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大手チェーン薬局への転職はアリ? 待遇、研修、キャリアアップ例などを再確認しよう

大手チェーン薬局への転職はアリ?待遇、研修、キャリアアップ例などを再確認しよう

 

大手チェーン薬局は、経営が安定していて教育体制も充実しているイメージが強いため、転職先の候補としてよくあげられます。

しかし、大手企業ならではの特徴をきちんと理解しないまま就職すると、短期間で退職・転職を繰り返すことになりかねません。

 

実際、保険調剤薬局を対象としたアンケートによると、全国に31店舗以上を有する大手チェーン薬局では、中小規模薬局に比べて3年以上勤続している人が少ないという結果が出ています。

 

東邦ホールディングス株式会社、(株)ネグジット総研

引用)東邦ホールディングス株式会社「事業案内>その他>【企業経営・医業経営コンサルティング事業】(株)ネグジット総研>製品・サービス>経営コンサルティング&マーケティング>製薬企業向け>薬局・薬剤師専門調査MMPR>プレスリリース>2011/06/27 【薬局経営者・経営幹部アンケート】「保険薬局企業 薬剤師の入職率は14%、離職率9%」>プレスリリース詳細」(https://www.tohohd.co.jp/)(http://www.mmpr.jp/files/user/img/press/mmpr-pressrelease20100624.pdf)

 

この調査は、

・保険調剤薬局のみを対象としている

・薬剤師以外の従業員の離職率も算入されている

という背景があるため、大手チェーン薬局に勤務する薬剤師の離職動向と必ずしも一致しない可能性があります。

しかし、「大手チェーン薬局への就職=転職の成功」という考えに警鐘を鳴らすものではあります。

 

そこでこの記事では、大手チェーン薬局へ転職するメリット・デメリットのほか、転職前にチェックすべきポイントを雇用形態ごとに解説します。

 

 

1.転職前に知っておきたい大手チェーン薬局のメリット・デメリット

 

まず大手チェーン薬局の特徴を、メリット・デメリットに分けて解説します。

 

 

①大手チェーン薬局の転職メリット

 

a.教育体制の充実

大手チェーン薬局は教育体制が充実している場合が多く、未経験やブランクのある薬剤師でも就職・転職しやすいのが特徴です。

接遇研修や各種認定試験受験のサポートがある企業も多いと言って良いでしょう。

 

b.設備投資を惜しまない

最新の機器が導入されていることが多く、システム化やIT化も進んでいます。

企業によっては、休暇や出張手当の申請がオンラインで完結することもあります。

 

c.給与体系が明確・キャリアプランが明示されている

給与体系がしっかりしていて諸手当の内容も明確です。

キャリアプランが示されていることも多く、モチベーションを高めながら働ける環境が整っています。

 

d.異動を活かした人の配置

全国展開している薬局では、家族の都合で転居しても異動で対応できる場合があります。また、人間関係で問題が生じた場合でも、店舗異動で解決できる可能性があります。

 

e.充実した福利厚生

大手チェーン薬局では、ドラッグストアでの社員購買割引制度を導入している企業が数多くあります。

産休や育休も取りやすく、あらかじめ申請しておけば比較的長期の休暇が取れる場合もあります。

 

②大手チェーン薬局の転職デメリット

 

a.給料が伸び悩む

中途入社の場合、入社時の給料はそれなりであっても、その後伸び悩む可能性があります。

これは、昇給条件が明確に決まっていて、例外が認められない大手企業の特徴といえます。

 

b.提出書類が多め

店舗間応援や出張旅費の精算、異動に伴う交通手段変更の申請などのほか、出張旅費の精算に合わせて勉強会出席のレポート提出が求められることもあります。

 

c.現場の意見が通りにくい

会社が大きく組織が複雑なため、報告・連絡・相談に時間がかかることもあります。

また、現場で声を上げても、組織上部に届きにくいのが現実です。

 

d.研修会・勉強会に時間をとられる

研修会・勉強会の頻度が多めです。

所属店舗以外で開催される場合は、移動に時間がとられることもあります。

そして、メーカーや病院主催の勉強会は自主参加であるという理由で、無給の場合もあります。

 

e.異動や店舗間応援が避けられない

 

