キャリア形成 働くコラム

役職定年で変わる役割と給与 正しく理解し早めのキャリア設計・生活設計に取り組もう

変わる役割と給与に戸惑いも!?「役職定年」を見据えたキャリア&生活を考えてみませんか

入社した会社で、順調に昇進し、定年を迎える。多くの人がこのような社会人生活をイメージしていると思います。しかし、勤務先によっては「役職定年」を設定しているところもあります。役職定年を迎えた後はどのような働き方になるのでしょうか? そして、生活にはどのような影響があるのでしょうか?

今回は、人事院のデータを紐解きながら、役職定年について考えてみましょう。

 

1.役職定年&その実態とは

 

1.役職定年とは

 

役職定年とは、役職段階別に管理職がラインから外れて専門職などで処遇される制度です。制度の名称自体は聞いたことがあっても、どんな制度なのか、給与がどのくらい下がるのか等、詳しいことを知らない方も多いと思います。

 

役職定年の制度が、多くの企業で導入されるようになったのは1980年代以降のこと。定年制の変化にともない、役職定年の制度を導入し始めたのが、その経緯です。

 

人件費の抑制、従業員の高齢化にともなうポスト不足の解消等を目的としているのが一般的です。

 

①役職定年の導入割合

 

人事院のデータによると、役職定年制度を導入している企業は、全体の23.8%となっています。

これを企業の規模で見てみると、従業員が50〜99人の企業では17.1%、500人以上の企業では36.6%が導入しています。規模の大きな企業ほど、役職定年制度を導入している傾向にあります。

企業規模 役職定年制がある
500人以上 36.6%
100~499人 25.5%
50~99人 17.1%

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

役職の範囲

 

「役職」には部長級・課長級等、いくつかの段階があります。

500人以上の部長級・課長級双方を役職定年の対象とする企業は94.9%と多く、これが主流となっていることがわかります。

 

企業規模 対象:部長級以上 対象:課長級以上
社員数500人以上 2.7% 94.9%
社員数100~499人 0.6% 90.5%
社員数50~99人 6.1% 78.7%

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

役職定年年齢

 

役職定年制度の対象となる年齢も、企業によって異なります。部長級・課長級ともに、対象年齢を55歳としている企業が最も多くなっています。

 

企業規模が500人以上の役職定年実態

  55歳 56歳 57歳 58歳 59歳以上
部長級 35.7% 13.7% 20.5% 22.2% 6.6%
課長級 43.3% 15.1% 13.1% 11.6% 5.2%

※人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

仕事内容の変化

 

役職定年を迎えたあと、仕事内容に変化はあるのでしょうか。部長級・課長級ともに、役職定年対象者の半数以上は、「概ね同格の専門職」となっていますが、格下の専門職やライン職になる人も一定割合います。

 

企業規模が500人以上、役職定年後の仕事内容の実態

  同格の専門職 格下の専門職 格下のライン職
部長級 52.9% 35.2% 6.4%
課長級 51.6% 34.3% 9.3%

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

仕事内容の変化がある場合は、モチベーションの保ち方も役職定年を迎えた人の課題になってくるといえるでしょう。

 

給与

役職定年の対象となるとき、最も気になるのは「給与がどのくらい変化するか」ではないでしょうか。

給与の考え方は企業によって異なりますが、「基本給」「管理職手当」「賞与」「その他の手当」は、共通する内訳でしょう。このうち、役職定年により、最も減額の対象となるのは基本給で企業全体の45.2%となっています。続いて、管理職手当(28.8%)、賞与(34.9%)が対象となっています。また、手当の廃止をする場合、31.5%の企業が管理職手当自体を廃止しています。

 

企業規模が500人以上、役職定年後の給与支給の実態

  基本給 管理職手当 賞与 その他手当 不明
減額 45.2% 28.8% 34.9% 8.3% 27.8%
廃止 - 31.5% 2.6% 7.7% 65.6%

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

また、課長級の統計ではありますが、役職定年後の年収水準も役職定年前と比べると「下がる」としている企業が多く、500人以上の社員を抱える企業の86.1%に及びます。年収が定年後も「変わらない」としている企業は、全体のわずか11.2%にすぎません。

