社会人になってから大学院に入り、専門分野を勉強したり学位を取得したりする人もいます。
実際、社会人に配慮して夜間や土日に授業を行う大学院はいくつもあり、年齢を問わないキャリア形成の一つの場所になっています。
1.社会人大学院とは
社会人がどのような自己啓発を行なっているかについての内閣府の調査では、講演会やセミナー、社内勉強会といったものが多くなっています(図1)。

図1 社会人の自己啓発の割合(出典:「平成30年年度 年次経済財政報告」内閣府)
そしてこの中には、数は多くはありませんが「専門学校・職業訓練学校等」「大学・大学院」を合わせた「通学」をしている人たちがいます(7.8%)。仕事をしながら学校に通うというものです。
文部科学省の学校基本調査*1によると、平成30年度では大学院の修士課程に7,930人、博士課程には6,368人の社会人が入学しています。
そして、2年後の変化を見ると、こうした「通学」での自己啓発をしている人の方が年収が上がっているという調査結果です(図2)。

図2 社会人の自己啓発の効果(出典:「平成30年年度 年次経済財政報告」内閣府)
社会人大学院への通学方法は、2種類あります。
ひとつは、会社に籍を置いたまま、会社の許可があれば全日制に2~3年通うというやり方です。
ただ、このような制度のある会社は多いわけではなく、一般的には夜間や休日に授業を行う大学院に、働きながら通う人がほとんどでしょう。社会人の通学に特化した大学院もあれば、有名どころの大学院でも全日制と同時に社会人向けの夜間コースを設けているところが多くあります。
2.どんな学部やコースがあるか
現在、大学などで学び直しをしている社会人の専攻や身につけたいスキルは、以下のようなものです(図2)。

図3 学び直しを行なっている社会人の特徴(出典:「平成30年年度 年次経済財政報告」内閣府)
医療分野を除けば「社会科学」「工学」というのが多いです。「工学」は主に現在技術職についている人が多いと考えられます。「その他」には経営・経営技術・国際関係などが含まれていて、人数が多くなっています。
また、通学の目的は「理論的思考力」「問題設定・解決能力」など、知識や学位だけでなく社会人としての基礎力やマネジメントに必要な能力を習得したいという社会人学生が多いのが大きな特徴です。
実際、社会人大学院の多くでは、ビジネスに関わる学部や法律に関わる夜間講座を設置しています。
あくまで一例ですが、その一部をご紹介させて頂くと、筑波大学大学院は東京キャンパスで社会人を対象とした夜間・休日のカリキュラムを設置しています。ビジネス科学、経営システム科、企業法学などの専攻があります*2。
慶應大学大学院ではMBAに特化した2年コースがあるほか*3、早稲田大学大学院もビジネス、ファイナンスに特化した社会人向けの夜間コースを開講しています*4。
同じく立命館大学*5、青山学院大学*6などにも社会人向けの夜間講座があります。
他にも、ビジネスに特化した大学院が数多くあります。通信講座を実施しているところもあります。
3.社会人大学院の入り方と費用
社会人大学に入る際には、大学院ですから当然入学試験があります。ただ、高校から大学に入る時の入試とは異なり、社会人入試の場合は語学検定や小論文、面接といった形式での試験が主流です。
また、気になる費用です。公立と私立、あるいは学校によって開きはありますが、公立の場合、入学金を含む初年度で80万円強(入学金約28万円、年間授業料約54万円)、私立は学校によって大きく異なりますが、初年度で100~200万円程度というところが多く見られます。
経済的負担は大きいのが実際ですが、日本学生支援機構の奨学金制度のほか、大学によっては給付型も含む独自の奨学金制度や授業料の減免制度があります。
もちろん貸付型の奨学金はのちに返済していかなければなりませんので、それなりのマネープランも必要とされます。
4.まとめ
費用は決して安くありませんが、大学や大学院には「常に最先端の研究や学説に触れることができる」という特徴があります。目的を共にする社外の仲間を作ることができる場所でもあり、人脈作りに役立つといった側面もあるでしょう。
また、学生時代とは違う社会人だからこその視点から物事を学ぶことで、以前の自分にはなかった気づきも出てくることでしょう。
そして多くの社会人学生が望んでいるように「知る」だけでなく「考える」「プレゼンテーションする」能力がつくのは、一方通行ではない学び方とは違う「通学」の特徴でもあります。
なお文部科学省が、大学や大学院の講座を検索できるサイトを民間企業に委託し、設置・運営しています。地域や金額、通学条件などの条件検索ができますので、興味のある方は一度覗いてみてはいかがでしょうか。
マナパス:リンク
*2 筑波大学
*3 慶應大学大学院経営管理研究科
*4 早稲田大学大学院経営管理研究科
*5 立命館大学ビジネススクール大学院経営管理研究科
*6 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科