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潜在看護師の復職・転職をデータから再確認 ブランクの問題よりもまずは前を向こう!

資格を保有しているのに、看護業務に就いていない看護師を「潜在看護師」といいます。

厚生労働省によると、潜在看護師は約71万人いるそうです。*1

日本看護協会が、新型コロナウイルスによる医療崩壊を防ぐため、潜在看護師に復帰を呼びかけたニュースを覚えている方も多いでしょう。

 

看護師不足解消に向けて、国は潜在看護師の復職に力を入れています。

とはいえ、潜在看護師の気持ちとしては、復帰したくても職場環境が合わなかったり自分のスキルに不安があったり、一歩踏み出せないのが本音です。

 

そこで今回は、さまざまなデータをもとに、

・潜在看護師の復職に関する問題点

・潜在看護師が復職するときに押さえたいポイント

・復職後に気をつけたいこと

について解説します。

復職を迷っている方の参考になれば幸いです。

 

1.多くの潜在看護師が復職に意欲的!

 

潜在看護師というと、看護の仕事が嫌で復職したくない人が多いというイメージがあるかもしれません。

実は、潜在看護師の多くが復職に意欲的だというデータがあります。

 

厚生労働省大阪労働局が令和元年に行った調査によると、潜在看護師の85%が復職を希望しています。*2

この調査は大阪府を対象としたものですが、全国規模で考えても大きな差はないと考えられます。

筆者の友人にも、結婚や子育てで看護師を辞めた看護師が多くいます。

彼女たちが決まって言うのは、

「看護師はやりたいんだけど、家族のことを考えると難しいよね…」

という諦めの言葉です。

看護師本人のやる気がないのではなく、働く環境に問題があると推測できます。

 

この事例を裏付けるデータがあります。

同じく、厚生労働省大阪労働局が行った調査で、潜在看護師が復帰できない(しない)理由をまとめたものです。

最も多いのが「夜勤ができない」42%、次いで「職場の受け入れ環境が不安」38%、「現在の医療技術についていけない」30%と続きます。

 

厚生労働省 大阪労働局 「潜在看護師に係る意識調査」

引用)厚生労働省 大阪労働局 「潜在看護師に係る意識調査」*3(https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202002271141.pdf 12P)

 

その他の理由を見ても、「急な休みが取れない」「子供を預ける場所がない」など、仕事と家庭の両立が難しいと感じていることが分かります。

 

またそれ以外にも、「責任が重く、医療事故が怖い」と、医療技術や知識に対する不安が挙げられています。

 

看護師不足はたびたび話題になりますが、実は看護師の就業者数は年々増加しています。

しかし、2025年には団塊の世代が後期高齢者になる「2025問題」があり、看護師不足はますます深刻になると予想されます。

 

日本の医療を守るためにも、上記の調査結果から判明した

・家庭と両立できる職場環境を整備する

・医療技術や知識に対する不安を解消する

という2つのポイントが、潜在看護師の復職に向けて重要なポイントになります。

 

2.潜在看護師はなぜ多い?看護師を取り巻く状況とは

 

前回の見出しでは、潜在看護師が復職できない理由が分かりました。

ここでは、その理由を深堀りして、潜在看護師が多い理由について考えていきます。

大きく分けて、3つの理由が考えられます。

 

①女性が多く、ライフイベントによって仕事が左右されやすい

看護師というと、女性の職業というイメージがあるのではないでしょうか。

実際にその通りで、男性看護師は年々増加しているものの、ほとんどが女性です。

厚生労働省の調査によると、平成30年度の看護師の構成割合は男性7.8%、女性92.2%でした。*4

 

女性が多いということは、家族の状況によって離職せざるを得ない看護師が多いということです。

女性の労働力率は、結婚や出産により20~30代で一度低下するため、以下の図のようにM字曲線になります。

以前に比べて共働き世帯が増加し、M字の高低差がなくなってきていますが、「家事や育児は女性の仕事」という認識が残っているのが現状です。

女性が多い看護師の仕事は、離職やブランクを引き起こしやすいといえます。

 

内閣府 「男女共同参画白書 令和2年版 Ⅰ-2-3図 女性の年齢階級別労働力率の推移」

引用)内閣府 「男女共同参画白書 令和2年版 Ⅰ-2-3図 女性の年齢階級別労働力率の推移」(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-03.html)

