転職と一言で言っても、職場だけ変更するのか、仕事内容や働き方も変えるのか、人それぞれにその意義は異なります。
しかし、いずれにしても何らかの理由で現況を見つめ直す必要があるという点においては共通しているでしょう。
同じ状況を繰り返さないためにも、自分に合った転職先を見つけたいものです。
改めて自己分析する機会を作り、自分の強みを生かしたキャリア形成にも役立てましょう。
1.転職は売り手市場 職務遂行能力が鍵
転職したいと思っている人は、求人情報を眺めたり、転職エージェントに登録をしたりと、漠然とであっても転職先を探し始めているかもしれません。
しかし、いざ決断する前に、まず冷静に考えるべきことは「今の会社をやめる理由」です。
そこから転職のための自己分析はスタートすると言っても過言ではありません。
退職せずして改善の余地はないか等、勤続年数をリセットする前に、一度見直してみてください。
それでも意志が固いのであれば、その事情改善も目標の一つとして、次のステップへと移れるでしょう。
実は近年、新たに仕事に就く人のうち約6割が転職者です。

引用)厚生労働省・都道府県労働局 ハローワーク「雇用調整助成金支給要領」P2 (厚労省2016年雇用動向調査より作成されたグラフ)(https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/tensyoku_saisyuusyokusya3004.pdf)
少子高齢化の中で、すぐに即戦力となる中核人材の確保が企業にとって重要となっています。
業務内容に合致した専門性だけでなく、職務経験で培われた職務遂行能力も、着目されています。
それは、業種・職種にかかわりなく共通して言えることであり、多様な経験や職業能力をもった人材が重宝され、転職・再就職に対するニーズは今後も高まっていくと予想されているのです*1。
そんな売り手市場ともとれる転職に際し、履歴書や職務経歴書を埋める前に必要不可欠なのが、キャリアアップを見据えて自分の市場価値を高めること。
それは資格取得等の実質的な能力以前に、自分の強みを的確にアピールする、いわば、自分の見せ方を知ることでもあります。
つまり、興味を持った職種が未経験であっても、職務遂行能力を示せば可能性はゼロではありません。
そんな企業のニーズを意識して、転職活動に取り組みましょう。目を向けていなかった仕事へのチャンスにもなりえます。
2.弱みを長所に 自己理解とキャリアの棚卸
仕事探しを進めるために大切な自己分析は、自分の性格や傾向を知るための自己理解と、職業経験等をまとめるキャリアの棚卸に分けられます。
ガクチカという就活用語が生まれるほど新卒時にこだわって書いた「学生時代に力を入れていたこと」よりも、転職時に大切なのは過去の就業経験です。
履歴書の使い回しはやめ、仕事経験値をどんどん更新していくのが肝心です。
・どんな業務内容で、どんな経験を積んだのか
・その仕事から何を学んだか
という点を、具体的なエピソードや数字データと結びつけながら振り返り、端的に伝えられるようにするのがキャリアの棚卸の鍵となります。
また、自己理解のための性格分析も必須となるでしょう。
弱みと思っていたことも、見方によっては長所になりえます。

