新卒で入社後3年以内に離職し、新しい会社へ転職活動を行う人のことを「第二新卒」と言います。
近年では、新卒の約3割が3年以内に離職する傾向がありますが、第二新卒を積極的に募集している企業も増えていることをご存知でしょうか。
今回は、第二新卒として新たな転職先を見つけようとする方に向けて、近年の新卒の離職率やおすすめする業界、企業が採用を重視する能力などについて詳しく解説をしていきます。
1.第二新卒とは
最初に、第二新卒の定義や大学卒業後3年以内の離職率について、詳しく見ていきましょう。
①年齢的には学校を卒業後3年以内の25歳前後
実のところ、第二新卒という言葉には、はっきりとした定義はありません。
「新卒で入社して3年未満の求職者」を指すことが一般的です。
年齢については、大学卒業後約3年以内を指すため25歳前後とされています。
しかし大学院卒など、最終学歴によっても年齢には違いが見られ、企業によっては、さらに上の年齢でも募集しているところもあるのが実情です。
そのため、25歳から30歳くらいまでが範疇に入るでしょう。
共通点としては「短期間でも社会に出た経験がある」ということで、社会人としての経験が全く無い「新卒」に近い存在の「社会人」として捉えられています。
②大学新卒の離職率は男性27.4%、女性は44.1%
図1の表によると、大学を卒業後、新卒で初めて正社員として入社した勤務先で、離職した人の割合は男性は27.4%、女性は44.1%というデータで表されています。
一度は就職したものの、男性は3割近く、女性は半分近くが離職を経験しているのです。
学歴全体で見てみると、高校卒業の新卒は男性が39%、女性が71.3%。専門・短大・高専卒は男性41.7%、女性68.4%と、大学卒業の新卒離職率が男女ともに一番低いことが読み取れます。
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図1 引用)独立行政法人「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」図表1(https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/191.html)
2.第二新卒が入社しやすい業界
第二新卒は年齢が若いため、企業から将来性豊かな人材として歓迎される傾向があります。
まだ、キャリアの経験値は低いため、スキルアップできる業界や企業が新たな転職先としておすすめです。
第二新卒が入社しやすい業界としては、「IT」「金融」「技術系」の3つの業界が挙げられますが、他の業界でも募集しています。
①IT系の企業
IT企業は業界全体が急速な成長を続けている、非常に将来性が明るい見通しの業界です。
近年では、さらにIT技術が飛躍的な進化を遂げ、プログラマーなどのエンジニア職の需要が増加しています。
そのため、転職がしやすい業界だといえますが、専門知識が必要な業界であるため、未経験で入る場合には、前もってプログラミングの勉強をしておくと良いでしょう。
学習するのが難しい場合は、これからプログラミングなどについて勉強する意欲があることを伝えると、やる気がある人材だと思われます。
【おすすめする企業例】
企業名 | 必須要件 | 歓迎する職歴 |
日本オラクル | ・学歴不問/第二新卒歓迎 ・社会人経験1年以上 ・チャレンジ意欲を持っている |
・何らかの営業経験 ・IT業界での営業実務経験 ・新たな環境の変化や技術に対し、積極的にチャレンジする姿勢など |
図2 参考)日本オラクル「キャリア採用」を参考に筆者作成(https://www.oracle.com/jp/corporate/careers/professional-development.html)
②金融(銀行・証券会社・保険など)
大手金融機関は、大量採用を基本にしている会社が多くあります。
例えば、2019年度の就活四季報での調査では、日本生命保険が805人、東京海上日動火災保険が639人、三井住友銀行が600人、大和証券グループが450人の採用実績となっています。*1
1年あたり同期の10%が継続的に退職するともいわれ、あらかじめ多めに採用している状況です。
そのため、長期勤続によりキャリア形成を図るためにも、第二新卒のような若手の人材を積極的に採用する傾向が見られます。
【おすすめする企業例】
企業名 | 必須要件 | 歓迎する職歴 |
日本生命 | ・4年制大卒以上で年齢35歳未満 ・社会人経験あり ※経験職務不問、性別国籍不問、学部学科不問 |
特になし |
図3 参考)日本生命「採用情報 総合職」を参考に筆者作成(https://www.nissay.co.jp/kaisha/saiyo/chuto/sogo/)
③技術系企業
大手メーカーでも第二新卒を採用する会社はあります。
シャープでは、第二新卒を新卒枠と同じフレームで採用をしており、就労経験の有無は問わないなど、未経験でも入社が可能です。
【おすすめする企業例】
企業名 | 必須要件 | 歓迎する職歴 |
ソニー | 求人領域の専門性を持っている | 大学院博士後期課程 (ドクター) 在籍中も経験者採用の対象 |