年収が「下がる」としている企業のうち、年収が「約75〜99%」となる企業は78.2%、年収が「約50〜74%」となる企業は20.4%となっています。

 

  100% 75-99% 50-74% 50%未満
全体平均(社員規模関係なく) 8.8% 78.2% 20.4% 1.4%
社員数500人以上 11.2% 80.6% 18.1% 1.3%

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」を基に作表

 

2.中高齢者に対する企業側の対策

 

2.中高齢者に対する企業側の対策

 

役職定年を含め、中高齢者になると、給与が下がったり、若い頃のように部下のマネジメントや育成に対するやりがいを感じることができなくなったりします。年齢を重なることにともなう、やむを得ない面もありますが、それでも中高齢者のモチベーションが下がることは、企業にとっても本人にとっても好ましいことではありません。

そのため、中高齢者の雇用に関しては、企業側でも対策を講じています。

 

日本経済団体連合会によると、中高齢者の活動促進に関して、企業側も以下のようなさまざまな取り組みをしています。(※1)

 

・人事考課時のフィードバック
・自己申告制度
・高い専門能力やスキルを持つ従業員の表彰・認定制度
・人事考課時以外のフィードバック
・専門職による個別のキャリアカウンセリング
・人事部門との定期的な面談
・階層別研修
・職能別研修

 

3.役職定年を言い渡された後、具体的に行うこと

 

3.具体的に行うこと

 

役職定年後に給与が下がったり、仕事内容に変化があったりすると、仕事に対するモチベーションを保つことが難しい、と感じる人も出てくるでしょう。しかし、会社員としての人生は続いていきます。自分のモチベーションをうまくコントロールしながら仕事を継続していくことが望ましい姿と言えるでしょう。

 

具体的には、社内制度をうまく利用するのもひとつの方法です。キャリアカウンセリングや定期的な面談、研修等を活用し、自分自身でキャリア設計を考えていきましょう。

 

役職定年となった方は、これまで培ってきた能力・経験・スキル等があります。これらの知見を活かし、高齢期に会社にどのように貢献できるのかを考えていくと、モチベーションアップにもつながることでしょう。また、役職定年後は、自分の役割が変化したと考えるのもいいかもしれません。

 

役職に付いているときは、部下を抱え、会社を引っ張る存在でした。しかし、役職定年後は、これまでの経験やスキルを活かし、会社を支える存在に変わったとも言えます。役割の位置付けは変化しますが、会社に貢献できることに何ら変わりはありません。自分の気持ち次第で、仕事の充実度や会社に対する貢献度は、いくらでも変えることができます。

 

4.役職定年のまとめ

 

4.役職定年まとめ

 

役職定年の年齢を迎え、役職から退くことは、寂しい面もあるものです。しかし、中高齢期になってからも会社に関わることができるのは、とても有意義なことでしょう。経験を積んでいる中高齢者だからこそ、できる仕事もあるはずです。

 

また、これから役職定年を迎える人も、勤務先の制度を事前に確認をすることできます。役職定年の制度があることを前提にして、ライフプランを自ら立てていきましょう。

 

仕事には、人生の多くの時間を費やします。モチベーションを保ちながら、中高齢期の時間を最良なものにしていただければと思います。

 

参考文献/WEBサイト
※1 日本経済団体連合会「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組み」P15
https://www.keidanren.or.jp/policy/2016/037_honbun.pdf

※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態|表3 役職定年年齢(部長級・課長級)別企業数割合」
https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/koureikikenkyukai/h20_15/h20_15_siryou/h20_15_siryou_02_02.pdf
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面接官のホンネ 管理人

アラフォーの管理職。二人の娘がいます。 新卒・中途採用に10年以上携わり、安定を手にするために私自身も転職。次世代に知識と経験の継承を目的として「リアルな現場の声」をテーマに、“面接官のホンネ”を立ち上げました。わかりやすく採用現場の本音をお届けします。

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