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コロナ禍での転職はやめた方が良い?悪化する雇用情勢でも積極採用を続ける業種とは

コロナ禍での転職はやめた方が良い?悪化する雇用情勢でも積極採用を続ける業種とは

雇用情勢の悪化が続いています。完全失業率は3.0%にまで上昇、有効求人倍率も2020年に入ってから右肩下がりを続けています。

 

しかし一方で、新しい働き方を求めて転職を考えるようになったという人は少なくありません。

 

雇用や経済が悪化している中での転職について、どのように考えれば良いのでしょうか。

 

1.コロナ機に半数以上が「転職意欲高まった」

 

日経HRが「日経キャリアNET」登録会員を対象に、コロナウイルス感染拡大下での転職活動についての意識調査を実施しています。

 

2020年7月下旬から8月上旬にかけての調査ですが、まず転職の意向について35%の人が 「非常に高まった」と回答しています(図1)。

 

転職意向の変化

図1 転職意向の変化(出所「ウィズコロナ時代の転職意識調査」日経HR)(https://www.nikkeihr.co.jp/news/2020/0904361.html)

 

「少し高まった」(22%)と合わせると、6割近くの人で転職意欲が高まっている、という結果です。

 

その理由としては、

「勤め先の業績が悪くなってボーナスが減った」

「今の会社では働き方が変わりそうにない」

「コロナ禍ですら変われない会社を見て、見切りをつける最後の一推しになった」

といった、現状への不満だけでなく「人生観に影響を受けた」という理由を挙げている人もいます。

 

在宅ワークが増え、時間に余裕ができたり家族との時間が増えたりしたことで、考え方が変わったという人は少なくないでしょう。

 

一方で転職意向が低くなった人は、募集が減少するのではという懸念の他、

「転職してすぐに在宅勤務となったら、その会社が期待するパフォーマンスを出せるかわからない」

という理由も挙げられています。

 

 

また、転職先選びの基準はこのようになっています(図2)。

 

転職先選びの重視点

図2 転職先選びの基準(出所「ウィズコロナ時代の転職意識調査」日経HR)(https://www.nikkeihr.co.jp/news/2020/0904361.html)

 

 

給与・待遇面の改善を求めて転職を考える人は元から多いのですが、「働きやすい制度(リモートワーク、在宅勤務など)」については、前回調査(2020年2月=「働きやすい制度(リモートワーク、育休など)」)では13%で8番目でしたが、ここにきて急上昇しています。

 

2020年2月といえば、ダイヤモンドプリンセス号が横浜港に入港した月です。

その時考えていたよりも感染拡大が深刻化したうえ、「ニューノーマル」への適応が広がりつつあるためと考えられます。

 

 

現在ではWeb面談が多いため、転職活動そのものは便利になったという一面があります。

 

では、実際の雇用情勢はどうなっているでしょうか。

 

 

2.有効求人倍率と完全失業率

 

足元の雇用情勢は、悪化が続いています。

 

まず9月の有効求人倍率は1.03倍で、9か月連続のマイナスを続けています(図3)。

 

求人倍率の推移

図3 有効求人倍率の推移(出所「一般職業紹介状況(令和2年9月分)について」厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00048.html)

 

 

地域別に見ると1倍を切るところもあり、かなりの厳しさがうかがえます。

就業地ベースで1倍を切っている都道府県は、北海道、青森、埼玉、東京、神奈川、静岡、滋賀、京都、大阪、兵庫、高知、福岡、長崎、沖縄です*1。

 

 

また、9月の完全失業率は3.0%にまで悪化しています(図4)。

 

完全失業率の推移

図4 完全失業率の推移(出所「労働力調査(基本集計)」総務省統計局)(https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html)

 

統計上は失業状態ではないものの、休業を強いられ収入が激減している人も多いことでしょう。

 

 

3.統計をどう見るか?

