企業研究
辛いうつや適応障害などのメンタル不調 休職・退職などの対処法を産業医が解説します

 

近年、うつや適応障害を始めとしたメンタル不調(メンタルヘルス不調)で休職する人が後を経ちません。職場に行くのも辛くて今日にも仕事を休みたい、辞めたいと考えている方も多いことと思います。

 

今回は、メンタル不調での休職や復職をするときの手順と注意点、そして転職を考えている方に知っておいてほしいことを、現役の内科医である本間さんに簡単にまとめてもらいました。

 

医師:本間
名前:本間
プロフィール:日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医。

 

 

この記事の目次

1.そもそもメンタル不調とは何か?

 

メンタル不調(メンタルヘルス不調)とは、

「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」

と定義されています*1

メンタル不調の原因については仕事にまつわるものの他、私生活上の問題などさまざまなものがあります。

 

メンタル不調の原因となる病気については(別記事)で簡単にまとめましたので、参考にしてみてください。

 

 

(1) 仕事に関してストレスを感じている人が多い

 

仕事に関するストレス

引用)*2 厚生労働省 職場における心の健康づくり p3

 

厚生労働省の調査によると、実際に、仕事に関してストレスを感じている人が全体の6割弱を占めています。

平成30年労働安全衛生調査(実施調査)によると、ストレスの内容のトップは仕事の質・量についてでした。そのほか仕事の失敗や責任の発生、セクハラやパワハラなどのハラスメントを含む対人関係などの回答も多く見られました。

 

 

(2) 実際にメンタル不調で長期休職・退職した人が増えている     

 

厚生労働省が行った平成30年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、平成29111日から平成301031日までの期間にメンタル不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%でした*3_p3

 

 

(3) メンタル不調(精神障害)で労災認定される人の数も下げ止まっている。

 

精神障害などによる労災認定件数

引用)厚生労働省 職場における心の健康づくり p3

 

仕事が原因でメンタル不調(精神障害)となった結果、治療が必要になった場合は、労働災害(労災)として認定されます。厚生労働省がさまざまな対策を行っているにもかかわらず、精神障害で労災認定された人、また自殺した人の数もなかなか減少傾向となりません。

 

 

2.メンタル不調で休職するときの手順と気をつけたいポイント

 

メンタル不調で休職を考えている方に向けて、実際に休職するにはどうした良いか、手順を確認しておきましょう。また、休職する際に気をつけたいポイントも合わせて解説しています。

 

 

(1) まずは病院で診断書を発行してもらう

 メンタル不調で仕事を休む時には必ず病院を受診し、医師の指示を仰ぎましょう。病状的に休職が必要と医師が判断すれば、病気休業診断書を記載してくれます。診断書は休職の判断や傷病手当金の受給などに必要となります。

 

あまりにも辛いからといって無断で会社を休むと、無断欠勤として懲戒の対象となることがありますのでご注意ください。

 

 (2) 休業中は主治医の指示に従い療養を

 休業中はまず心身の調子を取り戻すことが最も大切です。残してきた仕事や今後のことなどが気になるとは思いますが、まずはゆっくり休みましょう。主治医の指示に従い、しっかり療養するのが休職中の仕事です。

 

診断書に記載された休職の期限が近づいたら、休職を継続するか、復職するかを主治医と相談しましょう。

 

(3) 現在の職場で使える制度を確認する

 余裕があれば休職前に、就業規則などを確認しておきましょう。病気休職の制度の概要については就業規則に定めがあることがほとんどです。休業の最長期間をはじめ、休職中の給料や傷病手当金など、心配なことは会社の担当者と相談するのがお勧めです。

 

(4) スムーズな復職に備えてやっておいた方が良いこと

 メンタル不調で治療中にも、スムーズな復職に備えてできることがあります。病状が少し落ち着いて朝起きられるようになったら、規則正しい生活をこころがけましょう。休職中は予想以上に体力が落ちているので、病状的に可能であれば、112回決まった時間に散歩をしてみるのもおすすめです。そして、朝起きた時間や夜寝る時間、食事・散歩の時間など、毎日の行動を記録に残しておきましょう。

 

産業医が復職を判断する基準の一つに、

「生活リズムがきちんとしていること、特に朝きちんと起きられること」

があります。

朝きちんと決まった時間に起床できて、日中昼寝なども必要ないくらいに回復してくれば、自然と復職の話が出て来るでしょう。

 

 

3.メンタル不調から復職するときの手順と気をつけたいポイント

 

メンタル不調で休職中の方から、「復職したいのに会社が認めてくれない」といった不満の声を耳にすることがあります。

メンタル不調からの復職は、自分が復職したいからといってすぐにできるものではありません。

メンタル不調が早期に再発し、再び休職に追い込まれるリスクを少しでも下げるよう企業側も色々な工夫をしています。休職前に復職の手順を知っておくと、安心して療養に専念できます。

 

 

(1) 復職できるかどうかは職場が決めること

 産業医面談などでも時々見かけるのですが、本人が復職を希望したらすぐ復職できると誤解をされている方がいます。復職には、職場からの許可が必要となります。残念ながら、本人の希望でいつでもできるものではありません。

 

(2) 職場が復職を許可する基準

 職場が復職を許可する基準はただ一つ、

「職場で求められる業務遂行能力まで回復していること」

です。

これには当然、労働条件で提示された勤務時間を守れることも含まれます。

 

