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退職届と退職願、辞表の違いは?書き方や退職に関する相談事例や解決策もご紹介

退職する際に、「退職届」と「退職願」のどちらを書けばよいのか迷ったことのある方もいるのではないでしょうか。

 

どちらも「会社に対して退職の意思表示をする」という点では同じものではありますが、実は一文字違うだけで、法的な意味合いなどが違ってくるものなのです。

 

今回は、転職をするために、現在勤めている会社に退職願などを出すことを検討している方に向けて、各書式の役割や撤回の可否、退職願・退職届の書き方、退職に関するトラブル事例と解決策について、詳しく解説をしていきます。

 

 

1.「退職願」「退職届」「辞表」の違いとは

 

「退職願」「退職届」「辞表」の違いは以下の表の通りです。(下図1)

 

書式 役割 対象者 撤回の可否
退職願 会社に退職を願い出る場合に提出する書類 一般社員 会社の承諾を得る前なら撤回することもできる
退職届 会社に退職を届け出るための書類 一般社員 労働者側からの解約通知なので撤回は認められない
辞表 務めている役職を辞めることを届け出るための書類 会社役員、公務員など 原則として退職届と同様

図1 参考)弁護士法人若井綜合法律事務所「退職届・退職願・辞表の違い」等を参考に筆者作成(https://wakailaw.com/taisyokudaiko/taishokudaikou-soudan-miharaichingin.html)

 

 

①退職願は撤回できるが、退職届は撤回できない

退職願と退職届は似たような言葉ですが、それぞれ意味合いが違います。

 

退職願は、退職を会社にあらかじめ願い出るものであるため、場合によっては会社側に拒否されることもあるかもしれません。

 

また、退職の通告は口頭で可能なため、絶対に必要な書類というわけではありませんが、退職の意思があるということを具体的に示すことにつながるでしょう。

 

一方、退職届は会社側の可否に関わらず、自ら退職を申し出る書類です。

 

退職願より自分の意思を強く表す書類であり、ある意味、一方的な通告でもあります。

 

ハードな印象を会社側に与えるため、退職が認められた後に提出する方が何かと問題にならないでしょう。

 

このように、会社の意向を問わずに退職の意思が強いことを表したい場合には、退職届は有効的な方法とも言えます。*1

 

②辞表を出すのは経営に関わる者や公務員など

一般社員が通常、用いるのは「退職願」か「退職届」の書式です。

 

「辞表」を出すのは雇用契約をしていない人、つまり一般の会社では、社長や取締役などの会社役員などが、その職を辞める場合に会社に届け出る際に提出します。

 

一般企業で雇用されている従業員が会社を辞める場合には辞表は不要ですが、公務員の場合は退職届と同じ扱いで辞表を提出する方式です。*2

 

2.退職届と退職願の書き方

 

ここでは、退職届と退職願の書き方をご紹介していきます。

 

基本的な様式は似ていますが、若干、違う点がありますので確認していきましょう。

 

①退職届

退職届の基本的な書き方は下図2の通りです。

 

退職届は、強い意志をもって会社を退職することを通告する書類のため、断定的な表現をして、きちんと意思表示をしましょう。

 

退職届例

図2 参考)たなか社会保険労務士事務所「退職をきめたら」を参考に筆者作成(https://tanaka-y-sr.jp/%E4%BB%8A%E6%9C%88%E3%81%AE%E7%89%B9%E9%9B%86/328.html)

 

 

 

退職届を書く際には、下記のようないくつかのポイントを参考にしながら、各項目を見ていきましょう。

 

1.手書きで縦書きが多い

2.冒頭の行に「退職届」と多少大きめに書く

3.書き出しは「私儀」となり、行末に配置する

4.会社を退職する理由(詳細は書かなくてもよい)と退職日を記載

5.退職理由の最後は「退職いたします」のように断定的な表現をする(青マーカーの箇所)

6.退職届を提出する日付を記載する

7.所属部を書いた後に氏名を記載して捺印する

8.退職届の宛名を記載する(一般の会社は代表取締役社長 ○○殿とする)*3

 

 

②退職願

退職願の基本的な書き方は下図3の通りです。

 

退職願の基本的な書き方

図3 引用)たなか社会保険労務士事務所「退職をきめたら」を参考に筆者作成(https://tanaka-y-sr.jp/%E4%BB%8A%E6%9C%88%E3%81%AE%E7%89%B9%E9%9B%86/328.html)

 

基本的に退職届と似たような書式ですが、退職届は「労働者からの一方的な通告」を表すのに対し、退職願は、まず、会社に対して「退職のお願い」をするという点に違いがあります。

 

