就活生の間では、企業が採用をする際に「顔採用」をしているのではないかということが、特に女子学生の間で話題になることがあります。
見た目が良い女性の方が面接などで有利であると考えている学生が多いですが、本当に容姿が選考に関係するなどということがあるのでしょうか。
そこで今回は、就活で本当に顔採用があるのかどうかを知りたい新卒の方に向けて、その実態や対策について解説をしていきます。
1.「顔採用」とは
就活をする際に、気になる基準の一つとして「顔採用」という就活ワードがあげられます。
ポリティカルコレクトの観点から考えても容認されうるものではありませんが、その内容とはどういうものでしょうか。
定義などについて、簡単に確認してみましょう。
①採用基準の要素の一つ
顔採用とは、就職活動において容姿や外見などを採用基準の一つとする採用の仕方を意味しています。
本人の能力や経験などはあまり関係なく、見た目だけで採用する方法です。
容姿端麗であるほど面接官に好印象を与えると考える学生もいますが、「容姿も才能の一種である」ということなのかも知れません。
②厚生労働省では「公正な採用選考」を推奨
厚生労働省が掲げる採用選考の基本的な考え方には下記のものがあります。
採用選考の基本的な考え方 | 採用選考を行う基本 | 公正な採用選考を行うためにすること |
・応募者の基本的人権を尊重すること ・応募者の適性・能力のみを基準として行うこと |
・雇用条件や採用基準に合った全ての人が応募できる原則を確立する ・本人のもつ適性や能力以外のことを採用の条件にしないこと |
・家族状況や生活環境といった、応募者の適性や能力とは関係ない事柄で採否を決定しない ・応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨み、できるだけ客観的かつ公平な評価を行う |
図1 参考)厚生労働省「公正な採用選考の基本」https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
このように、「本人に責任のない事項」や「個人の自由であるべき事項」などについては就職差別につながるおそれがあると言えるでしょう。
「応募者の適性や能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」とされており、持って生まれた容姿だけで採否を決定することは、もちろん認められてはおりません。
2.顔採用の実態
国が示している方針は「中身で勝負」ということになります。
しかし就活で訪ねた会社の社員に容姿端麗な人が多いと、
「この会社は顔で採用を決めているのではないか」
などと感じてしまう就活生も多いです。
①企業としては「顔採用はない」
日本経済団体連合会が実施した「2018年度 新卒採用に関するアンケート」の調査(図2)では、選考にあたって特に重視した点で「コミュニケーション能力(82.4%)」をあげています。
続いて「主体性(64.3%)」「チャレンジ精神(48.9%)」「協調性(47%)」「誠実性(43.4%)」が入っており、企業の中で皆と協調しながら、自主的に行動をしていくような人物が求められています。
この中に入っている要素は全て内面的な要素を取り上げたものであり、外見に関する要素は一切入っておりません。
選考にあたって特に重視した点
②3人に1人は「顔採用」を実感
図2の内容からすると、企業としては採用をする際に、就活生の「外見」にはあまりこだわっていません。
しかし、ダイヤモンドオンラインの調査では、これら調査とは少し異なる様子が見えてきます。
就活生の立場から見てみると、実際に「顔差別」を感じたとする人は全体の33%という結果になっているのです。(図3)
男女別では、男性の26%が「ある」、女性は37%が「ある」と回答になっており、どちらかというと女性の方がより「顔採用」があると敏感に感じています。*1

図3 参考)ダイヤモンド・オンライン「イケメンや美人じゃないと頭が良くても就活は苦戦!?曖昧だけど露骨にわかる顔採用の実態」を参考に筆者作成(https://diamond.jp/articles/-/47841)
②面接官の本音は「見た目」が非常に重要
オムロンとワコールが新卒採用の面接官に対して実施した「見た目は就活生の第一印象に影響を与えるか」という調査によると、「影響を与える」が97%、「影響を与えない」が3%という結果になりました。(図4)
実際のところ、新卒の面接では、見た目は重要であるといえます。
しかし、見た目が重要としていても、図5によると「見た目に影響のある要素」としては、「表情」が63%、「座り姿勢」が56%、「服装」が45%など、顔の造りやスタイルなどに関する要素はありません。
「表情」「座り姿勢」「服装」などは、自分の意思でコントロールできるものなので、「見た目」とはいえ「内面的」なものから発する要素でもあると言えます。

図4 参考)オムロン「オムロン×ワコール 「面接官109人に聞いた、姿勢が採用面接時に与える影響に関する調査」を参考に筆者作成(https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2014/0305.html)
「見た目」に影響のある要素は?