 

しかし、2つのポイントに注目したいと思います。

 

まずひとつは、業種によってばらつきがあるということです。

 

新規有効求人数は全体的にマイナス傾向にはありますが、厚生労働省の統計の場合は「建設業」はプラスに転じているほか、マイナスになっている産業でも幅が大きいところとそうでないところがあるというのが現状です(図5)。

 

主要産業における前年同月比の推移

図5 主要産業別の一般新規求人状況(出所「一般職業紹介状況(令和2年9月分)」厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000687617.pdf p4)

 

 

そしてもうひとつは、厚生労働省から発表される有効求人倍率や求人数は、全国のハローワークでの求人、求職状況だということです。

 

毎月公表され、ニュースにもなる有効求人倍率はひとつの重要な経済指標ではありますし、この数字を見ると「仕事がない」「求人していない企業が多い」という印象を受けてしまいますが、採用の実態は少し違う部分があるということです。

 

全ての企業がハローワークを通じて求人しているわけではありません。

特に即戦力を必要とする企業の場合、自前の採用がメインであったり、リファラルなど独自のルートをを持っていることが多いのも現実です。

 

さて、民間の統計ではこのようなものがあります。

 

こちらはエン・ワールドの調査ですが、7割の企業は中途採用活動を継続しているというものです(図6)。

こちらは、有効求人倍率がマイナスを続けている2020年4月に公表されたものです。

 

 

現在、中途社員の採用活動を行っていますか?

図6 中途採用の継続状況(出所「新型コロナ禍における中途採用実態調査」エンワールド・ジャパン)(https://www.enworld.com/blog/2020/04/mid-career-recruitment-survey)

 

また、中途採用を継続している、一部のみ実施していると回答した企業のうち、3割は前向きに採用活動を続けているうえ「以前と変わらない」企業も多く、「消極的」とする企業の方が少ないという結果です(図7)。

 

企業の採用活動意欲

図7 採用活動への意欲(出所「新型コロナ禍における中途採用実態調査」エンワールド・ジャパン)(https://www.enworld.com/blog/2020/04/mid-career-recruitment-survey)

 

 

コロナ以前は「売り手市場」と呼ばれるほどに採用が難しく、年間の採用計画に届かなかった企業も少なくありません。今をチャンスと捉えている企業は存在しています。

 

そして、中途採用に「非常に消極的」「やや消極的」とした企業であっても、「良い人材は欲しい」という意欲は残っています(図8)。

 

 

中途採用に消極的な企業の意向

図8 中途採用に消極的な企業の意向(出所「新型コロナ禍における中途採用実態調査」エンワールド・ジャパン)(https://www.enworld.com/blog/2020/04/mid-career-recruitment-survey)

 

 

4.まとめ〜マッチングを重視しよう

 

なお、先のエン・ワールドの調査では、積極採用を実施している職種についてこのような結果が示されています(図9)。

中途採用意欲が「非常に積極的」「やや積極的」「以前と変わらない」とした企業の回答です。

 

積極的に中途採用する職種

図9 積極的に中途採用する職種(出所「新型コロナ禍における中途採用実態調査」エンワールド・ジャパン)(https://www.enworld.com/blog/2020/04/mid-career-recruitment-survey)

 

 

営業のほか、DX人材を必要とするエンジニア、マネジメントといった職種が人気を集めています。

 

欲しいポジションとしてはこのようになっています(図10)。

 

中途で採用したい役職

図10 中途で採用したい役職(出所「新型コロナ禍における中途採用実態調査」エンワールド・ジャパン)(https://www.enworld.com/blog/2020/04/mid-career-recruitment-survey)

 

 

専門職の需要は高く、また、日系企業では管理職も求められています。

 

企業の中には、慣れないWeb採用でスケジュールが遅れたり延びたりしてしまっているところがありますが、逆にそうした企業への応募者から、選考をある程度通過している人を引っ張ってしまおうという戦略を立てる企業もあります。

 

転職者としても企業側の素早い決断は頼りになることでしょう。

 

また、現在をチャンスと捉えている企業は、体力や将来性があるからこそです。

 

雇用情勢についてはマイナス面の空気ばかりが広がっています。

もちろん深刻な問題ではありますが、チャンスと捉える企業も少なくないぶん、チャンスと捉える転職希望者がいるのも当然です。

業界や職種が希望に合い、これまでのスキルをアピールできるならば、思い切って転職活動に踏み切るのも重要な決断能力であり、個人の資質のひとつとも言えるでしょう。

 

Web採用の浸透は奇しくも便利な時短であるとも捉えることが可能です。

 

ただ、面接では、現状への不満ばかりが先行するような態度にならないよう注意したいところです。

企業研究をした上で、自分が何をしたいのか、どう役に立てるかをしっかり考えることは不可欠です。

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執筆者 清水

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に記者として勤務。社会部記者として事件事故やテクノロジー、経済部記者としては企業活動から金融まで経済全般を幅広く取材。CSニュース番組のプロデューサーも務める。フリーライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

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