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転職活動にもっとも有効なツールは転職サイト?それとも人材紹介会社?

転職活動にもっとも有効なツールは転職サイト?それとも人材紹介会社?

みなさんは転職・就職活動と聞いて、どのような方法を思い浮かべますか?

 

新卒採用はこれまで同様に、エントリーシート(ES)を提出し、採用試験をクリアしていく方法が主流となるでしょう。最近では、企業側から学生へ逆スカウトの方法も取り入れられるようになりました。

 

中途採用に関しては、昨今のキャリア事情からも転職希望者は増加傾向にあります。

総務省統計局発表の労働力調査によると、2019年の転職者数は351万人と過去最多を記録しました*1

 

これらの現状からも、より効率的な転職活動を行うための主戦場は、既存の「フィジカルな転職活動」から、インターネット等を活用した「デジタルな転職活動」へと移行しつつあると言えます。

 

 

採用の現場をサポートしていると、あっという間に内定に結びついてしまった、という場面に遭遇することがあります。

新卒採用では難しい方法ですが、中途採用においてかなり有効であると感じるのが、

「過去の同僚や上司、クライアント(取引企業や提携企業)からの紹介」

です。

 

転職活動で必要なことは、求職者の「これまでのキャリア」への評価です。

このキャリアは、職業としてのキャリアという意味だけでなく、人間関係のキャリアも大きなウエイトを占めます。

 

その、人間関係のキャリアがものをいうのが「関係者からの紹介」です。

 

大企業や有名企業などで、厳格な中途採用試験を用意している場合をのぞき、信頼できる社員やクライアントからの「おいしい話」は、企業にとって有益な情報となります。

 

しかし、誰もがこういった紹介を利用可能な立場にいるわけではありません。

そんな時は、人材紹介会社の利用を検討してみましょう。

 

そこで今回は、人材紹介のプロであるヘッドハンターに、転職活動の現状と秘訣を聞いてみました。

 

1.自分を正しく売り込むことこそ転職の極意

 

人材業界の最大手企業でシニアコンサルタントを務め、その後、外資系のコンサルタントファームでマネージャー(管理職)として活躍するYさんは、転職について次のように考えています。

 

「私たちは、登録者(求職者)とクライアント(転職先)をつなぐ仕事をしています。

転職という大海原で右も左も分からなくなるなら、私たちパイロット(水先人)を使って、最短経路で希望の島へたどりつく方法を選ぶべきでしょう」

 

既存の転職活動で最も利用される方法として、「転職サイトへの登録」があります。

しかし、外資系企業と日経企業での「転職サイトへの登録」を比較すると、日系企業社員の求職者が69%に対し、外資系企業社員の求職者は56%に留まります*2

 

逆に、外資系企業社員の求職者は、「人材紹介会社に登録・相談している」と回答した人が68%、日系企業社員の求職者は60%と、転職を成功させるための活動に違いがあります*3

 

これは、外資系企業の風土や文化にも由来します。

日系企業と違い、外資系企業は「新卒採用」という文化がほとんどありません。

「社会人未経験の学生を、一から育て上げる体力はない」という外資系企業が多いため、中途採用に目を光らせているのです。

 

「特に外資系企業の場合、バイリンガル人材が必要とされるので、私たちのような人材紹介会社を介して有望な人材を探しています」

 

バイリンガルとしての力量や、どの程度の能力を発揮できるのかについて、Yさんたちヘッドハンターが直に求職者と対話をするなかで評価していきます。

 

Yさんの人材紹介会社は、外資系企業側から成功報酬としてフィーをもらうため、紹介する人材の担保が必須です。

そのため、求職者の持つ優れた点のブラッシュアップや、クライアントとの面接での作法やアドバイスを入念に行います。

 

実際、筆者もその場に同席したことがありますが、まるで何かのコンテストに出場するかのような指示が飛びました。

「そこまでやるの?」と驚くほどの詳細なアドバイスに度肝を抜かれました。

 

「クライアント(企業)が望む人材を紹介し、登録者(求職者)も能力を発揮できる職場でなければ、長い目で見て良い紹介とは言えません。その、一期一会ともいえる出会いの場となることが、私たち人材紹介会社の意義だと思っています」

 

Yさんの言葉に表れるように、求職者も企業も、そして間を取り持つヘッドハンターたちも必死なのです。

当然のことながら、実力以上の評価を求めているわけではありません。

ありのままの求職者の能力にマッチする企業を紹介することが、ヘッドハンターの仕事だからです。

 

