キャリア形成 働くコラム

ハローワークの教育訓練給付制度 対象者や年齢制限を確認し上手にキャリアアップを!

ハローワークの教育訓練給付制度 対象者や年齢制限を確認し上手にキャリアアップを!

 

教育訓練講座受講したときに受講料の一部を国から助成してもらえる雇用保険の「教育訓練給付制度」。

実はこの給付制度には3種類あるのをご存じでしょうか。それぞれ給付の内容や対象となる講座などが異なります。

今の会社でのキャリアアップ、転職、副業など、何を見据えてスキルアップしたいのかによって、適する給付制度を上手く利用していきましょう。

 

そこで本記事では、雇用保険の3種の「教育訓練給付制度」の違いやそれぞれの概要について説明していきます。

 

 

 

 

 

1.教育訓練給付制度とは

 

 

教育訓練給付制度とは、雇用保険から支給される制度のひとつです。

職業能力のアップや資格取得を目的として厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了したときに、受講料の一部が助成される制度です。

雇用保険の加入期間に関する要件はありますが、現在就業中の人も離職中の人も利用可能です。

条件を満たしていれば何度でも受給することも可能です。

 

人生100年時代ともいわれるようになってきた昨今、政府はより長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となる社会の実現を目指しています1_1

そのひとつとして、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を拡充することを目指しています。

そのため、2019101日からは新たに「特定一般教育訓練給付」が創設されました2

現在、「一般教育訓練給付(一般)」、「特定一般教育訓練給付(特定一般)」および「専門実践教育訓練給付(専門実践)」の3種の給付制度があります。

 

 

 

 

2.3種の教育訓練給付制度、それぞれ何が違う?

 

 

3つある教育訓練給付制度。それぞれの違いをご存じでしょうか。

最も大きな違いは、支援の目的と対象となる講座の種類が異なることです。

 

・一般:働く人の主体的な能力開発に対する取り組みを支援

・特定一般:社会的ニーズが高い能力開発への取り組み、早期のキャリア形成を支援

・専門実践:専門的かつ実践的な資格取得等を中長期なキャリア形成を支援

 

このほか、「必要となる雇用保険加入期間」、「助成される給付内容(給付金額)」、そして、指定講座を「受講するまでの手順」なども、どの制度を利用するかによって異なります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

 

 

 

3.雇用保険の加入期間要件の違い

 

 

教育訓練給付は在職者だけでなく、離職者も利用することができます。

また、一度だけでなく何度も繰り返し利用することができますが、それぞれ雇用保険に加入している(していた)期間の条件を満たさなければなりません。

 

初めて利用する際は、「一般」と「特定一般」は雇用保険の加入期間要件は同じで1年となっています。

しかし、「専門実践」は少なくとも2年は雇用保険に加入していることが必要です3

 

なお、転職などで雇用保険に加入した会社が複数ある場合、転職前の加入期間も通算できます。ただし、被保険者資格の空白期間が1年を超える場合は、その前の期間は通算されません。

離職してまだ再就職していない人も、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内に受講を開始すれば受給可能です。

 

ただし、離職後1年間のうちに、妊娠、出産、育児、疾病、負傷等の理由で引き続き30日以上受講が開始できない場合、最大20年まで延長することが可能です。

そのためには、ハローワークで申請手続きすることが必要になりますので注意して下さい。

また一度でも制度を利用したら、前回の教育訓練給付金受給から今回受講開始日前までに3年以上雇用保険に加入していることが必要です。

これは3つの制度のどれも同じです。

 

 

  一般 特定一般 専門実践
初回利用 1年以上 1年以上 2年以上
2回目以降 前回の給付金受給以降、3年以上(離職者の場合、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であること) 前回の給付金受給以降、3年以上(離職者の場合、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であること) 前回の給付金受給以降、3年以上(離職者の場合、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であること)

出所)ハローワーク「教育訓練給付制度」をもとに筆者作表

 

 

 

 

4.給付内容の違い

 

 

3つの教育訓練給付ともに受講にかかった費用の一部を支給してもらえるものですが、助成される費用の割合および上限額がそれぞれ定められています。

 

 

  一般 特定一般 専門実践
給付割合 受講費用の20%
(上限10万円)
受講費用の40%
(上限20万円)
受講費用の50%
(上限年間40万円※)
※訓練期間は最大で3年間となるため、最大で120万円が上限
給付時期 受講修了後に支給 受講修了後に支給 6カ月ごとに支給
追加支給 なし なし 訓練修了後1年以内に、資格取得等し、就職等した場合、受講費用の20%(上限年間16万円)を追加支給

出所)ハローワーク「教育訓練給付制度」をもとに筆者作表

 

 

たとえば、「一般」で30万円の講座を受講する場合、受講修了した後、ハローワークに申請すれば6万円(30万円×20%)が支給される仕組みです。

 

仮に、受講費用が同じく30万円だとしても、「特定一般」であれば支給額は12万円(30万円×40%)となります。

 

また、受講費用が同じく30万円だとすると、「専門実践」であれば、支給額は15万円(30万円×50%)となります。

また、受講修了後1年以内に資格取得等をし、かつ修了した日の翌日から雇用保険の被保険者として雇用された場合、6万円(30万円×20%)が追加で支給されます。

加えて、初めて専門実践訓練を受ける、受講開始時に45歳未満である、訓練期間中に失業状態にあるなど、一定の要件を満たす場合には「教育訓練支援給付金」が支給されます。

 

 

 

 

5.講座内容の違い

 

 

それぞれの給付制度の目的に応じ、厚生労働大臣によって指定されています。

 