図5 引用)オムロン「オムロン×ワコール 「面接官109人に聞いた、姿勢が採用面接時に与える影響に関する調査」(https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2014/0305.html)
3.採用面接で「顔採用」が多い理由とは
それでは、なぜ企業は顔採用が多いとされているのでしょうか?
ここでは、その理由について解説をしていきます。
①メラビアンの法則では「見た目が55%」
メラビアンの法則とは、1971年にカリフォルニア大学の心理学者アルバート・メラビアン(1939~)が提唱した概念です。
「コミュニケーションの際に人はどのような情報に基づいて印象を判断するのか」について実験した結果をまとめたもので、要素の比率は下図6のようになります。
メラビアンによれば、人の行動が他人にどのような影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話すときの早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であると言われています。
この表によると、人が他人に対して抱く第一印象の割合として、目から入る視覚情報が一番多いと言えるでしょう。
②企業にメリットが多い
見た目の感じが良い人を、企業が採用しやすいと回答している理由には、一般的には下記のものがあります。
a.仕事に良い影響が出やすい
見た目の感じが良い人は、営業先やお取引先など相手に好感を持たれやすい傾向があります。
その結果、仕事の成果にも良い影響があると考えているのかも知れません。
ただ、容姿が優れているというだけでなく、笑顔が多いなどの親しみやすさも大切でしょう。
b.社内の雰囲気が良好になる
人に好印象を与える人は明るい人柄の人が多く、その人がいるだけで会社内の雰囲気が良くなることもあげられるでしょう。
また、職場に素敵な女性や男性がいれば、やはり悪い気はしないものです。
4.顔採用に負けない対策
結論からいえば、就活では、全く顔採用がないとは言い切れないのが実情です。
ただ、見た目の印象というのは、顔の造りだけを重要視しているわけではありません。
上図5にあるように、企業が選考での評価で重視する点は、見た目の中でも、「表情」「姿勢」「服装」など、基本的に顔の造りとは関係のないものを取り上げています。
ここでは、顔採用に負けない対策として3つの重要ポイントをご紹介していきましょう。
①身だしなみを清潔にする
見た目の印象をアップするには、まずは身だしなみを整えることから始まります。
清潔感が演出できるように、スーツを正しく着用してシャツやズボン、スカートなどにしわや汚れがないかをチェックしておくことが必要です。
面接では全身の身だしなみがチェックされますから、整え具合によって第一印象が大きく変わってしまいます。
また、髪色や髪型なども評価の対象となりますから、男性なら黒髪で短髪、女性なら黒髪で長い場合はまとめるなどして、さっぱりとした清潔な印象を心がけましょう。
②姿勢を正しく佇まいを美しくする
面接は入室した時からチェックされています。
そのため、好印象を与えるために、姿勢を正しく佇まいを美しく見せることが大切です。
猫背などで姿勢が悪いと、それだけでだらしない印象を与えてしまいかねません。
自信を持って堂々と振る舞うようにすると評価が格段に上がるでしょう。
③笑顔を大切にする
面接で良い印象を与えられるかどうかは、表情によってかなり違いがあります。
好印象を与えるには、明るい笑顔で面接に臨むことが大切です。
面接はどうしても緊張してしまうものですが、できるだけ笑顔を絶やさないようにしてみましょう。
笑顔は人に安心感や明るい印象を与えますから、採用する側から見ると、このような人に入社してほしいと評価される場合もあります。
表情によって人に与える印象はかなり変わるため、面接には意識して笑顔で面接に臨むようにしてください。
5.まとめ
今回は、巷で評判になっている「顔採用」について詳しく解説をしていきました。
確かに「人は見た目」かもしれませんが、それは顔の造りというより、表情や姿勢、服装などがかなり大きなポイントを占めているということです。
明るい笑顔で対応されたら、人は誰でもうれしい気持ちになってしまいます。
これから就活で面接を受ける際には、「トータル的な見た目」に重視して、受ける企業のカラーに合った要素を自分の中に取り入れていくと良いでしょう。

プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。住まいに関する資格である整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級も取得済みです。趣味は整理収納と料理。