 

②過酷な労働環境

日勤のみの場合もありますが、看護師の職場は夜勤や土日出勤などシフト制の勤務が多いのが実情です。

特に子どもが小さいうちは、シフト制の勤務だと働きづらくなります。

また、看護師不足のため、体調不良や急な予定変更があってもなかなか休めないことも多いのです。

このような労働環境では、ライフスタイルの変化に対応できず、潜在看護師を増やす原因になります。

 

③医療の進歩に合わせて勉強が必要

医療はどんどん進歩するので、現役で働いている人も常に勉強しています。

ブランクが長くなると、知識や技術の衰えは避けられず、復職への不安が増します。

 

看護師を取り巻く状況にはこのような問題点があり、潜在看護師を増やす要因となっています。

 

 

3.看護師ができるだけ安心して復職するためにできること

 

看護師が働く環境は、離職しやすく復職も難しいといえます。

しかし、できるだけ安心して働くために、個人でもできることがあります。

 

①ブランクがあっても働きやすい職場を探す

まずは、働きやすい環境が整っている職場を探しましょう。

復職支援制度がある職場では、実際の業務に入る前に研修を実施しています。

その他にも、時短勤務や院内保育所など、子育て支援制度がある職場もおすすめです。

また、休みやすい風潮があり、離職率が低い職場を選ぶと、復職後も安心して働けます。

 

働き方に関しては、初めはフルタイムの正社員ではなく、時短やアルバイトもひとつの方法です。

働く場所も、日勤のみのクリニックや介護施設などもあります。

自分にとって働きやすい環境を見極め、それをもとに職場を探しましょう。

 

②事前準備として自分自身で勉強する

復職する職場が決まったら、復職までの間に関連する分野の勉強をしましょう。

医療はどんどん進んでいるので、できるだけ新しい本を選んでください。

最近では、看護技術が学べる動画を掲載しているサイトがあります。

 

また、都道府県のナースセンターでは「再就業支援研修」を開催しており、基本的な看護技術を学び直すことができます。

他にも、職業紹介や看護師同士の交流会など、看護師の復職を応援する企画を実施しているので、お住まいのナースセンターを検索してみてください。

 

 

4.スムーズに働くために復職後に気をつけたいこと

 

復職前に万全の準備を整えたとしても、復職直後は不安な毎日だと思います。

できるだけ順調に働けるように、復職後に気をつけたいことをまとめました。

 

①スタッフとのコミュニケーションを大切にする

スタッフと良好な人間関係を築いておくと、何かあった時に助けてもらえます。

挨拶をする、時間があるときは業務を手伝うなど、小さな気遣いを心がけましょう。

 

②自分の状況を我慢しないで伝える

「迷惑をかけたくない」という気持ちがあり、自分の状況を言い出せない人が多くいます。

しかし、あらかじめ伝えておいた方が、予期せぬ事態が起こったときにスタッフの理解が得られやすくなります。

「子どもが体調不良のときは、預け先がないので休みがほしい」

「保育園のお迎えがあるので、残業はできない」

など、自分の希望はしっかり伝えましょう。

 

③仕事に慣れるまで無理をしない

特に復職直後は、慣れない毎日が続くので疲れやすくなります。

仕事の日は家事を最小限にする、睡眠時間はしっかり確保するなど、できるだけ自分を労わりましょう。

 

5.まとめ

 

「復職したい」と思っても、さまざまな状況から不安を抱える潜在看護師は多くいます。

復職支援制度が整っている職場を選んだり、事前に勉強をしたり、自分自身ができることをやって不安をなくしていきましょう。

 

また、復職直後は何でもうまくやろうとせず、自分の中のハードルを下げるのがポイントです。

働き始めると、だんだんコツをつかんで慣れていきます。

自分の価値観を大切にしながら、納得のいく働き方を見つけましょう。

 

 

参照データ
*1参考)厚生労働省 「看護職員の現状と推移」
www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072895.pdf 2P
*2参考)厚生労働省 大阪労働局 「潜在看護師に係る意識調査」
jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202002271141.pdf 1P
*3参考)厚生労働省 大阪労働局 「潜在看護師に係る意識調査」
jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202002271141.pdf 12P
*4参考)厚生労働省 「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概要」
www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/kekka1.pdf 2P

 

執筆者
お名前:浅野すずか
プロフィール:フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

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