動を続けることができます。副業・兼業のメリットは、何より、本業を辞めずにスタートできること、つまり、スモールスタートが可能なことです。

そして、パラレルキャリアの考え方は、これからの日本におけるキャリア形成の手段として必至となります。

女性が一生のうちに経験する、さまざまなライフイベントを楽しみながら、同時にキャリアアップにも励むことができれば、それこそが人生の充実へとつながるでしょう。

 

「兼業・副業の促進は、場所、時間、雇用形態にとらわれない柔軟かつ多様な働き方の実現に向けた第一歩です。誰もが希望すれば、複数の地域で、複数の仕事をすることができる社会になれば、その中の一つとして、自分自身で創業する可能性は高まり、開業率の増加にもつながる。そこでの操業は、単に収入を得ることが目的ではなく、社会貢献・地域貢献や趣味や文化活動の展開など、多様な価値観に基づく自己実現への取組となる」*5

と、国としても今後必要な働き方として、副業・兼業を推進しています。

 

かくいう私も、社会保険労務士という本業を持ちながら、いくつかの仕事をこなす身なので、ある意味マルチジョブホルダーです。本業以外の仕事から得るもの、学ぶことは想像以上に多く、それらが本業へプラスに作用していることも確かです。また、複業(複数の仕事)を持つことで、本業を客観視することができ、冷静に分析や判断ができるようになったこともメリットだと感じています。

女性の皆さん、時間とキャリア(スキル)の有効活用として、副業・兼業について検討してみませんか。

 

 

参照データ
*1引用:中小企業庁/兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言p1
*2引用:厚生労働省/副業・兼業の促進に関するガイドラインp1
*3:企業活動指数とは、「起業家精神に関する調査(Global Entrepreneurship Monitor/グローバル・アントレプレナーシップ・モニター:GEM)において、「起業家・起業予定者である」との回答を得た割合のこと。
*4参考:中小企業庁/兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言p1
*5引用:中小企業庁/兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言p29
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面接官のホンネ 管理人

アラフォーの管理職。12歳と10歳の娘がいます。 新卒・中途採用に10年以上携わり、安定を手にするために私自身も財閥系企業に転職しました。次世代に知識と経験の継承を目的として「リアルな現場の声」をテーマに、“面接官のホンネ”を立ち上げました。わかりやすく、人事/採用の担当としての本音をお届けします。

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