転職活動で書類選考を通過し、面接の日程が決まると、「当日のメイクはどうしよう?」と迷う方が多いのではないでしょうか。
新卒で就職活動した当時のマナー本を引っ張り出して、復習する方もいるでしょう。
「面接のメイクはナチュラルメイクが鉄則!」なんて書いてあるかもしれませんね。
ただ、数多くの面接の現場を経験してきた筆者の立場から見ると、これは必ずしも正解ではありません。「教科書通りの面接メイク」をまじめに実践しているのに、なかなか内定が取れない方も多いからです。
本稿では、内定を取れる転職メイク・取れない転職メイクの違いはどこにあるのか、転職を成功させるメイクとはどんなものなのか、紐解いていくことにしましょう。
1.転職でたくさんの企業から内定を勝ち取る人のメイクとは?
まず、転職活動でたくさんの企業から内定を勝ち取る人たちの特徴を、「メイク」という切り口で整理してみました。
4つのポイントが共通項として浮かび上がりましたので、ご紹介します。
ポイント1:仲間と思ってもらえるメイク
1つめのポイントは「仲間と思ってもらえるメイク」です。
実際の面接評価シート(面接官が応募者の評価を記入する書類)では、低評価の理由として以下の表現がよく見受けられます。
- 会社の雰囲気に合わない
- 社風になじまない印象を受けた
こうして見ると、なんとも抽象的に感じるかもしれません。しかし実は、面接の合否を左右する最大のポイントでもあります。
というのも、「同じベクトルに向かって協働できる人材か」は、企業が最も重視する点。言い換えれば、「社内の雰囲気(社風)に合うか」は、面接で最も見られている点のひとつといえるでしょう。
では、応募先企業の雰囲気に合う人材と評価されるためには、どうすれば良いのでしょうか。
そのために役立つのが、面接官に「私たちと仲間になれる人間だ(同類、似た価値観を持つ人間だ)」と感じさせるメイクです。
仲間と思ってもらう簡単な方法は見た目を似せること
面接官が、限られた面接時間のなかで「自分たちと仲間になれるか・否か」を判断するとき、大きな影響力を持つのが「見た目」です。
私たちは、自分たちと似た見た目の人を、瞬時に「仲間」と認識します。これは逆もまたしかりです。
具体例を挙げましょう。例えば、華やかなアパレル企業の面接に、化粧っ気のない素朴なメイクで臨めば、「私たちとは違う世界の人」と思われてしまいます。
あるいは、素肌で働く女性が多い自然派食品メーカーの面接に、つけまつ毛がバサバサ付いた派手なメイクで臨めば、「会社の雰囲気に合わない」と評されてしまうでしょう。
面接メイクは、応募先企業の雰囲気に合わせて変えることが、成功のコツなのです。
ポイント2:自然体に感じられるメイク
2つめのポイントは「自然体に感じられるメイク」です。
面接官は、応募者の「誠実性」に対して敏感です。話す言葉だけでなく、目線の動きや仕草から「この応募者は嘘を言っているな」「何かを隠しているようだ」などの情報をキャッチしています。
メイクも、その情報のひとつになってしまうことがあります。具体的には、普段していない不慣れなメイクで面接に臨むと、どこか不自然な印象を与えるものです。
「不自然な印象の原因が、不慣れなメイクにある」と見抜く面接官は多くありませんので、「何か取り繕っているようだ」と違和感だけが残ってしまうでしょう。
面接のメイクは、相手に余計な違和感を与えるリスクのない、自然体に感じられるメイクである必要があります。
ポイント3:現在の仕事が順調に見えるメイク
3つめのポイントは「現在の仕事が順調に見えるメイク」です。
在職中に転職活動している人であれば、在職中の仕事が終わった後、夜の時間帯に面接することが多くなるでしょう。
その際、職種に適したメイクが施されていて、イキイキと仕事しているさまが見て取れると、面接官は「現職で、仕事ができる人として活躍しているようだ」と感じるものです。
逆に内定がスムーズに出ない人は、「順調に仕事している人」という印象がありません。その一因は、現在進行形で働いている人のメイクではなく、新卒時の就活メイクを思わせるメイクをしていることです。
転職活動においては、「面接のためのメイクをしっかりしている人」よりも、「現職で活躍しているままの、普段のメイクをしている人」の方が評価されやすいことを、覚えておきましょう。
ポイント4:健康的に見えるメイク
4つめのポイントは「健康的に見えるメイク」です。
血の気がなく不健康な印象を与えるメイクは、それだけで敬遠されてしまいます。「心身ともに明るく健やかで、はつらつと働ける人材である」ことは、多くの企業にとって必須条件だからです。
とはいえ、「ストレスや疲労がピークになっているのが正直なところ」という方もいるでしょう。本音と建て前はあれど、さまざまな人間関係の悩みや多忙さが重なりやすいのが、転職活動の時期。
だからこそ、そのストレスや疲労をメイクで上手にカバーできると、採用率は上がります。マイナスの側面をメイクでカモフラージュすることは、ぜひ賢く使ってほしいテクニックです。
2.転職の面接メイクで実践したい具体的な対策
ここまでご紹介した“内定を勝ち取る人たちの共通項”を踏まえれば、面接メイクの正解が見えてくるかと思います。
ここからは、「より実践的な方法を知りたい」という方に向けて、具体的な対策を7つ、ご紹介します。
1. 普段使っていない化粧品は使わない
