40代以降の転職 転職ノウハウ

40代の転職で失敗しないためのキャリアの見直し方

 

40代での転職は、20代や30代といったポテンシャルなどが評価される年代と違って、キャリアの成熟期に入っていることもあり、失敗をしてしまうとリカバリーが難しいという事実があります。

ただ、40代は若手社員とは違って社会経験を十分に積んできており、その経験を発揮して企業の安定や成長に貢献して欲しいと考える企業もあります。また管理職などのマネジメント業務経験や専門的スキルがないと、転職に失敗するというわけではありません。

そこで今回は、自身のキャリアの振り返り方をご紹介して、40代での転職の失敗を防ぐ手立てを紹介します。

 

 

 

1.40代の転職の現状は厳しいのか?

 

 

40代での転職は難しいとされることがありますが、まずは、40代の転職の実情について確認していきましょう。

 

厚生労働省の『雇用動向調査』における、民間企業の年齢別・性別の転職入職率の比較を見てみると、年齢の増加に伴って、転職者の割合が減少していることがわかります。

 

「平成30年雇用動向調査」P.14

参考)「平成30年雇用動向調査」P.14を参考に筆者作成

 

 

男性の転職者数が女性と比較して少ないという結果ではありますが、40代だからといって転職者の割合が極端に少ないわけではありません。

 

次に、転職後の賃金の変化について確認してみましょう。

 

「平成30年雇用動向調査」P.16

参考)「平成30年雇用動向調査」P.16を参考に筆者作成

 

 

20代後半から30代前半の転職者では、転職後の賃金増加が半数に迫っています。ただ、40代の転職においても約4割が転職後に賃金が増加しており、30代後半とほぼ同じ水準であることがわかります。

 

50代の転職者は、賃金減少の割合が高くなっていますが、40代までならば転職後に極端に賃金が下がるわけではないことがわかります。

 

これらのデータは、転職を行った人たちへの調査結果であり、実際に転職などの人材市場において、40代がどれほど求められているかという正確な状況把握はできていません。

 

雇用対策法の改正により、平成1910月からは求人票への年齢制限記入が禁止されているため、40代のミドル層を対象としている求人規模が分からないことが要因の一つです。

 

ただ、40代だからといって極端に転職者が減ったり、賃金が下がっているわけではないことは間違いなさそうです。

 

 

 

2.40代の転職の失敗基準を仕事に対する価値観から明確にする

 

 

単純に賃金面に着目した場合、40代で転職に失敗した人の割合は2530%程度であり、この水準は20代や30代と大きな差はありません。

 

一方で、転職における失敗とは、転職ができなかったり賃金が下がるということだけではありません。前職の退職理由となった不満点が転職後に改善されないことも、転職の失敗と考えられます。

 

それでは、40代の転職入職者はどのような理由で前職を退職したのでしょうか?

 

「平成30年雇用動向調査」P.15

参考)「平成30年雇用動向調査」P.15を参考に筆者作成

 

 

『雇用動向調査』で確認すると、「人間関係」や「給与、労働時間」「会社の将来性」といった、職場の環境起因の転職理由は、他の年齢と同様の水準にあることがわかります。

 

ただ、「仕事に対する興味・関心」という点に着目すると、40代前半で若干の上昇が見られます。

 

組織におけるキャリア形成の研究家で知られるエドガー・シャインは、40代のミドル層は「中期キャリア危機」を抱える年代であり、働く意味を再吟味する時期であるとしています。

 

「中期キャリア危機」においては、自身が理想としていた仕事のやり方やキャリアパスと比較して、今の自分の現実の働き方とのギャップに悩みが生まれ、この課題への対応を考える年代でもあるのです。

 

ここで転職を決断したとしても、自分が仕事に求める価値観やニーズを満たすことができる転職先でなければ、結果的に転職は失敗となりかねません。

 

自分の今までのキャリアを振り返り、これから先どのようなキャリア形成をしたいのか考える際には、シャインが示した8つの「キャリア・アンカー」という概念が活用できます。

 

 

 

「キャリア・アンカー」は、一つとされています。自らの仕事の経験の中で満足感を得られた瞬間に着目しながら、自分が働く上で重視するものを選んでみましょう。

 

 

 

3.40代の転職で歩みたいキャリアを明確にする

 

 

40代はキャリアにおいて大きな分岐点です。部下をマネジメントする立場である「管理職」か、今までの経験・スキルを活かす「一般職(専門職)」のどちらのキャリアを目指すか決めなければいけません。

 

