キャリア形成 働くコラム

女性のキャリア形成、待機児童問題の解決のために知っておきたい基礎知識

女性のキャリア形成 待機児童問題の解決のために知っておきたい基礎知識とは

 

出産後に育児をしながらも仕事を続けたいと望む女性は増えています。

産休・育休を終えた女性が育児中に職場復帰や再就職を目指す際、共働きとなれば子どもを預ける場所が必要となるでしょう。

 

しかし、選考に落ちて認可保育所に預けられないという待機児童問題は未だに残っています。ここではその現状に触れ、他にどのような選択肢があるのか見ていきましょう。

 

1.待機児童問題 現状は

 

待機児童とは、主に認可保育所に入れなかった児童のことです。認可保育所は保護者等が自治体(区市町村)の窓口に申し込み、定員を上回った場合に選考が行われて入所者数が調整されるため、希望者全員が入れるとは限りません。

また、保育料は保護者の収入に応じて定められていますが、201910月から始まった幼児教育・保育の無償化制度により、原則35歳の子どもを対象に無償となりました(実費を除く)*1。都道府県に認可されているという安心感もあって多くの親が認可保育所を希望するため、定員超過が生じています。

 

保育所利用の仕組み

保育所利用の仕組み

(引用)厚生労働省「保育所利用の仕組み

 

 

2020年度末までに待機児童ゼロを目指したい政府は認可保育所の整備を進めており、保育の受け皿は年々増えていますが、その一方で出産後に職場復帰を目指す女性も増加。結果として、保育所申込者も多くなり、2019年4月時点の認可保育所の申込者数は、前年度より約7.2万人増の278.4万人となりました。待機児童数は1万6772人と、前年比3123人の減少にとどまっています。

 

待機児童解消に向けた取組みの状況

 

 

政府は2020年度末までの3年間において保育の受け皿32万人分の拡大を目標とし、女性就業率80%に対応するための対策を進めています。また、待機児童は12歳児に多く、全体の75%を占めていることから、特に12歳児の受け皿拡大に向けた取り組みを行う構えです*2

 

 

 

 

2.認可外保育施設とは

 

 

一方で、都道府県等の認可を受けていない、いわゆる認可外(無認可)保育所は、認可保育所に落ちてしまった場合の受け皿となるだけでなく、利便性からあえて選ばれるケースもあり、無認可=認可より劣っている、とは一概には言えません。認可の基準を満たしている保育所があえて認可を受けないこともあるのです。

認可保育所の運営基準とは異なる特徴的な教育プログラムがあったり、夜間に宿泊を含む保育があったりと、認可保育所ではできない部分が売りともなっています。入所者の選考基準も独自で定められており、希望者はその施設に直接申し込むことができます。

保育料も各々によって設定されていますが、認可保育所が無償化された際に「認可保育所に入りたくても入れず、やむを得ず認可外保育施設等を利用せざるを得ない子供たち」への代替的な措置として、一定の補助が受けられようになりました。保育の必要性があると認定された35歳までの子どもたちを対象とし、月額3.7万円までの利用料を無償化すると定められています*3

また、待機児童は都市部に集中しており、3600人以上を抱える東京都では、認可外保育施設の利用者も多いのが現状です。

 

待機児童解消に向けた取組の状況についてP5

(出所)厚生労働省「待機児童解消に向けた取組の状況について」P5より抜粋し筆者作成

 

 

そこで、認可外の施設を選ぶ際に不安を和らげるためにも、都による立ち入り調査が定期的に行われ、福祉保健局が公式ウェブサイト*4にて情報を細かく提供。「保護者自身の目で直接確認し、十分な説明を受け、納得した上で選ぶことが大切*5」として、事前に見学する際のチェックポイントや選ぶ基準を説明しています*6

 

 

 

3.復職のタイミング 給付金の延長も

 

 

