企業の社長や役員、弁護士などのサポート役として活躍する「秘書」は、数ある事務系の職種の中でもとくに人気の高い職業です。
今回は、秘書への転職を考えている方に向け、秘書のくわしい仕事内容や求められる能力、就職先の決め方など、転職に役立つ知識をまとめました。
秘書への転職のノウハウや、面接でのアピール方法を知りたい方は、ぜひこの記事で「秘書への転職のポイント」をチェックし、転職活動に活かしてほしいと思います。
1.秘書の仕事内容とは?
秘書の仕事というと、役員のスケジュール管理や、こまごまとした事務処理を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろんそれらも秘書の仕事の一部ではありますが、実際の業務はさらに多岐にわたっており広範囲の知識が求められます。
ここでは、秘書の仕事内容をおおまかにご説明します。
①上司のスケジュール管理
企業の社長や役員は、自分の業務以外にも会合や会食への出席、接待、訪問、来客対応、出張など、さまざまな予定が入り、非常に多忙です。
秘書は担当する上司の予定をまとめ、外出の予定がある場合は交通手段、移動にかかる時間を考慮しながらスケジュールを組み立てていきます。
車の移動については、担当の運転手と分刻みで細かく時間の打ち合わせをし、飛行機や新幹線を利用する場合は切符の手配も秘書が行います。
もし予定が変更された場合は、速やかに社内外の関係者とスケジュールを再度調整します。
上司が1日の予定をすべて滞りなくこなせるよう、あらゆる場面でフォローするのが秘書の役割なのです。
筆者はかつて銀行の秘書室に勤めていたことがあるのですが、とくに移動手段の決め方には神経を使いました。
たとえば、東京ー大阪間の移動の場合、飛行機の方が早く到着できますが、時間に余裕のある時は、「移動時間を利用して資料を読みたい」、「寝不足が続いているので、少し睡眠時間を確保したい」というような理由で、あえて時間のかかる新幹線を希望する役員もいました。
飛行機は搭乗手続きなどに手間がかかるうえに、あっという間に現地に到着してしまうので、「疲れる」「せわしなくて落ち着かない」と敬遠する声も少なくなかったのです。
このように、スケジュール通りに予定を進めるだけでなく、上司の希望や体調面にも気を配りながら、仕事のパフォーマンス向上に貢献するのが秘書の務めといえます。
②来客対応
上司の元に来客があった場合は、応接室の準備、客のお迎えや案内、お茶出し、お見送りまでの一連の対応を秘書が行います。
企業の役員クラスであれば、来客の多くもエグゼクティブのため、秘書は失礼のないよう、言葉遣いや立ち居振る舞いに細心の注意を払わなければなりません。
お茶出しの順番にも決まりがあるので、相手に無礼にならないよう、ひと通りの接客マナーを勉強しておく必要があります。
③交際面のサポート
上記のような業務面のサポートのほか、冠婚葬祭関連の準備、お礼状の送付、お中元やお歳暮の手配といった交際面でのサポートも、秘書の業務の一環です。
冠婚葬祭であれば、礼服の準備など身だしなみのフォローのほか、秘書自身も祝賀会などに同行したり上司の代理で出席したりすることがあるため、慶事や弔事に関する知識やマナーをしっかり心得てなければなりません。
このように秘書は、冠婚葬祭の知識、贈答マナー、お礼状の書き方など、一般常識や教養、ビジネスマナーといった幅広い知識を身に付ける必要があります。
日々の業務から上司の身の回りのお世話まで、まさにトータルなスキルが求められる職業だといえるでしょう。
2.秘書の就職先は?
秘書の就職先は、一般企業だけではありません。
法律事務所や会計事務所、病院、議員事務所など、秘書を必要としている職種はさまざまです。最近では、インターネット上で仕事をする在宅秘書の求人も少なくありません。
秘書として転職する際に気を付けたいのは、選ぶ職種によって求められる知識や能力が異なる点です。
たとえば法律事務所なら、必要最低限の法律用語を理解していないと、上司とのやり取りに支障が出てしまうこともあるでしょう。
外資系企業であれば、高い英語力が求められるケースもあります。
そのため、何かこれまでに培った専門知識やスキルがあれば、その能力を活かせる職種から秘書の求人を探すのが早道だといえるでしょう
3.秘書の転職に必要な能力・スキル
秘書に求められる能力・スキル・資質について、みていきましょう。
①日々の業務において
どの業界でも秘書として働くのに欠かせないのが、「スケジュール管理」「電話対応」「来客対応」「文書作成」「メール・挨拶状の対応」「パソコン操作」などをこなすビジネススキルです。
電話応対やパソコン操作などは、多くのビジネスパーソンが日常的に行っている業務ではありますが、秘書の場合は社長や役員の関わる重要案件も含まれているため、より慎重で正確な仕事が求められます。
②秘書に求められる資質
秘書は会社の機密事項に触れる機会が多いため、機密の保持には細心の注意が必要です。
業務内容を軽々しく部外の人間に漏らすような口の軽い人は、秘書には相応しくありません。
また、日々の業務はスケジュール通りに進まないことも多く、その都度臨機応変に対応していく必要があります。
そのため、機転が利くこと、慌てず冷静な判断ができることは、秘書として欠かせない資質です。
もう一つ、秘書の仕事は上司と1対1で行うものだと思われがちですが、実は秘書同士や他部署との連携が不可欠です。
そのため、周囲の人と適切な人間関係を築けるコミュニケーション能力が求められます。
最後に、人間性の面で秘書が兼ね備えておきたいのが、「誠実さ」と「良識」です。
ミスを隠そうとして事実と異なることを報告したり、上司の指摘を素直に受け入れなかったりする人は、どんなに仕事ができる人間でも敬遠されてしまうでしょう。
4.秘書になるために資格は必要?