そのため、「ここにお願い申し上げます」(青マーカーの箇所)などと、やや低姿勢な書き方で意思を伝えるように表現するのがポイントです。

 

書き方のポイントは断定的な表現以外では、退職届の場合とほぼ同じとなります。

 

3.退職に関するトラブル例と解決策

 

円満に退職できれば何の問題もありませんが、中には退職をきっかけに、会社側と退職者の間でトラブルに発展してしまう事例も数多く発生しています。

 

ここでは、労働基準監督署に多く寄せられる相談事例と解決策をご紹介していきましょう。

 

①総合労働相談件数は右肩上がりに増えている

 

厚生労働省が調査した「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」では、総合労働相談件数や、労働局長による助言や指導などの件数が、年々、増加傾向にあります。

 

「令和元年度の総合労働相談件数は118万8,340件」

 

下図4を参照すると、令和元年度の総合労働相談件数は118万8,340件、民事上の個別紛争相談件数も27万9,210件となり、平成22年の調査から連続で100万件を超えています。

 

また、「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が8年連続トップになっており、仕事の内容より職場での人間関係の方が、より深刻な問題となっています。

 

相談件数の推移

図4 引用)厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」P3(https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000643973.pdf)

 

 

②民事上の個別労働紛争相談件数の第2位は自己都合退職

下図5を参照すると、令和元年度の民事上の個別労働紛争の相談件数の第1位は「いじめ・嫌がらせ」で全体の25.5%となっています。

 

「自己都合退職」は11.7%で第2位にランクインしており、退職の際に会社側とトラブルになる例は決して少なくありません。

 

第3位の「解雇(10.1%)」、第5位の「退職勧奨(6.6%)」その他の「雇止め(3.8%)」と合わせると、退職に関連する相談者は32.2%となっており、全体の約3割ほどを占めています。

 

民事上の個別労働紛争

図5 引用)厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」P3(https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000643973.pdf)

 

 

③退職理由がトラブルである場合の解決策

退職したい理由の原因が実はトラブルの場合には、すぐに退職届を出さないで、まずは解決の方向に動いてみても良いかもしれません。

 

都道府県の労働局では3つの紛争解決援助制度(下図6)を用意していますので、労働問題に関して悩みがある方はご相談をしてみてはいかがでしょうか。利用はもちろん無料です。

 

個別労働紛争解決制度

図6 引用)厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/index.html)

 

 

 

3つの紛争解決制度には「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」「都道府県労働局長による助言・指導」「紛争調整委員会によるあっせん」があります。

 

もしも職場でトラブルが発生した場合には、まず「総合労働相談コーナーにご相談」をしてみてください。

 

関連する法令や裁判例などの情報提供、助言・指導制度についての説明がなされ、相談者が助言・指導の申出を行った場合には、「都道府県労働局長による助言・指導」が実施されるようになります。

 

ここで解決した場合は終了となりますが、解決されなかった場合には「紛争調整委員会あっせんへの移行又は他の紛争解決機関の説明・紹介」が行われ、解決への糸口を探る方向で動き出します。

 

なお、「紛争調整委員会によるあっせん」は、裁判より手続きが簡単でスピーディーなのがメリットです。

 

担当する紛争調停委員は弁護士や大学教授、社会保険労務士など労働問題の専門家ばかりなので、安心して任せられます。

 

あっせんの手続きは非公開で、プライバシ―は保護されますから、トラブルが原因で退職を考えている方は、まずは、最寄りの労働局などで無料の労働相談を受けてみてはいかがでしょうか。*7

 

【パンフレット・あっせん申請書等ダウンロード】

個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)に関する詳しい内容はこちらのパンフレットに記載されています。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/dl/01a.pdf

 

4.まとめ

 

今回は、退職届と退職願いの違いについて、詳しく解説をしていきました。

 

退職届と退職願は、たった一文字の違いですが、提出された場合の法的な意味合いが異なったり、会社に与える印象が違って来たりするものです。

 

退職した後に会社とトラブルにならないためにも、退職届と退職願いの違いについて、基本的な知識を身に着けておくと良いでしょう。

 

また、退職理由が「職場でのいじめ」など、労働問題に関することでしたら、退職手続きに入る前に、最寄りの労働局などで相談してみるのもおすすめです。

 

労働問題に関する専門家がきちんと相談に乗ってくれますので、それから考えてみても遅くはないかもしれません。

 

 

参考文献/参考データ
*1 ・2・3参考)弁護士法人若井綜合法律事務所「退職届・退職願・辞表の違い」https://wakailaw.com/taisyokudaiko/taishokudaikou-soudan-miharaichingin.html
*4 参考)厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/index.html
執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。
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フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

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