リワークプログラムは休職期間中に実施

 お試し出勤やリワークプログラムなど、復職予定者を対象とした短時間勤務訓練を課している事業所が増えています。

これらの方法は、スムーズな復職を実現するために有効です。原則的には、これらのプログラムは復職後に行うものではありません。

就業規則など企業が独自の規定を設けている場合を除き、基本的にはあくまで休職期間中に行うものです。

 

したがって、産業医・産業保健職との面談の結果、お試し出勤やリワークプログラムが必要と判断された場合は、まだ本格的な復職には早いということになります。

 

(3) 主治医の判断と職場の判断は必ずしも一致しない

 

主治医が復職可と判断しても、産業医や事業者から復職を許可されないことがあります。なぜなら、主治医は患者さんの側に立つ存在であり、実際の業務内容については患者さんからの一方的な情報しか持ち合わせていないからです。

患者さんの希望を最大限に考慮し、患者さんから仕事の様子を聞いて

「このくらいの業務なら大丈夫だろう」

と判断して診断書を作成しますが、実際にあなたが働くところを見ているわけではないので、どうしても実際の職場環境とはずれが生じるのです。

 

実際に本人の希望を受けて、主治医から「職場復帰可能」の診断書が提出されても、現在の事業所では実現不可能な条件を提示されていることが少なくありません。

例えば部署や上司の異動、職種限定採用なのに職種を変更するよう要求などのような事例です。

このような場合は、職場環境を知っている産業医から見ると、残念ながらその時点での復職は難しいと言わざるを得ません。

 

(4) 復職が決定するまでの手順*4_p1

 

休職中の方には見えにくい部分ですが、メンタル不調から復職が決定する間には、企業の中で色々なことが行われています。これらは全て、メンタル不調の再発を防ぎ、スムーズに職場復帰ができるようにするためです。

休職から復職までの間に企業内で行われていることは、概ね以下のような流れです。

  

流れ1:病気休業中のケア

 まずは休職者に不安なくしっかり休んでもらえるように、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順を説明します。また。必要に応じて不安、悩みの相談先や公的または民間の職場復帰支援サービスなども紹介することがあります。

 

流れ2:主治医による職場復帰可能の判断

 主治医が復職可能の診断書を発行します。

 

流れ3:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

 発行された診断書をもとに、産業医もしくは産業保健職などによる面談が行われます。面談の場では、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかどうか、また本人が職場復帰に向けて意欲があるかなどについての確認が行われます。

 

面談の結果をもとに、スムーズな職場復帰を支援するために必要と思われる就業上の配慮について検討を行います。それに応じた具体的プラン(職場復帰支援プラン)が作成されます。

 

 流れ4:最終的な職場復帰の決定

流れ3のデータをもとに、職場復帰可能かどうかについて、直属の上司をはじめ、産業医・産業保健職や総務部など、関係各所で話し合いを行います。最終的な判断を下すのは、産業医ではなく事業者です。

 

流れ5:職場復帰後のフォローアップ

 職場復帰後は、定期的に体調や治療状況の確認を行います。それとともに業務遂行状況や職場環境についてもチェックし、就業上の配慮が適切か、追加の配慮が必要か、通常勤務にいつ頃戻れるかなどを適宜確認していきます。

 

  

4.メンタル不調で退職・転職を考えるときに知っておいて欲しいこと

 

メンタル不調で退職・転職を考えている方も多いのが実情です。実際に転職活動に入る前に知っておいて欲しいことについても、最後に触れておきましょう。

 

 (1) そもそも病気療養中は、退職や転職を決めない方が良い

 メンタル不調で療養中は、病気の影響で判断力が極端に落ちています。また病気の性質上、どうしても物事を悲観的に捉えがちになります。休職期限が切れるなど、どうしても今すぐに行動を起こさなくてはならない方以外は、退職や転職など人生に関わる重要な決断は行わないほうが良いでしょう。

 

 (2) 転職先にはメンタル不調であったことを伝える方が良い

 メンタル不調には、良い時と悪い時の波があります。定期的な通院を継続する必要もあるので、新しい職場にも現在の病状や今後の見通しについて最低限は知っておいてもらったほうが望ましいでしょう。

メンタル不調を隠して転職し、新しい職場で長時間労働やストレスのかかる業務の担当となり、不調が再発して退職する羽目になることもよくあります。

 

 

 5.職場でのハラスメントがきっかけでメンタル不調になったら

 

職場でのハラスメントがきっかけでメンタル不調になる人も多くいます。ハラスメントがあったと感じたら、休職の段階でまずは職場の上層部へ一報を入れましょう。本格的な報告は、復職後、体調がある程度整い事情聴取に耐えられるようになった段階で構いません。職場にハラスメント委員会がある場合は、そこへ正式な形で報告しましょう。職場にハラスメント委員会がなく、今後も改善の見込みがなければ、転職するのも一手です。

 

 

6.まとめ: メンタル不調とは上手につきあおう

 

メンタル不調は誰でもなる可能性のあるものです。休職となったら、まずは焦らずゆっくり療養して、元気なココロを取り戻しましょう。メンタルが不安定な段階で焦って転職を決めると後悔することが多いものです。転職のような重大な決断は、ココロが安定してからよく考えましょう。

 

執筆者

医師:本間
名前:本間
プロフィール:日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医。

 

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