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失業給付はすぐもらえない?離職理由によって変わる失業給付(基本手当)のいろは

失業給付はすぐもらえない?離職理由によって変わる失業給付(基本手当)のいろは

離職により失業状態となった際に、ハローワークで手続きをすることで「失業給付(基本手当)」が支給されます。

 

失業給付(基本手当)とは、

「求職者の再就職までの間の生活を安定させ、一日も早く再就職してもらうために支給される手当」

です。

 

失業給付(基本手当)の支給を受けられる日数は、在職中に雇用保険被保険者だった期間と離職理由、年齢によって、90日から360日の間でそれぞれ決定されます。

 

とくに、

・倒産や解雇等により再就職の準備をする時間的余地なく離職を余儀なくされた

・期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した

これらの条件に当てはまる離職者に対しては、一般の離職者と比べて手厚い給付日数となる場合があります。

 

 

失業給付(基本手当)の金額は、離職日の直前6か月に支払われた賃金(賞与を除く)の合計を180で除した「賃金日額」の、およそ50~80%60歳~64歳については4580%)です。

失業給付(基本手当)日額は年齢ごとに上限が定められており、現在は次のとおりです。

 

基本手当日額

出典:ハローワークインターネットサービス/支給額(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html)

 

この失業給付(基本手当)を受給するにあたり、「離職後すぐには支給されないことがある」ということをご存知ですか?

 

通常、ハローワークで求職の申込を行い、待期期間と呼ばれる7日間が満了するまで、失業給付(基本手当)は支給されません。

 

しかしその後、現金が振込まれるまでに1か月の場合もあれば、3か月以上かかる場合もあります。

さらに、失業給付(基本手当)が支給される日数に幅が出ることもあります。

 

このように、失業給付(基本手当)の支給に関する条件は「離職理由」によって変わります。

では、離職理由によってどのような違いがあるのか、理由ごとに確認してみましょう。

 

 

 

1.一般的な離職理由「自己都合」

 

まず、一般的な離職理由として、自ら離職を願い出た場合を「自己都合による離職」と呼びます。

 

たとえば、

「キャリアアップを目指して転職」

「学び直しで大学に通うため」

「結婚を機に家庭に入るから」

など、自発的な離職がこれにあたります。

 

自己都合による離職の場合、失業給付(基本手当)が支給される条件として、

「離職の日以前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要」

とされています。

 

「被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった日が11日以上ある月を「1か月」としてカウントします。

 

しかしこれでは、一日の労働時間は長いのに1か月の就労日数が11日未満の場合などは、失業給付(基本手当)を受けることができませんでした。

そこで令和281日以降の離職について、前述の条件にプラスして

「賃金支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある月」

についても、1か月としてカウントすることになりました*1

 

さらに、これまで自己都合(正当な理由なし)により離職した場合は、

3か月の給付制限期間を経てから、失業給付(基本手当)が支給される」

という流れでした。

 

なぜ3か月も待たなければならないのかというと、「労働者の安易な離職を防止するため」です。

昭和59年から続く「3か月の給付制限期間」について、多様な働き方を推進する昨今、転職しやすい環境整備のためにも、短縮を求める声が上がりました。

 

その結果、令和2101日以降の離職から、

「給付制限期間を3か月から2か月に短縮」

することが、試行的に開始されました。

なお、短縮措置による効果については、2年後を目途に検証されます*2

 

ただし、離職の回数について上限があり、「5年間のうち2回までは給付制限期間を2か月」とし、3回目以降の離職については従来通りの3か月の給付制限となります*3

 

 

失業給付(基本手当)が支給される日数については、次の図をご覧ください。

 

基本手当が支給される日数

出典:ハローワークインターネットサービス/一般の離職者の所定給付日数(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html)

 

このように、年齢にかかわらず、被保険者であった期間によって所定給付日数が決まっています。

10年未満の被保険者期間だと90日が上限となるので、約3か月の求職活動のなかで再就職先を見つけなければなりません。

 

自己都合による離職は、失業者が在籍中に「ある程度の転職に関するプランニングができた」という前提のため、失業給付(基本手当)の支給はトータルでも半年未満の給付日数となっています。

 

転職を考えている人は、2か月の給付制限期間があることと、被保険者期間によっては90日しか失業給付(基本手当)が支給されないことを念頭に、在籍中から転職活動をスタートさせることをお勧めします。

 

2.特定受給資格者、特定理由離職者となる離職理由「会社都合」

 

「自己都合による離職」以外の離職理由として、「会社都合による離職」があります。

これは、会社の倒産や解雇等によって離職をした場合にこのように呼びます。

 

倒産や解雇等以外でも、

「事業主から退職の勧奨を受けた」

「有期雇用契約で更新有のはずが更新されなかった」

「これまでの賃金に比べて85%未満に低下した(又はすることとなった)」

なども、会社都合による離職となります。

 

