新型コロナウィルスの影響で、働き方や仕事の進め方に大きな変化が起きています。
それに伴い、転職を迷いはじめた方もいるでしょう。
ただ、転職は必ず成功するとは限りません。よく考えずに転職に踏み切り、後悔するケースもあるのです。
あなたは本当に転職しても大丈夫でしょうか。
この記事では、転職に失敗した理由を分析し、失敗しないキャリア形成のチェックポイントをご紹介します。
1.転職に迷う人が増加中?コロナ禍の転職事情
総務省によると、近年の転職者数の推移は、2020年にやや減少したものの、依然として300万人を超える横ばいが続いています。コロナ禍でも転職に動く人は少なくありません。
では、転職理由にはどのようなものが多いのでしょうか。
厚労省の「前職を辞めた理由」調査では、定年や契約満了などの会社都合を除くと、
・職場の人間関係が好ましくなかった
・労働時間、休日等の労働条件が悪かった
・給料等収入が少なかった
・能力・個性・資格を生かせなかった
が上位にのぼり、人間関係や待遇面、仕事のやりがいなどが転職のきっかけになっていることが多いようです。*1
特に、コロナ禍で仕事観や人間関係が変化したことで、転職に迷いはじめた方もいるでしょう。
その一方で、有効求人倍率は減少傾向にあります。2019年の1.60倍が2020年では1.18倍と0.42ポイント下回り、業界による差はあれど、採用する企業側はコロナ禍の影響を受けていることが分かります。*2
先行き不安を受けて企業が採用に慎重になり、選考基準がこれまでよりも厳しくなっている可能性もあります。
以前と比べて、あまり楽観的に転職に踏み切るのはリスクがある状況だと言えます。
それでも転職に迷う…そんな時、大切なのは「本当に今転職すべきか?」を冷静に見極めることです。
まずは転職に失敗した理由を分析して、どのような転職にどのようなリスクがあるのかを確認しましょう。
2.迷ったら転職は間違い!相談が多い転職の失敗理由とは
転職で失敗したと感じる人は、どんなことを後悔しているのでしょうか?
筆者がキャリアコンサルタントとして相談を受ける中で、転職の失敗として挙げられるものには大きく次のようなものがあります。
思い当たるものも、あるのではないでしょうか。
- 人間関係に嫌気が差して、とにかく退職を急いでしまった
- 内定が出て舞い上がり、他の選考を待たずに1社で決めてしまった
- 前職より福利厚生が充分でなかった
- 20代の頃の転職より、書類や面接が通過せずに苦労した
このような失敗はどうして起きてしまったのでしょうか。一つには、転職への「焦り」や「逃げ」の気持ちがあったことが伺えます。
退職した後に転職活動をはじめた場合、経済的な不安や離職期間が長引く不安から
「少しでも早く内定が出た会社に行こう」
と焦りはじめるかもしれません。
また、今の会社を辞めたい思いが強いと、無意識のうちに転職先を美化して、都合の悪いことを見落とすかもしれません。
このように、転職に焦りや逃げの気持ちが強すぎると、気づかないうちに冷静さに欠けた判断をして、転職に失敗してしまうのです。
福利厚生面も、転職で見落としがちな点の一つです。
転職理由に、仕事のやりがいや人間関係の改善を挙げる方は多いものです。
それも確かに大切な要素ですが、しかしそればかりに注目していると、転職してから労働環境の悪化が発覚し、前職の有り難みに気づく…なんてことも珍しくありません。
現職で福利厚生に恵まれていても、いつの間にか慣れて当たり前のように感じてしまうものなのです。
無いものばかりに気を取られて、現職の良い点を整理できていないことから起こる失敗だと言えるでしょう。
また、同じ中途採用でも20代より30代の方がハードルが上がり、難しく感じることもあるかもしれません。
その理由は、20代と30代では期待されることが異なる点にあります。