近年は、かかりつけ薬剤師制度が導入され、異動は少なくなる傾向にあります。

しかしその一方で、かかりつけ薬剤師の要件を満たさない薬剤師は、異動や店舗間応援に駆り出される可能性が高いといえます。

 

大手チェーン薬局ならではのメリット・デメリット

メリット デメリット
・教育体制が充実している。
・機器や設備の導入が進んでいる。
・給与体系が明確。
・キャリアプランが示されている。
・福利厚生が充実している。
・計画的な休みが取りやすい。
・給与が伸び悩むことが多い。
・提出書類が多め。
・組織が縦割り。
・業務外の研修会・勉強会が多い。
・異動・店舗間応援がある。

 

2.【勤務形態別】大手チェーン薬局へ転職する際のチェックポイント

 

次は、大手チェーン薬局へ転職する際にチェックすべきポイントをまとめます。

正社員の場合とパート従業員の場合で内容が少し異なるため、分けて解説します。

 

①正社員の場合

 

a.入社時の給与ではなく生涯収入をしっかりチェック

年収アップをねらって転職する場合は、ベースアップの実績やキャリアプランなどとも合わせて生涯収入をしっかり計算しましょう。

 

b.キャリアプランのチェック

キャリアプランは、収入にも関わる大切なものです。

管理職になる条件や、管理職になるまでの平均期間もしっかり確認しましょう。

 

c.勤務時間・休日・残業時間のチェック

調剤薬局の場合、中抜け時間の有無・定休日・繁忙期の残業時間・近隣医療機関に合わせた当直の有無までチェックしましょう。

ドラッグストアの場合は、早番や遅番などのシフト体制・休日の取り方・残業時間・大型連休中の勤務体制などを確認しましょう。

 

d.勉強会・研修会の開催場所・開催時間のチェック

勉強会や研修会が、勤務地や自宅から離れた場所で行われると、往復に時間をとられる可能性があります。

また、開催時間が営業時間終了後だと帰宅が遅くなり、次の日の勤務に支障が出る可能性があります。

スキルアップをねらう場合は、研修会や勉強会の有無だけではなく、開催場所や時間についても確認しておきましょう。

 

e.異動の有無・頻度をチェック

転居を伴う異動の有無や頻度を必ず確認しましょう。

企業によっては、エリア限定職などが用意されている場合もあります。

ただし、異動に制限がある場合、給与やキャリアプランに影響があるケースが少なくありません。キャリアアップをねらう方は、慎重に職種選択をしましょう。

 

f.パート従業員と正社員の比率をチェック

正社員が少なくパート従業員が多い店舗では、パート従業員の休日希望が優先されて正社員は思うように休みが取れない場合があります。

また、子どものいる従業員が多い場合、正社員は遅番勤務になることが多くなります。

正社員の数は休みやすさに直結するため、必ずチェックしましょう。

 

g.調剤薬局へ就職する場合に特に注意すべきこと

主に応需する医療機関の種類(総合病院・開業医・医療モールなど)と、繁忙期における薬剤師一人当たりの処方せん枚数をチェックしましょう。

パート従業員が多い場合は、パート従業員が少ない午後の処方せん枚数にも注意が必要です。

また、可能であれば、分包機のメーカーやレセコンソフトまで確認しましょう。

使用経験のあるメーカーのものであれば、転職後のストレスが少なくてすみます。

 