転職活動のメイクでは、普段使っていない化粧品は使わないようにしましょう。使い慣れていない化粧品を使うと、それだけで「不自然さ」の原因となります。
そのうえ、思ってもいない崩れ方をしたり、時間の経過とともにくすんだりして、「こんなはずじゃなかった!」という失敗のもとに。
転職の面接メイクは、“普段の仕事でしているメイク”の延長線上にあると考えましょう。普段使っていない化粧品を使うのはやめて、使い慣れた化粧品・道具のなかで行います。
2. 企業の雰囲気に合わせてメイクの足し引きをする
普段のメイクをベースにしつつ、応募先企業の雰囲気に合わせて、メイクの足し引きを行います。
特に、メイクの印象を大きく変える以下の化粧品は、面接のたびに使うか・使わないかを判断しましょう。
- アイライン
- マスカラ
- つけまつ毛
- まつ毛エクステ
- カラーコンタクト
番外として爪のメイクである「ジェルネイル(マニキュア)」も、応募先企業によって有無を検討してください。
転職エージェントを利用している方は、エージェントの担当者に相談すると良いでしょう。応募先企業の雰囲気や、今までに内定が出た人たちの様子を聞くことができれば、大きなヒントになります。
3. ベースメイクは厚塗りしない
疲労やストレスによる肌荒れやクマがあると、多くの方はファンデーションやコンシーラーで隠そうとします。
しかし、ベースメイクを厚塗りすると、かえって不健康に見えることを知っておきましょう。厚塗りすると、健康的なイメージを作る「透明感」と「血色感」が消えてしまうからです。
さらに、緊張で汗をかいたり顔に血がのぼったりすることもある面接時には、厚塗りのベースメイクはおすすめできません。想定外の汚い崩れ方をするリスクがあります。
ベースメイクは、できるだけ薄くするよう心掛けましょう。
4. 頬のチークは忘れずに塗る
ベースメイクを厚塗りせずに健康的な印象を作るテクニックとして、必ず使いたいのが頬の「チーク」です。
頬にチークがあるか・ないかで、ヘルシー度(健康的に見えるかどうか)が大きく変わります。
自分の肌に合う色のチークを入れると、ファンデーションやコンシーラーを厚塗りしなくても、クマや肌荒れが目立ちにくくなる効果があります。
面接メイクのチークカラーとしては、ほんのり血色感のあるコーラル系の色が使いやすいでしょう。
5. 怖い印象の眉毛は変える
細すぎる眉毛・鋭角すぎる眉毛は、それだけで採用率が下がります。我が強く協調性に欠ける印象を与えるためです。
「キリリとした眉毛で、強い意志を表現したい」という方もいますが、相当の戦略がない限りは、避けた方が無難です。
眉毛は、極端な角度を付けず、穏やかな表情になるように描きましょう。角度はほとんど付けずに、まっすぐ横に引いても良いほどです。
ただし、適切な眉毛の描き方は、顔の骨格や眉毛の生え方によって変わります。眉毛に自信がない方は、一度、美容部員(ビューティーアドバイザー)に相談しましょう。
美容部員とは、化粧品メーカーの販売員のことで、百貨店などの化粧品売り場に常駐しています。彼女たちはメイクのプロです。わざわざ有料のメイク教室などに通わなくても、いつでも気軽に相談できるのがメリットといえるでしょう。
できれば2〜3店舗を回って、複数の美容部員のアドバイスを受けると、本当に自分に合う眉毛がわかってきます。
6. 化粧崩れは直す
在職中の仕事が終わってから面接に行くときは、化粧崩れをきちんと直していきましょう。
化粧崩れしていると、だらしない印象を与えたり、くたびれているように見えたりと、良いことがありません。
それどころか、メイクを身だしなみと捉える面接官のなかには、「うちの会社の面接を軽んじている」と判断する人もいます。「面接前に、鏡ひとつ見ないで来たのか」と感じるためです。
失礼のないようメイクを整えることは、相手へ敬意を表すことにつながります。面接前には鏡でメイクをチェックして、崩れていればメイク直しをしてから面接に臨みましょう。
7. 口紅(リップ)が前歯に付かないよう工夫する
面接直前にメイク直しをする際によくあるのが、「塗りたての口紅(リップ)の色が、ベッタリ前歯に付いてしまう」という失敗です。
実際に面接官を担当していると高頻度で見られるのですが、本人はまったく気づいていません。
「直前にメイク直ししてくれたんだな……」ということは伝わるのですが、口を開く度に前歯が真っ赤になっていると、面接官も気になってしまいます。
メイクに疎い男性の面接官なら、「歯に食べ物の汚れが付いたままになっている」と勘違いしてしまうかもしれません。
面接直前のメイク直しでは、口紅を塗った後に必ずティッシュオフ(ティッシュで唇を押さえる)して、前歯に付かないよう工夫しましょう。
3.メイクを味方につけて面接に挑みましょう
メイクが好きではない人・苦手意識のある人にとって、面接メイクをどうするかは頭が痛い問題かもしれません。
ですが、メイクの力を味方にできれば、それは立派な武器になります。性格や話し方を変えるのは難しいことですが、メイクは当日のさじ加減で、いかようにも変えられるからです。
「応募先の企業の雰囲気には、どんなメイクが合うか」と思い巡らせることは、応募先企業を深く理解することにもつながります。
そのうえで、面接メイクでどんな自分に見せたいのか考えれば、戦略的に面接メイクの作戦を立てることができるでしょう。
ぜひ、メイクを味方につけて、自信を持って面接に挑んでくださいね。