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コロナ禍で郊外移住に脚光?転職を機に引っ越しもしたい場合の入居審査と注意点

コロナ禍で郊外移住に脚光?転職を機に引っ越しもしたい場合の入居審査と注意点

「ニューノーマル」という生活への変化が必要とされる中、住む場所に対する意識の変化が広がっています。

感染リスクを避けたい、あるいはテレワークで出社の回数が減った、などの理由で、郊外の物件への問い合わせが急増しているのです。

 

転職を考えている場合も、職場が変わるのを機に転居し、新しいライフスタイルを築こうと考える人は少なくないことでしょう。

 

現在、どのような場所が注目されているのか、また、転職にあたっての転居で気をつけなければならないことなどについて紹介します。

 

1.春以降のトレンドに大変化

 

住宅情報サイト「ライフルホームズ」の調査によると、2020年4月から8月に掲載された物件を元に集計した首都圏の「借りて住みたい街ランキング」はそれまでと様変わりしています。

 

上位を見ると

1位 本厚木(神奈川県厚木市)  前回4位

2位 葛西(東京都江戸川区)   前回2位

3位 大宮(埼玉県さいたま市)  前回5位

4位 千葉(千葉県千葉市)    前回14位

5位 池袋(東京都豊島区)    前回1位

 

となっています*1。

 

「前回」とは2020年2月に公表されたランキングです。

緊急事態宣言より前と後で大きくランキングが変わり、本厚木、大宮、千葉といった郊外に人気が集まっています。千葉はランクを10も上げています。

 

また、埼玉県の不動産会社に勤めている筆者の知人によると、戸建てへの問い合わせがここ1、2か月の間、急増しているということです。

郊外という立地もそうですが、テレワーク専用のスペースを持てるような間取りの住宅を探している人が多いということです。

少し前までは収入の激減で自宅を手放す人が相次いでいて、価格が下がっていることもひとつの要因だということです。

 

一方で、大東建託の調査によると、「コロナをきっかけに郊外への引っ越しを考えている」という人は5.3%、「コロナをきっかけに都心への引っ越しを考えている」人も5.3%となっていて、転居を現実的に捉えている人はまだ少なく、かつ、郊外に行くか都心に行くかは数が拮抗しています*2。

 

新しい生活スタイルに興味はありながらも、まだ手探りという人は多いです。

 

 

2.転職活動中の入居審査はどうなる?

 

さて、転職活動中に引っ越しをする場合、ひとつ気がかりなのが「入居審査」についてでしょう。

 

もちろん会社に在籍していれば所得証明ができますので、入居審査はスムーズです。

 

しかしすでに退職している場合は無職です。

この場合、前職での収入は参考になりません。

保証人を立てられれば話は変わりますが、そうではなく保証会社を利用する場合には条件はより厳しくなります。

そこで知っておきたいポイントがいくつかあります。

 

まず一時的に無職、といったこのような場合、対応は大家さんやオーナーさんによって分かれるということです。

事情を細かく説明することで一定条件の下、対応してもらえる場合があります。

 

筆者は会社を退職し「無職」状態のときに、都心から郊外に転居しました。

多くの物件では保証会社の審査が通りにくく多少骨が折れましたが、ある仲介会社に問い合わせたところ、最初に考えていた物件ではありませんが、近隣で似たような間取りの物件をすんなり紹介してもらいました。

 

とにかく事情を話すことから始まります。

筆者の場合はいったん退職し、若干のアルバイトをしながら独立準備中である、といった旨です。

仲介会社の協力もあって、この時は銀行預金の「残高証明書」を提出して審査に通りました。

 

一般的に、大家さんやオーナーさんが居住者に求めるものは「支払い能力」です。

多少の事情があったとしても、家賃を取りっぱぐれないなら貸したい、というところもあります。

よって、一定以上の預金があればそれを支払い能力として認めてくれる場合もあるのです。

 

また、仲介会社の中には「特定の大家さんやオーナーさんとの仲が良い」ところもあります。

普段の信頼関係で、ある程度融通をきかせてくれることもあります。

 

筆者の場合は、まさにその「仲介会社の得意なオーナーさん」の物件だったこともあります。

なお、預金残高は「300万円以上」という条件でした。残高証明書は銀行で発行してもらいます。

 

なお、内定している場合は、証明書を発行してもらうことで入居審査を通過できることもあります。

仲介会社にもそれぞれに特徴がありますから、複数の会社に相談してみるのが良いでしょう。事情に応じた家賃の物件を勧めてくれる場合もあります。

 

3.生活スタイルから逆算する転居

 

転居にあたっては、先々を考えた計画性も必要になます。

内閣府は感染症の影響下での生活意識や行動の変化についての調査を行い、6月に公表しています。

 

まず、職業選択についての意識について「変化した」という人は全体の39%で、その内訳はこのようになっています(図1)。

 

感染症拡大前に比べた職業選択

図1 感染症拡大前に比べた職業選択、副業等の希望の変化
(出所:「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf p11)

 

現状のままで良いのかどうかを考え始める人が出ています。

 

その理由として多いのは、

・今回の感染症を契機に、「仕事と生活のどちらを重視したいか」という意識が変化したから

・今回の感染症の影響下において収入が減少したから

・今回の感染症の影響下において仕事のやりがいを感じづらくなったから

・今回の感染症を契機に、新たなチャレンジをしてみたいと考えたから

 

といったものです。

 

そして、地方移住への関心についても変化が現れています。

 

地方移住への関心

図2 地方移住への関心
(出所:「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf p8)

 

20代、30代で2割以上の人が、地方移住への関心が高まったと答えています。

もうひとつ、結婚への関心の高まりという変化が現れています。

 

結婚への関心

図3 結婚への関心
(出所:「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf p9)

 

結婚に無関心な若者が増えた、と耳にすることがありますが、ここにきて20代の4割近く、30代の3割が結婚への関心が高まったと回答しています。

 

仕事への向き合い方だけでなく、ライフプランそのものに対する考え方が変化しつつあると言えるでしょう。

「働き方」以外のことに関しても「コロナ前」と見方や考え方が変化していく可能性がじゅうぶんにあります。

 

よって、「コロナ前」に考えていたことをそのまま実行に移すのではなく、「自分の中に価値観の変化は生まれていないか」一度向き合ってみるのが良いでしょう。

 

4.まとめ

 

テレワーク実施者はその働き方に慣れ、外に出ればほとんどの人がマスクを着けているのが当たり前の光景になってきました。

そしてコロナウイルスの影響は、さらにもう一段あるかも知れません。

オリンピック延期の影響が秋以降の業績悪化として現れる企業も多く、またリストラや解雇の第2波が来るのではないかということです。

 

コロナの収束には年単位の時間がかかります。

その間をどう生活していくのか、収束後はどんなことを目指すのか、計画的に行動する必要がありそうです。

 

参考文献・WEBサイト
*1 「緊急実施! コロナ禍での借りて住みたい街ランキング(首都圏版)」ライフルホームズ
https://www.homes.co.jp/cont/data/corona_s_ranking_shutoken/
*2 「新型コロナウイルスによる住まいの意識変化やテレワーク実施状況を調査」大東建託
https://www.kentaku.co.jp/corporate/pr/info/2020/coronachosa2020.html
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執筆者 清水

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に記者として勤務。社会部記者として事件事故やテクノロジー、経済部記者としては企業活動から金融まで経済全般を幅広く取材。CSニュース番組のプロデューサーも務める。フリーライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に、お金やライフスタイルなどについて関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。

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