引用)厚生労働省福島労働局「自己分析で強みを知ろう」(https://jsite.mhlw.go.jp/fukushima-roudoukyoku/var/rev0/0148/6469/2017101717225.pdf)
技術や資格といったスキル以外でもコミュニケーション力等、性格面での得意不得意も見極めなければなりません。
一例として、飛び込み営業が躊躇なくできるかどうか、想像してみると、わかりやすいのではないでしょうか。
自分にとっては簡単に当たり前にできていることが、他の人にとっては苦手かもしれない。
そのような点を見つけ、うまくアピールできれば、ライバルとの差別化にもつながります。
3.自己分析は3方向から 自分、他人とデータの活用
自己理解やキャリアの棚卸を具体的に進めるには、まず書き出してみることが第一歩です。
ブレインストーミングのような形で単語やアイデアをただ挙げていくだけでも、後々、振り返って読み返すのに有用です。
白紙から始めるのが難しいと感じる人は、厚生労働省による「ジョブ・カード制度」のウェブサイトを参考にしても良いでしょう。
「自己理解、仕事理解」のページでは、職業経験や免許・資格の整理も含め、以下の項目別に進められるようになっています。
たとえば、「自分を理解する」の中では、
・職業スキルチェック
・職業能力評価
・適職診断
・価値観診断
の4つの診断がオンラインで簡単にできる他、キャリアプラン作成のための補助シートもダウンロード可能です。
また、自分で自分を客観的に見ることも大事ですが、可能な限り他人からのフィードバックやツールを用いた診断の 3 方向から考察し、自己理解を深めましょう。
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引用)文部科学省「採用10年目までに学んでおきたい「学校マネジメント研修」テキスト(第2ステージ)」Unit8-6
図8-2「自己理解の3視点」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/03/04/1344733_4.pdf)
今まで、他の人から「すごい」と言われたことは何か、特徴的なニックネームを付けられたことがないか、というような何気ない生活の中でも、自己分析のヒントが隠されている可能性があります。
自分のことをよく知っている身近な人と話してみるのはもちろん、適切な相手がいない場合でも、自己分析セミナーへの参加やキャリアコンサルタント(国家資格保持者)*2に相談する等、専門家との交流から導き出してもらう手もあります。
4.10年後の自分は 将来分析とキャリアプランの作成
自己分析が過去に重点を置くものならば、分析後は未来です。
自己分析結果を土台として、自分の生き方・働き方をプランニングしてみましょう。

引用)厚生労働省「若者6_ジョブ・カード様式1作成ワークシート」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000199572.pdf)
転職後の自分の姿、さらに10年後、といった将来のイメージを膨らませることも重要です。
新卒入社の頃は仕事第一で働くことに集中していた人も、30歳前後から40歳にかけて結婚や出産といった大きなライフイベントを迎えた時期には家庭との両立を目指すでしょう。
さらに子育てが一段落する40歳半ば以降には趣味の充実を図ったり、老後を意識し始めたりする人もいます。
下記の表では、年齢に応じたキャリアの流れとライフイベント例が一覧となっているため、将来像を描くのに参考にしてみてください。
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引用)文部科学省「採用10年目までに学んでおきたい「学校マネジメント研修」テキスト(第2ステージ)」Unit8-3
表8-1「組織人のキャリア発達課題」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/03/04/1344733_4.pdf)
また、キャリアマップの作成も推奨されています。
下記の例は同企業内でのフローですが、大まかな年数を軸に、役職のイメージや資格取得のタイミングを記入し、転職の際の目標として掲げても良いでしょう。
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引用)厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093584.html)
上記サイトより「事務系職種」のキャリアマップをダウンロード(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000566399.pdf)
面接の際には、経験だけでなく、今後の目標を聞かれることも多いため、そのような質問対策として整理しておくのにもおすすめです。
5.まとめ
転職時の履歴書や職務経歴書は、受ける企業の業務内容や対象条件をよく読み、欲しい人材を想像しながら仕上げることも肝心です。
自己分析を行って引き出しを多く持っておき、その中から最適な履歴書及び職務経歴書を作成することを心がけましょう。
ごく限られたスペースで何を伝えるべきかを考慮し、面接に自信をもって臨むためにも、自分について改めて整理しておくのは有効です。
転職とは、仕事内容だけでなく働き方や将来を見つめ、キャリア形成について考える良い機会でもあります。
自己分析とキャリアプランニングをしっかり行い、自分の未来と企業の将来性とを重ね合わせ、転職先を探す方向性を定めてみてはいかがでしょうか。
https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/tensyoku_saisyuusyokusya3004.pdf
*2参考)キャリアコンサルティング協議会「国家資格キャリアコンサルタントWebサイト」
https://careerconsultant.mhlw.go.jp/p/search.html