「何か答えにくい質問をされたらどうしよう?」
「受け答えに詰まってしまったら・・・」
答えやすい質問だけなら問題ないものの、実際にはそうもいきません。
とりわけ面接官は、こちらの受け答えに対して、深掘りして質問してくることが多いものです。
面接官は、何を知ろうとしているのでしょうか。
そして、深掘りされることへの不安を無くすには、どうすればいいのでしょうか。
1.面接官が掘り出そうとする「コンピテンシー」とは
最近の採用面接では、応募者の受け答えに対して、面接官がさらに突っ込んだ質問をするというのが一般的になっています。
応募者側にしてみれば、どのようなことを聞かれるのか予測できないため、不安に感じる方も多いでしょう。
内容を盛っているわけでもないのに、どうして深掘りしてくるのかと疑問に感じる方もいるかもしれません。
そのような質問をしてくる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
グローバル化が進んだことによって企業間の競争が激しくなってくると、もはや企業は人材をゼロから育てるような余裕はなくなってきてしまい、即戦力を求めるようになってきます。
そうなってくると、できる限り短い期間で成果を出せる人材をより確実に見抜くにはどうすればいいのかということが重要になります。
先行きが不透明だという時に、結果が出せるかどうか分からないポテンシャルで評価するというのは、なかなか難しいものです。
そこで、ポテンシャルを評価するよりも、より確実に成果を出せそうかどうかを評価する方法として注目されるようになったのが「コンピテンシー」と呼ばれるものです。
コンピテンシーとは、高い成果に結びつく行動特性を指します。
具体的には、どんな時にも落ち着いて行動できる冷静さであったり、負けず嫌いな性格といったものです。
コンピテンシーに基づいて評価を行う面接方法は、1970年代にアメリカ国防省における外交官選考のために開発され、1990年代以降一般的な組織における人材活用の領域にも広く普及していきました。
日本でも多くの企業が、成果主義が導入され始めた1990年代後半頃から採用・育成・処遇といった人材マネジメントや人事考課の項目等に、コンピテンシーという考え方を取り入れるようになってきています。*1
コンピテンシーは、高い成果をあげる人に共通して見られる要素です。
面接において応募者がどんなコンピテンシーを持っているのかをチェックすることで、その応募者が入社後にどんな活躍をしてくれそうなのかを予測することができます。
そのため面接官は、質問を深掘りすることで、応募者のコンピテンシーを探し当てようとしてくるわけです。
面接官が質問を深掘りしてくる意図というのが、これで理解できたのではないでしょうか。
2.深掘りされやすい項目とは
深掘りして質問されるといっても、聞かれやすいところというのは決まっています。
よく聞かれる代表的なものが、以下の3つです。
・コミュニケーション力
・リーダーシップ
・チャレンジ精神
最近では多くの仕事はAIによって代替されてしまうとも言われていることから、「思考力」や「創造力」といった項目も重要視されるようになってきています。
これらの項目は、一目見ても具体的にどいうったことを指すのかが分かりにくく、面接官と応募者とで感じ方の違いが出やすいものです。
例えば、リーダーシップと言っても・・・
・ビジョンを示し、前向きな雰囲気を作り出してチームをまとめあげる力
・的確な状況判断と指示で、周囲の人を動かす力
・チーム内の意見の違いをうまく調整しながら、チームをまとめる力
・・・これだけ様々なパターンがあります。
なので、部活やアルバイトなどでのリーダーの経験をアピールしても、面接官としてはどんなリーダーシップを持っているのか判断できず、応募者としては突っ込んだ質問をされることになります。
具体的にどういう能力が求められているのかが明確にならないと、応募者側はアピールしにくいものです。
そこで、2006年に経済産業省によって、社会人として必要な能力が3つの能力(12の能力要素)に整理され、「社会人基礎力」としてまとめられました。
この社会人基礎力は、今や企業や学校などを結ぶ共通言語となっています。*2
それでは、具体的にどのような能力が必要とされているのでしょうか。
それをまとめたのが、以下の図です。

