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若者の離職率は約3割!長く働くため定着率が高い業界や企業を詳しく解説

近年、大卒の就職後3年以内の離職率は約3割と言われ10人の内3人は初めての職場を離職する傾向です。

 

今回は厚生労働省のデータなどに基づきながら、離職率や離職理由について解説をしていきます。

 

若者が初職を離職してしまう理由や離職しやすい業界にも触れながら、社員の定着率が高い業界や企業をご紹介をしていきますので、これから就活を考えている方は、ぜひ、参考にしてください。

 

1.大卒の就職後3年以内の離職率は約3割前後

 

以下は厚生労働省が実施した「新規学卒者の離職状況 学歴別就職後3年以内離職率の推移」の調査をまとめたグラフです。(下図1)

 

新規学卒者の離職状況 学歴別就職後3年以内離職率の推移

図1 引用)厚生労働省「新規学卒者の離職状況 学歴別就職後3年以内離職率の推移」(https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000556419.pdf)

 

①大学卒の3年以内の離職率は約3割前後

図1を参照すると、大学卒の3年以内の離職率は約3割前後というデータが読み取れます。

 

昭和62年から始まった調査ですが、30年間にわたって、平均して約3割という数字がほぼ横ばいに定着していると言えるでしょう。

 

ちなみに、30年間の離職率の平均値は短大卒では40.4%、高卒では44%、中卒では67.2%となっており、最終学歴が高いほど離職率は低い傾向です。*1

 

②事業所規模が大きいほど離職率は低い

事業所規模別で見てみると(下図2)平成28年は1000人以上の事業所では25.0%、500人~999人は29.6%、100~499人は32.2%、30~99人は39.3%となっており、規模が大きい事業所ほど離職率が低い傾向が見られます。

 

この数値も平成15年の調査依頼、ほぼ横ばい状態になっており、29人以下の小規模事業所になると、約半数が離職をしている状況です。*2

 

新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内※の離職率の推移

図2 引用)厚生労働省「新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内※の離職率の推移」(https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000556488.pdf)

 

2.初職の離職理由

 

下図3は内閣府が調査した「若者が初めての職場で離職した理由」をまとめたものです。

 

①離職理由のNO.1は「仕事が自分に合わなかったため」

離職理由で一番多いのは「仕事が自分に合わなかったため」の43%で、最も重要な理由でも23%でトップです。

 

2番目に多い離職理由は「人間関係が良くなかったため」が23.7%、3番目が「労働時間、休日、休暇の条件が良くなかったため」が23.4%、4番目に「賃金が良くなかったため」が20.7%となっています。

 

これらの理由から近年の若者は、賃金より自分に適した仕事をすることや、人間関係など職場の雰囲気を優先的に考えていると言えるでしょう。

 

また、労働時間や休日なども重要視し、あくせく働くだけでなく、プライベートも充実させることを大切にしていることがわかります。

 

初職の離職理由

図3 引用)内閣府「特集 就労等に関する若者の意識 図表7 初職の離職理由」(https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/s0_0.html)

 

②「結婚・子育てのため」が離職の重要な理由でNO.3に

初めての職場を離職する理由の中で最も重要な理由としては「仕事が自分に合わなかったため」が23.0%と最も多く、続いて「人間関係がよくなかったため」が10.0%で入っています。

 

また、「結婚、子育てのため」の8.5%が重要な理由の3番目になっており、まだまだ大半のの社員が子育てをしながら普通に働いていける環境が整っていないのが現実です。

 

3.若者が早期に離職しやすい業界

 

九州大学大学院で経済システムを専攻している吉村 大吾氏がまとめた「若者の早期離職現象に関する基礎的考察」によると、若者をめぐる雇用問題には様々な課題があるそうです。

 

若者の早期離職率の業種間格差

図3 引用)吉村 大吾(九州大学大学院)「若者の早期離職現象に関する基礎的考察」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalm/19/0/19_217/_pdf/-char/ja)

 

 

①離職しやすい業界NO.1は「外食・中食」

図3を参照すると、若者が早期に離職しやすい業種として一番多いのは「外食・中食」の58%で、入社した社員のほぼ半数が離職しています。

 

次に多いのはスーパーの33.7%、小売りサービスの32.5%と続いています。

 

近年でも外食産業は新型コロナの影響で業績が悪化し、休業や外出自粛で売り上げが減少したため、2020年4~6月期は大手の7割が最終赤字となりました。*3

 

今後は従業員のリストラなどが心配されることでしょう。

 

②外食・スーパーの有給休暇取得率は低水準

上位3業種にランクインした「外食・中食」「スーパー」「小売・サービス」は、社員の有給取得率が低水準となっています。

 

平成31年に厚生労働省が調査した「就労条件総合調査」の結果によると、日本の有給取得の平均日数は9.3日*4となっていますので、やや少なめと言えるでしょう。

 

