転職をするのに、お金は必要なのでしょうか。
一般的に企業の採用試験は無料で受けられるため、あまり転職にお金がかかるイメージはないかもしれません。
でも実は、転職活動では思わぬところで予想以上に費用が発生するケースもあります。
そのため、最低限のお金がないと転職活動に支障が出てしまい、望んでいた結果が得られない可能性も……。
今回は転職を希望している方に向けて、「就職活動に必要な費用」や「お金がない場合のリスク」を解説していきます。
貯蓄がどのくらいあれば安心なのか、ぜひチェックしてみてください。
1.転職する人は年々増えている
年間に、いったいどのくらいの人が転職をしているのでしょうか。
総務省のデータによると、2008年のリーマンショックにより転職者の数は一時的に落ち込んだものの、2011年からは徐々に人数が伸び、2019年には過去最多となる351万人が転職をしていることがわかります。

引用)総務省統計局「増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」(https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/topi1230.html)
前の仕事を辞めた理由としては、リーマンショックの余波が落ち着いてきた辺りから、「より良い条件の仕事を探すため」が、「会社都合」「定年」「健康上の理由」などを大きく引き離してトップとなっています。

引用)総務省統計局「増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」(https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/topi1230.html)
転職の成功には、企業選びや面接のノウハウなどさまざまな要素が絡んできますが、外せないポイントのひとつが「周到な準備」です。
そこで注目したいのが、この記事のテーマである「転職にかかる必要経費」。
どんなに優秀な人材でも、必要最低限のお金がないと、出費があるたびに慌ててしまったり、転職活動の幅が制限されてしまったりして、転職に不利になってしまいます。
そこでまず、転職には一体どのようなお金がかかるのか確認していきましょう。
2.転職活動中の主な出費は?
転職活動にかかる費用には、次のようなものがあります。
・試験の際の往復交通費、外食費、宿泊費
・履歴書、写真撮影、参考書籍にかかる費用
・服飾費(スーツ、靴、バッグなどを新調する場合)
・理美容費
・引っ越し費用
①意外にかかる「交通費・宿泊費」
上京するなどして遠方の企業を受ける場合は、交通費が高額になるうえに宿泊費がかかるケースもあります。
試験に無事合格すれば、引っ越し代などのまとまったお金も必要になります。
また採用試験では、筆記試験、1次面接、2次面接、最終面接などと、何度も試験をおこなう企業もあるので、そのたびに交通費や宿泊費がかかります。
とくに交通費は、片道数百円だとあまり意識しない人もいるかもしれませんが、複数の企業に応募したり、会社側から何度も呼ばれたりすると、想像以上に大きな負担になってしまいます。
参考までに、リクルートのおこなった「転職世論調査」より、転職活動の際に何社に応募したのかを示すデータを見てみましょう。
下記の表によると、転職希望者の応募社数は、男女ともに「10社」という回答がもっとも多く、全体の平均は17.88社となっています。
たとえば、往復1,000円の交通費がかかる場合、筆記試験と面接試験2回で合計3回会社に通うとすると、ひとつの応募に対し3,000円、10社受ければ交通費だけで3万円もの出費になります。
交通費が1,000円に収まらなかったり、面接がもっと多かったりすると、さらに負担は増すことになるでしょう。
データでは31社以上応募したという人も12.1%おり、交通費や宿泊費が決して軽視できない出費であることがおわかりいただけるかと思います。
②身だしなみにかかる費用
面接では、髪型や服装といった身だしなみも重要なアピールポイントになります。
印象アップのために、美容院に行って髪を整えたりスーツを新しく購入したりする人もいるでしょう。
ですが、美容院代や服飾費は決して安いものではありません。
前もってある程度の予算を組んでおかないと、転職活動費や生活費の方にしわ寄せが来てしまうので気を付けましょう。
③離職後に転職活動をする際の出費
もう一つ用心しておきたいのが、前職を辞めてから転職活動を開始するケースです。
この場合は、新しい会社が決まるまでの間、生活費のほかに税金・年金・保険料の支払いにも備えておかなければなりません。
社会保険料は、これまで会社が負担してくれた分もすべて自分が払うことになるので、在職中よりも支払い額が上がります。
転職活動が長期化するほど負担が増すので、退職前からその分の出費を念頭に置いておきましょう。
離職後に転職活動をする場合は「失業保険」を受け取ることができるので、必要書類をそろえてハローワークで手続きをしましょう。
失業保険は、新しい職が決まるまでの経済的な柱になってくれます。
失業保険を受けるには受給資格を満たしている必要があり、条件によって給付日数が変わってきます。
どのくらい受給できるのか、必ず事前に調べておきましょう。
3.転職活動において「貯蓄ゼロ」のリスクとは?
貯蓄がゼロでまったくお金がない状況だと、思うような転職活動ができず不満を残す結果になってしまうかもしれません。
お金がない場合のリスクには、以下のようなことが考えられます。
・転職活動に十分な期間を確保できない
・準備が不十分で、納得のいく転職活動ができない
・焦るあまり、転職先を妥協してしまう
せっかく今よりよい企業へ転職するチャンスなのですから、採用試験には誰もが100%ベストの状態で挑みたいはず。
資金不足のせいで自分の力を出し切れなかったりチャンスを掴み損なったりしたら、これほどくやしいことはないのではないでしょうか。
このような事態を避けるためにも、転職を意識し始めたら早いうちからコツコツお金を貯めて、ベストコンディションで転職活動をスタートできるよう備えておきましょう。
4.いくらあれば安心?転職に必要なお金の考え方
転職活動では確かに最低限の経費はかかりますが、人によっては節約できる部分もあり、必ずしもまとまったお金が必要というわけではありません。
たとえば、応募するのは数社程度で近場の企業ばかりであれば、交通費はそれほど大きな額にはならないでしょう。
また新社会人と違い、転職する人は既にビジネス用のスーツや靴をいくつか持っているので、あえて新調する必要がなければ服飾費を浮かすこともできます。
まずは、応募する企業をある程度絞り込み、それぞれ採用試験の概要や会社までの往復交通費をリサーチしましょう。
次に、転職活動期間をどの程度みておくのか、おおよそのスケジュールを決めておくことが肝心です。
前職を辞めてから転職活動を開始する場合は、活動期間がどのくらいかによって必要経費の額が大きく変わってきます。
予定通りに転職活動が進むとは限りませんが、まずは自分の中である程度の見通しを立てておきましょう。
次に、スーツやネクタイ等の服飾費、履歴書や書籍等の雑費など、購入が必要なものをリストアップします。
引っ越しをする場合は、引っ越し代金や新生活に必要な費用を予算に組み込んでおきましょう。
総額でいったいいくらかかるのか、ざっと計算しておおまかな見積りを出しておくのがポイントです。
そのうえで、想定外の出費に備え、多少の余裕をもってお金を準備しておきましょう。
5.まとめ
貯蓄がないと常にお金の心配が付いて回り、転職活動に集中できなかったり応募する企業を予定より減らしたりなど、活動の質にも影響が出てしまうことが懸念されます。
転職は、自分の人生において今後の運命を決める大切なステップです。
納得のいく転職活動をするためにも、事前に転職にかかる必要経費をきちんと計算しておきましょう。

マネー・介護・福祉が専門のフリーライター。
独身時代は、都市銀行にて支店勤務ののち秘書室で役員秘書として従事。結婚退職後、介護福祉士の資格を取得し、福祉施設や訪問介護での勤務を経て、2016年よりライター活動を始める。Webメディアを中心に読者の方の役に立つ記事を多数執筆中。