40代以降の転職 転職ノウハウ

氷河期の40代、正社員への道を開く術はあるのか

氷河期の40代、正社員への道を開く術はあるのか

 

バブル崩壊後のいわゆる「就職氷河期」の世代は、雇用環境が厳しい時期に就職活動をしていて、そのまま現在も不安定な働き方を余儀なくされている人が少なくありません。

就職氷河期の現状と、正社員への転職の現状について見ていきましょう。

 

 

 

 

1.氷河期世代の現状

 

 

氷河期世代とは、政策的な意味合いでは1993年から2004年にかけて卒業を迎えた年齢層で、政策的な意味合いでは現在35~46歳(2019年時点)*1の人をさしています。

 

バブル経済が崩壊し、それまで人員を採用しすぎていた企業が新卒採用に消極的になったというのがその背景です。

 

 

新卒の正社員就職率(出典「『就職氷河期世代』の現在」労働政策研究・研修機構)

図1 新卒の正社員就職率(出典「『就職氷河期世代』の現在」労働政策研究・研修機構)(https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/05/pdf/017-027.pdf) p21

 

 

この頃、正社員として就職した人の割合は6割を切っている年も多く(図1)、そのまま時間が経過してもなおその雇用状態は不安定なままです(図2)。

 

 

就職氷河期世代中心層の雇用形態(「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」内閣府)

図2 就職氷河期世代中心層の雇用形態(「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0611/shiryo_01.pdf) p1 ※総数は2018年で1,689万人

 

 

 

「正規雇用を希望していながらも、現在は非正規雇用」という人が50万人にのぼっています。

これに関しては、20代の頃から段階的なキャリア形成をすることが難しかったということがひとつの理由として挙げられています。

賃金が上がらない状況のもとで働き続け年下の正社員より収入が少ないケースが多く見られますし、社会保障面でも不安の残るところです。

 

また、事情によって求職活動そのものをしていない人も40万人にのぼり、その大半は「病気やけがのため」としています。将来の不安からくる精神的負担もじゅうぶんに考えられ、中には何らかの精神疾患により求職活動ができていない人の数も少なくないことでしょう。

 

そして、氷河期世代の今の就労状況にはもうひとつの特徴があります。労働政策研究・研修機構は就職氷河期とその前後を、卒業年と新卒で正社員で就職した人の割合で5年単位に区切り(図3)、現職の雇用形態について調査しています。

なお、2012年以降の「アベノミクス期」では、高校卒業直後の浪人生が無業者としてカウントされていると推測されているので、実際は表の数値よりも新卒正社員率が低い可能性があります。

 

 

新卒正社員率による世代のカテゴリー化

図3 新卒正社員率による世代のカテゴリー化
(出典:「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状 」労働政策研究・研修機構)(https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf) p77

 

 

そして、これらの年代別に見た、現職への入職状況を見ると、例えば大卒男性の場合は下のようになっています(図4)。

 

 

他世代と比較した「就職氷河期」のキャリア

図4 他世代と比較した「就職氷河期」のキャリア
(出典:「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状 」労働政策研究・研修機構)(https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf) p79

 

ここでいう「学卒就職正社員定着」「その他正社員定着」は最初の職業が正社員としての入社で、現在も継続している状況をさします。「その他正社員定着」は、秋採用のほか、一定期間「就職浪人」を経た人たちという可能性もあります。

 

この中で、「他形態から正社員」に転職し、現職に至っている人の割合は、特に氷河期後期で他より高い傾向にあります。

非正規雇用やフリーターから正社員に転職・転換した人が他の世代より多いと考えられます。実際、氷河期世代のフリーターの数は減少傾向にあります。

 

 

 

 

2.正社員への転換経路

 

 

氷河期の非正規雇用から正社員への転換は、どのような形があるのでしょうか。

下は、労働政策研究・研修機構の調査による、年齢ごとの正社員への転換状況です(図5)。

 

 

正社員への移行率

図5 正社員への移行率
(出典:「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」労働政策研究・研修機構)(https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf) p72

 

 

非正規から正社員への移行率は、年齢とともに下がりつつも、前回調査時に比べると回復傾向にあります。女性の場合は離職理由が出産・育児というケースもありますので、希望して正社員へ移行した割合だけを見ればもう少し高くなるでしょう。

 

全体的に厳しい氷河期の正社員採用ではありますが、「どこからどこに」正社員転換するかというポイントもあります。(図6)。

 

 

30~44歳男性正社員転換者の職業移動率・産業移動率・企業規模下方移動率(%)

図6 30~44歳男性正社員転換者の職業移動率・産業移動率・企業規模下方移動率(%)
(出典:「 壮年非正規雇用労働者の仕事と生活に関する研究」労働政策研究・研修機構)(https://www.jil.go.jp/institute/reports/2017/0188.html)

 

 

これは、30〜44歳の人で、「不本意ながら非正規雇用にあった」人の正社員転換の実態です。一例として男性について取り上げています。

 

全体的に、非正規であることが「不本意ではない」人と比べると、これまでの勤め先の職業や産業を変えて転職した人、あるいは勤め先をそれまでより小さい企業に変えた人での正社員転換率が高い傾向にあります。

 

その時々で人手が不足しがちな分野へ移行することで、正社員としての働き先を見つけることが多い可能性があります。

 

また、特徴的なことは、どこで仕事探しをするかということです。

労働政策研究・研修機構の分析によると、転職先を探す際は企業への直接応募をする人が多い傾向にあるのですが、実際に正規雇用へと転換した人の中では、ハローワークの利用率が高くなっていることがわかっています*2。

 

これは、直接応募よりも、ハローワークの方がトライアル雇用などの柔軟性を持ち、比較的良いマッチングができているためだと考えられます。

 

 

 

 

 

3.精神的なバックアップも必要

 

 

実際、氷河期世代は、その後景気に回復傾向があったとしても「若い人」を優先する採用傾向に取り残されてきた節もあります。

 

しかし少子化が進んで若い労働人口が減っており、政府はこの世代にフォーカスした政策として「能力を活かすため」の取り組みを始めている模様です(図5)。

 

 

国家公務員・地方公務員数(出典「就職氷河期支援プログラムの実行に向けて」内閣府資料)

図5 国家公務員・地方公務員数(出典:「就職氷河期支援プログラムの実行に向けて」内閣府資料)(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1127/shiryo_03-2.pdf)

 

 

なお、ここのところ、民間企業の中でも、経験の有無を問わず氷河期世代に限定した求人を始めているところが出てきています。

 

「氷河期世代」の中には、「働く自信がない」という理由で求職活動をしていない人も一定の割合で存在しています。

 

家族としては、こうした氷河期採用の動きの広がりにも注目しながら、まずは心理的に引きこもらないような支援をする必要性もあります。

 

 

参照データ
*1 「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状 」労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf p1
*2 「壮年非正規雇用労働者の仕事と生活に関する研究」労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2017/documents/0188.pdf p65~68
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執筆者 清水

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に記者として勤務。社会部記者として事件事故やテクノロジー、経済部記者としては企業活動から金融まで経済全般を幅広く取材。CSニュース番組のプロデューサーも務める。フリーライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

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