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薬剤師はなぜ転職をくり返すのか?失敗事例から成功するための転職活動のコツを探ろう

医師や看護師、薬剤師などは、就職において資格やキャリアが重視される職業です。

逆にいえば、資格やそれなりの経歴があれば就職・転職が比較的容易ともいえます。

そして平成27年の厚生労働省の調査では、医療・福祉産業では1割以上の人が転職経験者であることが明らかになっています*1

 

 

これを薬剤師に限ってみると、転職経験者は約8

 

転職経験の有無

引用)薬キャリ 職場ナビ>特集>【薬剤師の転職動向アンケート】78%の薬剤師が転職経験者!*2(https://pcareer.m3.com/shokubanavi/feature_articles/95)

 

そのうちの2/3以上は転職を複数回経験しており、6回以上転職をくり返している人も1割近くいます*2

 

転職回数

引用)薬キャリ 職場ナビ>特集>【薬剤師の転職動向アンケート】78%の薬剤師が転職経験者!*2(https://pcareer.m3.com/shokubanavi/feature_articles/95)

 

二つの調査は、調査方法や調査対象の母集団が異なるため、単純に結び付けて考えることはできません。

しかしそれでも、他の医療従事者に比べて薬剤師の転職率が非常に高いことは容易に想像できます。

 

もちろん、家庭の事情などやむを得ない理由で転職をしている方もいるでしょう。

しかし、薬剤師が転職をくり返すのは、転職先とのマッチングがうまくいっていないことが背景にあると考えられます。

 

そこで今回は、実際の事例もいくつか紹介しながら、薬剤師が転職に失敗する理由を探ります。

  

1.転職を後悔する薬剤師は約5

 

ある調査によると、転職をした薬剤師のうち、転職したことを後悔している人の割合は過半数を超えています。

そして、その失敗原因として、多くの人が「情報不足」をあげています*3

 

転職を失敗した原因

転職を失敗した原因

引用)薬キャリ「薬剤師の転職成功ガイド>薬剤師の転職実態調査Vol.8 転職失敗編」*3(https://pcareer.m3.com/column/61)

 

では、薬剤師は転職先の情報をどのように入手しているのでしょうか。

 

実は、転職する薬剤師の多くは、人材紹介会社(転職サイト)を利用して転職活動をしています*2

しかし、人材紹介会社に希望がうまく伝わっていなければ、ミスマッチが生じる可能性が高くなります。

 

また、多くの薬剤師は働きながら転職活動をするため、時間に余裕がありません。

そのため、人材紹介会社から提供された情報を精査せずに転職先を決めてしまうことも多いと考えられます。

さらに、場合によっては現在の職場を辞めることが目的となっていて、転職先の条件にこだわっていないということすらあります。

 

一方、知人・友人の紹介やスカウトで転職を決める場合は、ネガティブ情報が伝わってこないおそれがあります。

そして直接応募する場合やハローワークを利用する場合、事前に得られる情報量が少ないためにミスマッチが起きる可能性があります。

 

あくまで私見ですが、短期間で転職をくり返す薬剤師は、ミスマッチの原因は自分ではなく雇用側あるいは紹介側にあると考えているように思います。

また、どのように働きたいのか、今までどのようなキャリアを積み上げてきたのかについて、無関心な人が多いという印象もあります。

 

「採用決定=転職成功」ではありません。

転職を成功させるためには、同じ失敗をくり返さない努力をすべきであると考えます。

 

2.転職の失敗事例から学ぶ良い転職先の探し方

 

では、実際にどのような状況でミスマッチが起きているのか、実際の転職失敗例を検証してみましょう。

 

①年収のミスマッチ(人材紹介会社を利用)

子どもが生まれたため、収入アップをねらい転職。

一時的に収入は上がったもののほとんど昇給がなく、ダブルワークをする羽目になった。

 

昇給率を確認しなかったために起きたミスマッチです。

収入に関しては、初年度だけではなく、定年までに得られる給与・賞与の総額で判断すべきでしょう。

 

②勤務時間や勤務日のミスマッチ(友人の紹介)

友人の誘いで転職。

子どもが幼いので平日午前のみという約束で就職したものの、雇用側からは

「念のため、雇用契約書の勤務日は月曜日~土曜日にしたい」

と言われ、承諾した。

子どものいる薬剤師が多いため、急病や学校イベントなどにともなうスケジュール変更はやむを得ないと覚悟していたが、

「結婚記念日だから午後の勤務を代わってほしい」

「土曜日も出勤してほしい」

という想定外の依頼が頻繁にあったため、退職。

 

