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コロナで高まる働き方改革への関心 フリーランスの働き方や収入は?

コロナで高まる働き方改革への関心 フリーランスの働き方や収入は?

在宅ワークが浸透し、自宅で一人で仕事をする人が増える中、フリーランスとして働くことへの関心が高まっています。

 

「時間の融通がききそう」

「人付き合いに気を使いすぎなくて良さそう」

「やりたい仕事をやれそう」

というポジティブな印象の一方で、

「収入はどのくらいなのか」

「どんな生活になるのか」といった不安要素もあるかと思います。

 

そこで、フリーランスで働く人の実情を紹介します。

 

 

 

 

1.雇用関係によらない働き方を選んだ理由

 

 

内閣官房の調査*1では、現在日本には462万人のフリーランスがいると試算されています(副業・法人経営含む)。

 

うち本業は214万人、副業は248万人で、副業としてのフリーランスという人の数が若干上回っています。

 

年齢別の構成はこのようになっています(図1)。

 

 

フリーランスの年齢構成

図1 フリーランスの年齢構成(出所「フリーランス実態調査結果」内閣官房)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p2)

 

 

 

 

最も多いのは40代で、ある程度のスキルや人脈が蓄積できている年齢だと考えられます。

また、50代、60代となると、スキルや人間関係もそうですが、逆に、年齢的に一般企業には就職しにくいという事情も考えられます。

 

 

そして、フリーランスを選択した理由は下のようなものです(図2)。

 

 

 

フリーランスを選んだ理由

図2 フリーランスを選んだ理由(出所「フリーランス実態調査結果」内閣官房)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p3)

 

 

 

最も多いのはやはり「自分の仕事スタイルで働きたい」というものです。

 

ここで注目したいのは、「収入を増やす」「ワークライフバランスを良くする」という動機はそう多くはないということです。

 

フリーランスは不安定そうだというイメージがありますが、そこはある程度受け入れた上でフリーランスを選ばれています。

 

また「ワークライフバランス」が良くなるという期待はそう持っていません。

 

フリーランスの場合、仕事量やかかる時間がバラバラということは珍しくありません。そのため、決まった就業時間や就労時間があるわけではありません。

 

決まった労働時間がないことは気楽そうだと捉えられがちですが、日常生活のなかに仕事が入り込んでくることはしばしばです。筆者も例外ではありません。

 

 

 

2.フリーランスの収入は?

 

 

本業フリーランスの年収は、200万円~300万円が最も多くなっています(図3)。

 

 

本業フリーランスの年収

図3 本業フリーランスの年収(出所「フリーランス実態調査結果」内閣官房)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p6)

 

 

 

中には1000万円以上稼ぐ、という人もいますが、意外にも比べてみると雇用者の収入分布とあまり変わらないというのが実態です。

 

ただ、雇用される場合と違い、退職金や厚生年金の制度がありませんので、貯蓄などは雇用者以上に自分で積極的に進める必要がある点には注意が必要です。

 

また、今回コロナ禍で多くのフリーランスの収入が激減したという報道もある通り、業種によっては非常に不安定なのも実情です。

 

こうした不安定さを補う方法も考えておかなければなりません。

 

筆者の周辺にも様々な業種のフリーランスがいますが、例えばある程度の蓄えで切り抜けた人や、あるいは仕事が少ない時期は日雇いのアルバイトをして補っている、という本業フリーランスもいます。

 

 

一方、今後もフリーランスで働きたいという継続意思を持っている人は8割近くにのぼっています(図4)。

 

 

フリーランスの継続意向

図4 フリーランスの継続意向(出所「フリーランス実態調査結果」内閣官房)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p1)

 

 

 

ただ、これは「慣れ」があっての回答と考えられます。

 

ある程度仕事の受注量が安定すると、人間関係の負担の少なさや就業環境が比較的自由であるメリットを実感できるようになりますが、そうなるまでが楽ではない部分には注意したいところです。

 

 

 

3.フリーランスとして働くのに必要なことは?

 

 

さて、フリーランスといっても、仕事がなければ始まりません。「どこから仕事を取ってくきているのか」は大きな関心ごとかと思います。

 

フリーランスの受注経路をみると、下のようになっています(図5)。

 

 

 

フリーランスの受注経路

図5 フリーランスの受注経路(出所「フリーランス白書2020」フリーランス協会(https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2020/06/2020_0612_hakusho.pdf p15)

 

 

 

 

フリーランス協会の調査によると、「直近1年間で仕事獲得に繋がったことのある選択肢」は、知人の紹介を含む「人脈」、「過去・現在の取引先」が多数にのぼっています。

 

この2つの受注経路は、実際に最も収入が得られる受注経路であることもわかります。

 

よく見かけるクラウドソーシングから本格的なフリーランスの仕事に繋がった人はそう多くはありません。

 

フリーランスについて考えるとき、まず「仕事ありき」での独立というのが多数派であると言えるでしょう。

 

また、フリーランス協会の調査によると、フリーランスとしての継続・成功に重要なものとして、このような要素が上位に挙げられています*2。

 

・成果に結びつく専門性、能力、経験:63.9%

・自分を売る力(セルフブランディング):63.2%

・人脈:56.9%

・やり遂げる力:55.1%

・前向きな姿勢:53.3%

・顧客/市場ニーズの把握力:52.5%

・自分の幅を広げる努力:50.0%

・自分の意見を相手にうまく伝える能力:49.1%

・状況の判断能力/決断力:48.4%

 

もともとフリーランスは専門職が基本ですが、スキルだけでは足りないということもわかります。

 

受注経路と合わせてみれば、まずは人脈が重要な要素になっていると言えます。

 

 

 

4.まとめ

 

 

羨ましがられることも少なくないフリーランスでの働き方ですが、ここまでその実態を統計と共に紹介してきました。

 

また、フリーランスとして他に重要なことは、会社と違って研修制度などがありませんので、ある程度の自己啓発を自分で行っていく必要があるということです。

 

常に自分で時代を掴み、直接の専門でないことについても、時の話題にのぼっていることには幅広く関心を持つ必要があります。

 

取引先となる顧客の業種は様々ですから、それぞれについてのある程度の知識がなければ、話が成立しないということにもなってしまいます。

 

まずは今ある人脈やスキルでどのような部分を請け負う仕事ができそうか、どの程度の収入があれば満足できるか、月に何時間くらいなら働けどうか、など具体的なプランを練り、そこから逆算して考えてみるのも良いでしょう。

 

また、副業として開始してみて、軌道に乗りそうであれば切り替える、というのもひとつの手段です。

 

その際、仕事量が安定するまでを安心して暮らせる程度の蓄えがあるとなお良いでしょう。

 

 

参考資料/参考データ
*1「フリーランス実態調査結果」内閣官房
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p25
*2「フリーランス白書2020」フリーランス協会
https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2020/06/2020_0612_hakusho.pdf p20
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執筆者 清水

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に記者として勤務。社会部記者として事件事故やテクノロジー、経済部記者としては企業活動から金融まで経済全般を幅広く取材。CSニュース番組のプロデューサーも務める。フリーライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

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