②パート従業員の場合

 

a.時給だけではなく賞与もチェック

パート従業員であっても、ベースアップの実績は確認しましょう。

また、企業によってはパート従業員に賞与が出ない場合もあるため、注意が必要です。

 

b.勤務時間・休日・残業時間のチェック

急に休む場合の対応について確認しておきましょう。

また、シフトの変更やほかの従業員が休んだ時の対応についても、要チェックです。

なお、経費削減のため、パート従業員の残業を禁止している企業もあります。

残業代をあてにしている人は残業の可否を確認しておきましょう。

 

c.勉強会・研修会の開催場所・開催時間のチェック

勉強会や研修会へ積極的に参加したい場合は、開催場所や開催時間を確認しておきましょう。

各種認定資格の取得を考えている場合は、会社からサポートを得られるかどうかを確認しましょう。

 

d.異動の有無・頻度をチェック

パート従業員であっても、異動や店舗間応援を要請されることがあります。

異動を望まない場合や、他店舗への応援で通勤時間が長くなると困る場合は、あらかじめ伝えておきましょう。

 

e.パート従業員と正社員の比率をチェック

自宅近くの薬局へ就職すると、子どもの学校イベントが重なりやすくなります。

パート従業員が多いと思うように休めない可能性があるため、子どもが幼いうちは正社員の多い薬局へ就職する方が安心です。

 

f.調剤薬局へ就職する場合に特に注意すべきこと

中抜け時間の有無を必ず確認しましょう。

中抜け時間が長いと、収入が思うように得られない可能性があります。

また、自分が働く時間の薬剤師一人当たりの処方せん枚数も要チェックです。

処方せん枚数が多すぎると、時間内に薬歴を書き終えることができません。

 

なお、在宅訪問や高齢者施設への薬の配達などをおこなっているかどうかも確認しておきましょう。

薬剤師が少ない場合、在宅訪問や配達へ行った薬剤師が帰ってくるまで帰宅できない場合があります。

 

大手チェーン薬局への転職時にチェックすべきポイント

 

正社員 パート従業員
・生涯収入
・キャリアプラン
・勤務時間(シフト)
・定休日
・繁忙期の残業時間
・研修会や勉強会の開催場所・開催時間
・異動の有無・頻度
・パート従業員と正社員の比率
・繁忙期の薬剤師一人当たりの処方せん枚数
・分包機のメーカー
・レセコンソフト
・昇給の有無
・賞与の有無
・急に休む場合の対応
・残業の可否
・研修会や勉強会の開催場所・開催時間
・資格取得に対するサポートの有無
・異動の有無
・店舗間応援の有無
・パート従業員と正社員の比率
・中抜け時間の有無
・薬剤師一人当たりの処方せん枚数
・在宅訪問や高齢者施設への薬の配達の有無

 

3.会社のためではなく、自分のために働きましょう

 

大手チェーン薬局は、調剤専門店をメインとするもの、ドラッグストアをメインとするもの、総合病院門前薬局の開設に力を入れているものなど、企業によりさまざまな特色があります。

特色が異なれば、当然のことながら働く薬剤師との相性も変わってきます。

 

転職を検討する際には、企業規模や経営の安定性だけではなく、働きやすさにも配慮しましょう。

大手チェーン薬局は、研修会や勉強会が充実していて他職種からでも転職しやすいですが、個々の事情に応じた例外的なあつかいは認められにくいという特徴があります。

あせらずじっくり検討し、自分にあう職場を見つけて転職を成功させましょう。

 

 

参考文献/WEBサイト
*1参考)東邦ホールディングス株式会社「事業案内>その他>【企業経営・医業経営コンサルティング事業】(株)ネグジット総研>製品・サービス>経営コンサルティング&マーケティング>製薬企業向け>薬局・薬剤師専門調査MMPR>プレスリリース>2011/06/27 【薬局経営者・経営幹部アンケート】「保険薬局企業 薬剤師の入職率は14%、離職率9%」>プレスリリース詳細」
https://www.tohohd.co.jp/
http://www.mmpr.jp/files/user/img/press/mmpr-pressrelease20100624.pdf

 

執筆者
名前:中西 真理
プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。
・サムネイル画像:前回と同じものです。
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