引用)「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書、経済産業省 P26(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_1.pdf)
仕事をしていくうえで求められている能力が、より具体的になり、イメージがつかみやすくなったのではないでしょうか。
企業や職種によっては、どの能力を重視するのかは異なってくるものの、面接においては、これらの能力がちゃんと身についているかどうかが問われます。
入念に自己分析を行い、自分の強みはどこにあるのか、足りない部分に関しては、どのように対策しようとしているのかを整理しておきましょう。
3.どんな風に掘り下げられるのか
深掘りして質問してくるとなると、なんだか回りくどく感じるかもしれません。
ただ、いきなりコンピテンシーのことを聞くにしても、具体性が無くて分かりにくいものです。
面接官としては、いきなりコンピテンシーに関する質問をするよりも、具体的な質問から入った方が、イメージしながら応募者の話を聞きやすいというメリットがあります。
典型的な方法が、以下に図解するように「なぜ」を繰り返すやり方です。
この図解のように、コンピテンシーが出てくるまで、質問は2,3回ほど繰り返されます。
図解のケースでは、負けず嫌いという性格がサッカーを10年間続ける原動力になったと解釈されます。
面接官としては、「負けず嫌いというコンピテンシーがあれば、営業で活躍できるのでは?」と考えるわけです。
コンピテンシーは、仕事で高い成果を生み出すための性格、動機、価値観といった要素です。
面接官は、それを聞き出すために深掘り質問をしてきます。
裏を返せば、深掘りをされた際にコンピテンシーとは関係がない方向にそれた受け応えをしてしまうと、質問の意図を把握できていないと判断されかねません。
深掘りしてくる裏にはコンピテンシーについて知りたいという意図が隠れているということは意識しておきましょう。
4.深掘り質問にどう対処すればいいのか
深掘りした質問をされると、何も答えられずに頭が真っ白になってしまうという人も多いものです。
事前に面接対策本などでよく聞かれる項目を把握しておいて準備しておけば、答えるのは簡単です。
しかし、深掘り質問ともなると、準備が十分できていないことも多いため、その場で的確に受け答えするのは難しいものです。
準備が不十分になってしまう原因は、どこにあるのでしょうか。
誰もが一度は、何かに夢中になった体験というのがあると思います。
でも、どうして自分がそれに夢中になれるのかを説明できる人は少ないはずです。
夢中になれるというのは、それだけ自分の性格に合っていたり、価値観が満たされていたりするからだと説明できます。
しかし、夢中になっているときに自分の価値観を意識するなどということはありません。
そのため、コンピテンシーがはっきり言語化されているということは多くなく、周囲の人がポジティブなフィードバックによって指摘してくれる機会が無ければ、自分でもなかなか気がつきません。
言語化されていないものをいきなり面接で聞かれるわけですから、答えられずに頭が真っ白になってしまうというのも当然であると言えます。
そうならないためにも、面接の前に自分のコンピテンシーを言語化しておくというのが大事になってきます。
学生時代に力を入れたことや自己PRなどのよく聞かれる項目に対して、表面的な部分だけでなく、それを生み出すに至った背景まで掘り下げ、自分の性格、動機、価値観を明確にしておきましょう。
そこまで準備ができていれば、掘り下げられても対応できずはずです。
準備する上で気をつけたい点としては、面接官はどんなコンピテンシーを求めているのかを意識するというのが大事です。
せっかくうまくコンピテンシーを言語化できたとしても、それが相手の求めているものと一致していなければ採用につながりません。
応募先の企業のこともよく研究したうえで、何をどのようアピールすれば効果的なのかを考え、対策を練りましょう。
https://core.ac.uk/download/pdf/267827018.pdf
*2 参考)「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書、経済産業省 P26
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_1.pdf