まだ社会人経験が少ない20代は、入社後の育成を前提とした「ポテンシャル採用」枠で採用を検討されることが多いのです。
そのため、候補者の人柄や仕事への姿勢が、自社とマッチするかどうかを評価されます。人柄などがマッチしていれば、未経験職種への転職も叶いやすくなります。
一方、中堅社員となる30代以降では、「即戦力採用」を期待されています。
部門の責任者や部下育成を担う人材だけに、面接では社会人としての成熟度も評価対象となります。
そのため、これまでの経験や実績はもちろん、転職理由や今後のキャリアプランを明確に語れないと、選考通過は厳しくなるでしょう。
このように、20代と30代以降では期待されるものが異なることを理解して、必要な対策を取ることが求められているのです。
3.転職で失敗しないための5つの質問
ここまで、様々な転職の失敗理由を分析してきました。
それを踏まえて、転職で失敗しないための5つの質問を用意しています。
あなたの転職は大丈夫ですか?ぜひチェックしてみてください。
(1) 転職時期を決めつけていないか
「いつまでに転職しよう」と期限が目標になってしまうと、肝心の転職先の選択を誤るリスクが高まります。
可能なら在職中から転職活動を始めて、経済的な不安が無く気持ちに余裕がある状態を保ちましょう。
(2) 現職に留まることも選択肢に入れているか
「今の仕事に留まってもいいし、良い仕事があれば転職してもいい」
これくらいの余裕があると、現職と比較して転職先を冷静に見極めることができます。
最近では、本選考ではない「カジュアル面談」を設けて、情報交換の機会を持つ会社も増えています。
興味のある企業の求人内容や、自分に対する他社の評価を確認しながら、焦らず転職先候補を探すことで、失敗を回避できるでしょう。
(3) 福利厚生や労働環境も確認しているか
出張手当や家賃補助など、福利厚生が生活に与える影響は少なくありません。
転職によって、今の生活レベルが落ちる可能性にも留意する必要があります。
まずは、現職で恩恵を受けている制度を見直しましょう。
その上で、現職と転職先を比較することで、労働環境を見落とす失敗を回避できるでしょう。
(4) 転職理由や今後のキャリアプランを語れるか
転職後、ミスマッチによる早期退職を避けたいのは、採用する企業側も同じです。
「転職してやりたいことが、自社で実現できるのか」
を確認するために、企業は面接で転職理由や今後のキャリアプランを質問します。
この質問に対して、現職の不満ばかり話してしまったり、将来像が漠然としたままだったりすると、ネガティブな姿を印象づけてしまうかもしれません。
たとえ現職で嫌なことがあったとしても、自分の転職理由はポジティブに、入社後やりたいことは明確に語れるよう、入念に準備しておくことが大切です。
(5) 仕事を通じて「誰を助けたいか」を考えているか
これは筆者自身の転職で失敗した時の話ですが、一年足らずで退職した経験があります。
ふりかえってみると、理由の一つは「誰を助けたいか」を考えていなかったことでした。
顧客の価値観や業界の常識に馴染めず、心から顧客を「助けたい」と思えないことが苦しく、仕事に疑問を感じる日々が続いたことが退職の一因となりました。
転職を考える時、もちろん自己成長や労働条件は大切な要素です。
しかし本質的に仕事とは、「誰かを助け喜ばれる」ことで成り立っています。
同じ職種であっても、転職によってあなたが助ける対象は変わります。
あなたが仕事を通じて助けたいのは、どんな人たちなのか。
転職に踏み切る前に、ぜひ一度考えてみてください。
5つの質問に、あなたはいくつ「Yes」が付いたでしょうか。
「No」が多いとしたら、もしかしたら転職の前に、まだやるべきことがあるのかもしれません。
転職に迷った時、焦っていきなり動き出すのはやめましょう。
まずは転職すべきかどうかをチェックして、あなたが転職に求めるものを整理し、失敗しない転職を目指してください。