④その他
上記に挙げた業種の他にも、第二新卒は様々な業界で必要とされています。
ユニクロで有名なファーストリテイリングは、新卒と第二新卒を同じ扱いとしており、募集要項には学歴の要件なども特に記載されておりません。
企業によっては、若い人材の場合、入社してから自社の戦力として教育をしていく会社も多く、人材育成の研修に力を入れています。
【おすすめする企業例】
企業名 | 必須要件 | 歓迎する職歴 |
ファーストリテイリング | 特に限定なし | 特になし |
図3 参考)ファーストリテイリング「募集要項 グローバルリーダー」を参考に筆者作成(https://www.fastretailing.com/employment/ja/fastretailing/jp/graduate/recruit/position-info/)
3.初めての正社員としての離職から現在の勤務先に入社するまでの期間
下記の図は、独立行政法人 労働政策研究 ・ 研修機構がまとめた「離職をしてから次の勤務先に入社するまでの期間」をまとめた表です。
現職に入社するまで3年以上の期間がある人は、正社員の場合、男女合わせて16.9%います。
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図4 引用)「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)離職後のキャリア形成状況」P142(https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/documents/191_04.pdf)
①男性は離職者の 23.5%が正社員としてすぐに再就職
図4の表を参照すると、初めて正社員として働いた勤務先から、現在、働いている勤務先に正社員として入社するまでの期間は、男性は同月、翌月以内に23.5%、女性は11.6%となっています。
3カ月目から1年未満は男性11.5%、女性は7.7%へと減少。
1年から3年未満は男性14.2%、女性10.2%とやや上昇し、3年以上ともなると男性は23.7%とさらに上昇し、女性は9.5%と再び減少気味になっています。
男性は離職者の 23.5%が正社員としてすぐに再就職されています。
②女性が正社員としてすぐに転職するのは11.6%と少なめ
女性がすぐに転職するのは11.6%と、男性より少ない傾向があります。
転職者の合計では19.5%になっており、女性の場合は正社員だけでなく派遣社員やパートなど、比較的自由度の高い働き方を選択する人も多いです。
3カ月目以上になると、正社員以外で働く人は右肩上がりに増えていき、3年以上になると正社員として働く人は9.5%になっています。
4.企業が採用の際に重視する能力
厚生労働省が実施した「平成25年版 労働経済の分析 労働市場における人材確保・育成の変化」の調査をまとめた表が以下の通りです。(図5)

図5 引用)厚生労働省「平成25年版 労働経済の分析 労働市場における人材確保・育成の変化」P143(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-5_01.pdf)
①企業は若者の「熱意・意欲」を重視
図3の表によると、大学卒・大学院卒に関わらず、企業が採用で重視する能力は「熱意・意欲」となっており、モチベーションの高さで選ぶ傾向があります。
次に求められている能力は「行動力・実行力」で、プロジェクトを成し遂げていけるようなやる気のある人材が好まれています。
2012年になると、チーム力に欠かせないコミュニケーション能力や協調性、誠実さや明るさなど性格的な要素を重視されるようになっていきます。
専門知識や論理的思考力など、今まで重視されていた項目が見当たらなくなっていき、近年では採用する人の「人柄」をかなり重視する傾向と言えるでしょう。
②採用で重視する過程の 1位は「面接」
人柄を見抜くには、面接で実際に人となりを確認するしかありません。
企業としては、志望動機やエントリーシートだけでは分からない「人間としての内面性」を面接の場で見極めることになります。
近年では、採用試験の重視科目として「面接」を最優先する企業がほとんどです。
ESなどでふるいにかけた後、最終的な判断材料として面接試験で採用を決定することになります。
5.第二新卒のまとめ
今回は、第二新卒の離職率や次の勤務先に入社するまでの期間、転職先として入りやすい業界、企業が採用の際に重視する能力などについて、詳しく解説をしていきました。
現在では、初めて就職した企業で離職する大学卒の離職者は、男性が約3割、女性が4割(図1)と決して珍しいことではありません。
また、第二新卒を新卒と同等の扱いで受け入れてくれる企業も多数あり、新しい会社でキャリアアップも十分目指せます。
第二新卒は、短い期間でも社会人として身についたスキルもあり、ポテンシャルも高い人が多いです。
これからの自分の可能性を信じ、新たなビジネスチャンスに取り組んでいけることでしょう。

プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。