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”社畜”にならないために 残業時間の少ない会社ランキングと職種・業界を詳しく解説

”社畜”にならないために 残業時間の少ない会社ランキングと職種・業界を詳しく解説

会社の求めるままに一生懸命に働いているとき、ふと

「もしかして、このままだと”社畜”になってしまうかも…。」

と考える人もいるかも知れません。

 

今回は、日本に根付いている長時間労働の実態を解説しながら、残業時間の少ない優良企業をご紹介していきます。

 

1.日本における長時間労働の実態

 

日本では、長時間労働が問題となっていながらも、なかなか改善が進まない現状があります。

最初に、日本における長時間労働の実態について、見ていきましょう。

 

①離職理由上位は「労働条件が良くないこと」

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」での調査において、全ての離職者に「初めての正社員勤務先」を離職した理由を複数回答で尋ねた結果が下図1です。

 

男女の離職理由には大きな違いがあり、女性の第1位が「結婚・出産のため(33.8%)」

であるのに対し、男性では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため(男性 31.8%)」が1位となっています。

 

労働時間などに関する理由には、女性の離職理由にも第3位(28.7%)に入っており、男女ともに労働条件に関する不満が、離職する際の大きな要素と言えるでしょう。

 

初めて正社員勤務先を離職した理由

初めて正社員勤務先を離職した理由

図1)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」P90https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/164_05.pdf)

 

②先進国の中で長時間労働がNO.1

下図2を参照すると、日本の労働者は長時間労働の多さで先進国の中でNO.1になっています。

 

週当たり50時間以上の労働者の割合が28.1%となっており、2位のニュージーランドの21.3%を大きくリードしています。

 

労働政策研究・研修機構主任研究員である小倉 一哉氏によると、日本の労働者の長時間労働は、先進諸国においては「かなり有名」であり、 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて最大の障害となっているそうです。*1

 

長時間労働の多さ

長時間労働の多さ

図2 引用)厚生労働省「若者の働き方の課題 本田由紀 」b-1 長時間労働の多さ P26(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002pdih-att/2r9852000002pdkq.pdf)

 

2.残業時間が少ない会社ランキングTOP20

 

ここでは、月の平均残業時間が少ない企業TOP20をご紹介していきます。

 

就職四季報 総合版に掲載されている384社を対象に、月の平均残業時間が8.5時間以下の優良企業を選抜しましたので、ぜひ、ご覧ください。

 

順位 企業名 業種 平均残業時間(h/月) 入社3年後の離職率
1位 日本食研ホールディングス *2 食品 1.2h 20.8%
2位 日本ケミファ *3 医薬品 1.7h NA
3位 サッポロドラッグストアー *4 薬局 2.6h 26.0%
4位 新日本法規出版 *5  出版 3.2h 20.0%
5位 SMK *6  電子部品・機器 3.8h 0.0%
6位 あらた *7  商社・卸売業 4.0h 3.7%
7位 オージー *8  商社・卸売業 4.6h 20.0%
8位 三愛石油 *9  商社・卸売業 5.2h 0.0%
8位 三越伊勢丹 *10  デパート 5.2h 13.9%
8位 三洋化成工業 *11  化学 5.2h 5.8%
11位 高島屋 *12  デパート 5.3h 7.5%
11位 大丸松坂屋百貨店 *13  デパート 5.3h 14.6%
13位 モリタホールディングス *14  輸送用機器 5.8h 17.4%
14位 伊予銀行 *15  銀行 6.6h 22.4%
15位 サトーホールディングス *16  機械 6.8h 31.3%
15位 日本製紙 *17  紙パルプ 6.8h 14.8%
17位 ニチバン *18  化学 7.5h 5.3%
18位 山形銀行 *19  銀行 8.1h 21.4%
19位 東亞合成 *20  化学 8.2h 0.0%
20位 リンテック *21  化学 8.4h 8.7%
20位 オートバックスセブン *22  商社・卸売業 8.4h 16.0%
20位 ローム *23  電子部品・機器 8.4h 15.3%

図3 参考)就活四季報 総合版 2021年「会社比較384社」を参考に筆者作成

 

①残業時間が少ない会社NO.1は「日本食研ホールディングス」

上図3を参照すると、残業時間が少ない会社NO.1は「日本食研ホールディングス」という結果になりました。

 

日本食研ホールディングスは月の平均残業時間が1.2時間で、少ない数値と言えるでしょう。

 

第2位は日本ケミファの1.7時間、第3位はサッポロドラッグストアーの2.6時間と続いてランクインしています。

 