就職時に、勤務時間・勤務日について希望に沿う契約を結んでいなかったために起きたミスマッチです。

雇用契約の内容を雇用側に合わせてしまうと、このようなトラブルが起きがちです。

 

③勤務地のミスマッチ(直接応募)

小規模な調剤薬局に勤務していたが、婚姻のため転居。

通勤時間が長くなり悩んでいた。

新居の近くで求人があったため応募したところ、採用された。

しかし、大手チェーン薬局であったため他店舗へ異動を命じられた。

拒否したところ、週3回応援に入るように要請され、今まで以上に通勤に時間がかかるようになってしまった。

 

大手チェーン薬局では、異動や他店舗への応援が頻繁にあることを知らなかったために起きたミスマッチです。

他の業種や規模の異なる企業などへ転職を希望する際は、メリットだけではなくデメリットについても調査する必要があります。

 

④職務内容のミスマッチ(人材紹介会社を利用)

企業で学術を担当していたが、リストラで失職。

未経験のまま調剤薬局に就職したが仕事になじめず、最終的にフリーの医療ライターとして独立。

 

「やりたい仕事」ではなく、「できる仕事」を選んだために転職に失敗した例といえます。

「無職にならないために」あるいは「今の職場を辞めるために」ということが目的になってしまうと、このようなミスマッチが起きやすくなります。

 

⑤やりがいのミスマッチ(ハローワークを利用)

大病院門前薬局を定年退職し、高齢者施設内の薬局(週23回勤務)へ転職。

慢性期の患者が多く、処方は毎回ほぼ同じで服薬指導もほとんどなし。

仕事自体は楽になったものの、やりがいを感じることができず、数ヶ月で退職。

その後、元の薬局の再雇用枠で働くことにした。

 

仕事にやりがいを感じることができず、転職に失敗した例です。

楽な仕事がストレスの少ない仕事とは限りません。

転職時には、今までの仕事との違い(ギャップ)も考慮する必要があります。

 

転職を失敗と感じた理由

転職を失敗と感じた理由

引用)薬キャリ「薬剤師の転職成功ガイド>薬剤師の転職実態調査Vol.8 転職失敗編」*3(https://pcareer.m3.com/column/61)

 

職場の人間関係などは実際に働いてみないとわからないものですが、年収や勤務時間、勤務地などは事前にある程度調査できる内容です。

上記の事例でも、転職前にしっかり調査したり雇用側に希望を伝えたりしておけば、失敗を回避できた可能性があります。

 

転職を希望する場合は、何を求めているのかをはっきりとさせ、優先順位をつけましょう。

譲れない部分にミスマッチがあると、転職をくり返すことになります。

 

3.薬剤師供給過剰時代に備え、後悔のない転職をしましょう!

 

薬剤師は売り手市場といわれ、他の業種に比べて転職しやすい状況にあるのは事実です。

しかし、短期間で転職をくり返せば、理由にかかわらず採用担当者の印象は悪くなります。

また、一般的に年齢が高くなればなるほど、転職は難しくなります。

 

さらに、薬剤師の需給予測に関する報告では、将来薬剤師の供給は過剰になるとされています*4

そして近年は、登録販売者制度の導入や非薬剤師による調剤補助の解禁、オンライン服薬指導の開始など、薬剤師の業務範囲の縮小や業務の効率化などが進んでいるため、売り手市場の状態が今後も続くとは限りません。

 

転職活動をする際には、「やりたいこと」ではなく「譲れないこと」を念頭におき、目的を定めて後悔しない転職をしましょう。

 

 

執筆者
・名前:中西 真理
・プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

 

参照データ
*1参考)厚生労働省「統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)>結果の概要>平成27年転職者実態調査の概況>結果の概要>事業所調査>1.転職者の状況 P.6 表2
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-h27.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-h27-1-01.pdf
*2参考)薬キャリ 職場ナビ「特集>【薬剤師の転職動向アンケート】78%の薬剤師が転職経験者!」
https://pcareer.m3.com/shokubanavi/feature_articles/95
*3参考)薬キャリ「薬剤師の転職成功ガイド>薬剤師の転職実態調査Vol.8 転職失敗編」
https://pcareer.m3.com/column/61
*4参考)厚生労働省「政策について>審議会・研究会等>医薬・生活衛生局が実施する検討会等>薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会>第1回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会(ペーパーレス・Web会議)資料>配布資料>資料4 薬剤師の需給調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12352.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000647926.pdf
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