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コネ?リファラル採用の広がりと実情、中途採用に見る企業の変化とは

2019年度中途採用に見る企業の変化 その実情と「リファラル採用」の広がりについて

労働市場の流動性は続き、今では企業への入職者のうち6割超が転職での入職者です。

企業にとって、中途採用は依然として人手不足解消の大きな手段になっています。

 

しかしここにきて、中途採用の状況には変化が現れ始めています。また、新型コロナウイルスの影響も考えると、転職者も戦略の練り直しが求められる企業が多いです。

 

その中で転職市場で活性化してきているのが「リファラル採用」です。

MEMO
リファラル(referral)とは「推薦・紹介する」という意味で、リファラル採用とは社員に人材を紹介してもらう採用方法のことです。

 

今回は、中途採用市場の現状と、リファラル採用について解説をします。

 

1.中途採用活動に変化

 

厚生労働省によると、2018年の入職者数は約767万人、そのうち転職での入職者は約496人と、実に6割以上を占めています(図1)。

 

2018年の入職者の状況

図1 2018年の入職者の状況(出所:「中途採用に係る現状等について」厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000557900.pdf p3)

 

そして実際、リクルートワークスの調査によると、2019年度下半期も多くの企業が正社員の中途採用活動を実施しました。

企業規模や業種を問わず、全体の72%の企業が中途採用に踏み切っています(図2)。

 

2019年度下半期中途採用活動

図2 2019年度下半期中途採用活動(出所:「中途採用実態調査-2019年度実績」リクルートワークス研究所)(https://www.works-i.com/research/works-report/item/200529_midcareer.pdf p6)

 

このように見ると転職者の受け手は相変わらず多いように感じてしまいますが、採用実績は変化しつつあります。

 

通期の1社あたり中途採用実績は、2018年度が1.66人であったのに対し、2019年度は1.56人で、6.3%減少しています(図3)。

 

幅広い業種で採用実績が大幅に下がっており、企業規模別に見ると、5~299人の中小企業と5000人以上の大企業で大きくマイナスになっているのが目立ちます。

 

2019年度通期の中途採用実績

図3 2019年度通期の中途採用実績(出所:「中途採用実態調査-2019年度実績」リクルートワークス研究所)(https://www.works-i.com/research/works-report/item/200529_midcareer.pdf p3)

 

2020年に入ってからの新型コロナウイルスの影を考えがちですが、実はそうではありません。

というのは、まずこの調査が行われたのは2020年の1月30日〜3月6日です。緊急事態宣言よりも前の時期にあたるのです。

 

実際、中途採用で人材を確保できたかできなかったかについての企業の意識が大きく変わっていることもわかります(図4)。

 

中途採用での人員充足感

図3 中途採用での人員充足感(出所:「中途採用実態調査-2019年度実績」リクルートワークス研究所)(https://www.works-i.com/research/works-report/item/200529_midcareer.pdf p7)

 

実は、「中途採用で必要な人員を確保できた」とする企業の割合が、3年ぶりに半数を超えているのです。

 

中途採用で人材を「確保できた」という企業の割合を規模別に見てみると、

 

5〜299人・・・58.2%

300〜999人・・・53.9%

1000〜4999人・・・56.3%

5000人以上・・・55.8%

 

となっています*1。

 

また、2020年卒の新卒採用充足率が3年ぶりに上昇しているという調査結果が出ていますので、中途採用については潮目が変わりつつあると考えた方が良いでしょう。

 

さらには、新型コロナウイルスの影響が採用活動にどういう形で表れるかがまだよく見えない実情もあります。

ただ、民間23社のエコノミストの予想では、4~6月のGDPは年率換算で前期比マイナス26%という数字が出ています*2。

採用そのものを控える動きが出てくる可能性もあるでしょう。

 

2.中途採用の新しい形態〜リファラル採用の浸透

 

ところで近年、中途採用の手段として最近広がりつつあるのが「リファラル採用」です。

社員が採用候補者を紹介・推薦するというものですが、いわゆる「縁故採用」と違うのは無条件で採用するわけでなく、そこからあくまで面接などを通して入社させるかどうかを決めるものです。

 

社員一人一人がリクルーターとして機能している企業、とも言えます。

 

マイナビの調査では、2019年にリファラル採用を実施した企業の割合は全体の6割でした(図4)。

企業規模が大きいほどリファラル採用の実施割合が増えています。

 

リファラル採用実施率

図4 リファラル採用実施率(出所:「マイナビ 中途採用状況調査2020年版」株式会社マイナビ)(https://www.mynavi.jp/news/2020/03/post_22634.html)

 

社員の推薦であれば合理的な経験者採用ができ、コストダウンにも繋がるという企業側のメリットもあり、大企業も導入しています。

 

知られているところでは富士通や日立、大日本住友製薬、三井化学、NTTデータ、デンソーテクノ、メルカリなどがあります。

トヨタ自動車も次世代車開発にあてる人材獲得のため、リファラル採用の導入を決めています。

 

コロナウイルスの影響で大規模なイベントや説明会を開催しにくくなっている中、有力な採用手段としてさらに広がりを見せる可能性もあります。

 

まさにその企業・部署で働いている人の生の情報に触れられるほか、自分がその会社に向いているかどうかも、友人や知人を通じて明らかになるので、転職者にとっても大きなメリットがあります。

 

もちろん、無条件採用ではなく面接を受けての選考ですが、一般の応募に比べれば採用率は格段に高くなります。

今すぐに転職というわけではなく機会を窺っているという人の場合、こうした人脈作りをしておくのも良いでしょう。

 

3.まとめ

 

人材確保は多くの企業に共通した課題であり、転職者の求人は人材不足解消の大きな手段となっています。

 

ただ、ここまで見てきたように頭打ちになりつつあるのが現状です。

また、コロナウイルスによる経済縮小の影響が正社員採用に与える影響はこれから見えてくるというところです。

 

また、最新の傾向として、

「今の会社にとどまりたい」

と考える新卒や若手社員が増えています。

これもコロナの影響を不安視してのことですが、新卒の定着率が上がると、その分中途採用の数を減らす動きが出てきてもおかしくありません。

 

かつ、リファラル採用のように、コストや手間をかけずミスマッチの少ない採用方法が広がっていることからも、中途採用の方法や全体の傾向は変わりつつある、と認識したほうが良さそうです。

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執筆者 清水

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に記者として勤務。社会部記者として事件事故やテクノロジー、経済部記者としては企業活動から金融まで経済全般を幅広く取材。CSニュース番組のプロデューサーも務める。フリーライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

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