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安定性を求めるなら終身雇用型企業で働こう!実際の平均勤続年数なども詳しく解説

安定性を求めるなら終身雇用型企業で働こう!実際の平均勤続年数なども詳しく解説

今までの日本企業は終身雇用で定年まで働いていれば、人生安泰と言われてきました。

 

しかし、2019年に経済界のトップが相次いで終身雇用の終焉を示唆するような発言を行い、世間に衝撃を与えたことが記憶に新しい方もいるかと思われます。

 

また、大企業は基本的に終身雇用制度を維持している会社が多いのですが、実際に社員が長く働き続けていけるような素晴らしい労務環境のところばかりではありません。

 

そこで今回は、安定志向を目指している若い世代の方に、終身雇用の制度内容や、終身雇用型の優良企業、直近の若い世代の転職入職率などを解説していきます。

 

就職や転職で会社選びをする際に、ぜひ、参考にしてください。

 

1.終身雇用制度とは 

 

終身雇用制度とは、同一企業で倒産など不測の事態が発生しない限り、正社員を定年まで雇い続ける制度です。

 

従業員は安定した収入と雇用が得られ、企業側でも人材育成を長期的に行えることと、人材の確保ができるというメリットがあります。

 

一方、デメリットとしては従業員が向上心を失いがちになることや、企業が無駄な人件費を抱えてしまう場合があるということです。

 

大半の企業では年功序列制度、すなわち勤続年数や年齢を重視して役職や賃金を上昇させる人事制度とセットの仕組みになっています。

長く働くと一定の役職に就任できることがメリットでしょう。

 

2.社員が長く働き続けている終身雇用型企業トップ15

 

上場企業において、「平均勤続年数」が長い順から「平均年齢」と「離職率」をまとめた表が下図1の通りです。

 

終身雇用制度を維持しているだけでなく、実際に社員が長く働いた実績がある会社がズラリと並んでいます。

 

【実際に社員が長く働いた実績がある会社ベスト15】

順位 企業名 平均勤続年数 平均年齢 離職率
1位 京阪電気鉄道  26.9年 47.1歳 NA
2位 東武鉄道  25.3年 46.6歳 0.6%
3位 富士通フロンテック 24.7年 46.7歳 1.6%
4位 NTTコムウェア 24.6年 46.2歳 1.1%
5位 キヤノンマーケティングジャパン 24.3年 47.8歳 2.1%
6位 河合楽器製作所  24.0年 47.0歳 2.0%
6位 九州電力  24.0年 43.8歳 0.9%
6位 東急百貨店  24.0年 46.0歳 5.4%
9位 東芝情報システム 23.8年 47.0歳 2.2%
9位 NECプラットフォームズ  23.8年 46.4歳 NA
9位 日本電気硝子  23.8年 45.0歳 2.0%
12位 名古屋鉄道  23.6年 43.9歳 NA
13位 中国電力  23.5年 43.6歳 1.5%
13位 高島屋  23.5年 46.7歳 1.0%
15位 丸大食品  23.4年 45.6歳 6.1%
平均 24.3年 46.0歳 1.9%

図1)就職四季報 総合版2021年「平均勤続年数ベスト100」P34を参考に筆者作成

 

①終身雇用型企業ナンバーワンは京阪電気鉄道

終身雇用型企業のナンバーワンに輝いたのは「京阪電気鉄道」です。

 

平均勤続年数が26.9年、平均年齢が47.1歳と高い数値を表しています。

 

離職率は非公開となっていますが、国税庁が実施した、平成30年度の労働者の平均勤続年数は12.2年(下図3)ですから、実に2倍以上の数値です。

 

2位は同じ鉄道業界である「東武鉄道」がランクイン。平均勤続年数が25.3年、平均年齢が

46.6歳と1位に僅差で迫っています。離職率は0.6%と非常に少ない数値です。

 

3位には「富士通フロンテック」がランクインしており、平均勤続年数が24.7年、平均年齢が46.7歳、離職率は1.6%となっています。

 

富士通フロンテックは富士通の子会社で、金融や流通の端末や表示装置の生産を主力としている会社です。ATM、POSシステムが主軸事業で、手のひら静脈認証システムやRFIDに強みを持っています。

 

以下、鉄道や電力会社などのインフラ事業、百貨店、情報通信業など、人々の生活に密着した企業が多くランクインしているのが特徴でしょう。

 

②トップ15の平均年齢は46歳で離職率は1.9%

実際に社員が長く働いた実績がある会社ベスト15社の平均勤続年数は24.3年、平均年齢は46歳、離職率は1.9%という結果になりました。

 

下図2の表を参照すると、2020年の上場企業1,792社における従業員平均年齢は41.4歳となっています。

図1にランクインされている15社の平均勤続年数は46歳で、大企業の中でも4.6歳高いことが分かります。

 

2020年3月期決算 上場企業1,792社 「従業員平均年齢」調査

図2 引用)東京商工リサーチ「2020年3月期決算 上場企業1,792社 従業員平均年齢 調査」(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200819_01.html)

 

また、国税庁が調査した給与所得者の調査では(下図3)平成30年の平均勤続年数が12.2年と記載されていますが、トップ15社の平均勤続年数は24.3年となっています。

一般の労働者より12.1年も長く、約2倍ほど長く働いていられることが読み取れるでしょう。

 

  正社員の平均給与 平均年齢 平均勤続年数
2012年 467.6万円 44.9歳 11.9年
2013年 473.0万円 45.2歳 11.8年
2014年 477.7万円 45.5歳 12.0年
2015年 484.9万円 45.6歳 11.9年
2016年 486.9万円 46.0歳 12.0年
2017年 493.7万円 46.0歳 12.1年
2018年 503.5万円 46.4歳 12.2年