これらの理由によって離職した場合、失業給付(基本手当)の支給について「特定受給資格者」と呼ばれます。

特定受給資格者は、一般の離職者と比べて給付日数が長かったり、雇用保険被保険者期間が少なくても失業給付(基本手当)が受給できたりと、失業給付(基本手当)の支給に関して優遇されます。

 

具体的には、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば、受給資格が得られます。

 

また、所定給付日数についても、次の図のように年齢によって細かく区分されています。

 

所定給付日数

出典:ハローワークインターネットサービス/特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の所定給付日数(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html)

 

特定受給資格者は、一般の離職者と異なり給付制限がありません。

つまり、一般の離職者であれば2か月(または3か月)の給付制限期間が経過しないと失業給付(基本手当)の支給がされないところを、特定受給資格者は待期期間(7日間)満了後から失業の認定が始まり、失業給付(基本手当)が支給されます

なお、初回の求職の申込みから現金の振込みまでは、およそ1か月かかります。

 

この、給付制限が付かないグループがもう一つあります。

それは「特定理由離職者」と呼ばれる人たちです。

 

期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)

正当な理由のある自己都合により離職した者

 

この2つに当てはまると、特定理由離職者として給付制限なく失業給付(基本手当)が支給されます

2つ目の理由である「正当な理由のある自己都合」がどのような場合に適用されるのか、次の図をご覧ください。

 

正当な理由のある自己都合

出典:ハローワークインターネットサービス/特定理由離職者の範囲(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/help/question05.html)

 

これを見ると、自己都合とはいえ、自らの努力だけでは対応できない状況が列挙されています。

このような「不可抗力に近い状況が原因による離職」は、正当な理由のある自己都合による離職として扱われます。

 

特定理由離職者は、給付制限がないだけで所定給付日数は一般の離職者と同じです。

しかし、に該当し、離職の日が令和4331日までの場合に限り、特定受給資格者と同様の所定給付日数となります*4

 

新型コロナウイルスの影響により離職を余儀なくされた人は、特定受給資格者または特定理由離職者となる可能性が高いと思われます。

 

自ら離職を願い出たとしても、ハローワークで事情を説明することで、離職票に記載されている離職理由(事業主が主張する離職理由)が変わることはあります。

労使それぞれの主張を確認できる客観的な資料をもとに、ハローワークが慎重に事実関係を確認するため、事業主一方の主張のみで判定されることはありません。

 

もし、離職時に会社から「自己都合による離職」と言われたとしても、離職までの顛末を説明し事実認定されれば、特定理由離職者となることを覚えておいてください。

  

一般の離職者、特定受給資格者及び一部の特定理由離職者のほかに、「就職困難者」についても給付日数が優遇されますが、今回は割愛します。

 

3.失業給付(基本手当)をもらう前に再就職が決まったら

 

それでは、一般の離職者(2か月の給付制限あり)が、給付制限期間中に再就職が決まった場合、失業給付(基本手当)を支給されることなく終わってしまうのでしょうか。

 

このような場合で一定の要件に該当すると、「再就職手当」が支給されます。

再就職手当が支給される主な要件は、

7日間の待期期間終了後に就職、又は事業を開始したこと

・就職日の前日までに、失業給付(基本手当)の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること

・前職への再就職ではないこと。また、前職と資本、資金、人事、取引面で綿密な関わりのない事業所に就職したこと

1年を超えて勤務することが確実であること

・雇用保険の被保険者であること

などがあります*5

 

具体的には、

・所定給付日数の3分の2以上残して再就職→失業給付(基本手当)の支給残日数の70

・所定給付日数の3分の1以上残して再就職→失業給付(基本手当)の支給残日数の60

が支給されます。

 

失業給付(基本手当)の支給残日数は、早期に再就職するほど多く残るため、給付制限期間中に再就職した場合は70%の再就職手当が受給できます。

 

 

このように、雇用保険はさまざまな再就職を支援する制度を用意しています。

失業状態となっても安定した生活が送れるよう、各種手当の受給資格や支給要件を確認し、実りある転職活動期間が過ごせることを願います。

 

参考文献/WEBサイト
*1参考:厚生労働省/失業等給付の受給資格を得るために必要な「被保険者期間」の算定方法が変わります
https://roumu.com/pdf/nlb1447.pdf
*2参考:厚生労働省/労働政策審議会商業安定分科会雇用保険部会報告(基本手当の在り方について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107715_00001.html
*3参考:厚生労働省/「給付制限期間」が2か月に短縮されます
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000676060.pdf
*4参考:厚生労働省/基本手当の所定給付日数(補足1)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
*5参考:厚生労働省/再就職手当のご案内p2
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf
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執筆者 浦辺

早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。

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