たとえば、新設された「特定一般教育訓練給付」では、一般教育訓練の対象となり得る訓練のうち「ITスキルなどキャリアアップ効果の高い講座」となっています。

即効性のあるキャリア形成ができ、かつ、特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できるようにするのが目的だからです1_28

 

それぞれの違いを見ていきましょう。

 

 

  一般 特定一般 専門実践
対象講座指定要件

次の①または②のいずれかに該当するもの


1 公的職業資格又は修士若しくは博士の学位等の取得を訓練目標とするもの
2 ①に準じ、訓練目標が明確であり、訓練効果の客観的な測定が可能なもの(民間職業資格の取得を訓練目標とするもの等)

次の①~③の類型のいずれかに該当するもの


1 業務独占資格、名称独占資格若しくは必置資格に係るいわゆる養成施設の課程又はこれらの資格の取得を訓練目標とする課程等
2 情報通信技術に関する資格のうちITSSレベル2以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程
3 短時間のキャリア形成促進プログラム及び職業実践力育成プログラム

次の①~⑦の類型のいずれかに該当するもの


1 業務独占資格または名称独占資格に係るいわゆる養成施設の課程
2 専門学校の職業実践専門課程及びキャリア形成促進プログラム
3 専門職大学院
4 職業実践力育成プログラム
5 一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程(ITSSレベル3以上)
6 第四次産業革命スキル習得講座
7 専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程

講座期間・時間要件(原則) 【通学制】
1カ月以上1年以内、かつ50 時間以上
【通信制】
3カ月以上1年以内
【通学制】
1カ月以上1年以内、かつ50 時間以上
【通信制】
3カ月以上1年以内
上記類型により、1年~4年の範囲で異なる。
主な講座例 簿記能力検定、TOEIC、中国語検定、保育士、看護師、栄養士など 大型自動車第一種・第二種免許、介護職員初任者研修、宅地建物取引士、社会保険労務士、税理士、行政書士、通関士、ファイナンシャルプランニング技能士など 看護師、準看護師、商業実務、経理・簿記講座、MBA、子育て女性のリカレント課程、情報処理安全確保支援士、AI、IoT講座など

出所)厚生労働省「教育訓練給付の概要」をもとに筆者作表

 

 

対象講座指定要件を見ると難しそうに感じて敬遠してしまう人もいるかもしれません。

しかし、それぞれの制度で語学検定や簿記講座、ファイナンシャルプランナーなど、よく聞く講座や資格がたくさんあります。

くわしくは厚生労働省のサイト「教育訓練講座検索システム」で検索するようにしてください。

 

教育訓練講座検索システム:

https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/SCM/SCM101Scr02X/SCM101Scr02XInit.form

 

 

 

 

6.受講するまでの手順の違い

 

 

どの制度でも給付を受けるためにはハローワークに申請することが必要です。

しかし、受講をする前の手順が「一般」の場合と「特定一般」「専門実践」の場合で異なります。

 

「一般」の場合は、要件を満たしていれば自ら講座を選んで受講開始できます。

後者の2つは、まずは訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成、ハローワークで受給資格確認を行うことが必要です。

 

キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発、および向上に関する相談に応じ、助言や指導を行うこと。

そしてキャリアコンサルタントやジョブ・カード作成アドバイザーの支援を受けながらジョブ・カードを作成します4

 

ジョブ・カードというのは、働く人が自分自身で自己理解、仕事理解、職業経験の棚卸しをして、キャリア・プランを記載するカードです。

「特定一般」および「専門実践」受講のための資格があるかどうかを確認するために必要となりますが、他にも以下のような効果が期待できるでしょう。

 

・生涯を通じたキャリア・プランニングのツール

・労働者自身のキャリア形成、職業能力の見える化

・蓄積した過去のキャリア情報を用いた将来のキャリアコンサルティング

 

 

 

 

7.教育訓練給付制度を活用し、キャリアアップを続けよう

 

 

3つの教育訓練給付制度の違いについて説明しましたが、「自分はどの制度を選べばいいか」と考える人もいるかもしれません。

結論から言うと、自分が思い描くキャリアプランに有効な講座を受講できる制度を選ぶことでしょう。

 

しかし、受講する内容や受験できる資格によっては複数の制度にまたがっているものもあります。

このような場合で、転職や再就職を検討している人ならジョブ・カードの作成が必要となる「特定一般」や「専門実践」を選ぶのもおすすめです。

 

転職や再就職には、自分の職業能力や自分のPRポイントを整理することが大切です。

受講前にキャリアコンサルティングや職業経験、職業能力の棚卸、ハローワークでの資格確認などの手続きが必要となるので、受講までに少し時間と手間がかかってしまいますが、この少し時間と手間が長い人生でのキャリア形成に大きく響くようになるかもしれません。

金銭面で国の支援がより大きいのも嬉しいですね。

 

教育訓練給付制度を上手に利用して、今後のキャリアアップや転職、副業、再就職などに役立てていきましょう。

 

 

参考資料/参考サイト
*1:厚生労働省「特定一般教育訓練給付に係る対象講座の考え方について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000473061.pdf
*2:厚生労働省「令和元年10月1日から特定一般教育訓練給付金制度が開始されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/000545729.pdf
*3:ハローワーク「教育訓練給付制度」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
*4:厚生労働省ジョブ・カード制度総合サイト「ジョブ・カードとは」
https://jobcard.mhlw.go.jp/job_card.html
執筆者
名前:續恵美子
プロフィール:ファイナンシャルプランナー(CFP®)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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