「登録者(求職者)に対して、客観的に見てこうした方が良いという部分は、どんどん伝えます。

登録者(求職者)も人生を賭けての戦いですから、そこで遠慮してチャンスを逃すなどということがあってはいけないので、お互いに真剣勝負です」

 

確かにその通りでした。

筆者同席のウェブ面談の際、登録者(求職者)の履歴書の写真を見ながら、

「いま、モニター越しで拝見するお顔のほうが、かなり素敵です。お金はかかりますが、写真は撮り直した方が良いと思います」

 

見た目の印象についてのアドバイスに加え、ハッキリと撮り直しを伝えました。

その後のウェブ面談の際には、本人の魅力あふれる素敵な写真に置き換えられていました。

 

そして、人材紹介会社を使う最大のメリットとして、ヘッドハンターたちは

「クライアントとなる企業の好みを知っている」

ということが挙げられます。

 

一般的な求職者は、インターネットなどから収集できる程度の情報しか、企業を検索することができません。

 

しかしヘッドハンターたちは、その企業の採用担当者と密につながっているため、部外者が知り得ない情報、企業の文化、企業が欲している人材について熟知しているのです。

それらの情報をもとに的確なアドバイスがもらえる、という点こそが、何ものにも代えがたいメリットと言えるでしょう。

 

「ヘッドハンターは交渉力がすべてです。過去に、書類選考で落とされてしまった方がいました。しかし、その方の人間性やこれまでの仕事ぶりが正しく評価されていなかったことが悔やまれ、私が直々にクライアントと交渉をしました」

 

Yさんは、これまでに一番やりがいのあった仕事、として過去の交渉例を聞かせてくれました。

 

「私がその方と接して感じた素晴らしさや、クライアントが求める人材と合致している点などを丁寧に伝えたところ、再度、面接の機会をいただくことができました。その結果、事前にトレーニングは積みましたが、無事内定までこぎつけることができました」

 

決して、嘘や実際以上の評価を伝えたわけではありません。

それでも伝え方によっては、相手の受け取り方も変わるのです。

 

「結果がすべて」というイメージの外資系企業ですが、その裏ではこのような人情味あふれるやり取りもあるのです。

 

2.ヘッドハンターの代わりになるのは

 

では、Yさんのような強力なヘッドハンターを介さずに転職活動をする場合、どのように進めたら良いのでしょう。

 

それが、前半で触れた「関係者からの紹介」です。

 

まずは友人知人、過去に関わりのあった企業の担当者などから、企業の内情や採用事情を探ることが有効です。

 

そこからダイレクトに内定につながることはまれですが、企業の方向性や求めている人材について、生の声が聞ければ大きなアドバンテージになります。

 

なかには

「在職中に転職活動をすると、周りにバレて会社での評価が下がる」

と心配する人がいます。

たしかに、上司から冷たくされたり、同僚から白い目で見られたりということもあるでしょう。

 

しかし、新天地を探す決意をしたにもかかわらず、中途半端な気持ちで転職活動をすることのほうが、納得のいく結果が得られない可能性があります。

転職に向けての協力者や情報提供者を確保しつつ、全力で転職活動を行って下さい。

 

日本はまだまだ、新卒採用に終身雇用、メンバーシップ型の雇用環境にあります。

そのため、上司と部下、先輩後輩といった、「ヒト」に由来するトラブルが多数存在します。

その反面、それら「ヒト」がきっかけとなり、生まれる縁やつながる縁もあります。

 

これからの時代、自分の人生は自分で責任をもって築くことが大前提となります。

企業が最後までみなさんを守ってくれる時代は、もう終わりです。

 

転職サイトへの登録ももちろんですが、まずは信頼できる仲間やクライアントをたどってみましょう。そして、彼らの協力を仰げるということは、これまでのみなさんの「評価」であることを忘れないでください。

 

これから転職を考える人は、今の仕事ぶりや人間関係が、今後の転職活動を支えてくれるということを、覚えておいてください。

 

自らの評価が、自らの転職を支えてくれる――

 

過去の仕事ぶりが、未来の投資となり、期待以上の転職活動へと導いてくれるでしょう。

 

参照データ
*1参考:総務省統計局/労働力調査(詳細集計)2019年平均結果の概要p12
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf
*2,*3参考:エンワールド・ジャパン/年収800万円以上の外資系・日系企業社員における「転職のきっかけ」実態調査(図4)
https://www.enworld.com/blog/2019/10/tensyoku-no-kittkake
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執筆者 浦辺

早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。

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