40代は、20代や30代に比べて経験が豊富で職位が高くなっているため、「キャリアプラトー」という問題を抱えはじめます。「キャリアプラトー」とは、キャリアの伸び悩みのことであり、これ以上の職階上の昇進可能性が下がり、現状のまま年齢を重ねてしまうという状態です。

 

例えば、管理職の役職に空きが無いために昇進できなかったり、一般職としては業務のレベルがほぼ頭打ちとなって、成長を感じにくくなるといった問題と直面しやすくなるのです。

 

このキャリアプラトーを抜け出すためには、キャリア・アンカーといった価値観だけではなく、具体的に自分が仕事で「すべきこと(MUST)」と「やりたいこと(WILL)」を明確にする必要があります。

 

MUST:キャリアの目標を達成するためにやらなければならないこと

WILL:本当はどのような働き方をしたかったかというありたい自分の姿

 

40代の転職においては、管理職と一般職のどちらを選ぶかによって、「すべきこと」は変わりますし、採用する企業側が求める経験やスキルも違ってきます。まずは、どちらの道を選択するのかを明確にしましょう。

 

 

 

4.40代の転職にはポータブルスキルの把握が重要

 

 

自分が仕事に対して求める価値観や、これからの仕事で「すべきこと(MUST)」と「やりたいこと(W I L L)」を明確にした後は、自分の仕事の経験から「できる事(CAN)」を明確にする必要があります。

 

転職においては、採用する企業側のニーズに「できる事(CAN)」がマッチしなければいけません。

 

40代の転職では若い世代に比べて企業ニーズとのマッチ度はさらに重視されるため、40代までに培ってきた経験の中から「ポータブルスキル(社外でも通用する能力)」を棚卸ししましょう。

 

中高年採用時に企業が評価する項目の中でも、「専門知識・技能」は上位を占めています。

 

「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」P.15

参考)厚生労働省「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」P.15を参考に筆者作成

 

 

このことから、転職志望先企業の業界・業種と自身の経験とのマッチング率が高いほど、転職も失敗しにくいと判断できます。

40代までに経験していない業界・業種への転職は、採用されたとしても給与待遇などが下がる可能性が高くなります。

 

ポータブルスキルの棚卸しでは、「専門知識・技能」に加えて「仕事のし方」や「人との関わり方」といった項目にも注目しなくてはいけません。

 

「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」P.24

参考)厚生労働省「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」P.24を参考に筆者作成

 

 

「仕事のし方」は、「専門性以外の職務遂行能力」に該当し、企業側が中高年採用時にもっとも評価すべき項目の中で、2番目に位置しています。

 

「仕事のし方」では、現状把握や計画・実行といった項目について、自らがどのような考えを持って行動してきたかを振り返ります。経験から培った「仕事のし方」は、企業へアピールできる財産であり、企業側も結果を出すために行ってきた具体的な経験を評価します。

 

「人との関わり方」は、「人柄」と関連性が深い項目であり、40代の場合「部下マネジメント」の項目が20代や30代よりも注目されます。

 

40代の転職は、一般職であっても部下の成長を促した指導経験を確認されることがあります。管理職やリーダーとして関わった経験がなくとも、自分よりも経験が浅い社員と関わった経験から振り返ることができます。

 

 

 

5.40代の転職で失敗しないためには価値観と具体的なスキルを振り返る

 

 

40代はキャリアの分岐点に差し掛かる人が多く、自らのキャリアの理想と現実に苦しむ「キャリア中期の危機」といった問題と向き合う年代でもあります。その中で、転職という決断をすることもあるでしょう。

 

40代の転職は、『雇用動向調査』によると必ずしも他の年代に比べて、転職後の賃金が下がるなどの失敗が多いとは限りません。ただ、転職における失敗や成功は、仕事に求める各々の価値観やニーズによって異なります。

 

まずは、シャインの「キャリア・アンカー」を参考にしながら、40代までに築いてきたキャリアを振り返る時間を設け、仕事で満足感を得られる価値について考える時間を設けましょう。

 

また、転職を決意した後に実際に転職活動を行う場合には、具体的なスキルの棚卸しは重要です。

 

専門知識や専門技能だけでなく、40代までに確立した自分の働き方や、部下との関わりで培ったマネジメントスキルについて振り返ることで、転職の失敗の原因となる企業側のニーズとのミスマッチを防ぐことができます。

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面接官のホンネ 管理人

アラフォーの管理職。12歳と10歳の娘がいます。 新卒・中途採用に10年以上携わり、安定を手にするために私自身も財閥系企業に転職しました。次世代に知識と経験の継承を目的として「リアルな現場の声」をテーマに、“面接官のホンネ”を立ち上げました。わかりやすく、人事/採用の担当としての本音をお届けします。

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