有給取得の状況は企業により差があり、例えば外食産業では「サイゼリヤ」が年に3日の取得実績なのに対し、モスフードサービスでは9.5日とわずかに日本の平均を上回っています。*5

 

また、残業時間が多めなのも特徴です。

 

厚生労働省が実施した「毎月勤労統計調査 令和2年8月分」の結果によると、一般労働者の所定外労働時間の平均は11.4時間*6となっており、比較すると下記の3業種はどれも平均残業時間を超えていることが分かります。(図4)

 

業種 有給取得実績(日/年) 平均残業時間(時/月)
外食・中食*7 7 17
スーパー*8 6 21
小売・サービス*9 8.9 14.9

図4 参考)「就活四季報 総合版 2021年」を参考に筆者作成

 

4.新卒定着率が100%の企業は一般社員の離職率も低い

 

これから就活を考えている方は、新卒定着率が100%の企業を検討してみてはいかがでしょうか。

 

新卒の定着率が高い企業は一般社員の離職率も低い傾向がありますから、転職先として考えてみるのも良さそうです。

 

①新卒定着率が100%の業界

下図5は新卒定着率100%の企業が多い業界をランキングしたものです。

 

この表によると、新卒定着率100%の企業が一番多い業界は「化学」で、調査対象となった100社のうち10社がランクインしています。

 

次に多いのは「テレビ」「不動産」で、4位に「自動車部品」となっており、以下、食品や電力・ガスなど生活するうえで欠かせない企業が入っています。

 

【新卒定着率100% トップ5】

順位 業種名 ランクインした企業数
1位 化学 10
2位 テレビ 8
2位 不動産 8
4位 自動車部品 6
5位 広告 5
5位 食品・水産 5
5位 電力・ガス 5
5位 システム・ソフト 5
5位 商社・卸売業 5

図5 参考)「就活四季報 総合版 2021年 新卒定着率ベスト100」P32~33を参考に筆者作成

 

②新卒定着率が100%の企業

新卒定着率が100%の企業を業種別に表したのが以下の表です。(図6)

 

新卒定着人数が特に多い企業3社を、それぞれリストアップしています。

 

これらの企業は一般従業員の離職率も少ないのが特徴で、例えば化学部門の「大日精化工業」の離職率は1.8%の27名*10、テレビ部門の「日本テレビ放送網」は0.9%の11名*11

不動産部門の「三井不動産」は0.7%の11名*12の実績です。

 

このように、新卒定着率が100%の企業は一般社員の離職率も低いと言えます。

 

【新卒定着率100%の企業(業種別)】

業種 企業名
化学 大日精化工業・太陽日酸・日本パーカライジング
テレビ 日本テレビ放送網・朝日放送テレビ・読売テレビ放送
不動産 三井不動産・三菱地所・大成有楽不動産
自動車部品 豊田鉄工・トピー工業・太平洋工業
広告 電通東日本・朝日広告社・電通パブリックリレーションズ
食品・水産 キッコーマン・アサヒグループ食品・東洋水産
電力・ガス 九州電力・西部ガス・沖縄電力
システム・ソフト 中電シーティーアイ・キーウェアソリューションズ・ビジネスエンジニアリング
商社・卸売業 神鋼商事・三愛石油・明和産業

図6 参考)「就活四季報 総合版 2021年 新卒定着率ベスト100」P32~33を参考に筆者作成

 

5.まとめ

 

今回は、若者の離職理由と長く働ける業界や企業について詳しく解説をしていきました。

 

若者が離職する理由には、仕事に対するやりがいや待遇面など様々な要因が絡み合い、一度は就職した会社でも、離職せざるを得ないような状況になってしまうことが少なくありません。

 

しかし、いずれの企業も若い人材を積極的に採用する意向が見られますから、不安になることはありません。

 

とは言え、就活をする際には、自分が何を最優先させたいかということを明確にしておくことが重要です。

 

「残業も少なめで休暇をしっかり取りたい」「自分の性格や能力に適した業種である」ことなど、人によって優先順位は違うでしょう。

 

自分が無理なく働けて、納得のいく待遇を得られる企業をぜひ見つけ出して、就活を成功させてください。

 

参考文献/参考サイト
*1 参考)厚生労働省「新規学卒者の離職状況 学歴別就職後3年以内離職率の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000556419.pdf
*2 参考)厚生労働省「新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内※の離職率の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000556488.pdf
*3 参考)日本経済新聞「外食7割が最終赤字、外出自粛で客数減 13社の4~6月」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62624660T10C20A8EA2000/
*4 参考)厚生労働省「平成31年就労条件総合調査 第5表」P3
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/19/dl/gaiyou01.pdf
*5 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P73
*6 参考)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和2年8月分結果」第2表 月間実労働時間及び出勤日数
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r02/0208r/0208r.html
*7 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P73・75
*8 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P71・73
*9 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P75・77
*10 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P537
*11 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P88
*12 参考)「就活四季報 総合版 2021年」P585

 

執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。
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