また、下図4の資料によると、延長時間の定めのある事業場の1か月の延長時間の全体の合計は、42時間18分という結果が公表されました。

 

この調査結果と比較すると、今回ランキングされた企業はいずれも、月の平均残業時間が平均値より少ないことが分かります。

 

時間外労働の現状

図4 引用)厚生労働省「我が国における時間外労働の現状」P6(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000136357.pdf)

 

②「商社・卸売業」「化学」は残業時間が少ない

ランクインした企業を業種別に見てみると(図3)、残業時間が少ない業種のツートップは「商社・卸売業」「化学」であることが読み取れます。

 

続いて多いのが「デパート」であり、「銀行」「電子部品・機器」もランクインされています。

 

③「SMK」「三愛石油」「東亞合成」は新卒離職率が0%

特におすすめできる優良企業としては「SMK」「三愛石油」「東亞合成」の3社が挙げられます。

 

これらの3社は月の残業時間が少ないだけでなく、新卒の3年後離職率が0%の企業です。

 

他に新卒離職率が低い企業として「あらた(3.7%)」「ニチバン(5.3%)」「三洋化成工業(5.8%)」があり、ゆとりをもって働きたいと考えている方におすすめします。

 

3.残業が多い業界と職種

 

ここでは、残業が多い業界と職種についてご紹介をしていきます。

 

①残業が多いけれど残業代がしっかり支払われる業種は「運輸業」「郵便業」

下図5を参照すると、残業が多いけれど残業代もしっかりと支払われる業種は「運輸業」「郵便業」の2種類です。

 

「運輸業」「郵便業」のサービス残業率は約30%、月の平均残業時間が約32時間という結果ですが、コロナ禍によりますます忙しくなる気配でしょう。

 

他に多い業種は「情報通信業」で、サービス残業率が約26%、月の平均残業時間が約25時間になっています。

 

残業実態マップ_業界編

図5 引用)首相官邸「サービス残業、中小企業へのしわ寄せがない改革へ残業実態マップ〈業界編〉」P4(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/followup/dai1/siryou9.pdf)

 

 

②残業代が少ないけれど支払われない職種は「医療系営業」

下図6を参照すると、残業代が少ないけれど、支払われない職種には「医療系営業」がトップで、サービス残業率が約70%、月の平均残業時間が約26時間となっています。

 

その他の職種ではサービス残業率が「幼稚園教諭・保育士」では約65%、「講師・インストラクター」が約57%と、「医療系営業」に次いで「幼稚園教諭・保育士」「講師・インストラクター」がサービス残業率が高い傾向があります。

 

月の平均残業時間でも「幼稚園教諭・保育士」が約17時間、「講師・インストラクター」が約23時間となっており、これらの職種は平均残業時間も多い傾向にあると言えるでしょう。

 

残業実態マップ_職種編

図6 引用)首相官邸「サービス残業、中小企業へのしわ寄せがない改革へ残業実態マップ〈業界編〉」P5(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/followup/dai1/siryou9.pdf)

 

 

4.まとめ

 

今回は、日本の企業が抱えている長時間労働の問題について、詳しく解説をしていきました。

 

残業時間が少ない優良企業も存在しますが、全体的に見ていくと、まだまだ長時間労働が日本の社会では深く根付いており、サービス残業率が高い会社も多いです。

 

会社の求めるまま従順に働き過ぎて、気が付けば”社畜化”をしていたということを避けるためにも、サービス残業時間などが少ない業界や企業をリサーチしておくことが、これからの就活には必要でしょう。

 

また、従業員が残業する理由としては「仕事が終わらないから」「残業代が欲しいから」などがありますが、そのままの状態を容認していると恒常的な長時間労働へと繋がる恐れがあります。

 

残業が多くなってしまう原因は経営者や管理職、社風などにあると認識し、自らの改革も必要となってくるでしょう。

 

参考文献/参考サイト
*1 参考)労働政策研究・研修機構主任研究員 小倉 一哉「日本の長時間労働 国際比較と研究課題」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/06/pdf/004-016.pdf
※*2~*23 参考)就職四季報 総合版 2021年 「会社比較384社」
*2 P59 *3 P61 *4 P75 *5 P43 *6 P53 *7 P49 *8 P47 *9 P49 *10 P71 
*11 P63 *12 P71 *14 P57 *15 P49 *16 P59 *17 P61 *18 P63 *19 P49 
*20 P63 *21 P63 *22 P49 *23 P51

 

執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。
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