認可保育所の定員に空きが出るのは通常、年度替わりの4月です。卒園者や上の年齢のクラスへの代替わりの季節がチャンスとなります。逆に4月以降に希望しても空きの出る可能性が低く、待機児童は増加していきます。つまり、育児休業が年度途中に明ける場合、待機児童の多い区市町村では認可保育所の利用が難しいため、職場復帰を4月に合わせるのがより現実的と言えるでしょう。

 

4月入所を目指すのであれば、申込みは前年10月頃から始まるため、それまでに方向性を決めておく必要があります。落選しても二次募集の可能性は残りますが、他の選択肢も探さなければなりません。2017年からは、認可保育所の選考で落ちた場合等、一定条件のもとで育児休業給付金の受給を子どもが2歳になる前日まで延長できることとなりました。育児休業を延長する際は、支給対象に該当するかを確認し、必要な手続きを忘れずに行いましょう。

 

 

 

また、保育士1人当たりが見る児童の数は、子どもの年齢が基準となっており、保育士1人につき12歳児は6人ですが、3歳児は20人まで増えます*7。待機児童の多くが12歳児であり、3歳を過ぎると認可保育所へ入れる確率も上がることから、その頃に照準を合わせて、再就職を考えるのも一案となります。

 

 

 

4.育児中の制度利用も視野に

 

 

育児中、すぐにフルタイムで働き始めることは無理でも、時短勤務やフレックスタイム制、在宅勤務等の制度をうまく利用し、復職を目指す手もあるでしょう。短時間勤務制度は、3歳未満の子どもを養育中の保護者等に法律でも認められた権利であり、1日の労働時間は原則として6時間とされています*8。企業はそれを理由として不利益を与えてはなりません。

 

このような制度を利用しながら、保育所に子どもを入れる代わりに、都合に合わせてベビーシッターを頼む人もいます。個人のベビーシッターや仲介業者を選ぶ際は、都道府県への届出があるか、信頼できるかどうかを見極めることが必須であり、厚生労働省では、公益社団法人全国保育サービス協会に加盟している会社のリストを公開して、その活用を促しています*9

 

また、男性の育児参加も促進されており、男性側が育児を担うことで女性の復職や再就職を後押しすることも可能です。厚生労働省は2010年に委託事業として「イクメンプロジェクト」を立ち上げ、男性の育児休業取得率増加を目指しています。最新の調査結果では、取得率が6.16%とまだ低いのが現状ですが、6年連続で上昇しており、過去最高を更新しています。

 

平成 30 年度雇用均等基本調査

(引用)厚生労働省「平成 30 年度雇用均等基本調査」の結果概要 P17

 

 

育児中に利用可能な制度については、企業によって独自に設けられていることもあるため、就業規則を事前に把握し、上司に早めに相談しておきましょう。

 

 

 

5.まとめ

 

 

認可保育所に入れない場合、認可外施設の利用検討の他、育児休業を延長し給付金を受け取りながら復帰時期を遅らせることや配偶者である男性側の育児休業取得等も選択肢となりえます。また、ハローワーク等では託児所付きのスキルアップ講座も行われているので、資格やスキルの習得を目指すのも一案でしょう。

なお、育児休業中の人は、勤め先の企業と復帰時期についてよく話し合い、保育所に入れなかった場合の相談を事前にしておくことも重要です。企業側の配慮によって、他の可能性が見つかるかもしれません。

 

 

参照データ
*1 参考)内閣府「令和元年版 少子化社会対策白書 全体版」P68
*2 参考)厚生労働省「待機児童解消に向けた取組の状況について」P6
*3 参考)内閣府「令和元年版 少子化社会対策白書 全体版」P69
*4 参考)東京都福祉保健局「認可外保育施設 について
*5 引用)東京都福祉保健局「認可外保育施設に関するQ&A
*6 参考)東京都福祉保健局「よい保育施設の選び方
*7 参考)厚生労働省「保育所等における 保育の質の確保・向上に関する基礎資料」P25
*8 参考)厚生労働省 都道府県労働局 雇用均等室「平成24年7月1日から改正育児・介護休業法が全面施行されます
*9 厚生労働省「ベビーシッターなどを利用するときの留意点
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