秘書になるのに、必ずしも資格が必要というわけではありません。
ただ、「秘書検定」や「国際秘書検定」などの資格を持っていると、秘書としての知識を有していることのアピールになるため、採用試験でプラスに働くケースもあるかもしれません。
こうした資格は、秘書として持つべき知識の目安になるうえに、ある程度の級を取得すれば履歴書に記入できるため、とくに秘書の仕事が未経験な方は資格取得を検討してみる価値はあるでしょう。
「公益財団法人 実務技能検定協会」が実施している「秘書検定」は、学生から会社員まで幅広い層が受験をしています。
大学生と高校生で受験生全体の6割以上を占めているものの、会社員や実際に秘書として働いている人も17.6%と、決して少ない人数ではありません。
秘書検定の受験級は「2級」がいちばん多く、合格率は48.9%となっています。
学生や秘書を未経験の方は、まずは2級を目指して勉強を始めるのがおすすめです。
ただ、一般的な事務職ではなく秘書として働きたい方であれば、転職対策として準1級以上を目指すのも有りでしょう。
準1級の合格率も44.1%と高めですし、すでに社会人経験のある方なら自分の経験や知識で解ける問題もあるため、それだけ有利になります。
しっかり勉強をして受験すれば、準1級の合格も決して不可能ではないでしょう。
5.秘書への転職を成功させるポイント
ここからは、秘書として転職するための戦略的なノウハウをお話ししていきます。
①職種の選び方
まずは、自分がこれまで身に付けてきた知識やスキルが活かせる職種かどうかを考えて、転職先を絞り込んでいきましょう。
経験や知識は即戦力になるため、一から教育しなければならない未経験者よりも優遇される傾向にあります。
応募する企業で役に立ちそうなスキルや経験がある方は、履歴書や職務経歴書でしっかりアピールしましょう。
②面接のポイント
面接試験には、必ず応募する企業のリサーチをしてから臨みましょう。
秘書というのは、経営陣にとって自分たちの身の回りの業務を任せるパートナーです。
採用試験を受けに来ているのに、会社のことを何も知らないようでは、秘書としての適性に疑問を持たれてしまいかねません。
前もって、会社の成り立ちや業務に関する情報など、ひと通りの知識を頭に入れておきましょう。
また、秘書は会社の大切な情報に接する機会が多いため、面接では能力だけでなく人間性も重視されます。
物事に対してきちんと善悪の判断が付くか、約束を守れるかなど、良識や道徳観を持ち合わせていることはとても重要なポイントです。
面接では自分をより良く見せることも大事ですが、まずは履歴書に嘘を書かないこと、聞かれたことに誠実に答えることを第一に心がけましょう。
もう一つ、髪の毛や服装などの身だしなみには一層の配慮が必要です。
目から入る情報はとても多く、全体の印象を左右してしまうことすらあります。
見た目で損をしないよう、ビジネスシーンに相応しい服装を心がけ、身だしなみのチェックは念入りに行いましょう。
6.まとめ
秘書への転職で意識したいのは、「基本的なビジネススキルが身に付いていること」と「秘書の資質を備えていること」です。
そのうえで、自分の経験や知識を活かせる就職先を探すのが、転職成功への近道といえるでしょう。
秘書は難しい仕事のように思われがちですが、上司のサポート役としてやりがいを持って取り組める職業でもあります。
秘書として生き生きと活躍できるよう、環境面でもキャリアの面でも、自分にとって最適な職場を見つけてほしいと思います。

プロフィール:マネー・介護・福祉が専門のフリーライター。
独身時代は、都市銀行にて支店勤務ののち秘書室で役員秘書として従事。結婚退職後、介護福祉士の資格を取得し、福祉施設や訪問介護での勤務を経て、2016年よりライター活動を始める。Webメディアを中心に読者の方の役に立つ記事を多数執筆中。