図3 引用)国税庁「民間給与実態統計調査令和元年」第8表 「平均給与」P13(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf)

 

3.日本の現状は若い世代ほど転職入職率が高い

 

厚生労働省が平成25年に実施した「労働経済の分析 一般労働者の年齢階級別 転入職率」(下図4)の表を参照すると、男女ともに19歳から29歳までの若年層において転職入職率が高いことが分かります。

 

男女ともに30歳を超えた辺りから緩やかに右肩下がりになっていき、定年を迎える60~64歳層で、一気に上がっているのが特徴です。

 

平成25年版 労働経済の分析 日本的雇用システムと今後の課題

図4 引用)厚生労働省「平成25年版 労働経済の分析 日本的雇用システムと今後の課題」P162(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-5_02.pdf)

 

①直近の調査でも男女に関係なく24歳までに3割近くが転職をしている

厚生労働省が調査した「平成30年雇用動向調査 年齢階級別の入職離職率」のグラフ(図5・図6)によると、男女ともに24歳までに3割近くの人が転職をしています。

 

男性の離職状況

男性_平成30年雇用動向調査結果の概要

図5 引用)厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概要(性、年齢階級別の入職と離職)」P1(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/kekka_gaiyo-03.pd)

 

女性の離職状況

女性_平成30年雇用動向調査結果の概要2

図6 引用)厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概要(性、年齢階級別の入職と離職)」P1(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf)

 

25歳を過ぎると男女ともに離職率が減少気味になり、男性の場合は30歳を超えると1割以下に低下します。

 

男性で最も少ないのは働き盛りの45~49歳層の5.5%で、59歳まで6.5%以下と低い数値を保っているのが特徴です。

 

②25~59歳層は男性より女性の方が入職率が高い

男性は35~39歳層になると入職率が8.6%となり、定年近くの59歳までは1割近くに落ち着いてきます。

 

女性の場合は30~34歳層から、離職率が緩やかに右肩下がりになっており、反対に入職率が微妙に上がっていることがお分かりになるでしょう。

 

理由としては、出産や育児がひと段落して、社会復帰する人が増えることも要因の一つと考えられます。

 

③60~64歳層は男女ともに転職入職率が高くなっている

60~64歳層は男女ともに転職入職率が高くなっている傾向が見られます。

 

要因としては定年年齢の影響が大きいでしょう。

 

定年退職の年齢は60歳が一般的でしたが2013年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が改正されたことで、希望すれば全員が、原則65歳まで継続して働けるようになりました。

 

しかし、65歳を待たずに60歳の時点で再就職をする人も多く見られ、離職率の上昇へと繋がっています。

 

 

4.終身雇用に対する企業と労働者の将来的な考え方

 

それでは現在における終身雇用に対する企業と労働者の考え方は、どのようなものなのでしょうか。

 

ここでは、企業と労働者それぞれの考えについて解説していきます。

 

①企業はできるだけ維持したいとは考えている

厚生労働省が平成21年に行った労働経済の分析における「長期安定雇用に対する企業の態度」のグラフ(図7)を見てみると、「今後もできるだけ多くの社員を対象に維持したい」という考えが7割近くに上っています。

平成21年版 労働経済の分析

図7 引用)厚生労働省「平成21年版 労働経済の分析(雇用システムの展望と課題)」P186(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/09/dl/03_0003.pdf)

 

ただ、「対象者を限定したうえで維持」とする企業も2008年には3割近く存在し、2004年と比較すると右肩上がりに増えています。

 

そのため、将来的には社員に何らかの線引きをしたうえで、長期雇用を維持していこうとする企業が増加する可能性もあるかもしれません。

 

また、製造業・卸売小売業・サービス業のいずれの業種でも、「対象者を限定したうえで維持」という企業が年々増えている傾向があります。

 

すぐに終身雇用制度が終焉する可能性はなさそうですが、企業側も少しづつ人材を選別していく方向が窺えます。

 

②労働者は約8割が長期雇用を支持している

 

厚生労働省が行った同じ調査では、労働者側の長期雇用についての考え方が示されています。(下図8)

 

1999年の調査以来、長期雇用について「良いと思う」という人は実に8割近くに上っており、肯定的な意見がほとんどです。

 

2007年になると「良いと思う」人は8割を超え始め、労働者側では企業に対して非常に安定性を求めていることが分かるでしょう。

 

この点からも、労働者が企業に対して終身雇用制度の維持を求めていることが読み取れます。

 

平成21年版 労働経済の分析2

図8 引用)厚生労働省「平成21年版 労働経済の分析(雇用システムの展望と課題)」P204(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/09/dl/03_0003.pdf)

 

5.まとめ

 

今回は、終身雇用の制度や終身雇用型の企業の紹介などを中心に、現在の日本における長期雇用について詳しく解説をしていきました。

 

2019年4月に経団連の中西宏明氏、5月にはトヨタ自動車の豊田章男氏が、それぞれ「終身雇用」の崩壊を示唆するような発言を行いました。

従来のように大半の日本の大企業が、終身雇用制度を永遠に維持していくということは絶対的なものではないかもしれません。

 

また、企業によっては終身雇用制度を設定していながらも、実際には機能していない大企業が存在しているのも事実です。

 

今回、ご紹介した企業はいずれも、終身雇用型の優良企業として社員が長く定着している企業ばかりです。

 

現在の日本の終身雇用制度の現況を鑑みながら、安定して長く働ける企業を選ぶ際に、ぜひ、お役立てください。

 

 

執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

 

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フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。

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