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「サービス残業」していませんか?健康で楽しく働くための基礎知識を社労士が解説します
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新型コロナウイルスの影響から、多くの企業がコストの削減を進めています。

一般的には、固定費の削減→従業員の残業代・賞与の削減→人員の削減の順に整理を進めるもの、既に一時金(賞与)の削減を行う大企業がニュースになっていますね。

 

※固定費とは
消耗品や水道光熱費などは、従業員へ無駄な使い方をしないように徹底することなどです。
場合によっては事務所の統廃合の検討も行います。

 

既に賞与の減額に着手をしている企業が多いという事は、多くの方が残業規制(“業務は減らさないが残業はしないように”という宣告)もされていることと思います。

そこで今回は、残業にまつわる情報をお届けしたいと思います。

 

1.労働条件をどこまで把握していますか?

 

突然ですが、皆さんは自分の「労働条件」について、どのくらい把握しているでしょうか。入社の際、労働(雇用)契約書を締結したと思いますが、その契約書にはどのような労働条件が記載されていたか、覚えているでしょうか。またその後、労働条件に変更はありませんでしょうか。

 

実は、労働基準法第15条第1項に「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定されており、具体的には図1のような内容について、「明示」しなければならないことになっています。

 

日常的な労働条件として確認が必要な事項については、原則「書面での明示」が必要とされています。

なお労働基準法施行規則改正により、2019年4月1日からは、労働者からの希望があれば、電子メールやSNS、ファックス等でも明示できることとなりました。

 

キャリアアップシステム導入のための雇用管理改善推進マニュアル

図1:厚生労働省/キャリアアップシステム導入のための雇用管理改善推進マニュアルp37(https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/10/dl/tp1023-1h.pdf)

 

 

つまり、「昇進や昇給により賃金に変更があった」「従事する業務内容に変更があった」など、就業に関する重要な変更があった場合には、その都度、労働条件を書面(以下、「労働条件通知書」と言います)で交付する義務が会社にはあります。

 

この「労働条件通知書」に記載されている事項を元に、実際の就業と契約上の労働条件に差異がないかどうか、この機会に再確認してみましょう。

 

2.労働時間についてどこまで知っていますか?

 

労働時間について

労働時間には上限があり、18時間、140時間までとなっています(労働基準法第32条、第40条)。これらの労働時間を「法定労働時間」と呼び、いわゆる通常の時給が支払われる労働時間を指します。

※10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は44時間の特例あり

 

もし、これらの時間(法定労働時間)を超えて働かせる場合は、あらかじめ「時間外労働・休日労働に関する協定届(以下、「36協定」と言います)」を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ておかなければなりません(労働基準法第36条)。36協定には、必ず、代表労働者または労働組合の記名押印が必要なため、労使間での協議決定であることが前提となっています(図2)。

 

時間外労働・休日労働に関する協定届

図2:厚生労働省/時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号第17条関係)(https://shinsei.e-gov.go.jp/search/servlet/FileDownload?seqNo=0000432785)

 

 

この36協定によって延長できる労働時間にも上限があり、1週間から1年間までの各期間において、図3のように限度時間が定められています。実際の36協定に記載する延長することができる時間数は「1日、1か月、1年間」の3つなので、最大で「15時間/週、45時間/月、360時間/年」となります。

 

期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1ヵ月 45時間
2ヵ月 81時間
3ヵ月 120時間
1年間 360時間

図3:(出典)厚生労働省/労働基準法の基礎知識(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/150312-1.pdf)

 

休憩について

 

仕事中に必要に応じて「休憩」を取らせることも、使用者の義務として定められています。労働基準法第34条では、「1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩を、勤務時間の途中で与えなければならない」としています。

 

休憩時間は、労働者が自由に利用できなければなりません。そのため例えば、休憩中でも電話や来客の対応が必要な場合や、介護施設などで利用者のトイレ介助や急変対応等に備え1人で夜勤に従事するなどの場合、たとえ寝転がって休んでいても休憩時間には当たらず、労働時間とみなされます。

 

休日について

 

使用者は、労働者に休日を取らせる義務もあります。休日とは、労働義務を免除された日を指し、1週間に1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります(労働基準法第35条)。さらに、原則として暦日(午前0時から午後12時までの継続する24時間)で与えなければならないため、夜勤明けの日を「休日」にすることはできません。

 

3.残業や休日出勤には「割増賃金」が上乗せされる

 

前述した残業(法定時間外労働)、休日労働にプラスして「深夜労働(午後10時から午前5時までの労働時間)」については、通常の賃金に上乗せして「割増賃金」を支払う必要があります(労働基準法第37条)(図4)。

 

例えば、時給(または時給換算額)1,000円の人が1時間の残業(法定時間外労働)をした場合、支払われる賃金は1,000円+250円=1,250円です。さらに、その残業が深夜時間帯の場合、250円がプラスされるので、合計1,500円となります。

 

時間外労働

2割五分以上

(1ヵ月60時間を超える時間労働については5割以上、ただし中小企業は適用が猶予されています)

休日労働 3割5分以上
深夜労働 2割5分以上

図4:(出典)厚生労働省/労働基準法の基礎知識(www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/150312-1.pdf)

 

ただし、休日労働に関しては、「残業」の概念がないため、法定労働時間(8時間)を超えて労働した場合でも、時間外労働に対する割増賃金(25分)は発生しません。しかし、休日労働かつ深夜労働をした場合は、休日割増+深夜割増=6割の割増賃金を、通常の時給(または時給換算額)に上乗せして支払う必要があります*1

 

4.残業に対する賃金不払いの現状

 

全国の労働基準監督署が、平成30年度に行った監督指導(賃金不払残業に関する、労働者からの申告や、その他各種情報に基づき実施)の結果、各労働者へ支払われた不払い割増賃金(支払額が1企業で合計100万円以上のみ)についてまとめたグラフがあります。

 

5は業種別の対象労働者数をまとめたものです。保健衛生業と製造業がともに20%超と高い割合を占めています。業種の内訳として、1位の保健衛生業は介護施設や病院等、3位の商業は理美容業や小売業等が該当します。

いずれも、顧客(利用者、患者含む)対応が必要な業種のため、シフトで完全に管理することが困難であると予想できます。

そして監督指導の結果、労働者一人当たりに支払われた残業代の平均額は10万円でした。

 

監督指導による賃金不払残業の是正結果

図5:(出典)厚生労働省/監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)-100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/chingin-c_h30_01.pdf)

 

 

6は、業種別の是正支払額のグラフです。業種別の対象労働者の上位3位までは変わらず、ほぼ半分を占めています。そして、是正支払総額は124億円を超えています。

 

賃金(退職手当を除く)請求権の消滅時効は2年(労働基準法第115条)とされてきましたが、202041日の労働基準法改正により「5年」に延長されることになりました(ただし、当分の間は3年の経過措置)。

これにより、さらなる不払い賃金に関する相談や請求訴訟が増える可能性があります。

 

監督指導による賃金不払残業の是正結果2

図6:(出典)厚生労働省/監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)-100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/chingin-c_h30_01.pdf)

 

 

5.残業(時間外労働)に該当するかどうかの基準

 

法律上の労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間のことをいいます*2

 

会社(上司)から「君の仕事が遅くて終わらないんだから、会社はお金を払わないよ」と言われ、所定労働時間を超えて仕事をした場合、当然、残業(時間外労働)になります。また、「業後の食事会」で強制参加の場合や、後日レポート提出が必要な場合なども、実質的な業務指示と捉えられるため、労働時間に該当します。

 

逆に、制服や作業着の着用が任意、または、自宅からの着用を認めている場合の更衣時間や、交通混雑の回避のために会社で時間をつぶす(業務の指示は受けていない)場合、これらは労働時間に該当しません。先ほどと同様の「業後の食事会」についても、自由参加の会合や不参加による不利益な取り扱いをされない場合は、労働時間に該当しません。

 

つまり、明示、黙示かを問わず業務指示の有無によって、残業(時間外労働)か否かが決まります。

 

仮に「自己研鑽のために先輩の仕事を見学したい」など、業務との関連性がないと言い切れない理由で職場に残る場合は、会社(上司)に事前に相談し、その見学時間が「業務上」となるのか否かを明確にしておきましょう。これは、単に賃金の問題だけでなく、労働災害のリスクテイクも含むため、勝手に自己判断せず、必ず会社の許可を得ましょう。

 

これらとは別のケースで、筆者(社労士)への相談件数が最も多いのは、「あなたの労働契約には残業代が含まれているから、残業代は出ません」というものです。

これは、一部正しいですが、誤りでもあります。判断基準としては、冒頭で触れた「労働条件通知書」に「固定残業代」が手当として記載されているかどうかによります。また、通知書には「固定残業時間分としていくら支給する」旨が記載されているはずなので、そこに明記されている残業時間を超えた場合、別途、残業代の支払いが必要です。

 

6.残業はしないに越したことはない

 

政府が推進する「働き方改革」の目玉である、長時間労働削減に向けた取り組みが活発化しています。労働時間等見直しガイドラインでも「時間外・休日労働の削減」として、時間外労働の上限が新設されたことや、労働者が健康で充実した生活を実現するためにも、労働時間に関する意識改革をはじめ、時間外・休日労働の削減に取り組むよう促しています*3

 

もし、どうしても残業しなければならないほどの業務量や、難易度の高い仕事を任されている場合は、会社(上司)に相談し、人員配置や業務内容の見直しをしてもらいましょう。

 

労働契約法第5条で「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と謳われています。この「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるため、長時間労働による健康被害から労働者を守ることが、使用者の義務なのです。

 

健康面の問題からも残業は少ない方が良いですが、それでも残業が発生してしまった場合は、法定基準以上で計算された割増賃金の支払いを受けて下さい。そして今後は、労働時間や賃金について会社任せにせず、自分自身でも管理や理解を深め、より働きやすい職場環境にしていきましょう。

 

 

参照データ
*1参考:厚生労働省/FAQ(よくある質問)労働基準行政全般に関するQ&A
www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei07.html
*2参考:厚生労働省/労働時間の考え方「研修・教育訓練」等の取扱い
www.mhlw.go.jp/content/000556972.pdf
*3参考:厚生労働省/周知・広報用パンフレット「ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、労使の自主的な取組が重要です。」p4
www.mhlw.go.jp/content/000555909.pdf
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